うふふふふふっ。
 ふふふ……ふふっ……
 次から次へとうれしさがこみ上げてきて、もう止まらないわ。
 きっと私、すごくうれしそうににこにこしてるんだろうなぁ。
 うふふふふっ……

 今日は、私の誕生日です。
 だから……大好きなお姉様に好きなだけ甘えられます。
 いつもは他の妹達もいるからみんなと仲良く十二分の一ずつだし、それにいつものお姉様はあまり甘えさせてくれないけど……今日は誕生日だから特別に甘えてもいいよ、って言ってくれたの!
 私、お姉様のその言葉を聞いた時から、今日がすっごく楽しみで、指折り数えて待ってました。
 その日が近づいてくると次第にそわそわして、なかなか寝つけなくなってきて……
 お姉様とああしたいこうしたいって考えてると、わくわくしちゃって眠れないのね。
 昨日の夜なんて、全然眠れなかったわ。そしてやっと眠れたかと思ったら、今度はすごく早く起きちゃった。
 早く起きた分、早く眠くなっちゃったりしたら折角お姉様と過ごせる時間がもったいないから、眠れなくても目はつぶっていたの。そうすれば身体を休める効果があるって、お姉様が教えてくれた方法なのよ。
 そしたら、顔の辺りが冷たくなってきて…… お布団の中に頭まで突っ込んじゃったわ。
 お姉様がいつか言っていたけど、日の出の前後が一番冷えるって本当ね。
 でも、今日の夜はそんな事ないの。
 だって、お姉様と一緒なんだもの……
 お布団の中にもぐってお姉様の事を考えていたら、胸がドキドキして、からだがどんどん温かくなってきたの。
 考えるだけでそうなんだもの、本人と一緒に寝ていたら……
 うーん……あったか過ぎて、暑さ対策の方を考えなくちゃならないかも。
 もしかして、『咲耶ちゃん……私が温めてあげるよ……』って、優しく抱きしめて……なーんて、きゃー! きゃーっ!

「え? あ……えっと……おほん」
 いっけないいけない…… いけないわ……
 すっかり忘れてたけど、ここは京浜東北線の電車の中だったんだわ……
 毎日使っているから、まるで自分の家みたいにくつろいでしまっていたけど、ここは公共交通機関なのよね。
 私とした事が興奮しすぎて電車の中で叫んでしまうなんて。春歌ちゃんの妄想癖がうつってしまったのかしら……恥ずかしいっ。
 妹の癖がうつるって、姉としてどうなのかしらね……

 ……でも……やっぱり……
 とてもじゃないけど、家まで我慢できそうもないわ!
 そうよ、年度末やクリスマスでみんな忙しいから、女子中学生の事なんか気にしてないわよ!
 それに電車の中なんて退屈だもの、考え事でもしてないと暇でしょうがないわ。
 さっきのだって、多分寝言か何かだと勘違いしてくれたでしょうし。
 中学生もいろいろ大変なのよ。電車の中で居眠りして、寝言を言っちゃう事だってあるのよ。
 ……というわけで、声を上げないように気をつけて、マフラーで口元を隠して……続き続き。


 今日の晩ごはんは、高級レストランでディナーなの。
 私が、誕生日は特別な日にしたいなって言ったら、お姉様が『じゃあ外食にする?』って言って予約してくれて。
 どこに行くかとか、どんなお料理が出るのかとかはまだ秘密なんだけどね。その時のお楽しみなんだって。
 でも、今日来ていく為のドレスはもう作ってあるのよ。
 お姉様と一緒に銀座まで行って作った、生まれて初めてのオーダーメイド。
 世界でたった一人、私だけの為の服なんて初めてだし、なによりもお姉様がプレゼントしてくれるって事がうれしいわ。
 でね、結構からだのラインが出るデザインなの。
 さすがに私もちょっとだけ恥ずかしかったけど…… これでお姉様を悩殺しちゃうんだから!
 あっ、わざと私に誘惑させて、悩殺されたふりして襲っちゃうつもりなの? んもう……シャイなんだからっ。
 でも、お姉様の方も負けず劣らず露出度高めなの。
 もしかして、お姉様の方が私を誘惑してるの?
 だったら私、いつだってOKよ。いまさら誘惑なんかしなくても、私の心は今の雛子ちゃんよりちっちゃい子供の頃から、ずっとお姉様だけの物なんだから!

