そして夜の扉が開く
最近、露悪趣味もいい加減にせえ、とのご指摘を受ける事が多いのだが(妹から)、どうも一度書くと決めりると書かないと気が住まない性分らしい。前にやろうとしてやめたのに、結局書く。今回のテーマも相当微妙なのだが、これ書かないと私の自伝としては不完全であろう、と思うので、書く。(他にも「窓の無い部屋の天使達」の後、「素人童貞なんスか?」と二人くらいに言われてちょっと切なかった、っつう理由もあるが。)ま、駄文ももうすぐ終わりなので、我慢してお付き合い願いたい。
今から5年ほど前・・・私が大学一年の頃の話である。私は、某ファミレスでバイトをしていた。ファミレスで、野郎のバイトといえば普通はキッチンへ回される。が、なぜか私は接客をしていた。私も、最初はたぶんキッチンだろうと思って店に面接に行った。が、なにをどう間違ったかフロント(接客)に回されてしまった。ロレツの回らない私が接客!?じゃあキッチンなら向いてるのか、と言われると向いてないのだが(なんでも駄目)、それでも接客よりゃマシだろ、と思った。
ようするに、その時人手が足りなかったのがフロントの方だった、というだけの話なのだが、これがまたこの職場環境を大きく左右した。そう、基本的に、ファミレスではバイトは男→キッチン、女→フロントへと回されるのである。と言う事は、野郎なのにフロントに回されるとどーなるかっつうと、ウハウハ状態。大神隊長状態。Pia★キャロットへようこそ!状態になるのである。
でもまあ、あーゆーのって漫画やゲームだから可愛いコばっかだけど、実際はそんな事ないでしょ?と思われるかもしれないが、そーでもなかった。可愛いコ多かったんだよね。マジで。うーん、俺も昔は恵まれた環境にいたんだなあ。とシミジミ思う。
が。そんな恵まれた環境を、私が活かせるハズもなかった。当然、「石ころ帽子」を初期装備で身につけているのび太状態。最初妬んでいたキッチンの野郎どもにまで安心されてくる始末。しかし、当時の私は今のように焦燥感にかられてもいなかったので、本人はそう問題だとも思っていなかった。
そんなこんなで、バイトを続けて半年ほどたったある日。そう、あれは正月明けで大学は冬休みの時期であった。あるバイトのコ・・・と言っても私より三つほど年上だったが・・・に、「今夜、部屋に遊びに来ない?」と誘われる。彼女は、私とはよくバイトの時間が同じになる人だった。その人はお世辞にも可愛いとも、スタイルがよいとも言えなかったが、話しやすい人で、私も何度か彼女と遊んだ事があった。
そしてその日、私は特に断る理由もないので彼女の部屋へ行った。彼女は一人暮らしで、その部屋はバイト内では溜まり場となっている場所だったので、私も、普段遊びに行くよーな気持ちで気軽に行った。ただ、その日はちょっといつもと違った。私と彼女と、二人しかいなかったから。
その夜も、いつものよーにゲームをしたりして適当に過ごしていた。彼女は、泊まって行けという。が、当時私は、「新スーパーロボット大戦(私の人生における最重要事項)」にハマっており、拒否する。とっとと帰って地球を救わねばならぬ。では、今しているゲームでアタシが勝ったら泊まっていけ、という。ゲームは「いただきストリート2」。フ、私は「いたストたけちゃん」と呼ばれてもよいほどの(呼ばれた事はないが)いたストマスター。それがちょっとかじっただけの女に負けるはずがなかろう。
と思ったのだが、負けた。なんとお約束な展開。っていうか、私ほどのマスタークラスともなれば、勝負の結果などいかようにも操れるので、無意識のうちにワザと負けたのかもしれん。今にして思えば。
約束通り泊まる事にする。で、ふだんはザコ寝なのだが、同じフトンで寝ろと言う。へいへい、ここまで来たらおとなしく流れに任せる事にする。
