行列の基本的な性質

サイトのTOP→理系インデックス
線形代数のTOP→線形代数インデックス
基礎:線形代数のTOP→基礎:線形代数インデックス




参考

明白な定理が多いので、一部の定理を除いて証明は省略する。

A1

次が成り立つ。

証明

明らかである。

A2

次が成り立つ。

証明

明らかである。

A3

A、B を行列とする。

行列の積に関して可換則が成り立つとは限らない。

つまり、AB=BA が成り立つとは限らない。

証明

成り立つとは限らないことを示すには、何か1つ反例を挙げればよい。

例えば、行列 A、B を次のようにおく。



このとき、AB≠BA である。

補足

つまり、行列に積に関する計算では、勝手に計算の順序を入れ換えてはならない。

A4

行列の積に関する計算では結合則が成り立つ。

つまり、次が成り立つ。

証明 ( この証明は意外に面倒である )

A を m×n 行列、B を n×p 行列、C を p×q 行列とする。



参考のために図を示しておく。



ABの ( i 、r ) 成分は次のように表される。



よって、(AB)C の ( i 、s ) 成分は、



同様に、A(BC) の ( i 、s ) 成分は、



(*1)、(*2)より、(AB)C と A(BC) の(i、s)成分は一致しているので、

補足

ただし、上記の証明をスラスラ書けなければならないということではない。

これは一度だけしっかりと読んで内容を理解できれば十分である。

A5

単位行列 E、零行列 O について、次が成り立つ。

証明

明らかである。

補足

つまり、E と O については可換則が成り立つ。

A6

行列の積に関して分配則が成り立つ。

つまり、次が成り立つ。

証明

明らかである。

補足

ただし、可換則は必ずしも成り立たないから、次が成り立つとは限らない。



行列の積に関する計算では勝手に順番を入れ替えてしまわないように注意が必要である。

A7

X≠O かつ Y≠O でも、次を満たす行列 X、Y が存在する。



このような行列 X、Y を 『 零因子 』 という。

証明

例えば、次のような行列が挙げられる。

補足

普通の数の場合、x≠0 かつ y≠0 ならば、必ず xy≠0 となる。

つまり、零因子の存在は行列特有の性質である。

参考 ( ケイリー・ハミルトンの定理 )

行列 A を次のようにおく。



このとき、次が成り立つ。



これを 『 ケイリー・ハミルトンの定理 』 という。

証明は非常に簡単で、左辺に行列 A を代入して、実際に計算してみればよい。

ただし、これは2次行列に限定した場合のものである。

線形代数の世界を進むと、さらに一般的な形でケイリー・ハミルトンの定理を学ぶことができる。

参考

行列 A、B について次が成り立つとは限らない。



なぜなら、行列の積では可換則が成り立つとは限らないからである。

つまり、AB=BA が成り立つとは限らない。

よって、正しくは次のように計算する。



実数の世界では xy=yx が当たり前なので、この辺りで戸惑う学生も多いようである。

参考

=A を満たす行列を求めよ。

この問題に対する典型的な誤解答を紹介しよう。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

誤解答

=A を式変形すると、A−A=O である。

因数分解すると、A(A−E)=O である。

よって、A=O、E である。

よって、A=A を満たす2次行列 A は次の2通りである。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

実は、A=A を満たす行列 A は他にも存在する。

よって、上の解答は不十分である。

上の計算は零因子の存在を見落としているのである。

つまり、A≠0 かつ A−E≠0 でも、A(A−E)=O を満たす行列 A が存在する。(※線形代数第1章)

そのことを考慮に入れていない。

このように、行列の計算はふつうの方程式の計算と異なるので注意する必要がある。

では、正しい解答を以下に示しておく。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

正しい解答

2次行列 A を次のようにおく。



ケイリー・ハミルトンの定理より、



いま、A=A であるから、



式変形すると、



場合分けして考える。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

a+d−1≠0 の場合について考える。

(*)より、ある定数 k をとって A=kE とできる。

=A に代入すると、(kE)=kE である。

よって、(k−k)E=O である。

よって、k−k=0 である。

よって、k=0、1である。

よって、A=O、E である。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

a+d−1=0 の場合について考える。

このとき、(*1)より、O=(ad−bc)E である。

よって、ad−bc=0 である。

よって、bc=a(1−a)である。

b=0 のとき、(a、d)=(0、1)、(1、0)となり、c は任意の値をとる。

b≠0 のとき、a、b は任意の値をとり、次が成り立つ。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

以上の結果をまとめると、