2004年演藝研究会活動&映画記録

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 昨年も演藝研究会活動は月イチペース。落語定席からホールと順調であった。川柳川柳師匠に始まり内海桂子師匠で終わるという、実に味のある演藝研究会活動。すわ親治の公演も二度観てその藝を堪能。芝居や小劇場もいいもんだ。今年は定席、ホール以外の研究活動も視野に入れたい。 演藝研究会会員も三名から五名に増加し、三多摩本部、川崎支部、熊本支部に加えて、新たに世田谷支部、大泉学園支部が開設されるという拡大の年でもあった。また昨年は会員個人による海外フィールドワーク(台湾・メルボルン)も活発におこなわれた。今年は北海道・熊本などへの遠征も計画中である。

 今年の藝能関係物故者 桂文治/春風亭柳橋(落語家)/いかりや長介(コメディアン)/コロムビアトップ/星セント(漫才師)/芦屋雁之助/下川辰平/中谷一郎/三橋達也/下條正巳/渡辺文雄/マーロン・ブランド(俳優)/和田弘(バンドリーダー)/朱里エイコ/レイ・チャールズ(歌手)/加藤道子(声優) 

★★2004年演藝研究会活動記録★★

1月 川柳川柳落語&歌謡2004新春ショウ 中野芸能小劇場
川柳つくし「平林」/鈴々舎わか馬「あくび指南」/川柳川柳「ジャズ息子」/新春歌謡ショウ 川柳・つくし・わか馬
▼落語界きってのアナーキー親爺川柳師匠が新年早々から大暴走。名作「ジャズ息子」にラ・マラゲーニャだあ。本人が歌を歌いたいというしごく単純な理由で、弟子のつくしと子分?のわか馬に演奏させるという歌謡ショウ。悠々自適、泰然自若の落語仙人(ただし過激派)川柳師匠で2004年が明けた。

2月 池袋演藝場昼席
柳家とし松(曲独楽)/三遊亭歌武蔵/柳亭市馬/五明楼玉の輔/橘家仲蔵/マギー隆司(マジック)/橘家蔵之助
▼三遊亭歌武蔵「強情灸」。観る度に期待を裏切らない中堅エース。お灸を据えるために艾をほぐし乍ら鼻唄を歌うところで、吉幾三の「ドリーム」(リフォームしようよ〜♪という例のアヤシゲなCMソング)を引用するという荒技を披露。爆笑。

4月 すわ親治ひとりコント 内幸町ホール
▼すわ親治ひとりコント第4回観劇。永六輔が渥美清のために書き下ろしたコントなどなど。さすが若手藝人とはひと味もふた味も違う面白さ。何が良いといって爆笑を求めないところが良い。サラリーマンと上司の子ども、リストラされた父親と息子の対話、自己陶酔のバーテンダー、無口な職人と妻、二日酔いの朝のサラリーマン、会話が大混戦する駅事務室、、、OL風からおじさんおばさん、キャバレーのホステス風からサラリーマンまで客層いろいろ。ドリフ世代の心にピンポイント爆撃。最後にすわ親治から呼ばれた永ちゃんが舞台で挨拶。

5月 鈴本演藝場昼席
大空雄平・かほり(漫才)/柳家権太楼/ニューマリオネット/桂文楽/春風亭一朝/花島世津子(マジック)/川柳川柳
▼雄平・かほりの漫才は既に完成の域に達している感あり。柳家権太楼「町内の若い衆」。団体客でも入っているのか客ダネが悪くお喋りが絶えないが、権太楼は藝の力でお喋りを封じて実力を見せる。ニューマリオネット。寄席の番組ではよく名前を見かけるのだが、実際に高座を観るのは今日が初めて。いわゆる操り人形なのだがこれがなんとも素晴らしい。花笠音頭で踊る村娘、闘牛士と牛(ビゼーのカルメンだ)、小原庄助の三本。終始無言で人形を操るその藝たるや絶品。これは凄い。桂文楽「権兵衛狸」、春風亭一朝「初天神」、膝替りはトボケたトークがなんとも可笑しい花島世津子(マジック)。川柳川柳登場。開口一番「今日はトリですから思いっきり歌いますよお」。ネタはお馴染み軍歌を歌いまくる「笑和歌謡史」。途中、オバサンたちのお喋りが度を越したところで「ちょっと、そこ、静かにしてください、喋るのは私の仕事なんだから」と客いじり。権太楼は藝でお喋りを封じたが川柳師は実力行使に出る。さすが川柳師。最後はおまけにマラゲーニャ! 今年の正月、中野小劇場で伝説のマラゲーニャを堪能したのだが、なんと今年2回目のマラゲーニャ。ギターを弾き朗々と歌い満場の拍手。鈴本を出ると件のオバサンたちが陸続と観光バスに乗り込んでいった。やはり団体客だったか。

