エンジンオイルって色々あるけど...


概要
エンジンオイルを買いに行ったとき、色々種類があってどれが良いのやら良くわからず、悩む人も多いと思います。値段も色々だしね。ここでは、エンジンオイル選びの基礎知識を説明しますので参考にして下さい。

エンジンオイルの役割
エンジンオイルの主な役割は次の通りです。
a)エンジン内部の摩擦を少なくする。(いわゆる潤滑剤)
b)エンジン内部の冷却
c)NOxやSOxからのエンジン内部の保護
d)エンジンの錆止め
e)気密性の保持
f)衝撃の緩和
ここでは、a)の潤滑をメインにお話します。

SAE動粘度
オイルの缶を見ると「SAE 10W−30」とか、「SAE 5W−40」とか書いてありますが、これはオイルの動粘度を表わす記号です。(SAEはアメリカ自動車技術者協会の意味)
10W−30の30は高温時動粘度を表わす記号で、10Wは低温時の動粘度を表わす記号です。Wはwinter(冬)の頭文字で、下の記号を冬場の動粘度、対して上の記号を夏場の動粘度と言うこともあります。
この記号は数字が大きくなるほど動粘度が高く(固く)なります。この記号は一般に30番(さんじゅうばん)とか40番(よんじゅうばん)とか数字の番号で呼ばれています。
各番手に対する動粘度の値を下表にまとめてますので参考にしてください。(SAE規格では動粘度の測定は油温40℃と100℃で行っているらしいが詳細は知らない。)

粘度
記号
ポンプ排出
限界温度(℃)
最小動粘度
(100℃)
最大動粘度
(100℃)
0W −35以下 3.8 −−
5W −30以下 3.8 −−
10W −25以下 4.1 −−
15W −20以下 5.6 −−
20W −15以下 5.6 −−
25W −10以下 9.3 −−
20 −− 5.6 9.3未満
30 −− 9.3 12.5未満
40 −− 12.5 16.3未満
50 −− 16.3 21.9未満
60 −− 21.9 26.1未満

通常に売っているオイルではあまり見た事がないのですが、冬場の動粘度が付いてない(Wの付いている記号が無い)、SAE 30の様に書いてあるオイルがあります。これをシングルグレードと呼び、前記の様なものをマルチグレードと呼びます。

粘度指数
オイルの粘度を表わすものに粘度指数と言うものがあります。オイルは温度が下がると固くなり、温度が上がると柔らかくなりますよね。丁度バターと同じ様に。
粘度指数と言うのは、温度による粘度の変化の度合いを表わしている数値だ思ってよいです。粘度指数が高いと温度による粘度が変化し難く(高温でも柔らかくなり難く、低温でも固くなり難い)、逆に低いと温度による粘度の変化が大きい(高温でサラサラになり易く、低温で固まり易い)です。当然、油温による粘度変化が小さい(粘度指数が大きい)方が、エンジンのあらゆる状況で粘度を確保し易いので良いオイルと言えます。
一般のエンジンオイルの粘度指数はどれくらいかと言うと、鉱物油のベースオイル(エンジンオイルの元となるオイル)の粘度指数は100くらいで、化学合成油のベースオイルは140程度。鉱物油の完成品(売ってる状態)では140くらいで、合成油の完成品では160〜180くらいらしいです。
粘度指数で見ると化学合成油の方が良いオイルと言えます。

使用条件に合った粘度のオイルを選ぶ
オイルを買いに行くと、冬場の番手が同じでも、夏場の番手の大きいオイルの方が値段が高い(10W−40より10W−50の方が高い)場合が多いですよね。高いからと言って、番手の大きい(動粘度の高い)オイルが良いと言うものではありません。
番手の大きい、つまり動粘度の高いオイルは、フリクションロスが増えるためパワーダウンします。パワーダウンすれば燃費も悪くなります。パワーや燃費的に見れば柔らかいオイルが得と言えるでしょう。しかし、あまり柔すぎると油圧が確保できなくなる場合もあります。又、油温が高くなる様な使い方をする場合、オイルは高温になればなるほど動粘度が下がりますから、高温で十分な潤滑を保つ為に番手の大きいものを選ぶ必要があります。
この様に、使用条件などによって適当な動粘度があるのです。