 それにしても、今日のディナーはどんな所なのかしら?
 リビングに置いてあった情報誌には、いろんなレストランが載っていたけど、付箋を付けたりページの端を折ったりはしてなかったから、どれなのか全然見当もつかないわ。
 四葉ちゃんは『情報誌はフェイクデス! 載ってないところがあやしいデス!』って言ってたけど、どうなのかしら。
 私は情報誌に載ってる所だって思うんだけどなぁ。
 私、そういう高級なお店の事は良く知らないから、あの本しか手がかりになるものがないし。

 ホテルのレストラン……かな?
 妹いちのグルメ、白雪ちゃんが一番熱心に眺めてたのはこのページだったわね。
 千円払って聞き出した四葉ちゃんの情報によるとお姉様は白雪ちゃんに相談したらしいし、この線が濃厚かしら。
 その白雪ちゃんはねえさまと姫の秘密ですのって固く口を結んで、相談を受けたかどうかさえも話してくれないけど。
 でも、ホテルに行くんだったら、折角だしお部屋まで取ってくれればいいのに。私、お姉様と熱い甘くとろけるような飛び切りの夜を過ごしたいわ……
 あっ、もしかしたらナイショでお部屋も取ってあるのかしら? さっすがお姉様、やるわね。
 甘い夜を過ごしたあとは、みんなに見つからない様に朝早くチェックアウトして家に帰るの。
 みんなが起きてくる前に自分の部屋に戻って、私とお姉様が過ごした夜の事は誰も知らない、二人だけの秘密……
 ……やだっお姉様、格好良過ぎ!
 でも、お姉様のお部屋で寝たいって言ったらこれもOKしてくれたから、ホテルのレストランで食べるとしてもお泊まりまではなさそうね。
 そういう可能性があるんだったら、もっと良く考えてお願いするんだった。
 もちろん、ホテルよりお姉様のお部屋の方がうれしいけど、ホテル二人きりで泊まるって事には、特別な意味があるしね。

 高層ビルのレストラン?
 ホテルもそうだけど、夜景が綺麗なのがウリよね。
 あの雑誌にもイルミネーションが綺麗なレストランはいくつも載っていたから、これもアリかも。
 この大東京の夜景をお姉様と二人占め。澄んだ空気の中、私達を祝福するように輝く地上の星を眺めながら、愛を語らうのね……素敵だわ。
 でも、夜景も綺麗だろうけど、私は夜景よりお姉様の方を見てしまうと思うの。
 だって、お姉様が綺麗過ぎるから。
 ただでさえ綺麗なのに、特注のドレスを着て、夜景をバックに微笑むお姉様……素敵なんだろうなぁ……

 逆に、地下のレストランっていう可能性もあるかも。
 隠れ家っぽい、席の少ないレストランで二人きり。
 なんだかちょっといかがわしくて大人っぽい魅力を感じるわ。
 そんなところに連れてってくれるってことは、お姉様も私を大人って認めてくれたって事かしら。
 ふふっ。私、お姉様に釣り合える大人のオンナになれるように日夜努力してるのよ。
 それに少し危ない目にあっても、お姉様が一緒だから平気よね。お姉様はいつだって私のプリンセスで、ナイトなんだもの……

 和食ってのもあるわね。
 ドレスを作っておいて和食っていうのも変な気がするけど、あの情報誌には椅子に座って食べる和食のお店も沢山載ってたもの。ないとは言い切れないわ。
 洋服だから洋食って先入観を持たせるのがお姉様の狙いなのかもしれないし。
 和食といえば、春歌ちゃんの本棚で見かけたんだけど……
 女体盛り。
 お姉様を美味しく頂くのも、お姉様に食べてもらうのも……どっちもいいわっ!
 パパがママを落としたのも料亭でって事だから、和食だとそういう展開を期待しちゃうかな。
 私、お姉様の為に女を磨いてきたんだもの、とっても美味しい極上の美味のはずよ。さあお姉様、召し上がれ。
 ……でも、やっぱり女体盛りはないわよね…… せいぜいタイの姿盛りかしら。

