ゾンビ哀歌 〜兄さんと呼ばれた男達〜
人には好きなものいうのがそれぞれあるとは思うが、 拙は何が好きッてゾンビが大好きなのである。三度のメシよりもゾンビが好きである。 流石に「ゾンビがあればどんぶりめし三杯イケる!」とまでは言えぬがゾンビが好きである。
例えばの話、ゾンビ物のゲームがあれば購入してきた。 ハウスオブザデッドなどは相当やった。ヘボな腕前なので2丁拳銃でプレーしておると、 時々あの耳障りな笑い声を上げる2面のコウモリみたいな奴に負けたりもするが、 あのゲームは大好きである。今でも時々やっておる。もちろん2も。
先日ゲームキューブを購入したので、早速GC版のバイオハザードにも手を出したのであるが、 ここの所同じような3D視点のファイナルファンタジー11や、ファンタシースターオンラインに没頭しておったので、 その微妙な操作方法の違いという壁にぶち当たり、 いっちゃん最初に出てくるゾンビに2回連続で噛まれた事にブチ切れ、今では箱の中である。 本来ならばポチッと本体からCDを取り出しマンションの屋上から 元気良くフリスビーのよぉにドブ川へ投げ捨てる事により、 CDの中の一杯詰まっておるであろうゾンビ共をまとめて駆逐してやろうかと思ったのであるが、 生憎これは会社の先輩から借りてきたものゆえに断念を余儀なくされた。 少々残念だ。
ゾンビ物の映画などは見つけ次第片っ端からレンタルして鑑賞してきた。 まぁ・・・実際の所ほとんどのゾンビ映画というのは内容は似たり寄ったりであり、 とりあえず内臓ぶちまけとけばイイだろう、人間血ダルマにしときゃいいだろう、 とりあえずグッチャングッチャンにしとけば怖いだろうという風な作品ばかりであり、 ストーリーなど二の次という酷い映画が多いというのが実際の所であり、 拙の大好きな「ゾンビ」という材料をまったくもって生かしきれておらぬものばかりなのは 少々ゲンナリではあるが・・・。
しかし、中には一風変わったものもあるようで、 ブラジルだかメキシコだかのとある村に突然ゾンビの集団が来襲。 その村に住む少年が村を脱出して何故かプロレスラーの所に助けを求め、 そのプロレスラーは疑う事無く仲間を集めてその村に向かい、 ゾンビの集団をプロレス技でぶちのめし、少年は大喜びでめでたしめでたしなどという、 実に頭悪そうで面白げな作品もあるらしいのであるが、マイナーな映画らしく、 見た事が無いどころか、噂程度でしか知らぬ。タイトルも知らぬ、至極残念だ。 ジャイアント馬場さんなどがゾンビにココナッツクラッシュを敢行するシーンなどがもしあるのなら、 パソコン質に入れてでも見てみたいのであるが・・・もし知っておる人がいるならば是非教えて欲しい。
まぁ・・そんな話はさておき、拙はそれくらいゾンビが好きなのである。 いや、レベル的に言えば愛してるといっても良いかもしれぬ、 いやいやいや、それこそもう尊敬と畏怖の念を込めて「兄さん」と呼んでもいいぐらいである。
「今日も大変だね・・・・・・兄さん。」 「毎回毎回拳銃で打たれて痛そうだね・・・・・兄さん。」 「ああっ大変だ!銃で狙われてるぞ!気をつけろ!・・・・・兄さん!」 と。 いや、まぁ・・・こんな事を抜かしておると実の兄に殴られそうなのでこの話題は程ほどにするが。
ゾンビ・・・・。 ドラキュラやフランケンシュタイン、狼男や半魚人、数あるクリーチャーは存在すれども、拙はゾンビが一番怖い。 確かに個体戦闘能力で言えばゾンビの位置付けはぶっちぎりで低いところにあるという事は否めぬ。 ドラキュラのように空を飛んだりはせぬし、怪しげな術も使ったりせぬし、知能も低い。 フランケンシュタインのような凄まじい怪力を持っておるわけでもない。 狼男や半魚人のように素早い移動速度を持っておるわけでもない。 万が一、上記のクリーチャー達が睡眠薬によって眠らされ、ある無人島へ集められ、
