若者よ 街へ出てナンパせよ
事の起こりは、某裁判所の掲示板での1スレッドであった。
おっさんは、それでもオスか? 待ってて、女の子が、ホイホイあっちから現れると本気で思っているのか? 一言、言っておこう。 TAKEX検事、君に関心を持っている人なんか、世の中には一人もいないのだよ。そう、一人も。 君が、何をしよーが、自分には関係ないことだからねえ。知ったこっちゃないわけだ。
君はたぶん、ナンパして恥かく事を恐れているんだろう。 しかし、心配無用。誰も君の事なんか関心ないんだから、恥も何もないのだよ。 君は、彼女が欲しいとかほざいてるけど、心の底から本当にそう思っているのか? 僕から見たら、とてもそうは思えない。 本当に心の底から彼女が欲しいと思ってるなら、テレビゲームなんかやってないで、漫画ばっか読んでないで、仕事なんか、ほっぽりだして、どーやったら彼女ができるのか、その具体的な方法を考えるハズだ。今まで、考えたことあるのか? 書店に行けば、いくらでもナンパの達人の書いた「ナンパのハウツー本」がある。 君は、それを読んだことはあるのか? 男が欲しい女の子は、どこに集まっているかを具体的に考え、そこに足を運んだことはあるのか? そんなこともせずに、ただただ彼女が欲しいなどと、ほざくのは、単にウザイだけだ。
とゆーことで、まずは、自分はどのくらい彼女を欲しているのかを自問自答せよ。 本当の本当に自分は彼女を欲していいるのか? テレビゲーム以上に、彼女を欲しているのか? それとも、それ程の情熱はないのか? 仕事をほっぽってでも、彼女が欲しいと思っているのか? それとも、それ程の情熱はないのか? で、本当の本当に彼女を欲しているなら、ゲームをほっぽりだし、漫画をほっぽり出し、仕事をほっぽりだし、彼女をゲットする為には、どーしたらいいのか、その具体的な方法を考え、いろんな本で調べ、経験者に話しを聞き、戦略を立て、それを実行せよ。 方法も考えず、戦略も立てず、調べもせず、ただ待ってれば、あっちから彼女が来るなどとゆーフザケタ、世の中をなめきった男に、おとーちゃんは育てた覚えはないぞ? 時間がない等といった、ダメ人間の言い訳は聞きたくないぞ? (・・・・・全商品裁判所256階インターネットカフェより無断引用)
それは私のちょっとした書き込みに対するレスであり、その後も議論は続いたのだが、話のキモはこの書きこみであった。当然、私はナンパなどするキャラではない。この書きこみをした人もまた、ナンパなど想像できる人ではなかった。しかし、彼はやったという。それも二十歳をすぎ、人格が形成されてからのナンパ初体験をこなしたと言う。これは、すごい事である。ハンパではなく、スゴイ事である。高校生くらいの頃から、フツーにナンパしてたチャラチャラしたおにーちゃんならともかく、まったく女性に縁がない人生を送って来ながら、イキナリナンパにチャレンジするなど・・・並大抵の神経ではできない事なのである。今までの自分の全人格を無理矢理改造してしまっているのである。水中型MSで宇宙戦を行うようなもんである。
で、ある土曜日。その書きこみの張本人であるJ裁判長、同ページの常連であるV検事、そして私の3人で東銀座のマクドナルドでダベっていた時、再びこの話題が浮上した。
TAKEX 「やっぱ、ナンパなんて自分のキャラじゃないッス。慣れない事はしない方がいいッス。っていうか、今までそんな事考えた事も無かったし発想そのものが無いッス」
J裁判長「そーいった自分のキャラを超える時の面白さってのが、あるんですよ! はっきり言って、TAKEX検事よりも、僕の方が、ナンパってキャラじゃないっすよ!!」
V検事「面白そうじゃないスか。じゃ、さっそく今日やりましょう」
などとカナリ強引な流れで会話が進み、なんとその日のうちにナンパを実行に移す事になってしまった。
J裁判長の「君達はマンガ喫茶が向いているので、漫画喫茶でナンパしなさい」という神聖モテモテ王国のファーザーのようなアドバイスを受け、マンガ喫茶へと行く事になる私とV検事。
が、ここマクドナルドでもナンパは可能なハズである。周りを見渡すとさっそく女性だけのお客が。
