2008年2月(観劇順)

「春琴」 世田谷パブリックシアター+コンプリシテ共同制作 3月1日昼
「こんな奴ら。」 劇団山の手事情社 2007年度研修プログラム修了公演 3月2日昼
「屋上庭園/動員挿話」 2007/2008シーズン 新国立劇場 3月8日昼
「なるべく派手な服を着る」MONO 第35回公演 3月8日夜
「きみがいた時間 ぼくのいく時間」 演劇集団キャラメルボックス 3月9日昼他
「さらば、わが愛 覇王別姫」 原作:李碧華(リー・ピクワー) 脚本:岸田理生 演出:蜷川幸雄 3月22日昼
「罪と、罪無き罪」 リリパットアーミーU 3月22日夜他
「MIDSUMMER CAROL ガマ王子 vs ザリガニ魔人」 作:後藤ひろひと 演出:G2 3月29日昼


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「春琴」 谷崎潤一郎「春琴抄」「陰翳礼讃」より  世田谷パブリックシアター+コンプリシテ共同制作  世田谷パブリックシアター


演出:サイモン・マクバーニー

キャスト:
深津絵里/チョウソンハ/ヨシ笈田/立石リョウ子/宮本裕子/麻生花帆/望月康代/瑞木健太郎/高田恵篤/
本條秀太郎(三味線)


 いやぁ…なんか…すごい。

 本編?で十二分に引っ張り込まれて固まっていたのだが、ラストで(やや過大な表現だが)度肝を抜かれた。呆気に取られてしまった。

 光と闇が端麗にも妖しくも交錯し揺らめくような世界の登場人物達が白い彼方に消えていき、ざわめく現代の映像が降りてくる。
 その辺は美しいけれどさして目新しい気はしなかった。
 ところがこのざわめく"今"がそれまでの世界を覆い隠すと同時に下に置かれた三味線を情け容赦なく押し潰すのだ。
 一定の速度で降りて来る映像、ばりばりと無惨にひしゃげてゆく三味線…
 驚いた。


 美しい舞台だった。
 立石さんの声がいつの間にか空間の次元を変えてしまう。
 人形が恐ろしいくらい生きていて、佐助との絡み等は凄まじくエロティックだった。
 まあ、私はどうもこの手の人形、様式美的な動きに弱いので過大な感じ方をしている気もするけど。
 人形の動きを誰がどうされているのか、私の目ではN列からはよく見えなかったのだが、とても良かった。

 深津さんのお声がまた良い。幼少時の幼さと驕慢さ。夜長姫に通じる雰囲気でもあった。大人になると深みも出て、この方、やはり素敵だ。
 少年〜青年、壮年、老年、どの佐助もひたすら春琴に忠実で、エロティックなシーンですら一方で不思議な程清廉な印象も受けたりした。

 谷崎潤一郎さんの小説はどうも官能的と言うイメージがあって「春琴抄」も読んだことがないのだが、読んでみようと思った。

 おまけ。
 この回、立石さんが「揺らめく」のところで台詞が絡まってしまい、何度か言い直していたのだが、最後にラジオ収録と言う設定を上手く利用して「編集で何とかしてください。」  
 受け手の方も「あ、大丈夫ですよ。」
 流石である(笑)


「こんな奴ら。」 劇団山の手事情社 2007年度研修プログラム修了公演  アトリエ春風舎


構成・演出:浦弘毅 久保村牧子
監修:安田雅弘

キャスト:
下野雅史/藤田順子/安部みはる/氏家綾乃/浦浜亜由子/大浦孝明/
堀口愛美/星真哉/中田明佳/谷口葉子/米谷陽子/小栗永里子

 
 ショートコント、寸劇、ダンス、クイズ、漫才などいろいろなものを私には法則がわからない順序(笑)で組み合わせた舞台。「構成演劇」と呼ぶそうだ。
 
 山の手事情社の研修生さん達の卒論、と言ったところなのかな。
 なんとなく、以前に観た「ぴん」のように研修生さん達が一人ずつやるのか?と思っていたら、そういう訳ではなくて一人の場合も複数の場合もあった。

 なかなか面白かった。
 出だしはちょっとギャグ(ということではないのかも知れないけど)のネタ等がごく普通と言うか、今時の若者ばかりのわりにはありきたりと言うか…で大人しい感じがしてしまったのだが、後半に行くにつれてテンションも舞台の密度もどんどん上がっていった気がした。
 めちゃくちゃな演出つけて「じゃ、全部通すぞ!」と言うものは同じようなことをパルコで古田さん達がやってたけど(犯さん哉)、若者達の勢いとああいう海千山千な役者さん達の勢いはやはりそれぞれ違っていてそれぞれの魅力があることを確認した(笑) 
 
 山の手事情社、と思ってしまうと正直言って物足りない。
 もちろん研修生さん達の修了公演だと言うのは理解して行ったからそんなことは思わなかったが、いろいろなことを考えながら興味深く観てしまった。ちと方向性の違う見方をしてしまったかも知れない。