6月 喬太郎跳ねる其の六 お江戸日本橋亭
柳家喬太郎「純愛物語冬のソナタ」「国民ヤミ年金」「巣鴨の中心で愛を叫ぶ」「純情日記 - 横浜編」
柳家喬四郎「稲葉さんの大冒険」/柳家さん角「出来心」
▼柳家さん角(前座)、柳家喬四郎をあいだに喬太郎が四席喋りまくるという無茶な企画。 彼女が先祖が高貴な家だったという妄想に憑かれてしまった。困った男はどうにかして実家の父親に結婚を許してもらおうと苦心惨憺する。ところが父親はアメ横のオヤジなので、はたして十二単を身に纏って現われた彼女を気に入るのかという『純愛物語冬のソナタ』。アメ横のオヤジ、お姫さま気取りの彼女と、キャラクターを極端にデフォルメする喬太郎お得意の手法で爆笑を取る。総理大臣が刑務所に入っている天才的な詐欺師をスカウトし、国民年金未払いの国民からサラ金まがいの手法で取り立てるという『国民ヤミ年金』。オチは社会諷刺っぽく落す。ストーリーテーラーとしての喬太郎の面目躍如。これが一番面白かった。次は巣鴨に集う老人が若い恋人にすっかりイカレてしまう。ある日寝込んでしまった老人を友人が見舞いに行くが、新聞に老人の年金を狙う若い女詐欺師が捕まったという記事が。早く目を覚ませという友人の言葉に傷心の老人は杖にすがって歩き出す。そして思い出の巣鴨で恋人への思いをぶちまけるという『巣鴨の中心で愛を叫ぶ』。孫のような娘とイチャイチャして笑いを取るが筋立ては人情噺。そして最後に「『巣鴨の中心で愛を叫ぶ』という一席でございます」と落して印象づけるというあたりは、ちょっとあざといけれどやり方としては巧い。最後は喬太郎で風俗を巧みに取り入れた若い男女の捻れたラブストーリー『純情日記 - 横浜編』。さらっと流した感があるがさすがに疲れたのであろう。それにしても若い客は笑い過ぎだなあ。喬太郎は頭が良いからきっとわかっているのだろうが、もっと長篇のかっちりとした高座を観てみたいと思った。