どれくらいの動粘度のオイルを選べば良いいの?
通常運転時(暖気後)、エンジンオイルは30番程度の動粘度があれば十分だと思います。しかし、オイルの動粘度は油温により変化します。温度が上がると動粘度は下がるし、油温が下がると動粘度は上がります。SAE規格ではオイルの動粘度測定を油温40℃と100℃で行われていますので、油温が100℃を超えている場合、選んだオイルの動粘度より低くなっています。オイルの種類にもよるかもしれませんが、110℃から10℃上がる毎に動粘度は10番ずつ下がると言われてます。つまり、40番のオイルが油温120℃になると30番と同じ位の動粘度になり、130℃になると20番と同じ位と言うわけです。従って、30番くらいの動粘度を保ちたいのなら、油温が120℃になる様な使い方をする人は40番、130℃なら50番のオイルが必要になる訳です。
車に油温計を付けてますか?。油温を計っている場所はオイルパンですか?それともオイルフィルター部ですか?。油温は計る場所で異なります。ターボ車の場合、タービンの軸部分はオイルパンやフィルター部より高温になるので、油温計で見た温度からもう一つ位番手の大きいオイルにした方が良いでしょう。
冬場の動粘度(Wが付いてる方)は、暖気後はあまり関係ありませんが、番手の低い方が柔らかいオイルと考えて良いでしょう(10W−50と15W−50では10W−50の方が柔らかい)。柔らかい方がフリクションロスは小さいのでパワー、燃費では有利と言えます。
もし、あなたの車のエンジンが古く、各部分のクリアランスが広くなっている様なら、油温や燃費で考えた番手より固いオイルを使うと、各部の広がったクリアランスをオイルが多少なりとも埋めてくれるので、調子が良くなる場合もあります。でもこの様な場合はオーバーホールする方が得策ですけどね。初期型のRB26DETTは、元々クリアランスが広めらしいので少し固めのオイルを選ぶと良いかもしれません。

オイルの劣化も考慮して
エンジンオイルは使用すると劣化します。劣化の原因の一つにエンジンオイルの構造上の問題があります。その他にブローバイガスによるオイルの汚れ、オイル自体の酸化など劣化の原因は多々あります。オイルは劣化すると、新油状態で10W−40だったものが15W−30位になったりします。動粘度によるオイル選びは新油より一度使った後の方が重要ですのでSAEの表記は参考値と考えた方が良いでしょう。一度使った後の動粘度はオイルの種類で違ってきます。使ってると直ぐに粘度が落ちるオイルを「タレ易い」なんで言い方しますが、タレ易いかなんて、そんな事は何処にも表記されていないので困ります。そこでタレの原因からタレ易いオイルを以下で考察してみる事にします。

エンジンオイルの構造によるタレの原因
前に書いた様に、エンジンオイルのタレの原因の一つに構造上の問題があります。ここではこの構造上の問題に付いて考えて行きます。
エンジンオイルは、元となるシングルグレードのオイル(ベースオイル)に、粘度の幅を広げる為の添加剤を入れ、マルチグレードになる様にして作られます(元々30番のベースオイルに添加剤を入れて10W−40とするなど)。
高温での動粘度を確保する為にはベースオイルに粘度を調整する添加剤を入れて調整しますが、この添加剤にはポリマーと言うものが使われているそうです。ポリマーの分子は低温時は小さく、高温になれば大きく膨張します。これで高温時の動粘度を確保している訳ですが、膨張したポリマーはせん断に弱く、高温で長い時間使用しているとポリマーがせん断されてしまい、添加剤の機能が低下して高温時での動粘度確保ができなくなります。そうすると最初は40番だったオイルが、使っている内に30番になったりします。
又、鉱物油のベースオイルは天然の原油なので、色んな種類の分子の混合物です。その中には大きい分子や小さい分子が何種類も入ってます。その中でも小さい分子は高温で蒸発し易い。分子が小さいものは動粘度が低いものなので、これが蒸発してしまうと固くなります。この様に新油時で10Wだったものが使う度に固くなり15Wになったり20Wになったりします。
化学合成油のベースオイルは化学的に生成されているので一種類の分子で構成されています。従って、化学合成油は鉱物油の様に蒸発して固くなると言うことは少ないと考えて良いでしょう。

