ボルネオ日記 <前編>

 それは、私が大学二年の時であった。ある日、 高校以来の悪友であるトヨから久々に連絡がある。「伊藤君、マレーシア行かない?」
ほえ?なぜいきなりマレーシア?話を聞くと、マレーシアのボルネオ島には、東南アジア最高峰の山、コタ=キナバル山があるという。標高4101メートル、富士山より高い。まあ、夏休み、特に予定もないし。行くか、とアッサリ海外旅行が決まってしまった。

★一日目

 いよいよ、日本を旅立つ時がやって来た。と言っても9泊10日だけだが。 トヨとは早朝に上野で待ちあわせる。 まだ待ち合わせ場所には来ていないようだったので、トイレに行ったらトヨはいた。 幸先の良いスタートと言えよう。
  さっそく、スカイライナーで成田へ向かう。これから10日間は日本へ戻れないのだ。 忘れ物など無いか、チェックせねばいかん。 と思ったら、さっそく忘れ物がある事が判明。 水着をもってきていない。 泳ぐ事など無いので水着など不要かと思ったのだが、 向こうでは温泉に入るのに水着がいると言う。 これは不覚である。まあ、なんとかなろう。
  成田空港につく。出国の時は近い。 出国手続きその他の為に並んでいたら、トヨの大学の友人達に出会う。 女性の4人組であったが、モスクワやトルコに行くと言う。 本格的である。我々が向かうマレーシアなど初心者向けのように思え (実際私は初心者であるが)、なんか負けた気になる。
 彼女達が、以前の旅行で撮ったという写真を見せてもらう。・・・なんか、戦闘機みたいのが間近に写ってるんですけど?
「なんか、外国の人は女性に甘いから撮ってもらっちゃった〜軍人さんに。基地の側で。」
・・・聞くと、ロシアでの写真らしい。もうだめだ、ロシア。

 出国審査を済ませ、飛行機に塔乗する。 夕べあまり寝ていなかった私は、すぐに爆睡してしまった。 フト目を覚ますと、トヨがアイスを食っている。 なんだ、そのアイスは!! 聞くと、さっきスチュワーデスが配っていたと言う。 何!?俺も食いたい。 しかし、わざわざアイスの為にスチュワーデスを呼ぶのも気が引ける。 ここは我慢する事にしたが、マレーシアについたらまずアイスを買おうと心に誓う。
 現地時間で午後3時、マレーシアのコタ=キナバル空港に到着する。 ついに私も外国デビューである。正確には昔家族でハワイに行ったが、細かい事は気にしない。
 まずは、入国審査を受けねばならない。 しかし、ちゃちい空港である。 さすが東南アジア最後の秘境と言われるボルネオ島だけの事はある。 入国審査の列に並ぶ。見ると、みな荷物の中までチェックされている。 さすがに厳しい。 いよいよ我々の番である。 と思ったら、さっさと通れ、のジェスチャーが。 へ?俺達は調べなくて良いのか!? どうやら我々の格好はマレー人から見ても貧相らしい。 ボロボロのザックを背負っていては無理も無いが。

 ふと、突然、日本人女性に声をかけられた。 見ると結構キレイな人である。 ボルネオ島にはダイビングに来たと言う。 おそらく、タクシー代を安く済ませる為に一緒に行きましょう、と誘ってくれたのだろうが、 我々はいきなりの出来事に動揺してしまい、「あわあわあわ」と適当にあしらって逃げてしまった。 初めての外国の出来事だ、緊張するのも無理も無いと思うが、惜しい事をしたと悔やむ。 ・・・・あれから4年、私はあれ以来女性に声をかけられた事はない・・・
  とにもかくにも空港を出る。 さあ、ここからは本格的に外国である。 まずは街まで行かなければならないのだが、行き方が分からない。 タクシーで行く事は分かっているのだが、どうやって乗るのかサッパリである。 見ると、学生っぽい日本人の女の子が二人、うろうろしている。 丁度良いので、声をかけてみることにする。 が、適当にあしらわれて逃げられてしまった。 人にした事は自分に返ってくると言うが、ものの5分で返ってくるとは思わなかった。