・・・あとはまあ、想像に任せる。と書くと、「そうか、この日、童貞を捨てたのか!」と大半の人は思うと思うのだが、実はこの日はまだ捨ててなかったりする。いや、ちゃんとそういう流れにはなったのだが、私の肉体的な欠陥の為にできなかった。ま、できなかったのだが、ある一線を越えたのは確かだった。
私と彼女はその後、付き合ってるような付き合ってないような関係となった。というのも、私は別に彼女の事を特別に思ってなかったし、彼女の方も地元(東北)に彼氏がいたのだった。ただ、そーゆー関係はその後も続いて、何度目かのチャレンジの時、なんとか「達成」する事ができたのだった。
その後、彼女は田舎へ帰っていった。それが一月の末だったから、考えてみれば恋愛ごっこは一ヶ月にも満たなかったし、終わってみれば一過性のアクシデントのようなものだったと思う。ちなみに、彼女とはそれ以降会っていないし、連絡もとってない。っていうか、もうお互い連絡先は分らない。もう5年以上前の話だが、私の「体験」はこれが最後だった。
さて、当時19歳だった私は、念願の「初体験」を済ませた事で、スッカリ浮かれていた。ま、思ったより何てことなかったな、くらいに思っていた。特に変化もないように思えた。だが、実は大きく変化していた。当時の私は、自分が「夜の扉」を開いてしまった事に気がついていなかった。孤独で暗い扉の向こうに自分が入ってしまった事、その事に気がつくのは、もっとずっとずっと後だった。その世界には、明りが無い。だから、自分で明りを探さなければならないし、または自分が誰かの明りにならねばならない。誰かと寄り添わないと、何かに身を寄せないと、闇に呑まれてしまう。それは、一度人の肌を知ってしまった者の宿命。自分の弱さと言うものを思い知った者の、宿命。あるいは、それを強さに変えていけた者だけが、闇を克服できるのかもしれない。
そこは、今まで生きてきたのとは違う世界。そりゃそうだ。今まで知識としてしか知らなかったモノ、自分には無関係だったモノが、今自分が生きている世界では普通の事なのだと、「知識」ではなく「感覚」として知ったのだから。「普通」が変わった、文字通り「世界が変わった」のだ。しかし、一度闇に呑まれないと、自分が闇の世界にいるという事にすら、気がつかない。自分の世界が変わってしまっている事に、私は気がつかなかった。
当時の私は、単純に「世界が広がった」と思っていた。いや、もっと正確に言うなら、「これから広がる」と思っていた。まだ俺が知ったのはホンのさわり程度、これからオトナの世界に突入していくものと思っていた。が、現実はこの「さわり」で終了。オトナの世界は垣間見れただけ。「食」を知るという事は「飢え」を知るという事。一度「飛んだ」事があると、自分が「飛べない」事を思い知る。そしてただ、闇の世界に放り出されただけだった。
とはいえ、それでも彼女に感謝はしている。やはり、メリット・デメリット含めて、「知る」事は「知らない」事よりよいと思うし、それを教えてくれたのは彼女だ。そして、後にも先にも、私という人間を受け入れてくれたのは、彼女が最初で最後だった。そう、「受け入れて」くれたのは。私が、遠距離恋愛の代替品に過ぎなかったとしても。それは、私の為にリスクを背負ってくれた、という事だと思うから。
ただ、当時の私は、彼女を愛してはいなかった。それは申し訳無いが、仕方が無い。ただ、その後、私が人を愛したくてもそれが「受け入れられない」事に苦しむ事になるのだから、人生とはよく出来たものなのかもしれぬ。
そして私は、この五年の間に、さらに他人には受け入れがたい人間となっていった。愛だの恋だのは夢にも考えられない、名実ともにオナニストとなっていった。だから、一ヶ月にもみたなかったあの期間は、やはり私にとって特殊であり、特別な時だったのだろう。
そんな彼女に、今回の駄文を捧ぐ。