TAKEX「裁判長、お手本にあのお客さんをナンパしてきてください」
というと、「いや、僕はこの後用事があるから」などとぬかし、夜の銀座へ消えていった。・・・おっさん、ホントにナンパした事あるんだろうな・・・。
しかし、今更あとへは引けない。「裁判長の目、裁判長の耳」と言われるV検事が同行しているのだ。二人でこのままメシだけ食って帰り、「嘘ナンパ レポート」でも執筆しようかと考えたが、それは無理な話なのである。ナンパといえば新宿であろう、との発想により、二人で新宿へ。ワザと時間がかかる山手線回りで行くあたり、二人の逃げ腰っぷりがうかがえる。が、30分でついてしまい、今回の戦場であるマンガ喫茶へと向かった・・・。
たかがナンパとお思いであろう。ナゼにナンパとお思いであろう。が、事は単純にナンパをするしないでは収まらないのである。ナンパを馬鹿にしているキミ、君はナンパができるか?もし今までした事が無かったなら、それは想像を遥かに超える世界であると言っておこう。成功・失敗以前に、チャレンジするのがこんなにも難しいとは予想だにしなかった。
突然話がそれるが、君は「熱いぜペンちゃん」というマンガをご存知だろうか。「カイジ」「アカギ」で有名な福本伸行氏の作品であるが、マイナー作品の為にほとんど知られていない。この作品の中で、やはりナンパに縁がなかった主人公達が、ナンパにチャレンジする話がある。「僕達は気弱三人組って言われてるんですよ〜〜」と泣き言を言いながらもナンパにチャレンジする姿は、今の我々にダブるものがある。そして、その話の中でもナンパをしようとするのだが、結局声すらかけられず時間だけが流れていく。そんな時、一緒にいた友が言う。
「・・なんかさ、ナンパとか俺達に向いてないんじゃない?自然にしてよーよ。無理に恥かく事無いよ・・・」
これはまさにその時の私の気持ちである。しかし、「やらない」なら良い。「できない」ってのはカッコ悪い。この二つ、他者から見れば同じでも本人にとっては雲泥の差である。しかも私は女性に縁が無く、合コンにも縁が無く、HPは大半の人がトップページで帰るし、こりゃもうナンパしかないという所まで実際追い詰められているのである。
さて、戦場であるマンガ喫茶「ゲラゲラ」へと辿り着いた。まさに今の我々を嘲笑うかのような店名である。さっそく入店する。
・・・・私とV検事の感想。「無理」
こんな図書館の様に静かな場所で、ナンパなどしようものなら全客の注目を集めてしまう。相手にとっても迷惑であろう。V検事はプレステを借りてプレーしだし、私はインターネットを始めてしまった。戦う前に敗北である。
このまま何事も無くおうちに帰れるかと思ったが・・・そうは問屋がおろさなかった。V検事が、「このまま何もしないのはつまらんです」などと超カッコいい事を言い出し、ついに動いたのだ!!しかしこの静かな場所で一体どうやってナンパを?V検事はPDAという武器を持っていた。ようするに電子手帳である。これに「今一人ですか?」などと書き、スッと相手に手渡すと言う。なんと近代的かつ合理的なナンパであろう!私はそのようなナンパアイテムを持っていなかったので、やむなく借りてきた「ミナミの帝王」に顔をうずめ、成り行きを見守る事にした。
・・・1時間後・・・。結局、ナンパには失敗し、V検事は帰ってきた。そう、「失敗」したのである。チャレンジしたのである。私は「ミナミの帝王」を読んで「農連はあくどいなあ」と思っていただけである。すでに私とV検事の間にはビートたけしとビートきよしくらい差がついてしまった。しかも、彼はナンパに目覚め、「楽しいです!」などとはしゃいでいる。そして、ナンパ第2ラウンドとして、ゲーセンに行く事が決定してしまった。
さて、ゲーセンにつく我々。が、 V検事はいきなりゲームを始めやがった。この男、最初っからゲームがしたかっただけではないのか!と思ったが、ナンパをしなくて良さそうな流れになってきたのでひと安心する私。が、ナンパ儀式をすでに済ませたV検事は良い。今だナンパ初体験を済ませていない私はどうなるのであろう。邪悪なJ裁判長のあざ笑う姿が目に浮かぶ。時間はもう終電が近い。が、なんとしてでもココで一発決めておかねば!たとえ失敗したとしても!!
