■人間が直立歩行しだしたときからの宿命
 ■首の骨はこれだけのハンデを背負っている
 ■7つの関節の協同作業で肩は動く



人間が直立歩行しだしたときからの宿命
肩がなぜこるのかを説明するためには、まず、背骨の状態を知っておく必要があります。
というのも、背骨、特に、くびの骨には肩こりを起こしやすい条件がもともと備わっているからです。
背骨は、尾てい骨まで含めると、32-35個の小さな椎骨が、レンガのように積み重ねられたもので、上は頭蓋骨、下は骨盤に連動しています。椎骨と椎骨をつなぐのが、椎間板と呼ばれるクッションです。このクッションのおかげで、私たちは自在に背骨を曲げたり上体を動かしたりすることができるのです。
といっても、背骨は初めから直立していたわけではありません。約400万年ほど前、人類が二足歩行を始めたのがきっかけで、直立を余儀なくされたのです。
このときから、背骨は大きな負担を背負わされることになりました。重たい頭や腕を支える支柱を持たざるを得なくなったのです。しかも、背骨がよって立つ土台である骨盤は、直立した姿勢で約30度ほど前方に傾いています。
ですから、背骨は、わざわざ不安定な土台の上で、重い上半身を支える工夫をしなくてはならなくなったわけです。 こうした環境に適応するために生み出されたのが、背骨の生理的わん曲です。人間の体を横から見ると、わずかにS字形のカーブを描いているのが分かると思います。くびと腹はやや前方にわん曲し、背骨は少し後方にわん曲しています。このカーブが、長い年月をかけてあみ出された、上半身を合理的に、つまり疲れずに支える形なのです。
ところが、このカーブはいまだに進歩の途上にあるともいわれ、日ごろの習慣や生活の仕方で微妙に変化します。悪い姿勢を続けて生理的わん曲がくずれると、特定の椎骨やそれを支える筋肉に負担がかかり、簡単に肩こりや腰痛を引き起こす原因となってしまうのです。




首の骨はこれだけのハンデを背負っている
肩こりと不即不離の関係にある体の部位は「くび」です。くびの骨は、背骨の中でも一番よく動きます。椎骨は、上から頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、に分類されますが、仙骨は尾骨とともに骨盤に固定されています。胸椎も肋骨という大きな骨がついているので、それほで大きく動くことができません。上半身を実質に動かしているのは、頚椎と腰椎の2ヵ所にすぎません。
そのため、いきおい椎骨やそれを支える筋肉を疲労させ、肩こりや腰痛を起こすことになるのです。
特に頚椎は、頭というコントロールタワーを支えています。私たちが何か動作を行うときは、目、鼻、口、耳、という感覚器を駆使しながら情報を収集しつづけます。四方八方にアンテナを張りめぐらしていますから、頚椎は左右に80度、旋回にいたっては140度とほぼ水平になるくらいまで広く動きます。
思い頭をかかえたままこの動作を行うのですから、普通ならサクランボの枝をさかさにして振ったときのように、グニャリと曲がって折れてしまうはずです。それがかろうじて維持されているのは、強靭な筋肉が幾重にもわたって頚椎を支えているおかげなのです。
しかし、いくら強靭な筋肉ではあっても、働きすぎは疲労します。
くびを、前に倒して仕事をしていると、頭を後ろに引っ張る働きをする筋肉は緊張の連続です。このまま筋肉に緊張した状態が続けば、血液の流れがとどこおり、肩こりが起こりやすくなります。
また、くびにはもともとウッ血を起こしやすい条件が備わっていることも見過ごせません。
くびの内側には頚椎、筋肉、神経、血管、さらに食道、気管と、重要な器官がぎっしり押し込められています。そのうえ、重い頭が上からのしかかっているので、どうしても血液の流れがとどこおりやすいのです。
ここで、もう一度、背骨の生理的わん曲のことを思い起こしてください。頚椎は、前方にややふくらんだ形をしています。この形が保たれていれば、くびにかかる負担は最小限ですみ、肩こりそう簡単には起こりません。ところが、最初から姿勢の悪い人は、普段からくびの筋肉が緊張しているため、ちょっとくびを動かしただけで、たちまち肩がこってしまうのです。




7つの関節の協同作業で肩は動く
人間が二本足歩行を始めて以来、肩も大きな変化をとげました。直立と同時に人間は腕をぶら下げる姿勢をとりだします。
腕の重さは、体重の八分の一といいますから、体重の70Kgの人であれば、9Kg近くになります。これを、常時両肩から下げているのですから、よほど丈夫で強い筋肉が必要です。僧帽筋、三角筋など、強靭な筋肉が肩に発達しているのはそのせいです。
腕が自由になったおかげで、人間の関節の中で、肩関節の動きが一番大きくなりました。この動きは、実に7つの関節が組み合わされてはじめて行われるものです。
重いものを支え、運動範囲が広いと言う点では、くびと同じように、肩はもともとコリを起こしやすい条件にあったわけです。
くびと肩というふうに、ふだん私たちは分けて考えがちですが、ほとんどの筋肉、たとえば先ほどの僧帽筋などは、くびと肩の両方にまたがっています。
ですから、くびの疲れも肩の疲れも、同じように筋肉のコリ(すなわち肩こり)としてあらわれてくるのです。