南フランス歳時記

歳時記【さいじき】一年の行事や風土・生活などを記したもの


2月2日

聖母マリアの清めの祝日。またはキリストの奉献日。
……だというんだけど、この日、みんな一生懸命クレープを焼きます。それも左手に小銭を握りしめ、
右手で形相を変えてクレープをひっくり返すそうです。なぜかというと……「その年、お金に困らなく
なるのよ。古い古い伝統なの」(スーパーのレジのおねえさん談)「そうよ、一年お金に恵まれるの。
ガレットじゃだめなのよ、クレープよ」(すぐ後ろに並んでいたおばさんが話に首を突っ込んできて談)
……だそうです。他の地方にお住まいの方のサイトでは「健康に恵まれる」とあったのですが、こち
らで聞く話はみんな「金に困らない」「金が儲かる」ばかりです。……なんで?
ちなみにガレットというのは、ハムとかたまごとかをクレープ生地に包んで食べるものをさします。一
方クレープは、甘いもの専門で、生クリームとかヌテラとか、砂糖とかをまぶすのが多いようです。日
本でも神楽坂のお店などで食べられます。……もともとブルターニュの料理なんですが、この行事が
最も遠い南仏まで浸透しているのは、クレープがおいしいからでしょうか。それとも「お金がほしいか
ら」なのでしょうか。



2月14日

言わずとしれた聖バレンタインデー。
この日は義理がたい女性が身近に何人いるかを競う日ではなく、恋人同士が、レストランで食事し
たり、プレゼントをあげたりもらったりする日のようです。2月にはいると、異常に香水CMが増えるの
もこの日ねらいでしょう。それも男性から女性にバラや下着や香水を贈るのが多いような感触があり
ます。いずれにしても日本でいうとクリスマスみたいなもんで、恋人がいない人にとっては憂鬱なひ
と時です。
そういえば、フランスのテレビ局TF1で「日本ではバレンタインデーに女の子がショコラチエの前に長
蛇の列をつくる。それは、職場の人にチョコレートを渡すからで、本人がもてるからではなく、義理ゆ
えだ」みたいなことを報道していました。
男たちよ。日本はいい国だぞ。フランスじゃ、この日に男が物をもらえるなんてありえないぞお。



マルディグラ

謝肉の火曜日。
キリスト教ではイエス・キリストの受難を覚えるため、信者たちは灰の水曜日から復活祭までの40
日の間、断食というか一日一食しか食べない禁欲の日々に入る、とされています。その禁欲スター
ト日の前日、「しばらく肉は食べられないから思う存分食っておこう」と馬鹿騒ぎをするのがマルディ
グラ。……だったはずですが、今では世界中で馬鹿騒ぎ&パレードをする期間になっています。
 南仏でもコルソといわれる山車がでて、花祭りが行われます。ニースの花祭り、マントンのレモン
祭りが有名です。ボルム・レ・ミモザはここ数年みごとに天気が悪くて、役場の人ががっかりしていま
した。ラヴァンドゥはなぜか毎年3月が花祭りで「もう灰の水曜日が過ぎてるじゃないか!」という時
期になるんですが、まあそれはそれでいいのでしょう。



サマータイム

やめる、やめると言われつづけてまだ続いている、冬時間と夏時間の切り替え。これも毎年日にち
がずれます。ラヴァンドゥやボルムのうっかりさんに「いつだっけ?」と聞くと正確な答えが返ってこな
いことが多いので気をつけたい。朝、明るくなってきたなあと喜んだのもつかの間、また暗いうちに出
勤しなくちゃならない日々が戻ってきます。そればかりでなく、1時間早く起きなくてはならないところ
がうんざり。冬時間は1時間寝坊できるから、まあいいか♪……なんてことないっ。眠いっ!



4月1日

4月の魚
エイプリルフールです。もちろんうそをついてもいい日で、この起源は諸説あってわかりません。毎年
テレビでは面白いしかけがあり楽しみです。さすがフランス!というしゃれた演出がいっぱいありま
すよ。それからもうひとつ。子供や、童心を忘れない大人たちの一部が魚の形にを切った紙を背中に
はりつけるという、かわいらしいいたずらもします…………もちろん張られた人は笑いものです。



パック

復活祭。
春分の日以後の最初の満月の次の日曜日。移動祝日で、この日近辺には閑散としていたラヴァン
ドゥが人で混みはじめ、怠け者で有名な地元のムール屋も開業するくらいです(そんなこと書かれて
もわからないって)。パックが近づくとスーパーやパティスリーには、ウサギの形やたまごや鐘の形
のチョコがあふれかえります。鐘や卵はともかく、どうしてウサギなのか、みんなに聞きましたが誰も
知りません。とにかくそのせいでこの近辺は、お菓子屋さんが毎晩徹夜状態で仕事をしますが、パ
ックを境に閑職になってしまう、極端な一日でもあります。
 アヴィニョンには、復活祭前、教会の鐘作りが恋人と離れ離れになったことを悲しみ、鐘をローマま
で飛ばしたという、意味不明で荒唐無稽な伝説があります。だから復活祭の近辺は鐘を鳴らさない
のだよ、という落ちもついていましたが、これまた途方にくれるほど意味不明な伝説のオチでした。



