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《ホメロスより》はリムスキー=コルサコフ晩年の作品で、「プレリュード−カンタータ」と銘打たれた、ちょっと変わった構成の曲です。
前半部分が、嵐のなか、荒れ狂う波に翻弄されるオデュッセウスを交響詩的に描き、後半部分が3声の女声ソロと女声合唱によって、嵐がおさまった静かな波打ち際で薔薇色の夜明けの到来をが告げられる、というもので、聴いてみれば文字どおり「プレリュード−カンタータ」となっていることがわかります。
もともとオペラ《ナウシカ》の導入部分として計画されていたものを独立した作品として発表したものですが、残念ながら本体のオペラは未完のままとなっています。もちろん、ここの「ナウシカ」とは宮崎アニメの主人公ではなく、本家本元のバイアケス人の王女ナウシカのことです。当時のリムスキー=コルサコフはロシア的国民主義からちょっと離れて、古代ギリシャやローマに音楽的題材を求めていて、歌劇《セルヴィリア》や二重唱曲《パン》などにその痕跡を認めることができます。
今回手に入れたCDにはこの《ホメロスより》が収録されています。少し前に発売されたリムスキーの「カンタータ集」にもこの曲が入っているので、唯一のCD録音というわけではありませんが、今は亡きスヴェトラノフ指揮、いや正確には「スヴェトラノフ編曲」という点で価値がある録音なのです。
それはどういうことかといいますと、スヴェトラノフは原曲に無い小太鼓とシンバルを追加していて、これらの音楽的効果が飛沫をあげて荒れ狂う海の描写に実にマッチしているのですね!
実はスヴェトラノフ盤は古いメロディアのレコードを持っていたので、今回初めて聴くのではないのですが、この録音を初めに聴いた時は「さすがリムスキー=コルサコフ、海の描写をさせたらピカイチ」などと感心して、実際スコアを見たら(上野の文化会館の音楽資料室にあります)どこにも小太鼓シンバルは無く、ようやくスヴェトラの仕業であることに気付いたという次第なのです。先ほどの「カンタータ集」の《ホメロスより》には小太鼓シンバルが出てきませんが、実はこちらが楽譜どおりなのです。
この手の改竄いや編曲としてはストコフスキーが有名ですが、スヴェトラも結構やるじゃん!という感じで、しかも作曲者自らがそうしたように思わせるところがお見事です。
そういえば彼はテレビのインタビューで、オペラ《金鶏》も聴衆に気付かれないようなところで編曲したと語っておりました。このオペラは小劇場向けなので(3管編成なんですけどね。ちょっと意味不明です)、音が貧弱にならないように補強したとか言っていたように記憶しております。
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