7月 第96回ミックス寄席:古典への道 北とぴあ
昔昔亭桃太郎「勘定板」「寝床」/春風亭昇太「ちりとてちん」「船徳」/高田文夫(プロデュース)
▼新作落語の旗手たちが古典落語を演じる一夜。出演は春風亭柳昇門下のベテラン昔昔亭桃太郎、永遠の若手春風亭昇太。桃太郎師匠登場。「いままでは新作一本でやってきましたが、、、これからは古典一本で行こうと思います」と言って客席を爆笑させ、どんな古典をやるのかと思いきやこれが「勘定板」。全編これウ○コの噺。客席ずっこける。続いて春風亭昇太が「ちりとてちん」を一席。何を演じても“昇太の古典落語”に昇華させてしまう才能に感歎し乍ら笑ってしまう。腐った豆腐を食わされる性格の悪い男の描写が凄い。ふたたび桃太郎師匠登場。さあここで北とぴあに集まった落語ファンたちは歴史的な瞬間に遭遇することになる。古典への道を歩み始めた昔昔亭桃太郎師匠が古典中の古典(笑)「寝床」を演じたのである。主人が趣味の義太夫節を語るというのでお店は大騒ぎ。お店の奉公人から長屋の連中、町内の豆腐屋から提灯屋から、理屈屁理屈をこねては今夜の義太夫の会には来られないという。お蔭で主人は、奉公人には暇を出す、長屋の連中はとっとと出て行けとおかんむり。やむなくぞろぞろと人が集まって核ミサイルテポドンもかくやという主人の義太夫節の集中砲火を浴びるはめに、、、これを桃太郎師匠は演じた、それもたっぷり五十分。人物描写とかなんとかそういう技は殆ど無い。全編これ駄洒落とナンセンスの五十分である。演りも演ったり聴きも聴いたり。こんな凄絶で無意味な「寝床」は聴いたことがない。中入り後、桃太郎師匠を囲んで昇太、高田センセーの座談会。高田センセーったら大はしゃぎであった。「桃太郎師匠の会なのにどうしてトリが僕なんですか?」と言っていた昇太が季節もの「船徳」をさらりと演じて幕。

9月 新宿末廣亭昼席
古今亭寿輔/東京ボーイズ/昔昔亭桃太郎/若倉健/三遊亭圓輔/都家歌六/柳家蝠丸
▼公演中に土砂降りとなり雨音が物凄く響いてくる。古今亭寿輔の陰気な漫談でぐっと下がった客席のテンションを、次の東京ボーイズがお得意のマンネリ藝でぐぐっと盛り上げる。さすがは東京ボーイズ。桃太郎師匠は春風亭柳昇の思い出を漫談風に語る。それにしても寿輔の陰気というか怪奇な藝風の後では、昔昔亭桃太郎がまともに見えるからおそろしい。後半、真っ赤なブレザーで河内音頭を唸る若倉健(元国分健二:新B&Bの相方)登場。ベタな藝風の物真似漫談だがベタなだけにやたらと面白い。昨今の若手藝人の若者にしかウケない漫談よりは、アナクロだがしっかりした漫談のほうが断然良い。雨足は依然衰えずますます激しくなっている模様。三遊亭圓輔師匠が『あくび指南』を演じている最中、入り口のあたりからお茶子さんの声が場内に響き渡る。「あのー、寿輔師匠が傘貸してほしいそうです!」ずっと楽屋にいたのか寿輔師匠。ノコギリ演奏でお馴染みのベテラン都家歌六師匠登場。まだまだ健在である。「今日は懐かしいポピュラー名曲をお送りいたします」でもって演奏したのが「マドロスの恋」「月光値千金」といった曲。なんのことはない昭和十年前後に浅草あたりで流行っていた曲ばかり。トリは柳家蝠丸で『宮戸川』。柔らかいというか、しんなりとしたというか、なんとも不思議な雰囲気の噺家である。

すわ親治ひとりコメディ 下北沢タウンホール
▼最初にすわ親治がギターの弾き語りで『悲しき口笛』『黒い花びら』などを渋く歌う。歌、巧いなあ。スタンダップコメディで笑いをとり、それからひとりコメディ開幕。これまでのひとりコメディ公演から厳選されたネタをたっぷり披露。どれも面白い。携帯電話片手に打ち合わせに向かうサラリーマンが道に迷い、けものみちから荒野を彷徨い、はては時空を彷徨うサラリーマンと化す。アロハシャツの男が語る「その時、歴史が動いた」なんかこういうオヤジ、いるよなあ。中島みゆきの「ミルク32」に乗せてオカマバーの客の酔態を演じる。おお、これは凄い。中島みゆきの拗ねた歌声がオカマに聞こえる。前回の公演でも爆笑を誘った無口な主人を語る妻のモノローグ。家族旅行に誘われたおじいちゃんの悲喜劇。そして地方の小駅を舞台にした長丁場の駅長コント。年齢層の高い客席も随所で苦笑爆笑。あらためてすわ親治はドリフターズ出身であることを認識。コントらしいコントがたまらない。上記のコントをいかりや長介や加藤茶が演じてもなんら違和感がない。『8時だよ!全員集合!』のコントのコーナーに通じる色合い。おとなの、おとなによる、おとなのためのコメディ。たっぷり2時間