5月1日

メーデー/すずらんの日
この日は新聞すら休刊日になる、フランス中の休日。と、同時にすずらんの日。とにかくフランスの街
角という街角にすずらん売りの屋台が出てます。それを人に贈る日なのですが、相手はお世話にな
った人とか、好きな人とか、心が離れそうな恋人とか、男性が女性、または女性が男性と諸説あり
ます。とりあえず幸福を招く花なんだそうです。可憐でとてもよい香りですが、ほとんどの方がご存知
の通り、すずらんには毒性もあります。



5月中旬

カンヌ映画祭
5月中旬の10日間から2週間ほど、コートダジュールのカンヌで開かれる映画祭。みんなの頭に浮
かぶのは「コンペティション部門」といわれる海外からの出品作品部門でしょう。ほら、世界のスタア
たちがヌーヴォー・パレといわれる建物の、あの赤じゅうたんの上を歩くアレです。
実はこのじゅうたん、映画祭のときだけ敷いてあるのかと思ったら違った。正月、遊びに行ったら、そ
のヌーヴォーパレの前にしっかりじゅうたんが。一年中敷いてあるのか?ってことは、わしら庶民も、
この赤じゅうたんの上を歩いて、スタア気取りにはなれるということかもしれなません。……映画祭
の時期でなければ。



6月中旬

夏至の日
夏至の日、フランスの天気予報とかカレンダーで「今日から秋分の前日までが夏」というふうに断言
しています。春分の日、夏至、秋分の日、冬至がきっかり季節の変わり目なんだそうです。ただ自
然がその決まりを守ってくれないのが問題なだけで。
ところで、夏至の日は、ミッテラン時代に「この日にフランス中でコンサートをやる」ということになった
模様。それでこの日には、大きなスタジアムからコンサートホール、はたまた町にあるそこらの広場
に至るまで各地で有料無料のコンサートが行われます。無料といってもいろいろで、市などに頼ま
れたものは「へー」と感心するものがあります。しかし、反対に聞くと崩れちゃいそうなレベルのもの
ももちろんあるわけで……



                      7月14日

革命記念日
往年の映画ファンの間では(って、ほとんどの人が生まれてない時代の映画ですが)巴里祭として
知られているのがこの日。といっても何があるかといって、単なるバカンスシーズンの中の祭日、と
いう役割しか持っていません。
ま。でも一応は旗日なので、各地で花火が上がります。花火といっても隅田川のアレとか、熱海と
か、そんなものを思ってはいけません。ル・ラヴァンドゥは今年がんばって15分。隣のファビエール
は一日ずらして花火をあげたそうですが、なんと7分くらいで終わり。
本当にあの「巴里祭」のネーミングのせいで、異様にイメージが膨らんじゃいます。翻訳の勝利とし
かいいようがないタイトルですね。



8月15日

聖母被昇天の祭日
フランスの祭日。でもこの日、軍港で有名なトゥーロンをはじめ、コートダジュールやプロヴァンスの
各地で、軍事パレードがあったりします。
日本にとっての終戦記念日だから? 太平洋戦争が終わったから? んなわけないだろう〜、ドイツ
の敗戦はもっと前だ〜なんて思ってたら、違いました。
連合軍が、南仏の海岸に上陸したのが、8月なんですね。
そんなわけで、聖母マリアの祭日の名に似つかわしくないパレードと、ラヴァンドゥでは花火があが
ったりして、血気盛んな雰囲気の南仏なのです。




9月第3日曜日


文化財を一般に公開する日 Journee du Patriomoine

フランス各地の文化遺産を一般の人に公開する日です。
端的に言うと、いつもなら見学するのにお金がかかる歴史的見所が見学無料になるのです。
もちろん外国人にも適用されるので、この日にフランスにいるとちょっぴりお得ということになります。
が。
この日ばかりは、観光客の少ない修道院やらがてんこもりの人でにぎわっているのをみかけること
でしょう。ただが大好きなフランス人です。
とはいえ、入場料はたかだか10ユーロくらいなので、お金を払ってのんびり見るほうがいいか、お金
をケチって人にもまれるか、どちらがいいかは判断がつきにくいところです。
ただお金を払う場合、この日の前後は他の日よりもゆったり回れることにはほぼ間違いないでしょ
う。