2005年演藝研究会活動&映画記録

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 今年は寄席は末廣亭しか行かなかった。やはりあそこがいちばん行きやすい。末廣亭に始まり末廣亭に終わる一年。代わりに横浜にぎわい座に多く出かける。観やすい聴きやすい行きやすい。談志、小三治、喜多八、志の輔、談春、、、そしてなんといっても桂米朝師匠の高座を体験できたのが大収穫。

今年の藝能関係物故者 
●落語家:桂文枝/三笑亭夢楽/桂吉朝●講談師:旭堂南陵●漫才師:星ルイス/宮城けんじ●コメディアン:ポール牧/岡八郎/ショパン猪狩●俳優:松村達雄/中北千枝子/角梨枝子/根上淳/原ひさ子/藤木悠●映画監督:岡本喜八/石井輝男●映画評論家:小森和子●歌手:照屋林助/高田渡/本田美奈子●漫画家:中尊寺ゆつこ/杉浦日向子●スポーツ:仰木彬(プロ野球監督)/橋本真也(プロレスラー)●その他: 居作昌果(『8時だヨ!全員集合!』プロデューサー)

★★2005年演藝研究会活動記録★★

1月 
新宿末廣亭夜席 
春風亭小柳枝/三遊亭恋生/ボンボンブラザース(曲藝)/三遊亭遊三/松乃家扇鶴(俗曲)/三笑亭夢丸
▼新春から小柳枝、遊三と円熟のシブイ藝を楽しみボンボンブラザースの至藝を楽しむ。これぞ至福。夢丸の意気は買うがちとダレ気味。

2月 
新宿末廣亭昼席 
昔昔亭桃太郎
▼珍しく三遊亭圓右が主任ということで出かけるも休演。桃太郎(主任の代演!)の駄洒落絨毯爆撃に悶絶。

3月 
立川談志不完全落語会 横浜にぎわい座
▼講談活劇調の「青龍刀権次」、古典落語の「天災」、余興にして至藝の「落語チャンチャカチャン」とわれらが家元健在なり。「天災」の凄さに圧倒される。

立川談春独演会「春」 横浜にぎわい座
大ネタ「九州吹き戻し」、古典落語「紺屋高尾」と大熱演。談春はいまもっとも聴き応えのある噺家だ。必見。

にぎわい座バラエティ寄席 横浜にぎわい座 
快楽亭ブラ汁/マグナム小林(バイオリン漫談)/快楽亭ブラック/唐沢俊一(トンデモ紙芝居)/丸山おさむ(声帯歌謡模写)/川柳川柳
▼この頃、快楽亭ブラックは借金地獄にのたうちまわっていたはずだが、、、あの飄々とした藝風に変化はあるのだろうか? 丸山おさむの藝は実にしたたか。川柳師は死ぬまでこのままなのだろう(笑)

『BS笑点』公開録画 横浜にぎわい座 
ダーリンハニー(コント)/春風亭栄助/三遊亭歌武蔵/真島茂樹(ダンサー)/大木凡人(司会者)/大喜利(春風亭昇太、林家彦いち、林家たい平、林家きくお、立川笑志、三遊亭愛楽、春風亭柳好、五明楼玉の輔)
▼なんといっても大木凡人。ナマ凡ちゃんは藝も身体もでっかい。二回分の録画なので拘束時間長し。

4月 
すわ親治ひとりコメディ5・むしろそれが怖い 内幸町ホール
▼今回はいままでのネタをぶちまけたバラエティ公演。じわじわと笑いがこみあげてきて楽しい。最後は至藝のネコダンス!

講談・落語の技法と楽しみ:話藝・舌好藝の世界 早稲田大学小野記念講堂 
桂藤兵衛「紺屋高尾」/一柳斎貞水(講談)「鼠小僧次郎吉〜芝の蜆売り」
▼藤兵衛師は地味。あの一柳斎貞水師の講談に感激する。

5月
寄席山藤亭第11回「立川談志、昭和の名人を演じる」 紀伊國屋ホール 
立川風吉「道観」/松尾貴史(漫談)/立川談志「よかちょろ」/トークショー〜立川談志、山藤章二、松尾貴史、高田文夫、林家たい平(司会)
▼「寄席山藤亭」は山藤章二画伯ご贔屓の濃い藝人勢揃い。家元の落語に寄せる愛情に満ち満ちた漫談。桂文楽(先代)〜古今亭志ん生〜三遊亭圓生〜鈴々舎馬風(先代)〜三遊亭圓歌(先代)と名人上手の形態模写を披露。実にお見事。松尾貴史の声帯模写朗読メドレーに悶絶。

6月
九代目林家正蔵襲名披露興行 グリーンホール相模大野 
林家いっ平「ざるや」/立川志の輔「はんどたおる」/春風亭小朝「ピーチボーイ」/襲名披露口上/翁家勝丸(太神楽)/林家正蔵「子別れ」
▼なんといっても志の輔に尽きる興行だった。実弟のいっ平、義兄の小朝、そして本人の正蔵を抑えて客席を爆笑の渦に巻き込んだのは志の輔。マクラから噺から口上からすべてにおいて群を抜いている。思わず志の輔落語BOX購入。

7月 
柳家小三治独演会 保谷こもれびホール
▼あの小三治がじっくりたっぷりと「百川」を演じて凄かった。飄々としたいつもの小三治、藝にのめり込んだ小三治、そして反骨ぶりをあらわにした小三治と、一度にいくつもの小三治を観ることができたのは僥倖。

9月
柳家喜多八独演会 ニッポン放送イマジンスタジオ
▼小三治門下の逸材、あのやる気のない苦みばしった良い男(笑)喜多八独演会。「代書屋」「あくび指南」「かんしゃく」と藝域の広さに吃驚。さすが柳家一門、滑稽噺は冴えに冴える。