10月 新宿末廣亭昼席
神田紅(講談)/玉川スミ(三味線漫談)/桂米丸/Wモアモア(漫才)/桂小文治/春雨や雷蔵/江戸家まねき猫(物真似)/雷門助六
▼玉川スミ姐さん、八十半ばとはいえ元気。姐さんお得意の怒濤の藝歴噺に客席は感動の嵐、涙を拭う初老の女性もちらほら。牟田梯三似の春雨や雷蔵は『宮戸川』を一席。口跡はっきりとして綺麗な高座。霊願島の叔父さん夫婦の会話場面が実におかしい。江戸家まねき猫登場。のっけから鹿の鳴き声という斬新な切り込み、しだいに客席も笑いのテンション高まり、「馬」と「鹿」の鳴き分けに至って爆笑を取る。うーん、若いのに凄いぞ。畏るべし江戸家一門。本日の呼び物は先代(八代目)雷門助六一門の「寄席の踊り」。本日のトリである九代目助六師匠が音頭を取って、雷蔵、小文治、紅、まねき猫らが高座狭しと『奴さん』『かっぽれ』などを踊る。踊りに各人の個性が出ていて面白い。まねき猫の踊りは軸がしっかりとしていて綺麗。

11月 立川談志と若手落語家の会 練馬文化センター
立川志の吉「松竹梅」/柳家喬太郎「ほんとのこというと」/春風亭昇太「権助魚」/柳家花禄「時そば」/立川談志/「長命」
▼柳家喬太郎は新作落語「ほんとのこというと」、登場人物の捻れっぷりが良い。春風亭昇太「権助魚」、何を演じても新作にしか聞こえないという昇太マジック絶好調。柳家花禄がスタンダードに「時そば」を演じる。正直面白いストーリーではないのだが、花禄が敢えてこの噺を選んだ理由や如何に? 立川談志登場。お馴染み木賊刈の出囃子に乗って家元登場。ぼそぼそと喋り出し場内は水を打ったように静寂に包まれる。談志お得意のぼやきと小咄をちりばめた枕が延々と続く。独特のしゃがれ声のせいかよく聴き取れない。だんだんエロチックな方向にシフトして「長命」に入る。だんだん調子が出てくるが今日はあまりやる気がないようだ。談志は独演会に限る。結局前座の志の吉のヨンさまブームなどの時事ネタ噺がいちばん面白かったかも。

12月 『年末特別公演特選年忘れ漫才大行進』 浅草演藝ホール
昭和のいる・こいる/青空球児・好児/Wコロン/三田和矢(紙切り)/笹八平・真木淳/大空雄平・かほり/青木チャンス(漫談)/ビックボーイズ/東京太・ゆめ子/内海桂子(漫談)
▼昭和のいる・こいる、青空球児・好児のベテランコンビ熱演。笹八平・真木淳は相当なベテラン。アナクロな高座がかえって可笑しい。青木チャンスに興味津々。ピンクのスーツに身を固めた冴えない中年男登場。「あたしは浅草でビートたけしと同期なんです」そうなのか。ギャグが実に面白くなく、笑うツボがよくわからない。うーん浅草は深い。ビックボーイズ、泥臭い。「かあちゃん、もう帰ろうよ」でお馴染みの東京太・ゆめ子。京太師匠のボケにゆめ子師匠のやんわりとしたツッコミ、押しつけがましくなく観ていて楽しい夫婦漫才。大トリはピンで活躍する内海桂子師匠。「こンだけ漫才師が出てるのに、誰アれも『数え歌』を演らない。むかしはネ、こんだけ漫才師が出たら、かならず何組かは『数え歌』を演ったもンですよ」のっけから歩く藝能事典ぶりを発揮。「それじゃネ、あたしが『数え歌』演るから、誰か手伝ってちょうだい、ねえちょっと、誰かいない?」と舞台裏に声をかけ、青木チャンス、弟子を呼び出して三味線を弾かせるわ太鼓を叩かせるわ。もう漫才協団会長やりたい放題。最後は明治時代の流行歌『ぎっちょんちょん節』を歌い踊る。「ちょいとみんなで踊るヨ、楽屋にいる人、みんな出といで」最後は桂子師匠の発声で三本締め。