「今からみんなに殺し合いをしてもらいまーす!」
という事でバトルロワイアルが開催された場合、真っ先に殺されるのは ゾンビか、またはビートたけしかのどっちかであるのは火を見るよりも明らかである。 一部例外として Return of the living dead(通称バタリアン)のゾンビに関して言えば 新鮮な奴はある程度の知能もあり、全速力で走ったりもするのであるが、 やっぱし馬鹿なことには変わらぬ。 バタリアン2でチラッと見かけたウヒャアアァァァ〜〜ッ!!!などと叫びながら 全力疾走で追いかけてくるゾンビというのは、見た目はドリフであるが、 わが身に置き換えてみればあれほど怖いものはないやも知れぬ・・・・想像するだけでも恐ろしい。 しかし拙の知る中では、そんな頼もしいゾンビは数ある映画でもレアであり、例外といわざるえまい。
ゾンビの起源とも言える Night of the living dead を作り出したジョージ・A・ロメロの作り上げた
「なんか無自覚」「なんか無抵抗」「なんか鈍い」
という三大原則は既に「お約束」と化し、後に作られたゾンビ映画のほぼ全ては 先ほどのバタリアンシリーズを除いてこの原則を守っておる。 大概のゾンビは全て、アーアー言いながら、例え片腕が千切れていようとも、這いずりながらでも、 たとえ撃たれても撃たれても、たとえフルチンであろうとも、 ただひたすらにカピバラ以下の知能で人間を食うためだけに襲ってくるのだ。 単純にノロノロと。ひたすらにアーアー言いながら。 相手がそんな連中だと言うのに何故か登場人物達はゾンビ達にやられてしまう。
何故か? それはゾンビの異常なまでの増殖力にあると断言して良い。 そしてゾンビの一番の恐ろしさというものもそこに付随しておる。 ゾンビに食われたもの、傷つけられたものは総じてその人間もゾンビへと姿を変えてしまう。 そのゾンビへと姿を変えてしまったものが人間を襲い、その人間もゾンビに・・・。 そんな倍々ゲームにて、ゾンビというクリーチャーは繁殖してゆくのである。 それがジョージ・A・ロメロの考え出した、上の三大原則に並ぶ、もう一つの決定的なゾンビの特徴であり、 ゾンビの真の恐ろしさがそこにある。 そして倒しても倒してもキリが無いほどに増えた軍団にて襲いかかってくるのであるのだから たまったモンではない。
そして「なんでこんなゆっくりした奴に追い詰められるんだ!!」という恐怖と、 「なんでこんなにゆっくり殺されるんだ!」という実に嫌な恐怖に襲われるのである。 ゆっくり殺されるという事ほど嫌なものは無い。
ジェイソンのように一思いにブスッと殺ってくれるほうがどれほどマシであろうか、 フレディは悪夢の中で「俺はフレディだァ!!」などと笑いながら悪戯に獲物を追いかけたりもするが、 いざ殺すときは案外あっけない。 ゾンビのよぉに生きたままに噛まれたり、腕を引き千切られたり、内臓を引きずり出されたりするのは まったくもって勘弁である。
例えばの話、極端なハナシではあるが、 「ジェイソンに殺されるのと、フレディに殺されるのと、ゾンビに殺されるのどれが良い?」 という質問があったとしようではないか。 とりあえず拙は間違い無く「全部嫌だ。」と即答するところであるが、 それがダメだとしたら、まずゾンビは勘弁である。 殺されるのは嫌であるが、生きたままゆっくり殺されたりするのはもっと嫌である。 そしてやはり自分自身もゾンビになってしまうなど絶対に勘弁である。
と、話題の中でジェイソンやフレディを持ち出してきたワケであるが、ふと気がつくことが無いであろうか?
