ダメ人間列伝

 さて、諸兄は漫画などで「ダメ人間」というとどんなキャラを思いつくだろうか?「モテモテ王国」のファーザー?「かってに改蔵」の地丹?「アゴなしゲンと俺」のゲンさん?「破戒録」になってからのカイジ?あるいは有名どこでのび太くんとか?
 まあ、いろいろ思いつくかと思われるが、今回はそんなダメキャラ達の中から、特に私の気にいった、キラリと光るダメ人間たちを紹介したいと思う。

1.ビッグラバー

 知る人ぞ知る、島本和彦の名作「ワンダービット」の登場キャラ。島本漫画にはいろいろと極端なキャラクターが多く、ある意味ダメ人間の宝庫なのであるが、今回紹介するこのビッグラバー、実はダメ人間というには少々語弊がある。なにせ知力・財力・権力・ルックスと持ち合わせており、非の打ち所の無いイイ男なのである。だがしかし!彼は正直すぎた!正確に言うなら、「彼の思想が人の欲望に正直過ぎた」。
 人は常に正直であれば良いというわけではない。時として、自分を作り、周りの常識に合わせねばならない。ただひたすらに己に正直なだけでは、社会不適合者となってしまうだろう。その例に漏れず、彼もまた、トップクラスの素質がありながら女にモテなかった。やがて彼は、「女にモテない」を理由に犯罪に走る様になってしまう。哀しい!!哀しすぎるぞビッグラバー!!でも、それは立派なダメ人間だぞ!!

「ワンダービット」
作者:島本和彦 より

 

2.鉄郎

 ヤングマガジンにて好評連載中の「おやすみなさい」の主人公である。フルネームは上野鉄郎。
 彼はダメだ。かなりダメだ。さとう珠緒のヌードが載った週間ポストを買う為に毎日貯金してるくらいダメだ。 毎朝早起きして、町内をエロ本を求めてさ迷う「エロロードワーク」を日課にしてるくらいダメだ。 そして自分がSPEEDの五人目のメンバーになり活躍する様を妄想して時間を潰したりもしている。ここまでダメな人間もなかなかいないと言えるだろう。
 だがしかし!彼はそんな自分をダメだとは思っていない。そして前向きな努力までしている。テレクラの素振りを毎日行い、テレクラの達人となり「フェラーリ」と呼ばれたりしている(でも女のコと会話はできない)。その努力の方向性はいつもカナリ間違っているのだが、彼はいつもそんな事を気にはしない。問題意識といったものが欠如しているとしか思えない。

 しかし、回りに常にバカにされ続けながらも、自分のしてる事に疑問を持たない彼は、ひょっとしたらスゴイのかもしれない。実際、彼の前向きさに助けられ、救われている人たちも漫画の中に多く登場する。鉄郎本人が気づく事はないのだが、彼の存在は人知れず人を元気付けているのである。我々読者達もまた、彼に救われているといえるだろう。
 だが、そんな彼にシアワセはやってくるのだろうか?彼はモノスゴク優しいし、いいヤツではあるのだが、それを無効化してあまりあるダメさを彼はもっている。彼の毎回の不幸っぷりは見ていて清々しいほどだが、それらの不運も彼がその正確から招いていると言わざるを得ない。
 エロにそのエネルギーを奪われ続けつつ、それに気がつかない鉄郎。彼に明るい明日はあるのだろうか?

「おやすみなさい」
作者:小田原ドラゴン より

 

3.土用波うねる

 片山まさゆきの最高傑作、「レッドカブラ」の登場キャラ。昨今の大学生のダメっぷりをここまでリアルに表現したキャラは他におるまい!だがこの漫画、売ってねえんだ!作者自身が「漫画専門店を100店回っても見つからないでしょう」というだけあって、この漫画のコミックスはかなりちょっとしか刷ってないらしい。で、私は奇跡的に全三巻すべてを持っていたのだが、以前、ネットの知り合いに貸したら直後にその彼が音信不通になり、帰ってこなくなってしまった。
 頼む!!「レッドカブラ」を奇跡的に本屋で見かけた方!TAKEXまで是非ご一報をッ!!

4.すげこまくん

 彼もヤンマガのキャラだ。当然と言えば当然だが、ヤンマガにはダメなキャラが多いようだ。すげこまは永野のりこの傑作、「GOD!SAVE!THE!すげこまくん!」の主人公である。
  ダメ人間の二大要素と言えばなんだろうか?私は「被害妄想」と「事故嫌悪」だと思っているのだが、彼はこの二大要素のどちらもトップクラスだ。そしてなぜか最高水準の技術力と科学力、軍事力を個人で所有しており、そのエネルギーは彼の担任である松沢先生をいじめる事だけに使っている。

 彼はこの世の全てにムカついている。世界の全ては自分を嘲笑し、拒絶するのみの存在だと信じて疑わない。そしてあらゆる事象は被害妄想へとつながり、有り余るパワーでもって暴走するという、まことに困ったちゃんなのである。
 だが、その被害妄想がいちいち他人とは思えないのである。「ああ、あるあるそう思う事!」とダメ人間なら誰でも感じた事のあるソレを、すげこまは我々と同じように感じ、世間に復讐してくれているのである。

 また、この漫画には他にも多くのダメ人間たちが登場する。すげこまと同じく世界を敵視し、アレな野望を抱く超自己中女ミナヨ、自分はカスで無能で何の意義も意味もないと信じるヨシオ、激しい自己嫌悪で自分を常に傷つけているキタハラ、 藤江田に尽くす事に無上の喜びを感じるマゾのムラタ、酒とクスリに逃げるらりぱっぱキムラ・・・他にも何人かいた気もするが、ここまでバラエティに富んだダメ人間たちが出てくる漫画も他にあるまい。

 まわりの人間たちとちょっと違った感性を持ってしまった故に、まわりに馴染む事のできないダメ人間たち。すげこまはそんな自分達の事を「人間もどき」と表現した。そして高校入学のおり、「もう、うまくやろうなんて思わない」事を決意したのだった。
 そして世界に心を閉ざして行くのだが、彼には完全に心を閉ざしきれない理由があった。それが松沢先生だった。もちろんそれを表に出す事は絶対にしないのだが、彼は松沢先生にかまって欲しくて結局学校に来て、トラブルを巻き起こすのである。
 そういったマイナス方向でしか他人と関わる事のできない、コミュニケーション不全なダメ人間の特性を見事に描ききっている作品だと思う。それはラストエピソードで特に思い知らされるのだが、なかなか売ってないので全12巻を集めるのは難しいかもしれない。でも集める価値アリの作品である。

「GOD!SAVE!THE!
すげこまくん!」
作者:永野のりこ より

 さて、いかがだったであろうか。割とマイナーどこから引っ張ってきたので、知らないキャラばかりだったと思う。っていうか、ホントはもう何人か紹介しようかと思ったのだが、画像を用意するのが面倒だったのでこのくらいにしておく。
 しかし、私の本棚をあえて見直してみると、ダメキャラの出てくるダメ漫画が多い事に気づく。普通、普通に漫画を集めたらカッコいいキャラやどすげえキャラが活躍する漫画が本棚を埋めるだろうに・・・。自分でも意識しないウチにダメなキャラ達に引かれ、そういった漫画を集めてしまっていたのだろうか。しかし私もこういったダメキャラたちに何度励まされて来た事か分らない。ダメキャラ達に栄光あれ。ないと思うけど。

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