 場所はどの辺なのかしら……
 歩いて行ける距離?
 それとも電車やクルマで行くの?
 もしかして船とかヘリコプター?
 歩いて行くんだったら、二人で一つのマフラーを巻いて歩きたいな。
 マフラーを通じて繋がっていられるし、二人が寄り添っていなくちゃ巻けないから、密着する大義名分が出来るもの……
 そしたら私、わざとゆっくり歩いて一緒の時間を引き延ばすの。お食事の予約の時間に間に合わなくなったらいけないから、引き延ばすのは帰りかな。
 電車もいいわね。周りはきっとカップルだらけで盛り上がってるだろうから、私達もそれにつられて燃え上がれると思うの。
 ううん、つられるなんてそんな受け身じゃ駄目。私とお姉様の愛情の強さを周りのバカップルに見せつけてやるんだから!
 クルマだと、私は助手席でナビをしたり、みかんをむいて食べさせてあげたり、ペットボトルを開けてあげたり。お姉様のパートナーとして相応しい所見せなくっちゃね。
 でも、楽しくおしゃべりしてたら、急にお姉様がカーラジオのボリュームを上げて。
 (折角盛り上がってたのに……お姉様ったら気が利かないんだから……)
 私が少し悲しくなっていると、BGMのボリュームが小さくなって、パーソナリティーがお便りを読み上げるの……
「東京都にお住まいの……本名OK、妹姫眞深さんから。『咲耶へ。愛してるよ。誕生日おめでとう』」
 お姉様は照れくさそうに笑いながら「グローブボックス……開けてみて」
 ドキドキしながら開けてみると、そこには私へのバースデイプレゼントが……
 きゃーっ! お姉様ありがとうっ! 私最高に幸せよ! 気が利かないなんて一瞬でも思っちゃってごめんなさい!
 そして感極まった私はプレゼントを包み紙や箱が壊れない程度にぎゅっと抱きしめて、信号待ちでクルマが止まった隙にお姉様の耳元でそっと「私も愛してるわ、お姉様」って。
 ああ、もう! 早く夕方にならないかしら!


 ……だけどね。
 私、お姉様と一緒に食べられるなら、牛丼でも、ハンバーガーでもいいの。
 牛丼とかがランクが低いとか、そういう意味じゃなくて……ね。
 お姉様は時々、無性に牛丼が食べたくなる時があるんだって言ってたし……向き不向きよ。
 私にとっては、お姉様と食べるなら、なんだって最高の味だもの。
 それでも折角だから美味しいものを食べたいけどね。今日みたいなムードを大事にしたい日には、そっちの方が向いてると思うし。

 ファーストフードといえば、クリスマスのディナーはケンタのチキンなのよね。
 今から高級ディナーを食べるのに不謹慎だけど……楽しみだわ。
 本物の七面鳥とかいろんな選択肢がある中から、それを選んでくれたんだもの。お姉様はそれが私の大好物だって知ってて選んでくれたって、そう思ってもいいわよね?
 まあ、七面鳥も買うみたいだけど…… この人数じゃしょうがないわよね。
 そう、クリスマスはみんなと一緒。妹達はみんなみんなお姉様が大好きで、お姉様は優しいからみんなと仲良くしちゃう。
 でも、聖夜にお姉様と一緒に居られる時間が短くても平気よ。お姉様と私の心は、切っても切れない絆で結ばれているんだし、今日はいっぱいお姉様と一緒にいて、いっぱい、思いっきり甘えてラブをチャージするから。
 それに…… お姉様は絶対譲れないけど、私も妹のみんなは大好きだから。
 ねえお姉様? 私達、全員母親が違って、ずっと離ればなれに暮らしていた姉妹だったけど、それでも最近姉妹らしくなってきた……そう思うのよ。
 時々けんかもしたりするけど、やっぱりみんながいてよかったって。
 そして、これからもっと姉妹になって行けると思うの。その時、みんなをまとめていくのは長姉のお姉様で、お姉様をサポートするのはもちろん、次姉の私よね。
 私にとっては、いつも、いつでも、お姉様が心の支え。
 お姉様にとって、私がそんな存在になれたらうれしいな。ううん、きっとなってみせるわ。

