少年がはじめて彼女を見たのは大通り沿いのクレープ屋だった。
彼はマロンクレープにチョコレートソースと生クリームをかけた物を買い、街路樹のそばで食べていた。食べ終わったあとすぐに包み紙を店備え付けのごみ箱に入れて身軽に立ち去るためだ。
そこに靴が見えないほど長いドレスを着て日傘まで指した、さらにメイドまで連れたえらく場違いな少女がやってきて、展示見本を指さして二言三言メイドに命じて注文させ、美味そうに頬張った。
彼女のクレープは少年と同じマロンクレープだったが、トッピングは少年のものよりも多かった。
少年は潤沢なトッピングができる彼女をうらやましく思い帰宅した。
しかし翌朝、朝食の海苔の佃煮をまぶした米飯を咀嚼していると、不意に昨日会った少女の色素が薄くカールした髪や、日傘からのぞくチョコレートソースに塗れた口が思い出されてならなかった。
そこで彼はクレープ屋に行ってこっそり見張ってみたのだが、果たしておやつの時間頃に彼女はやってきた。
彼は街路樹の陰に隠れた。一緒にいた長い髪の女には気付かれたようだが、少女は彼に気付くことなく立ち去った。
それからも彼は毎日店員さまの迷惑も考えずクレープ屋に通いつめたが、少女はそれなりの確率でやってきた。
メイドを連れている事もあったし、母親だろうか髪を二つに結わえた女や、ポニーテールの和服の女と来る事もあったが彼女は常に青く長いドレスだった。
しかしそのうち彼女は、やってこなくなってしまった。
飽きたのだ。
クレープに。