◆◆映画記録(製作年代順)◆◆
 昨年は体力・気力の減退、業務多忙などの原因により観た映画が27本と激減であった。いろいろ観たい映画もあったのだが、、、今年はせめて50本くらいは観ることを目標にしよう。

【茶の味】(2003) 【鮫肌男と桃尻女】で強烈な印象を残す石井克人監督の最新作。美しい山あいの町を舞台に、ちょっとヘンな家族のそれぞれが、それぞれの小さなドラマを展開させていく。またしても浅野忠信、我修院達也という常連に加えて三浦友和、手塚理美というキャスティング。ねじれたギャグや不条理なシーンが頻出するが、次第にドラマはひとつに収斂していき、縁側でお茶を飲む家族と美しい夕暮れが良い雰囲気だった。

【バーバー吉野】(2003) 少年達のキャラクターが良かった。

【昭和歌謡大全集】(2003) 観客に強い嫌悪感とそこはかとない悲哀を感じさせるブラック・コメディ。戦争映画のパロディともとれるなかなか面白い出来。篠原哲雄監督は村上龍の力まかせの彫刻のような原作をコラージュ風に映像化している。たぶん小説のほうが面白いだろうとは思うが、映画にも村上龍のオバサン観が如実に現れている。作風は『限り無く透明に近いブルー』から基本的に変わっていない。だから同じ村上でも村上春樹みたいに、若い女性には支持されないんだよな。ま、それが村上龍だ。原田芳雄の怪演に爆笑。岸本加世子の演技が時折樹木希林そっくりなのが可笑しかった。

【変身】(2002ロシア) ごぞんじ20世紀文学の傑作、フランツ・カフカの『変身』完全映画化である。ある朝、青年グレゴール・ザムザが目を覚ますと巨大な虫に変身していた、というあの話。CGも特撮も無しでどうやって虫に変身するのか。主演のエヴゲーニー・ミローノフがパントマイムで虫を演じるのだ。この演技が文句無しに凄い。最初は思わず笑いがこみあげてくるのだが、次第にその姿が紛れもなく“虫”そのものに見えてくる。もうどこから見ても人間性のかけらもない虫そのもの。家族たちは虫に変身したグレゴールを怖れ嫌悪する。つまり彼らの目に映るのは人間ではなく“虫”という演技をしているのだが、それも当然というくらいミローノフの演技が凄い。奇妙に歪んだバイオリンの旋律がカフカの不条理世界を強く印象づける。監督も役者もロシア人なのでセリフもロシア語。重厚なロシア語がいっそう暗いプラハの雰囲気を醸し出している。

【永遠のモータウン】(2002米) 映画を観乍ら思わず涙ぐんでしまう。やっぱりソウルミュージックはいいわあ。サックスを吹きまくるトム・スコットに大感激。

【涙女】(2002中国) これはお薦め。最近の中国映画というとスマートでお洒落な印象があるが、そんな気配は微塵もない、大雑把で出たとこ勝負の中国人がいっぱい出てきて楽しい。

【ヴァンダの部屋】(2000ポルトガル=ドイツ=フランス) リスボンの一画、再開発のために建物が取り壊され街が消えてゆく。そんな街に暮す世間から見捨てられた人たちの生活を陰翳に富んだ映像美で描き出す。もう一度じっくりと観たい映画である。

