この度は、日本薬物動態学会初の試みである「若手研究者シンポジウム」の第1回組織委員、co-chairとして、若手研究者に完全に運営を任せていただくシンポジウムを行う機会を与えていただきました、動態学会関係各位に篤く御礼申し上げます。
今回のテーマは、「蛋白発現・機能のダイナミズム - 基礎研究と臨床・創薬との接点 -」と題させていただきました。
薬物動態の制御に関わる代謝酵素・トランスポーターについて、これまでは、分子種そのものの探索のためのクローニング、その基質特異性や阻害特性、反応速度など蛋白そのものの機能の解明に焦点が絞られてきておりましたが、近年、これら分子が、いろんな外的・内的要因によって、mRNAや蛋白質の発現量や機能が動的に制御を受けることが明らかとされてきました。これらは、転写・翻訳制御や翻訳後修飾、ソーティング制御など一連の蛋白質の発現に関わる素過程の変動により規定されるものであり、さらに近年では、microRNAなど新たな機能制御分子の存在が明らかとなるなど、蛋白質の発現や機能を変化させる要因は実に多様化しています。一方、病態や併用薬物によって薬物動態に関与する蛋白質の発現や機能が変化する事例が多く知られており、これらは臨床薬物動態に影響を与え、ひいては薬効や副作用の個人間変動を生む要因となることから、今後、このような蛋白の動的制御に関わる部分についてもin
vitro実験系による評価系の確立やメカニズムの解析を通じて、臨床にフィードバックすべき知見が多くあると考えております。
そこで、今回のシンポジウムのコンセプトとしては、あえて薬物動態関係の演者を避けて、分子生物学や生化学の基礎科学を中心に研究されてきた先生方や、分子ターゲットの網羅的な探索に従事されてきた先生方を招聘して、蛋白の発現・機能制御に関わる最新の事象・解析法をそれぞれの観点からご紹介いただき、そのような制御系がどのように臨床での薬物動態や薬効の変動要因として関係しうるか、創薬や臨床医療においてどのような意義を持ちうるのか、またそれを事前に予測しうる評価系の構築はどこまで可能か?といった、
「基礎研究の成果(シーズ)と、臨床医療・創薬への応用(ニーズ)の接点を探る」ことを今回のシンポジウムの主な目的としたいと、組織委員一同一致した見解を持っております。ですので、講演後の議論の時間やパネルディスカッションの時間を十分にとって、議論を交わすことで、将来の医療・創薬に対して、基礎研究の最新の成果をどのように利用し、役立てるかについて可能性を示し、また、薬物動態学・創薬科学の学問領域においても、研究の新展開を考える上でのヒントを与えるものになることを強く期待しております。現在、あらゆる問題が複雑化しており、1つの事象だけでは解決のつかないことが多くなりつつあるように思います。そのときの解決法の1つとして、学際的に異領域の様々な人が知恵を出し合うことがあげられます。演者の先生にも、基礎研究の成果がどのように創薬・臨床医療に応用しうるかについて、先生方のご意見を思う存分自由にご講演の中やディスカッションの場で語っていただけるよう、依頼をさせていただいております。
まだ経験の少ない若手研究者ではありますが、荒削りなところを逆に武器にして、果敢にシンポジウムを盛り立てられるよう積極的にこれまで組織委員会内で議論はしてきたつもりです。この企画が1回で終わってしまうようなことがないよう、それなりの成果が挙げられるシンポジウムにしたいと考えております。皆様の多数のご来場、そして活発なご議論をお願いいたします。
若手研究者シンポジウム co-chair 前田 和哉
若手研究者シンポジウムにあたって