何故ゾンビは人を襲うか?という点である。
ジェイソンもフレディも設定の時点から殺人鬼であるし、バックストーリーも確立しておる。 先ほど例に挙げたクリーチャー群で言えば、例えばドラキュラなんかは血を吸うためである。 半魚人や狼男は・・・知らぬ。ナマモノの思考など知った事ではない。 まさか人間達をゾンビへと変貌させて仲間を増やそうとしておるとは考えにくい。あの知能だしのう。 残念ながら数あるゾンビ映画でその点に触れている作品は非常に少ない。 ゾンビ=人襲う という安直な方程式によって、奴等はアーアー言いながら襲ってくるばかりである。
しかし、つい最近話題になった劇場版「バイオ・ハザード」において、その解答があった。 「なんで連中は俺達を襲うんだ!!」という主人公達の問いに対して、 秘密研究所「ハイブ」を統率する人工知能搭載のスーパーコンピューター「クイーン」はキッパリとこう答えた。
「ゾンビにはほとんど知能が残ってないから、 彼らは人間の根本的な欲望に従って動く・・・つまり食欲よ!」
なるほど納得である。食うために襲う!食うために殺す。 全ては人間の根源的欲求である食欲に突き動かされておるという事であるな・・・。 その食欲を満足させるために、ひたすらにアーアー言いながら連中は人間を襲っているという事であるな。 言われてみれば非常に簡単で安直な解答ではあるが、実際のところはそんなモンであろう。 奴等の腐りかけのヘッポコお味噌で難しいことを考えられるとは到底思えぬしのう・・。
しかし、実際のところ拙は完全には納得できぬのである。 「根源的な欲求・・・それは食欲よ!」とクイーンはおっしゃっておったワケであるが、 それは食欲だけに限ったワケはない、あと2個あるではないか。
人間の基本3大欲とは食欲と・・・睡眠欲と性欲があるのを忘れちゃおらぬであろうか。 そう、言わばひたすらにアーアー言いながら襲ってくるゾンビだけでなく、 たとえパイソン撃ちこまれても、ロケットランチャーを発射されようとも、 その人間の根源的欲求に身を任せ、
ひたすらアーアー言いながら意地でもに寝てるゾンビとか、 アーアー言いながらかたくなにヤッてるゾンビがいたって良いのではないだろうか。
まぁ・・・ホラー映画として考えるならば人間に襲いかかることなく、 ひたすらに寝ているゾンビなどという存在は、ただでさえ個体戦闘能力が低いのに人畜無害となれば、 それこそデブなのに貧乳とか、それぐらいの存在価値は無いやも知れぬが・・・。 そして性欲に身を任すゾンビというのは、存在的には凄まじく恐ろしいのであるが、 ヤる側にしてもヤられる側にしてもまったくもって災難極まる。 そして両方ともゾンビだった場合などは萎えない方がおかしい。勃つ奴は変態以外の何物でもない。 怖いコトは怖いが、万が一間違ってそんな映画を作ってしまっても、 ホラーでもAVでもないジャンルの映画になりかねぬ。 配給会社にどんなレッド嘘で言いくるめて買わせようにも誤魔化しきれまい・・・。 クランクアップの打ち上げで酒を飲んでおる俳優や監督達の、 なんだかやりきれぬ表情がアリアリと浮かんでしまうではないか。 ジョージ・A・ロメロやサム・ライミが、そんなゾンビの様々な可能性を考えたかどうかではないが、 彼らの未来はどうにも暗そうである。
結局の所、ゾンビは食うしかないのだ。 そして運悪く食われてしまい、自分もゾンビへと姿を変えてしまった奴も、やっぱり食うしかないのだ。 寝る事もヤる事もできずに、アーアー言いながら食うしかないのだ。 そうして考えると、あの恐ろしくも哀愁溢るるゾンビ達を見るたびに 今日も拙は親愛と畏怖の念を込めつつ語りかけてしまうのである。
「大変だね・・・・・・・兄さん」、と。
完 |