 なんとか市内へ行くタクシーを捕まえ、乗る事に成功。 が、運転手が話す英語がサッパリ分からない。 私もトヨも英語は中学二年生クラスである。 適当に「いえーす いえーす」とごまかしていたら、話しかけてこなくなった。
 コタ=キナバル市につく。なかなか良い街であるようだ。 さっそく一息つきたいが、予定していたホテルは遠いようだ。 疲れていたので、側にあったホテルにチェックインする。 ホテル代は70リンギット、日本円にして3000円くらいであった。
  さて、ホテルと言っても食事が出るわけではないので、さっそく市内に食料探索に行く。 ヤオハンデパートがでかかったので、そこへ行く。 なかをうろうろしてみると、いたるところで「ドラえもん」や「セーラームーン」を見かける。 なるほど、やはり日本のアニメはアジアで人気らしい。 マレーシア独特のキャラはまず見なかった。
 食事はさっそくマレーシアならではのものを食したかったが、 メニューがよく分からないのでファーストフードですませる。 ホテルに戻り、今後の話をする。 ああ、ついにボルネオ島に来てしまった。 明日からどんな冒険が待っているのであろう!? 

 ★二日目

 朝7時に起床する。 日本では考えられない起床時間であるが、 今日は朝一でマレーシア空港のオフィスへリコンファームをしに行かなければならない。 通常、リコンファームは電話で良いのであるが、我々は英語がサッパリの為に、 直接マレーシア航空のオフィスへ行く事にしたのだ。
 カラムシンコンプレックスにある、マレーシア空港のオフィスにつく。英語はサッパリであるが、直接話せばなんとかなろう。・・・なんとかならない。じぇんじぇん受付の人とコミュニケーションがとれない。で、なんとか「リコンファーム」という単語が伝わり、用件は無事済んだ。今更ながら、英語を喋れずに海外に飛び出てしまった事を恐ろしく思う。
 ホテルに戻る途中、ヤオハンの地下で食事。ピラフとコーラを頼み、一人110円くらい。安くてうまい。

 その後も街をフラフラした後、ホテルに戻る。と、ホテルのロビーで日本人と遭遇。見たところ20代なかば、といった感じの青年で、話してみるとちょうどコタ=キナバル山に登ってきたところだという。おお、これから我々も登ろうという時に、まさに天の導きと言えよう。さっそく感想を聞く。
「もう、キツイのなんのって!一緒に登ったフランス人なんて、もう泣きそうになってたよ。俺は去年ヒマラヤに登って来たけど、それよりキツかったね。」
・・・は?ヒマラヤよりキツイ?なにそれ?トヨくん、聞いてないよ俺は!!っていうか、無理じゃん!俺らに!
  しかし今更泣き言を言っても始まらない。明日にはもう我々はコタ=キナバル山に出発するのだ。

 その後、明日の登山に備えて地元のスーパーで買い出し。しかし、こっちのデパートとかスーパーはゴチャゴチャしてる。アメ横が丸ごと建物の中に入ったみたいだ。私は甘いものに目がないため、ちょっと高級なチョコレートを奮発して買う(自分で食うために)。で、スーパーから出て帰ろうとしたら、なんと店員がダッシュで追いかけてくるではないかッ!!え!?なに!?俺、なんか悪い事した!?別にやましい事はないのだが、つい逃げようとしてしまう。が、その人は私がレジに忘れたチョコレートを届けてくれたのだった。ううむ、異国の地で心温まるエピソードである。っていうか、チョコ忘れるなよ。異国の地で油断しすぎな私。しかし、同行者のトヨなど、インドに旅行した時にパスポートをタクシーに忘れたほどのツワモノであり、だめだこの二人。