【おろしや国酔夢譚】(1992) 出演者のひとりである三谷昇がトークショーのゲストとして来館。あの印象的な顔と声で知られ【まむしの兄弟】【どですかでん】【暴走パニック;大激突】【軍旗はためく下に】などでの怪演を残す役者。本人は文学座の舞台俳優という、きわめてまっとうな舞台人なのだが、舞台劇では神父と乞食が定番だという。映画のオーディションに呼ばれては落されまくったというエピソードを、司会進行役の杉作J太郎相手に淡々と話していた。映画は江戸時代にロシアに漂着した大黒屋光太夫たちが、異郷の地で艱難辛苦の末に帰国するまでを描いている。極寒シベリアの風景が頻出するが、やはり雪景色というのは私の原風景なのだろう、なんともいえないやすらかな気持ちになる。自由が丘武蔵野館閉館。

【こうのとり、たちずさんで】(1991ギリシャ=仏=スイス=伊) 突然失踪した大物政治家を追って国境の寒村に赴いたテレビ局のクルー一行。ギリシャとトルコの国境地帯はクルドやアルバニアからの難民が入り込んでいた。国境は一本の河で隔てられており、河にかかる橋の中央には白い国境線が引かれている。この寒村でレポーターは国境とは何か、人間とは何かということを考える。国境で隔てられた民族の苦しみと悲しみ、失踪した政治家の妻の思い、降りしきる雪と鈍色の空。そして電線工夫たちが一斉に電柱に登っていく有名なラストシーン。十年ぶりに映画を観てなんとも言えない気分になる。人生とはこんな暗い冬の光景の連続ではないのか。もしそうでないとすれば、なぜ暖かい春の青空がいつまでも続かないのか。

【河内のオッサンの歌】(1976) ストーリーはどうでもいいが、川谷拓三、室田日出男大暴れ。みんないなくなってしまった。

【暴走パニック;大激突】(1976) 銀行強盗の渡瀬恒彦と愛人の杉本美樹が手に手を取って車で大暴走の末、モーターボートで国外逃亡するという、【マッドマックス】と【ゲッタウェイ】を足して2で割って、そこに大量のモツとラードを放り込みギトギトに煮染めたような映画。川谷拓三、室田日出男、怪人・三谷昇、潮健児と濃い役者連大暴れ。淫乱な婦人警官渡辺やよいの制服セミヌードが嬉しい。

【旅芸人の記録】(1975ギリシャ) 旅芸人一座のどさ回りを軸に、激動のギリシャ現代史を描いた大作。ギリシャといえば神話と哲学、数学といった古代史しか知らない。だからギリシャの現代史がどんなものなのか、そんなことはたいていの日本人は知らないだろう。もちろん私も知らない。映画で観た限りではあるが、占領軍であるナチスドイツに対抗する民族解放戦線のレジスタンスあり、ナチスドイツ撤退後も保守派とコミュニストの対立に端を発した内戦ありと、実にまあ激動の歴史だったわけだ。基本的に漂泊の民である旅芸人一座も、政治の季節から逃れることはできない。踏みにじられ迫害され、ときには殺されそうになり乍ら、激動の時代を流れていく。全編4時間という大作だが実に見応えのある映画。映像美に圧倒されてしまった。

【仁義なき戦い】(1973) 菅原文太、梅宮達夫、松方弘樹と東映ヤクザ映画のスターが揃う、言わずもがなの名作。大平洋戦争は日本人の人殺しに対する意識を変えた大きな契機だったと思う。特に拳銃というお手軽な兇器の導入がそれに拍車をかけた。梅宮達夫、川地民夫、名和宏、伊吹吾郎、松方弘樹、実に呆気無く鮮血に塗れて死んでいく。ヤクザ映画といえコメディの要素はきちんと取り入れられていて、菅原文太が指を詰めるシーンのギャグは何度観ても可笑しい。輪をかけて可笑しいのは山守組長役の金子信雄。一世一代の当り役。ふてぶてしいくせにいざとなると弱気になったり、挙句の果ては菅原文太に泣き落としで迫り、形勢が変わればコロリと態度を変える。それでも最後までしぶとく生き残る。

【仁義なき戦い;広島死闘編】(1973) 第2作であるこちらの主人公は、殺し屋と恐れられた伝説のヤクザ(北大路欣也)が主人公。純粋さゆえに組に利用されて自ら死を選んだ男の哀れな生涯。ラスト10分は凄絶至極。菅原文太は脇に回る、と言っても存在感はさすが。成田三樹夫、小池朝雄、小松方正とイイ顔の役者が揃う。