 いつも見惚れてしまう山の手の役者さん達の動き、身体の線が実際いかに普通からかけ離れて美しいのかを研修生さん達の動きを観ながら再確認したり、個人的には寸劇の方が良く見えて(シリアスなお芝居部分はかなり引き込まれた)、何というかコント系?って難しいんだ、と妙に感心してしまったり、様々なシチュエーションが出てくる構成にzupaや「お茶とおんな」がああだったのが改めて納得出来たりした。
 そしてダンスの組み込まれ方を見て、ふいにそう言えば安田さんも第三舞台にいた方なんだと思い、我ながら何故そちらに考えが飛ぶ?と呆れた(^^;



 ま、実は理由はある(笑)
 mixiの第三舞台コミュで、今、『あなたが見たい「朝日のような夕日をつれて」』というのが上がっていて、その中で、少年役の型を作ったという安田雅弘さんに”少年”をやって欲しいと言うのがあったのである。
 あの”少年”の型を作ったのが安田さんであるならば、この修了公演のような「構成演劇」が山の手で出てくるのがわかるような気がしてしまった。
 いや、もちろん勝手な思い込みです。大体、私は生の「朝日のような〜」は97年版を1回しか観てないし、その上で私の中で”少年”はビデオで観た小僧な京さんだったりするしね(^^;


「屋上庭園/動員挿話」 新国立劇場 2007/2008 SEASON  新国立劇場小劇場


 作:岸田國士
演出:
宮田慶子「屋上庭園」
深津篤史「動員挿話」

キャスト:
「屋上庭園」
並木:山路和弘
その妻:神野三鈴
三輪:小林隆
その妻:七瀬なつみ

「動員挿話」
宇治少佐:山路和弘
従卒太田:太田宏
馬丁友吉:小林隆
少佐夫人鈴子:神野三鈴
友吉妻数代:七瀬なつみ
女中よし:遠藤好


 ケラさんの「犬は鎖に繋ぐべからず」の時も思ったが、岸田さんってホントに凄いんだなぁ、と思った。
 いや、何を今更、なのだろうが(^^;)、私はケラさんのを観るまで知らなかったのだから仕方ない。

 どちらも良かったが、個人的にはやはり「屋上庭園」がより迫ってきた。
 ケラさんの時、並木さん役の植本さんに危うく落とされそうになった(笑)お話だ。
 そして今回の山路さんの並木さんも良かった。観ていて居たたまれなくなった。
 山路さんだけでなく、それを受ける小林さんの三輪さんも奥様達も皆様良くて、お芝居としてとても良かった。
 三輪さんが最後まで冷静に振る舞おうとしているのは今回の方が好き。
 並木さんや奥様の衣類があからさまに貧しく見えるのは判り易いけど、個人的にはちと直接的過ぎる気がした。もちろん単なる好みの問題である。
 好みから言えばラストの並木奥様の泣き方ももう少し抑えた方が好き。 この辺はおそらくケラさん版の刷り込みも多分にあるな(笑)


 「動員挿話」では、さっきと被る役者さん達の雰囲気ががらっと異なるのに感心しながら満てしまった。特に奥様二人。どちらがどちらだ?と最前列センターで観ながら悩むくらいだった(^^;

 お話も興味深いと言う意味でも面白く、状況は深刻なのについ吹き出してしまったりする所もあり、こちらもとても良かった。

 数代さんのとうとうと並べ立てる理屈をどう受け止めたら良いのか複雑な気分になった。
 また、ラストの方、よしさんの報告を聞いて立ち去る際の鈴子さんの表情が、悲しんでるのか、友吉さんを嘲っているのか怒っているのか、或は一種の満足感なのか、なんとでも見えるような気がしてぞっとした。
 太田さん、遠藤さんの時代の状況に馴染んで疑わない一般層っぽい明るさも、少佐夫妻、馬丁夫妻の張り詰めた雰囲気と対照的で良かった。

 いずれにしても岸田さんの戯曲を読んでみたくなった。


「なるべく派手な服を着る」 MONO 第35回公演  下北沢ザ・スズナリ

 詳細はこちら
 
 東京でも観て良かった。
 自分の理解力が追い付いたからかも知れないが(^^;、全体的にしっくり濃くなった感じで大阪で観た時よりずっと良かった。
 一二三さんを皆が認識するシーン等はあやうく泣かされそうになった。

 土田さんと山本さんのご夫婦の雰囲気が最初からちょっとコミカルになってたのや、一二三さんの服が色彩は派手なのだがかなり着古した感じなのは明らかに変わっていたと思う。
 そして客演の方々だけでなく、偽四つ子(笑)の息の合い方も進化してたし、MONOの皆様とは言え、やはり最初の頃は少し探っていたりもするんだ、と妙な感心をしてしまった(笑)


「きみがいた時間 ぼくのいく時間」 演劇集団キャラメルボックス  サンシャイン劇場


原作:梶尾真治「きみがいた時間 ぼくのいく時間」
(朝日新聞社刊 「クロノス・ジョウンターの伝説∞インフィニテイ」所収)