 クリスマスの事はあとで考えるとして、今はこの後、お姉様との甘い夜の事を考えましょう。


 ディナーから帰って来たらお風呂に入りたいな。
 もちろん、お姉様と二人きりで。今日は私とお姉様の貸し切りにするの。みんなには悪いけど、銭湯にでも行ってもらうとして。
 いつもは、ひっきりなしに入れ代わって、二人きりで入れる事なんてめったにないけれど……
 今日は心ゆくまで、お姉様と二人っきりで入れるの。
 私、興奮してのぼせちゃうかもしれないけど、そしたらお姉様が介抱してくれるんだもの、怖い事なんてないわ。
 お姉様がのぼせちゃったら、私が介抱ね。
 入浴剤は何使おうかな。
 ボディソープやシャンプーにコンディショナーも、とっておきのを使っちゃおう。
 あ、お姉様のを借りちゃおうかな? いつもはこっそり使ってるけど、今日は堂々と使わせてもらえるものね。
 お姉様と同じ物で身体を洗えるなんて……下着よりもっと下にお姉様と同じ香りをまとうの。なんて素敵なのかしら?
 楽しみだわ…… 家に着いたら、早速みんなに今日は銭湯に行く様にって言わなくちゃ。
 私達が銭湯に行くのも悪くはないんだけど、我が家のお風呂は銭湯以上に豪華だし、それに銭湯だと二人きりにはなれそうもないもの、やっぱりみんなが銭湯よね。


 それから……もちろん、お姉様と一緒に寝るの。
 お布団をくっつけて、出来れば一緒のお布団で。お互いの存在を側に感じながら。
 暗い中、いろんな話をして、そして出来れば……あんな事や、こんな事を……ねっ。
 そんな最高の夜を過ごすのは、いつもは入れない、あの扉の向こう……お姉様のお部屋。だめもとでお願いしてみたら、特別にって許してもらっちゃった。
 お姉様の部屋だって事もあるけど、いつも入れない所に入れるって事が、余計わくわくさせるの。
 どんなお部屋なのかしら?
 オンナノコらしい、可愛いお部屋?
 整理整頓された、きれいなお部屋?
 それとも……その……えっと……私の部屋みたいな……
 ……散らかってる……じゃなくて、生活感あふれるお部屋?
 もしかして、私が入るからって今頃片付けてたりするのかしら。
 だったら私、自分と同じ発想のお姉様に親近感が湧いちゃうな。姉に親近感、って言うのもおかしいかもしれないけれど……
 ……ううん、どんなお部屋でもいいわ。
 お姉様が、いつも過ごしているお部屋。そこはどんな所だって、素敵な場所だもの。
 散らかってるのは当り前よ。お姉様がずっと過ごしてきた歴史がぎっしり詰まっていて、あふれてしまっているんだから。
 一見ゴミに見えるものだって、お姉様の宝物かもしれないし、本当のゴミだって、お姉様の為に役目を終えて引退したもの。それを捨てられないのも、お姉様の深い優しさの現れなのよ。
 だいたい、部屋を片付けないのはそれだけおおらかな証拠だし……
 それに……だから……うぅんと……
 ……私の部屋よりは……きっとマシよ。……あはは……
 あっ! 今度、一緒に部屋を掃除してくれるようにお姉様に頼んでみようかしら?
 二人がかりならきっときれいに……
 ……きれいに……
 ……いくらお姉様がすごくても、ちょっと無理かも。
 で、でも、きれいにはならないかもしれないけど、それでも少しはマシになるはずよ! そうよ、床くらいは見えるようになるはず!
 駄目でもともとだし、お願いしてみよっと。
 だけど、今日は折角のお誕生日なんだから、また今度。そんな所帯じみた話は、特別な日には似合わないもの。
 早くしなくちゃ今年が終わっちゃうから、早めにお願いしなきゃいけないけど……
 いくら半月もしないうちに元通りとはいえ、やっぱり新年はきれいなお部屋で迎えたいもの。
 もう、すっかり話題がずれちゃったわ。こんな特別な日にそんな事考えるなんて、私ったら……