 さて、そろそろ晩飯の時間だ。せっかくだから、こっちの日本食を食ってみよう、という事になる。さっそく日本食レストランを発見。店名は・・・「有名だ」。何がどう有名なのだろう。なんか入るのがためらわれるネーミングだったので、ここはやめる。怪しすぎるぞ「有名だ」。
 で、ヤオハン地下にあった日本食の店へ。・・まずい。しかも高い。コーラが4リンギット(170円くらい)ってどういう事だ。ボラれた気がする。

 さて、メシも食ったし・・・うむ、夜の街、とくれば、やはりエロであろう。さっそくトヨと夜の街を物色する(すげえ危ないので絶対マネしないでください)。・・・ない。エロ関係が、まったくみあたらないのだ。そういえば、こっちにきて本屋やコンビニを何軒か見たが、エロ本関係は見かけなかった。ううむ、やはり宗教的な事情なのか、エロには規制が厳しいらしい。日本はエログッズに関しては世界トップレベルだというからな。よくぞ日本に生まれけり、と思う瞬間である。

 ホテルにて寝支度。ついに明日はキナバル山である。緊張のためにハイテンションになっていたのか、なぜかトヨを相手にストリップショーを披露する私。トヨが大喜びだったので、私も思わず張りきってしまう(想像しちゃった人、ごめんなさい)。まあ、旅の恥はかき捨てだ。と思ったら、この男、しっかり私の痴態をカメラに収めており、家族に見せたりしていた事が後日判明。あのネガはいつか葬らねばなるまい、と今思った。

★三日目

 朝、七時起床。夕べは深夜までふざけていたので眠い(馬鹿だ)。さて、ここからキナバル山まではバスだ。バス、と言っても個人レベルの車で、タクシーみたいなものである。「地球の歩き方」によると、この街からキナバル山までは12リンギット(500円くらい)くらいだが、旅行者はボラれやすいので注意!とあった。フラフラしてると、さっそくバスの客引きが!そして値段交渉開始!さて、いくらふっかけてくる!?
客引きのオヤジ 「10リンギットでどうだ?」
・・・いきなりガイドブックより安くふっかけてきやがった。ちょっと待てコラ!少しはふっかけてこいって。我々はニホンジンだぞ!?
まあ、安いのにこした事はないので10リンギットで交渉成立。が、このオヤジ、客を詰め込む詰め込む。あっというまに満員電車みたいになった。しかも、パラッパラッパーの2面みたいな運転だ。明かに制限速度はブッちぎっている。何回か死にそうになる。

 生きた心地がしないまま、キナバル山にのふもとにつく。ここ、キナバル山は国立公園であり、入り口でホテルのようなチェックインをする。そして、ここで再び言葉の壁が立ちふさがる。何言ってんだかわかんねえ。もう、情け容赦ない英語の嵐(あたりまえだ。っていうか英語なだけ優しい)。ちなみに、キナバル山に登るには英語で申しこみをしなければならないのだが、なぜこのボンクラ二人が申し込めたのかというと、トヨの彼女のKさん(英語ペラペラ)に代筆してもらったからなのであった。Kさんにはお世話になりました。
  アセだくになりながらも、なんとかチェックインを済ませ、今夜我々が泊まる山小屋を教えてもらう。・・・受付の建物から1キロ近く離れている。ここを何往復もしたのだから、今にして思えば若かった・・・。

 夕方、ヒマだったので公園内をウロウロし、川を見つけたので遊ぶ。トヨはヒルに足をかまれていた。この男、山岳部時代にもスズメバチに襲われたりしていた。何か自然界を怒らせるものを持っているのかもしれぬ。

 夜、山小屋にて就寝・・・と思ったら、虫がすげえたくさん飛んでて寝れない。殺虫剤が置いてあったので、そこら中にまく。・・よく見ると注意書きが。「do'nt spray into air」・・・見なかった事にする。
 さて、明日からいよいよ、東南アジア最高峰のコタ=キナバル山に登り始めるのだ。果たして、大学に入ってからロクに山にも登ってない二人に登れるのであろうか?不安を胸に、しばしの眠りにつくのであった。

続く
・・・って、次回で終わるのか?これ
三回もやったら読む方も書く方も飽きるので、終わらせるけど

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