【サマー・ソルジャー】(1972) 岩国の米軍基地から脱走した若い兵士(キース・サイクス)はスナックのホステス(李礼仙)に匿われている。やがて彼は日本人の支援組織に引き渡され支援者の家庭を転々とすることになる。しかし言葉も文化も異なる日本で暮すうちに彼の精神は次第に追い詰められていくのであった。戦争批判、反戦運動批判、異文化コミュニケーションギャップをドキュメンタリータッチで描く奇妙なロードムービー。李礼仙にはむりやり法華経を唱えさせられるわ、北村和夫にはフォークを歌わされるわ、加藤武には女郎買いにつきあわされるわ、黒柳徹子を誘惑して殴られるわ、ナンパした女には逃げられるわ、そりゃ厭にもなるだろうな。小沢昭一と黒柳徹子の夫婦が妙に似合っていて面白い。

【他人の顔】(1966) うーん、この映画が面白くないのは何故だろう。仲代達矢と平幹二郎が最初から最後まで理屈をこねまくるからか? その理屈が今となっては実に脆弱であるからか? 男どもの理屈がいともたやすく女どもに崩されるからか? まあ、小道具が多過ぎるのである。映像表現に凝り過ぎなのである。テンポが悪いのも原因だろうな。こういう藝術映画を面白がれるのは頭の良い人か前衛ファンだけだろう。私には退屈な映画であった。

【霧の旗】(1965) 陰惨なヒロインの倍賞千恵子良し。弁護士の滝沢修、新劇役者らしいクサイ演技が効果を出している。【家族】、【故郷】など山田洋次監督の社会派作品はけっこう好きである。

【砂の女】(1964) 永遠のやさ男岡田英次の陰翳濃い演技が良い効果をあげている。最初に観たときは・・・ずいぶん昔だが・・・岸田今日子の不気味さが印象に残っていたのだが、あらためて観てむしろ可愛さが印象に残った。

【雲の上団子郎一座】(1962) 藝人たちの藝達者ぶりが一度に楽しめるお得な一本。フランキー堺、水谷良重、榎本健一、三木のり平、八波むと志、森川信、由利徹、南利明、佐山俊二、花菱アチャコ、清川虹子、藤田まこと、高島忠夫、、、、冒頭『瞼の母』では八波むと志と森川信のコンビに榎本健一の浪曲付き、伝説の舞台『玄冶店』の再現では、三木のり平の与三郎、八波むと志の蝙蝠安コンビに由利徹のお富で笑わせてくれる。『勧進帳』ではフランキー堺のデタラメ弁慶、『カルメン』では水谷良重が可憐かつ艶やかに歌い踊る。一番印象に残ったのは森川信。とにかく巧い、面白い!

【おとし穴】(1962) 謎が明かされたら絶対つまらないなあと思いつつ観ていたが、最後迄謎は明かされなかった。さすが勅使河原宏。うーん、不条理バンザイ。警官に犯される若き佐々木すみ江の、エロス濃厚な存在感に圧倒される。

【風来坊探偵;赤い谷の惨劇】(1961)、深作欣二監督デビュー作。千葉真一主演のアクション映画。ノリはほとんど小林旭の【渡り鳥シリーズ】。千葉真一は体育大学出身の筈だがその割にはアクションは小林旭の方が見栄えがするのはなぜだろう。