ベースオイルの粘度指数が低い方がタレ易い
ベースオイルの粘度指数が低いものと、高いもを比べて見ましょう。
エンジンオイルの作り方は鉱物油も化学合成油も同様で、ベースオイルに動粘度を調整する添加剤を入れて作ります。ベースオイルの粘度指数が高いものと低いもので同じグレードのエンジンオイルを作るなら、粘度指数が低いものは高温で動粘度が下がり易いので、高いものに比べるとポリマー(添加剤)が沢山入っているか、膨張率の高い(膨張した時の分子が大きい)ものポリマーが入っている事とになります。ポリマーを沢山入れると高価になってしまうので、膨張率の高いポリマーを使っているオイルが多い様です。前記の様にポリマーはせん断に弱く、中でも膨張率の高いものほどせん断に弱いです。
又、ベースオイルの粘度指数が小さいと、温度による粘度変化が大きい訳ですから、同じ低温時の粘度を確保するには、最初からかなり粘度の低いベースオイルを選ばなければばらないと言う事になります。ベースオイルの粘度が低いのなら当然高温時の粘度確保の為に、更にポリマーをぶち込む訳ですから、ポリマーの量を増やすとコストが...と言うことで、更に膨張率の高いポリマーを...と言う事になりますね。鉱物油では、ベースオイルの粘度が低いと、小さい分子が多い事になるので蒸発し易く、固くなり易いオイルと言う事になります。又、ちぎれたポリマーは酸化の元になるのでポリマーの多いオイルは汚れも早いと言う事になります。
この様にベースオイルの粘度指数が低いのもは劣化し易いと言う訳です。
鉱物油はタレ易い
上記から、ベースオイルの粘度指数の低いオイルがタレ易いと言う事が伺えますね。では、粘度指数の低いオイルとは一体どんなオイルなのでしょうか?
それはズバリ鉱物油です。この事は粘度指数の所で書いてる通りです。鉱物油はベースオイルの粘度指数が低い為、化学合成油と比べると劣化し易いオイルであると言えます。

鉱物油の利点
これまでの話を総合すると鉱物油は化学合成油より劣ると言う事になります。全ての鉱物油がそうだとは言いませんが。でも鉱物油の有利なところもあります。それは、価格が比較的易いと言う事です。易ければ頻繁に交換する事も可能ですね。頻繁に交換するなら化学合成油を使うのと金銭的に変わらないと思うかもしれませんが、そうでは無いでのです。オイル劣化の中に、ブローバイガスなどによる汚れと言うものが有りますから、頻繁に交換すれば比較的汚れの少ないオイルで常に走れるため得とも言えます。お金があるのなら化学合成油を頻繁に替えた方が良い事は言うまでもありませんが。
それと、古い車の場合は鉱物油の方が良い場合があります。化学合成油は昔の車のパッキンやゴム類の性能に合ってないものがあり、パッキンやゴム類を劣化させる場合があります。これが原因でオイル漏れなんて起こしては大変です。まあ、こんな場合はパッキン類を新しいもの(対油性の優れたもの)に替える方が得策です。お金はかかりますけど...。

APIサービス分類
オイルの缶を見るとSHとかSJとか書いてあります(APIはアメリカ石油協会の意味)。これは、耐摩耗性や防錆性やスラッジ防止性などの品質規格です。規格はSAから始まってSB、SC、SD、SE、SF、SG、SH、SJとなり、進むにつれて高品質なオイルです。
この規格はどんどん厳しい規格が出てきていて、10年位前はSFが最高でしたが最近ではSJが最高となっています。
この規格の細かい評価基準はよく知りませんが、できるだけ最高品質のものを選びたいものです。最高品質の基準をクリアして無いと言う事は、どこか劣る所があると言うことなので...。最低でもSGが良いでしょう。ちなみにSGとSHの品質評価基準は同じです。
昔から変わってないオイルは、昔のAPIサービス分類のまま表示されているものがあるかもしれません。例えばSHが最高品質だった時代に生まれたオイルでSHを取得して、SJ規格がでても品質の再チェックをしてないオイルです。そのオイルの場合、本当はSJである可能性があります。逆に中身は変わってないのにSHからSJに変わったと言うオイルは新たに加わった評価基準をそのままでクリアしてしまったオイルです。

最後に
主に潤滑(粘度)の話をしてきましたが、エンジンオイルの善し悪しは、潤滑の性能だけではなんとも言えない部分があります。エンジンオイルの役割のところで述べたような事も重要な要因です。もしあなたの車がノーマルで、街乗り程度(油温100℃程度)でしか使わないのなら、色々悩む必要はありません、純正オイルが色んな面(価格も含めて)でバランスの良いオイルだと思います。しかし、(あくまでも個人的な意見ですが)RB26DETTは例外です、純正オイルはあまり良く無い様に思います。
エンジンオイル選びはそのエンジンの使い方によって、最適なものが違ってきます。それを見極める為には、まず油温をチェックする事が大切です。又、オイルは使用すると劣化しますので、劣化も考慮して選ぶのも大切です。
油温が上がる様な使い方をする車は、番手の高いオイルでごまかすのでは無く、オイルクーラーを着けるなど、油温を低く保つ様にした方が何かと得でしょう。油温が上がらないのなら番手の低いオイルを使用できる為、比較的安価なオイルを使用でき、フリクションロスも減るなど良い事が盛り沢山です。
最近のレースカーは5W−30くらいのオイルを使用しているそうです。こんなに柔くて大丈夫か?と思いますが、油温が110℃以上にならない様に冷却系をしっかり作っているから問題無いそうです。柔らかいオイルを使った方がパワー的に有利ですからね。