脚本・演出:成井豊

キャスト:
秋沢里志:上川隆也
梨田紘未:西山繭子
秋沢真帆:岡内美喜子
野方耕市:西川浩幸
若月まゆみ:温井摩耶
山野辺光夫:阿部丈二
佐藤小百合:渡邊安理
広川圭一郎:筒井俊作
柿沼純子:坂口理恵
柿沼浩二:岡田達也
柿沼英太郎:左東広之
萩原芽以子:青山千洋
栗崎健:三浦剛
12歳の紘未:小林千恵

 
 お芝居としてはとても楽しめた。

 2階席から観たのだが、キャラメルのお芝居はいろいろな意味で綺麗だと思う。2階から観て改めてそう思った。
 照明、音楽、役者さん達の台詞、動き。
 綺麗に整い過ぎていていい加減ひねくれている私なんぞには時として物足りなかったりしてしまうところもあるのだが、安心して観ていられる舞台だと思う。しょーもないギャグを受け入れるかどうかは好みの問題であろう(笑)
 今回オペラグラスも使わずに2階から観ていたので、多分年齢不相応な役(相当若いのにご年配の役をやってらっしゃる方がいたと思う)の外見も全然気にならなかったし(笑)
 
 上川さんはやはり舞台の方が魅力的だと思う。と言うよりテレビではほとんど観たことがないんだけど(^^;
  人付き合いの不器用な、でも根は純情な好青年から、一度失った妻を事故から救うために全てを投げ捨てて突き進む男、そしてもうすぐ命が尽きようとしている老人まで、思い切り率直に演じてらして素敵だった。
 ぶっきらぼうに入るギャグも妙に可笑しいんだよね、この方(笑) 
 妹さん役の岡内さんとのやりとり等、ホントに感情表現が苦手な兄と陽気でお兄ちゃんが大好きな妹のやりとりっぽくて良かった。
 そしてなんだか最近ギャグ(もしくは突っ込み)の矛先が達也さんに向かっていることが多くて、また達也さんが及び腰なんだか実は挑戦的なんだかよくわからないスタンスで立ち向かうのでなおさら可笑しい。
 そしてそんなことをやっていながら、真剣勝負になるとどちらも怖いくらいになるからさすがだ。

 ヒロイン紘未さん役の西山さんという方を私はよく知らないが、明るく可憐で素敵だった。
 個人的には芽以子さん(青山さん)がかなり好きだったかも知れん(笑) 元極妻でホテルのお掃除係? 
 他の役者さん達も素直に楽しく良かった。

 
 でも、お話としてはかなり引っかかった部分がある(^^; 
 理系だからか? 違うって(笑)(ここで(笑)なのは、観た人ならわかる。)

 (原作がそうなのだろうから、このお芝居としてどうこうと言う訳ではない。)
 タイムマシンで過去に戻って未来を変えてしまう点については置いとくとして、だったら、なぜ最初の展開で紘未さんと年老いた里志さんが会う必要があるのだ? 会ったのならその時点で事故のことは伝えられているはずで事故には遭わないはずでしょうに。過去に戻って未来を変えてしまうのだから、なにも最初の展開で会うシーンを入れる必要はない。むしろ会わない方がつじつまが合うだろうに。
 と言う点が、展開として一番引っかかった。 

 ハインラインの「夏への扉」みたいに、後ろで物音がしていたことまで全て過去と未来の展開が繋がっている、というような話なら必要だろうけど。(「夏への扉」はホントに緻密に組み立てられたお話だと思う。)

 もう一つ、浩二さんに対して何のフォローもないことも気になった。
 経営者としての才能はともかく明るく優しい青年だったのに、他人を傷つけるまでに追い詰められてしまった浩二さん。里志さんの行動によって変えられてしまった人生かも知れないのに、「その人生を選んだのは貴方だ。」で終わらせてしまって良いのだろうか。自分が過去に戻ることで他人を不幸にすることもある、ということまで自分の中で覚悟して里志さんは行ったかどうか、その辺の一種ダークな面は出てこない。

 キャラメルでそういう修羅な内面まで突っ込んでやっていたら、それこそ初の休憩時間を挟んでも足りないくらいになってしまうだろうから仕方ないかも知れないが、だったらせめて浩二さんにも何らかの救いがあっても良さそうなものだ、と思ってしまった。

 


 おまけ。
 カーテンコールで珍しく?上川さんがとちってしまい(「今日、3月9日はサンキューの日だそうです。」と言うのを「今日、3月3日はサンキューの日、云々」と言ってしまった)客席のノリが今ひとつになってしまったのだが、「こういうことにもめげずにこれから頑張って行きたいと思います。」に、達也さんが「何の所信表明なんだよ!」と思い切り朗らかに突っ込み、ロボットのように表情を変えずにただじろりと睨む上川さん。
 何とも言えない間合い?がかなり可笑しかった。
 それで昨夜久々に達也さんの日記を読んでみたのだが、「ちいさき神の、つくりし子ら」の本番と若干被ったお稽古期間からの上川さん(メカと呼んでいる。)との攻防が相当面白い(笑)