【アマゾン無宿;世紀の大魔王】(1961) 昭和30年代半ばのニュー東映時代は、映画は例の波しぶきと三角マークではなく、火山の噴火で始まる。アメリカ裏社会の黒幕たちがよってたかって日本を賭博マーケットにしようと目論む。刺客として送り込まれたのがテキサスの熊こと進藤英太郎。フランスから送り込まれたのがキザな江原真二郎。そしてバカでかいソンブレロにポンチョを羽織って現われるは、われらが御大片岡千恵蔵。香港から日本に逃亡してきた賭博王は月形龍之介で彼に付き従う謎の女は久保菜穂子。久保の妹役でOK牧場ならぬ大木牧場のウェスタン娘が佐久間良子。曲者のホテル経営者は三島雅夫。アヤシゲな宗教団体の代表で実は裏社会のボスが小澤榮太郎。小澤榮太郎の子分が山本麟一に梅宮辰夫。榮太郎の娘で梅宮の恋人が三田佳子。もうお腹いっぱい。松沢病院ならぬ増沢病院という精神病院の場面は放送禁止。院長が「今日はキチガイたちのお祭りなんです、いやこれも治療の一環なんですが」とのたまい、キチガイを装った久保菜穂子と片岡千恵蔵もここを先途と踊りまくる。確認できたキチガイを列挙する。花沢徳衛、由利徹、南利明、トニー谷、海野かつを。みな思い思いにキチガイを演じて楽しそうである。とにかく千恵蔵が楽しそうに演技しているのが印象的。進藤英太郎との掛け合いはいついかなる時でも浪花節全開。当時大ヒットを飛ばしていた小林旭の【渡り鳥シリーズ】をパクった場面もあって苦笑い。御大がバンジョーを弾き乍らバラードを歌います。そりゃそうだ、なんたって監督が斎藤武市だもの。千恵蔵はもともとゲイジュツ映画とは無縁の、娯楽映画の大スターであるから、何も違和感など抱くことはなかったのだろう。あの千恵蔵が妙チキリンないでたちで、、、などと伝説のカルト映画にされているが、退屈男も多羅尾伴内もみんな妙チキリンではないか。中野武蔵野館ホール閉館。

【銀座旋風児 黒幕は誰だ】(1959) 冒頭、夜行列車から転落する人影、ヤクザ風の男達、一連の騒ぎをじっと見つめるソフト帽の男。思わずニヤニヤしてしまう。日活アクション此処にあり。公団汚職に端を発する偽札事件のカラクリを暴き、アキラ扮する二階堂卓也が巨悪を追い詰めていく。助手の浅丘ルリ子、情報屋の政・宍戸錠の他に、内田良平、安部徹、菅井一郎、青山恭二と、お馴染みの日活俳優陣が脇を固めている。

【勲章】(1954) これが映画初出演となる小沢昭一はすでに彼の個性を存分に発揮していて面白い。佐田啓二のアルバイトはなんと素人寄席のアマチュア落語家! ああ、あの顔であの声で落語を一席披露する佐田啓二がなんとも可笑しい。岡田英次はいつものように二枚目のやさ男で、香川京子相手に純愛を貫き通している。小沢榮、東野英治郎も熱演だが、なんといっても杉村春子が凄い。抜け目の無い意地の悪い女というお得意の役柄だが、色仕掛けで小沢榮に迫る場面、用済みになった小沢榮が泣きついてきても冷たく突き放す・・・というより、使い途の無いアンタなんかに付きまとわれちゃ迷惑なんだよという演技には息を飲む。まさに昭和の大女優。

【父ありき】(1942) 小津はこの映画で何を言いたかったのだろう。昔気質でストイックな父と素直に父親を愛する息子の不器用な愛情か? うーん、まだハッキリと理解できないなあ。それはそうと温泉宿で父と息子が差し向いで酒を酌み交わす場面はちょっと羨ましかった。亡くなった私の父とこういう会話ができたかどうか、甚だ疑問ではあるが、とにかく父がすでにこの世にいないわけで、なんとなくそんな気持になってしまった。

【大人の見る繪本 生まれてはみたけれど】(1932) 社会の階級が現在よりもはっきりと機能していた時代を良く捉えた作品。子どもを使ったギャグを満載したコメディ映画としてもよかったが、大人の社会の悲哀を滲ませる視点を貫いているところが、小津をして小津たらしめているのであろう。

【その夜の妻】(1930) 小津安二郎のアメリカ映画趣味がよく出た一本。サイレント映画ではあるがなかなかサスペンスに富んだ作品。嗚呼こういう映画こそ活動弁士がいれば、、、と痛切に思った。

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