おまけ
最近読んだ車の雑誌に、一般に売られている代表的な化学合成油の比較試験をしているものがありました。かなり面白い内容だったので、その内容の一部と、これまでの話を踏まえてのコメントを書いて置きますので参考にどうぞ。


代表的な化学合成油の粘度チェック、パワーチェックを行っていました。
チェックの方法は次の通り。
粘度チェック試験:
使用車両はBCNR33
新油時の動粘度、20分間のサーキット走行後の動粘度を測定。走行時の油温は140〜150℃位。できるだけ同条件になる様に試験をしたとの事。

パワーチェック:
使用車両はR33タイプMのライトチューン
新油交換後、75℃まで暖気し一回目のチェック。再び油温が75℃下がった所で二回目のチェックをし、その平均。
試験前にノーマルオイル(純正オイル、グレード等不明)でのパワーチェック結果は287.7ps。

オイル名
グレード
粘度指数
試験時の気温、路面温度
新油
40℃
動粘度
使用後
40℃
動粘度
新油
100℃
動粘度
使用後
100℃
動粘度
パワー
(ps)
コメント
BPバービスレーシング
10W−50
新油粘度指数:169
気温21℃、路面温度27℃
134.4 122.7 19.8 18.48 304.4 オイルだけで17psUPは凄い。
動粘度低下が大きいのが目立つ。でも、使用後100℃の動粘度18.48は十分。
このオイルはちょっと油温上昇が早かったらしい。
量販店でも比較的安く手に入れ易いので交換サイクルを少し早めにすれば問題ない。パワーが上がる分、燃費もいいだろうし。
0-400に向いていると思う。
カストロールRS
10W−50
新油粘度指数:177
気温20℃、路面温度27℃
137.5 130.2 20.9 19.94 300.6 新油時100℃時の動粘度20.9は60番に近い。 そのわりにはパワー13psUPは凄い。
動粘度落ちも比較的少なくて良い。
せん断に対する対策がされているらしく、その結果だろう。
油温の上昇も早くは無く、安心して踏めるらしい。
粘度指数が高いので、高温で使用中でもタレが少ないと想像できる。
普段の街乗りからサーキットまで使えるオイルだと思う。
elfシンセF1
10W−50
新油粘度指数:171
気温21℃、路面温度31℃
120.3 110.5 18.35 17.89 291.0 10W−50のわりにはパワーUPは少な目。
動粘度低下の少さは他と比べ物にならないくらい凄い。
パワーUPが少ないのと、動粘度の低下の少なさから見て、ベースオイルの粘度指数が高いと思われる。
油温の上昇はBPやRSより遅いが、150℃近くまで上がったらしい。それでも、動粘度のタレが少ないのは流石だ。
長時間過酷な使い方をする人には良いと思う。
HKSスーパーターボレーシング
15W−50
新油粘度指数:162
気温23℃、路面温度35℃
123.3 114.7 18.75 17.96 293.3 粘度指数が低いのが気になるが、動粘度の低下はわりと少な目。
対せん断能力を向上させて作られているらしいが本当の様だ。
15W−50の中では一番パワーは出ている。
トラストF2Ver.I
15W−50
新油粘度指数:176
気温25℃、路面温度40℃
114.1 106.2 18.08 17.14 292.1 新油時から動粘度は低い。40番に近いオイル。パワーチェックでは分からないが、吹け上がりが軽いらしい。
40番に近いが粘度指数が高いので比較的安定しているオイルと思われる。
油温の上がり難い(冷め易い?)らしいので40番近い動粘度で十分なのかも。
FETハイパーターボ
15W−50
新油粘度指数:172
気温25℃、路面温度39℃
121.3 110.7 18.56 17.56 291.5 HKSとトラストの中間くらいの硬さのオイル。
粘度低下率はわりと大き目。
粘度指数は普通。
吹けは結構軽く感じるらしいが。 パワーは15W−50では最低だがほとんど誤差範囲。

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