六道の辻




『恐怖にミイラレタ男』


僕は自分の言いたい事など
とても言えない気の小さいヤツです
なんでも人の言いなりで自分の気持ちを偽る
不毛な毎日を送っていたのです

そんな僕でも、自分に正直な行動を取れる事が
ゆいいつあるのです
恐怖の前では人は驚く程正直になれるのです

僕は恐怖の前の自分こそが
本当の自分であると感じる様になっていったのです
そして自ら恐怖を求める様になっていったのでした

喧嘩などした事無いくせに
恐そうなヤツに絡んだりしました
しかし大抵は 手を出すヤツはいないのです

それが可笑しくてタマラナイ、、コイツ等口だけなんだよ

なかには殴ってくるヤツもいたね
嬉しい事するヤツだよ!!クックックッ

オレは恐怖なしでは生きられない
そして或る日の事いつもの様に、車をカットバシていた
信号なんか関係ないね
事故るかもしれないスリルが、いいんだよょょぉぉーー!!

しかし人をハネたんだよ
笑ったね引き逃げしたよ
捕まるかもしれないスリルたまらないね


その日の夜オレは、鏡を見ながら思ったね
以前のオドオドした目は自信に溢れているってね
そして確信したオレに恐いモノは無くなったってね
まるでもう一人自分の中に人が住み着いたみたいにね


―その時,自分の後ろにもう一人の自分が写っていました
―ドッペルゲンガーってヤツです


「なんなんだよ!テメーは!!」

「見れば分かるだろう、僕は君だよ」

「だから、な、な、なんだっていうんだっての!」

「君は、歪んでしまっている」

「ど、どど、どうするっていうんだよぉ!」

「消えてもらう」

「なななにいってんだよぉぉーー」

「僕が代わりをするから心配ないよ」

「やめてくれ!!た・す・・け・・・て」

「これが本当の恐怖だよ、楽しめたかい」



 
 




『記憶の中』



そうだったんだ、、やっと思い出せた

俺は今まで自分の名前以外何も思い出す事が出来なかった
いや、この名前すらすり替えられていたのだった

自ら望んで消した記憶
殺してしまいたかったこの記憶

たった今思い出す事が出来たのだ

忘れてしまいたい辛い記憶
その記憶を条件さえ呑めば消してくれる
そう言われて悪魔との契約を交わしたのだった

そして記憶を無くしてからずっと
俺は記憶を取り戻す為だけに生きて来た

たとえどんなに辛い事でも
どんなに苦しくて悲しい事だったとしても
その記憶は自分の生きて来た証
かけがえのない生命の煌きだったのだ

当然の様に楽しかった事もあった
嬉しい事も、心から笑えた瞬間も
それすらも投げ出す程の何があったのか
探し続けていたのだ、自分を取り戻す為に

それは果たして正しかったのか
記憶を取り戻した今、後悔すらしている

思い出したくないから忘れたのに

悪魔と交わされた契約はこういうものだった
「5人の人間を殺せば記憶を消してやる」

俺は条件を呑んだそして実行したのだ

そして最後の一人を殺した時
俺の記憶は無くなっていた

もしかしたらそんな契約など無かったのかもしれない
とにかく忘れたかったんだ
自分が狂気の殺人者である事を
その罪の意識を
ただ忘れたかったのだ





『この世の悪と闇を除く』




「決心はついたようだな
もう一度聞くぞ
我が六道に命を賭ける事が出来ると言うのだな
これは脅しではない本当に命を賭けてもらうぞ
それは直ぐにわかるだろうがな」

ビビってねぇよ

「そうか
まぁ、どのみち今更生かしては帰さないがな」


 俺は今、現実味の無い会話をしていた
 いや、現実ではあるのだが紛れも無く
 しかしどこか受け入れる事が出来ない
 出来るはずがない
 こいつの言う事は異常なんだから


「我々六道は六人で構成されている
もちろん俺も含めてだ
当たり前の事だが我々は人殺しの集団ではない
人は殺さない
人でなくなったモノを殺すのだ
人は生きなければならない
だがな、生きたくても生きられない者もいるのだ
その中には別の者の臓器があれば
ドナーさえ見つかれば生きられる者もいるのだ
だから我々は生きていてもしかたない悪を除いて
生きるべき命を生かすのだ
生きる価値の無い下郎も臓器となれば世の役に立つ
生きていれば畜生でも臓器となれば人間になれるのだ
我々は畜生を人間に人為的に転生させる役割がある
この世の悪と闇(病み)を除く
それを我々は六転生(りくてんしょう)と呼んでいる」

理念などどうでも良い
とにかく俺は約束さえ守ってもらえばなんでもするさ

「わかった、それでも良いだろう
必要なのは意志と行動だからな
では、早速だが皆に会わせよう
お前が加わるので皆には集まってもらってる
道は六つしかないからな」


 何かが違った
 何かが
 でも、俺にはどうでも良い事
 どちらが悪魔であろうとも
 悪魔に魂を売る事になろうとも
 どうでも良いんだ
 どうでも

「さぁ、こっちだ
紹介はしないのがしきたりだ
皆それぞれお互いを良く知らないでいた方が
色々と都合が良いのでね」

そこには五人の修羅がいた
いや、畜生だ鬼だ
違う、人間だこいつらただの人間だ
だが何かが違う普通じゃない
空気が時間がこいつらも周りだけ違ってるんだ


「もはや諸君には説明の必要はないが
六道は六人でなくてはならない
これは絶対だ、神ですら曲げる事は出来ない
我々の掟は絶対だ背く事は許されない
これは家元である俺を含めてだ
新しいモノが産まれれば古いモノは消える
紅蓮の中から灰燼の中から真に新しいモノが産まれるのだ
だから消えてもらう
新しいモノの為に
新しい時代を築く為に
その命を賭けてもらう
一人だけ六道から抜けてもらう
方法は単純かつ理想的な方法を取る
ロシアンルーレットだ」


 あああ、、、
 あああ、、、
 あああ、、、
 な、なに言ってんだこの猿は、、、
 なにを、、











三途の川