 明日の朝はどうしよう?
 先に起きて、お姉様の寝顔を観察しちゃおうかしら……
 お姉様の寝顔って、とっても可愛いのよねっ。もしかしたら雛子ちゃんや亞里亞ちゃんよりもあどけない顔かもしれないわ。
 いつもはすごくオトナなお姉様の、私の前でだけ見せてくれる無防備な姿…… なんであんなにピュアでイノセントなのかしら。
 そうだ、写真に撮っちゃうのもいいかも。そしたら、焼き増しして枕の下に敷いて寝るの。きっといい夢が見られるわ。
 ああん、もう……早く夜にならないかしら!
 それとも、お姉様に起こしてもらう事になるのかしら? お姉様は優しいもの、私を置いて先に起きて行っちゃうなんて事ないわよね。きっと、私を優しく起こしてくれるはずだわ。
 もちろん、寝てる間に私の顔に落書きするなんて事もないわよね。っていうか、普通はしないわよ。
 二人とも目が覚めたら、お姉様にモーニングコーヒーを淹れてあげるわ。
 お姉様、砂糖とミルクはどの位? ずっと飲めなかったのが飲めるようになったばかりから、まだ苦いのは辛いかしら? それとももうブラックでも平気なのかしら…… それも聞いてみようっと。
 朝風呂もいいわね。お風呂に入りながら太陽が昇るのを見るなんて素敵。文字通り、私とお姉様の愛の夜明けね。
 それから、一緒に……お互い手伝って身支度をして、一緒に下に降りて、妹たちみんながお姉様におはようを言うのを、私は隣、恋人のポジションに控えて聞くの。少しの優越感に浸りながら……
 その後、自分の席に着いて食事を始める、それを境にお姉様は再びみんなのお姉様になって、私が独り占めできる時間は当分の間お預け。
 私はまたお姉様を独り占めできる日まで、その想い出を胸に過ごすの。


 あら……もうこんな所なの?
 目を開けて顔を上げると、前に立っている人越しに少しだけ新橋の景色が見えました。
 お姉様の事を考えてたらあっと言う間に時間が過ぎちゃったわね。
 もっとこうしてお姉様の事を考えていたいけれど、早く本物のお姉様に会いたいし……早く着いて欲しいような、もう少しゆっくりでもいいような。
 なんてね。やっぱり本物のお姉様にかなうものなんて何もないわよ。
 電車さん、早く私をお姉様の所まで連れて行ってね。
 さてっ。東京駅まで、お姉様の写真を見ながら過ごすとしようかしら。
 生徒手帳のカバーに入れたお正月の振袖姿のお姉様にしようかな。
 それとも、定期入れの海に行った時のお姉様?
 教科書にそっとはさんである、おねだりして焼き増してもらった今の私とほとんど同じ……中学の卒業式のお姉様?
 あぁん、迷っちゃう!
 いっそのこと、ここまで来たらあえて写真を見ないで、お姉様の事を考えながら帰った方がいいかもしれないわね。
 だって、私の胸には写真よりも鮮明にお姉様の想い出が映っているんだもの……
 だけど、写真で想い出を新たにするのもいいし……
 うーん…… 悩むわ……
 こんなにも私を悩ませるなんて。お姉様って本当、罪な女ね。
 もう……ちゃんと責任、取ってよね。ふふっ……


 え? 今、次は東京って言ってたような……
 もう着いちゃったの?
 本当、お姉様の事を考えていると時間が経つのが早いわね。
 写真を見ないで正解だったわ。もし見てたらまたしまったりするので時間を使っちゃって、もしかしたら乗り過ごしちゃったかもしれないもの。
 かといって、ちゃんとしまわないでなくしちゃうのはもっと嫌だしね。乗り過ごしてもすぐに戻れるんだし、なくすくらいならしっかりしまって乗り過ごす方がマシよ。
 カバンとバッグを持ってホームに降りると、風に混じってお姉様の香りがするような気がしました。
 初めてお姉様に会いに来た時も、このホームに降りてこの風をかいだのよね。
 ……なぁんて、想い出に浸るのはあとあと。
 早く家に帰って、少しでも長くお姉様と一緒にいなくちゃ。
 さあ、待っててね、お姉様!


 この本は、少し遅いですが咲耶のお誕生日本です。
 いつもはお姉様を心から愛しながらもそれが同性愛の近親相姦であるという事に苦悩する咲耶を書く事が多いので、今回はラブラブな話を書こうと思いました。
 そして最初に思い浮かんだのがクリスマスでしたが、クリスマスの夜は特別な夜で、咲耶以外の妹達も一番大好きな姉、眞深と過ごしたい事でしょう。
 ラブラブならやはり他の妹抜き、二人きりだろうと思い、そういえば咲耶の誕生日も12月だったではないかと、誕生日本と相成りました。
 いつも原稿を書いている時は基本的に楽しいのですが、今回は輪をかけて楽しかったです。
 やはり咲耶には不安な顔よりも、自信たっぷりにお姉様大好きと笑っている顔の方が似合う…… そう思いました。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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