ゲーセン内をフラフラしていると、さっそく手頃なターゲットを発見してしまう。二人組で、年のころは私と同じくらいであろうか。学生の様にチャラチャラしていなく、落ちついた感じではあるのだが、終電も近い新宿のゲーセンでなぜか二人でフラフラしている。これ以上ないほどヒマそうである。
なぜヒマならとっとと帰らないのか?・・・チャンスである。絵に描いたようなチャンスである。こりゃもう、声をかけるしかあるまい!・・・と思ったが。フト我に返り、自分の装備を確認してみた。「ぬののふく」。相手は「かわのよろい」あたりを装備し、バッチリ決めていると言うのに、こちらがこれでは声をかけられた相手も不快に思い、帰って日記に「今日のムカついた出来事」として書かれるやもしれぬ。
もっとも、相手にどー思われようがどー日記に書かれようがどうって事はないのだが、その時の私を思いとどまらせるのには充分であった。
そんな葛藤に苦しんでいると、ゲームを終えたV検事がやってきた。手頃な二人組がいる事を教えると、ナンパなれしたV検事、さっそく声をかけようとする。ちょ、ちょっと待て!!相手が二人組って事は、俺も行かなきゃならんのですか?
V検事「当然です」
・・・心拍数が一気にヒマラヤ山脈くらい上がり、なぜかキング・オブ・ファイターズの技表を真剣に見始める私。失望するV検事。ちょ、ちょっと待て!もしかしたら男のツレがいるかもしれないし、もうちょっと様子を見よう、ね?
というわけで様子を見る事になる。すると、彼女達は「タイピング・オブ・ザ・デッド」 を二人でプレーしだした。こ、これはチャンスか!?なにせ私も、このゲームになら自信がある。どちらかがゲームオーバーになったところで、「ここ入ってもいいですか〜?」などと言って乱入してしまえば良いのだ!(だいぶ不自然だが、向こうもナンパを求めてるっぽいのでセーフであろう)これなら、一人はまだゲーム中で逃げる事ができず、完璧な作戦と思われた。
・・・めちゃくちゃ上手い。1ステージをクリアした時点で、ダメージを受けるどころかライフを増やしている始末である。しばらく見ていたが、終わる気配ナシ。で、待っている私と言えば、もうめちゃめちゃ緊張しており、1秒が10年にも感じられる。ついに緊張に堪えられず、となりにもう一台あった「タイピング・オブ・ザ・デッド」をV検事を誘い始めてしまった。が、なんという運命のイタズラ。彼女達のうち、一人が瞬く間にライフを減らしゲームオーバー。しかもコンテニューする気もないらしく、残った一人が一人でプレーし続けるハメになっている(ライフは充分ある)。よっぽど、となりのV検事をほっといて乱入しようかと思ったが、極限まで不自然なので思いとどまる。オイオイ、どうする!?などと思っているうちに、残った一人もゲームオーバーになり、去っていく。そして入れ違いに入って来るカップル。
TAKEX「・・・やめない?」
V検事「・・・そうですね」
我々は始めたばかりのタイピング・オブ・ザ・デッドを、そのままにして立ち去った。
さて、もう終電がマジでギリギリである。V検事も「今日は帰りましょう」などと言いだす。って、君はもうナンパ体験したから良いかもしれんが、私はどーなる!このまま帰ったのでは、裁判所の皆にカッコがつかんではないかッ!!・・・って、この時間まで指をくわえて見てたのは自分だけどさ・・・・せめてラストチャンスを!!今度こそチャレンジしますから〜!!
