空燃比って何?


概要
ここでは、「よく燃料の調整(燃調)の時に”空燃比(くうねんぴ)"と言う言葉を聞くけど、空燃比って一体何なのか?」と言う疑問に対する解説をします。又、ガソリンエンジンでの空燃比と出力、空燃比と燃費の関係についてもまとめていますので参考にして下さい。

空燃比とは
一般に空燃比は、空気の質量と燃料の質量の比で表わし、良く耳にする空燃比の値は、次の式に示すの値です。
{ 空気の質量 : 燃料の質量 = X : 1 }
従って{ X = 空気の質量 ÷ 燃料の質量 }となります。

空燃比の値の中で、空気中の酸素が全て燃料との完全燃焼に使われる場合を理論空燃比(または理論混合比)と呼びます。
空燃比の値の中で、最もパワーの出る空燃比をパワー空燃比(又は出力空燃比、出力混合比)、パワー空燃比に対して最も燃費の良い場合を経済空燃比と呼びます。
空燃比と出力、空燃比と燃料消費率の関係は下のグラフの様になります。


理論空燃比
理論空燃比とは燃料が完全燃焼する場合だと言うことは前で書いた通りですが、では、理論空燃比の値は幾らなのでしょうか?。ここで理論空燃比の値を計算してみる事にしましょう。

ガソリンは様々な炭化水素の混合物ですが、ここではガソリンの分子式を818として計算します。ちなみに818はオクタンの事ですが、ガソリンの平均分子量に比較的近い炭化水素です。
理論空燃比の時の燃焼は、酸素が完全燃焼に使われる場合なので、燃焼の反応式は次式となります。
{C818 + 12.5O2 → 9H2O + 8CO2 + エネルギー}
これを重さにすると(C=12、H=1、O=16で計算)燃料は12×8+1×18 = 114で、酸素は12.5×16×2 = 400です。 空気の成分は窒素が79%で残りの21%が酸素(他も物質も色々あるけど微量なので無視)なので、酸素の質量は空気全体の約23.3%(N=14で計算)です。燃料の質量114を燃焼させる為に必要な空気の質量は400 ÷ 0.233 ≒ 1717となります。で、空燃比は空気の質量 ÷ 燃料の質量だったので、 1717 ÷ 114 ≒ 15.1となります。

ここでの計算では15.1となりましたが、一般に理論空燃比は14.5や14.7と言われています。これは、ガソリンの種類によって平均分子量が違う為で正確に幾つとは言えません。大体このあたりの数値だと考えればOKです。私の場合は、理論空燃比の値は14.7として扱っています。(イースーチーと覚えましょう。麻雀する人なら覚えやすいよね)
最後の方に主な炭化水素燃料の理論空燃比を表にしてますので参考にして下さい。

パワー空燃比
パワー空燃比は理論空燃比より若干燃料が濃い所にあります。理論空燃比より燃料が濃い場合、理論空燃比の所で示した反応式とは若干違う燃焼が起こります。
理論空燃比の場合の燃焼では完全燃焼なので二酸化炭素と水ができますが、燃料が理論空燃比より濃い場合一部不完全燃焼となり、二酸化炭素と一酸化炭素と水になります。炭素が燃焼で発生するエネルギーは不完全燃焼の方が完全燃焼の場合より少ないです。
完全燃焼の場合:{C + O2 = CO2 + 97200kcal/kmol}
不完全燃焼の場合:{2C + O2 = 2CO + 59240kcal/kmol}
これを見ると、理論空燃比より濃い方がパワーダウンしてしまう様に思えますね。ところが、理論空燃比より少し濃いほうが燃焼速度が早いのです(酸素分子が燃料の分子に出会う確率が高くなる為)。多分そのせいでパワー空燃比は理論空燃比より濃い所にあるのだと思います。燃焼速度と空燃比の関係は、上で示したグラフの出力の曲線と似た様な形となります。この曲線の形は、燃調を取ったときの点火時期への影響を考える時に重要になので是非覚えておきましょう。

パワー空燃比の値は12.3とか12.5とか言われてます。これまた燃料によって若干違ってきますが12.5位だと考えればOKでしょう。
経済空燃比
経済空燃比は理論空燃比より薄い所にあります。空燃比を薄くすればするほど燃費が良いと言うこと訳ではありません。理論空燃比より燃料を薄くして行くとパワーダウンします。パワーダウンが著しい場合、ドライバーはエンジンにパワーを要求する為にアクセルを大きく踏み込む事になり、結果的には燃費が悪くなります。この燃費とパワーダウンのバランスが丁度良い所が経済空燃比です。
では経済空燃比は幾つでなのでしょうか?。経済空燃比の値はエンジンを形状等により随分と違う様です。最近のリーンバーンエンジンでは20.0より薄く、三菱のGDIエンジンでは40.0より薄いらしいです。40.0と言うのはガソリンの燃焼限界より薄いですが、GDIでは意図的に混合気の濃いところと薄い所を作り、点火プラグの直下の混合気は燃焼限界より濃くなる様にして燃焼させています。その為にGDIでは吸入した混合気のスワール(通常のエンジンは混合気がピストンの王面に対し水平に渦を巻いている、これがスワール)を縦に回し(これをタンブルと言う)、高圧縮比とし、燃料を筒内噴射しています。さらにGDIのタンブルは通常の渦の逆回りで逆タンブルと呼ばれている様です。
話が少々それましたが、経済空燃比は通常のエンジンで17.0程度、リーンバーンエンジンと呼ばれているもので20.0以上、ダイレクトインジェクション方式(GDIなど)のエンジンで40.0以上と考えれば良いでしょう。
では、通常のエンジンの車の場合、低負荷時は空燃比位を17.0付近まで薄くすれば経済的でGOODと思うかも知れませんが、そうも行きません。燃料が理論空燃比より薄い場合、余分な酸素は窒素と化合し易く、NOxと言う有毒物質を多く作ってしまいます。通常窒素は酸素と化合する(燃焼する)事は無いですが、高温高圧縮下では化合してしまうのです。NOxは理論空燃比の時でもパワー空燃比の時でも出るのですが、理論空燃比より少し薄い(経済空燃比付近)で一番多くなる様です。これは、リーンバーンエンジンやダイレクトインジェクション方式のエンジンでも同じです。でも、これらのエンジンの場合はそれなりの工夫がされていますからNOxの排出量は増えない(沢山で生成されても外に出さない様にしてるって事)様です。
最後に
ここで出てきた数値は色々な要因がある為全ておよその値です。ですから計算結果もおよその値になってますのでご了承下さい。

主な炭化水素系燃料と理論空燃比
炭化水素の種類 理論空燃比
パラフィン系(脂肪族)
n2n+2
ペンタン(C512 15.36
ヘキサン(C614 15.27
ヘプタン(C716 15.20
オクタン(C818 15.14
ベンゾール系(芳香族)
n2n-6
ベンゾール(C66 13.2
トルオール(C78 13.4
キシロール(C810 13.6
ナフテン系
n2n
シクロヘキサン(C612 14.7
ヘキサハイドロトルオール
(C714
14.7
ヘキサハイドロキシロール
(C816
14.8
アルコール類 メチルアルコール(CH3(OH)) 6.5
エチルアルコール(重量比98%のもの) 8.95
エチルアルコール(体積比95%のもの) 8.4

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