やはり、先ほどの二人組が最もねらい目と言う事で、再び探すと、すぐ見つかった。また二人でゲームしてる。っていうかもう終電だと言うのに、彼女達は帰らなくて良いのだろうか。見たところ普通のOLっぽいのだが・・・。
V検事「じゃ、(ナンパに)行きましょう」
TAKEX「ちょちょちょちょっと待って!!!!」この期に及んで見苦しい私。
TAKEX「い、今気持ちを落ちつけるから・・・・・・よし、い、行くか・・・!」
・・・すでにナンパされてました。
金髪の高校生風の、同じく二人組に。彼女達とは明かに毛色が違い、最初ッから4人グループであったわけではない事は明白。
が、4人でなんか盛り上がっている。その場で知り合った人間同士特有の、ワザとらしい空気と共に。
TAKEX「・・・帰ろっか」
V検事「・・・そうですね」
かくして、私のナンパ初体験は・・・いや、初体験をする事なく、その日は終わってしまった・・・。
「やっぱさあ、あの時、タイピング・オブ・ザ・デッドを俺らで始めちゃったのが最大の敗因だよね」
と言う会話を、その後の電車でV検事と256回くらいした。
この日ほど、自分をカッコ悪いと思った事はない。いくじなしだと思った事はない。勇気がないと思った事はない。
先ほど、「熱いぜペンちゃん」というマンガでも似たような話があり、ナンパを「もうやめようよ」と話すシーンがあると紹介したが、それには続きがある。
隣で飲んでるオヤジに、いきなり絡まれてしまうのだ。
「おめえら・・・今、恥かかなくってどうする?今のうちに女に声かけるでもなんでも恥かいておかなくてどーすんの!俺くらいの年になると辛いぞー恥かくの・・・ムチャクチャ臆病になるぞ・・・。」
で、ペンちゃん達は再びナンパ戦線に復帰する。否、断られる段階にもロクに行かないので、戦線復帰と言うには語弊があるのだが。それでも、彼らにとっては「声をかけようとする」事すらすでに戦いである。終電も終わり、彼らは新宿でナンパをしようとしながら夜を明かす。ペンちゃんは言う。
「世間は恥知らずとか言うけどさ・・・正直だと思う・・・自然だと思う・・・それはごく正常な感覚だと思うんだけど・・・」
だが結局ナンパはできず、次のような文章が綴られ、その話は終わる。
「でも・・・それからも相変わらず後姿を見送っていただけだった気がする・・・・
どうしてだろ・・・どうして恥ずかしいのかな・・・ 」
今更失うモノがある自分でもない。恥をかくのをおそれるほどタイソウな自分でもない。何かを失うワケじゃない。
それでも勇気がでないのは、やっぱり自信がないからだ。
そして私も、23まで生きてきて結局何も築けなかった。
何も結果を出せなかった。
23と言えば、それまで何かをやってきていれば充分結果が出ている年齢である。
別に世間に有名にならないまでも、特技の一つや二つは身につけている年齢である。
私は何もやってきてはいなかった。
そのツケが、今、こんなカタチで回ってきていた。
いや、こんなカタチで気付かされていた。
ナンパにチャレンジすらできなかった帰り道、そんな事を考えていた・・・。
・・・じ、次回こそはッ!!!
注釈:
※某裁判所・・・私が2年前からお邪魔しているサイト、「全商品裁判所」の事。いわゆる腐れ縁。
※J裁判長・・・「全商品裁判所」の管理人。何気に社長のスゴイ人。それより、このパッとしない外見でナンパをしていた事のほうがスゴイ。
※V検事・・・「全商品裁判所」の常連の一人。ここでの風習で、訪問者は「検事」の肩書きで呼ばれる。彼もパッしない。
※私・・・そしてもちろん私も当然パっとしない。これほどナンパに無関係な三人はなかなかいない。
※「神聖モテモテ王国」・・・週間少年サンデーで連載中のナンパ漫画。・・・どこがだ。だが、私とV検事をファーザーとオンナスキーだと思って読むと今後の我々が忠実に再現できると思う。
※「熱いぜペンちゃん」・・・凄まじくマイナー。しかし、人の心理を鋭くえぐる福本節はここでも炸裂。福本作品とは思えぬほどカッコ悪い漫画だが、読むとなぜか泣けます。
※女性に縁が無く・・・よく考えたら男性にも縁は少ない。ようするに友達が少ない。
※ミナミの帝王・・・主人公がぜんぜん活躍しない話でも主人公が見開きで叫んだりしてる。ある意味かなりすごい。
※キング・オブ・ファイターズ・・・格闘ゲーム。当然、やったことない。
※「タイピング・オブ・ザ・デッド」・・・かなりお馬鹿なタイピングゲーム。いっつもカップルがプレーしてるので、いつか爆弾をしかけようと思う。
※V検事を誘い始めてしまった・・・このゲームを野郎二人でプレーしている姿はかなりレア。っていうかいろんな意味で終わり。