10月 
紀伊國屋寄席 紀伊國屋ホール 
桂才紫「代書屋」/柳亭市馬「味噌蔵」/三遊亭楽太郎「ずっこけ」/古今亭志ん輔「猫忠」/三遊亭圓歌「我孫子宿」
▼楽太郎、志ん輔もよかったが、市馬の快活明朗な「味噌蔵」が圧倒的に面白かった。圓歌師、「中沢家の人々」以外のネタも良い味出しているなあ。

11月 
柳家小三治・桂米朝二人会 相模原市民会館 
柳家三三「短命」/桂米朝「鹿政談」/桂小米朝「七段目」/柳家小三治「千早ふる」
▼遂に上方落語の至宝・桂米朝師匠の高座を観た。お姿を拝見するだけで感激なのに、おまけに一席伺ってくれるという大サービス。春風駘蕩、軽妙洒脱、融通無礙。小米朝、小三治、三三と満足しきりの一夜。

12月 
立川談春独演会「冬」 横浜にぎわい座
▼なんといっても「文七元結」。文楽、圓生、談志、志ん朝、、、名演揃いの「文七元結」だが、これは談春の「文七元結」だ。それくらい凄い。巧い。来年も談春を追いかけるぞ。

新宿末廣亭夜席 
金原亭世之介/笑組(漫才)/五街道雲助/三升家小勝/翁家和楽・小助・和助(太神楽)/むかし家今松
▼世之介のちょっと壊れた「時そば」、いまも昭和に生きている小勝、今松の地味な「鼠穴」、、、これぞ寄席風情といった顔ぶれであった。


◆◆映画観賞記録◆◆
 今年もシネマジャック&ベティ、横浜日劇、関内アカデミー2と名画座が次々と閉館。ますます行き場が少なくなってきた。シネコンばかりが隆盛の風潮だが、こういう場所にしか行かない人種もいるのだ。ひきこもり対策の一環として名画座復建を叫びたい。定員は100人くらいで設備は適当でよい。お洒落な雰囲気は不要。映画会社が共同経営すればフィルムだって安く提供できるだろう。NFC(東京国立近代美術館フィルムセンター)と提携してもいい。こういうマニアなシネコンを各地につくれば絶対客は来る。儲けようと思わず収支トントンでよければできるはず。それでもガタガタの座席やうすら寒いのも困る客もいるし、酔っ払いや痴漢と同席したくない女性もいるだろう。だからランクを設けるのである。A級は設備もよくお洒落なカフェもあるが値段は高め。B級は設備も適当で自動販売機だけだが値段は並。C級は冷暖房不備、酔っ払いや痴漢OK、値段は低め(かつての桜木町かもめ座かな)。客はそれぞれ好みの映画館に行けばいい(年頭からそんな妄想に耽ってる場合じゃないかナ)

【男はつらいよ 私の寅さん】(1973松竹) 寅さん、今回もストイックな片思いだが、岸恵子はあまり可愛くない。おいちゃんは二代目の松村達雄。初代の森川信にはおよばないといえど、三代目の下條正巳よりは似合っていたと思う。

【男はつらいよ 寅次郎相合い傘】(1975松竹) 永遠のマドンナ浅丘ルリ子再登場。涙、笑い、涙、、、

【港の乾杯 勝利をわが手に】(1956日活) 鈴木清順(当時は清太郎)監督のデビュー作。船乗りの兄が八百長事件に巻き込まれた騎手の弟を救う兄弟愛を描いた、60分ほどのSP作品乍ら日活アクションの流れを組む歌謡映画。ときどき後の鈴木清順作品を思わせる奇妙なカットが出てきて興味深い。

【抱擁】(1953東宝) テーマが暗いのはまあいいとして、とにかくテンポが悪すぎる。三船敏郎の良さが全然出ていない。取り巻き連中の観念的なセリフ回しが実につまらない。駄作。これほどのキャスティングをもってしても駄作というのは、やはり当時は日本映画の全盛期で雨後の筍のごとき量産ぶりだったことを感じさせる。ダンスパーティの場面で、当時の人気バンド渡辺弘とスターダスターズ登場。渡辺弘の踊る指揮ぶりが可笑しい。それにしてもつまらない映画。

【雨情】(1957東京映画) 【夫婦善哉】といい【猫と庄造と二人のをんな】といい、ダメ男をやらせると森繁久彌は抜群。この点で森繁久彌と小沢昭一は双璧を為す。

【別れのタンゴ】(1949松竹大船) 狂言回しの佐分利信が例の茫洋とした存在感で良い味を出している。令嬢を演じてまったく違和感のない高峰三枝子は貫禄充分。さすが根っからのお嬢様である。正真正銘のお嬢様高峰三枝子には誰も適わない。

【サンサーラ】(2003仏) ハンディカメラが捉えた映像は、フィクションとドキュメンタリーのみごとな融合をみせる。ストーリーらしいストーリーはないが、サンサが行く先々で出逢う人々や風景が観客を旅へと誘っていく。不思議な、それでいて面白い映画だった。老ヴァイオリニストのクリックを演じたイヴリー・ギトリス・・・ホンモノのヴァイオリニスト!・・・が、風貌といい演技といい実に良いキャラクターだ。映画で旅をする。人生は旅なんだなあ。安部譲二怪演。

【近頃なぜかチャールストン】(1981ATG) 昨年亡くなった岡本喜八監督の佳作。ただの戦争批判にとどまらず現在の日本国に対する不信感を全編にちりばめる、などと社会派の論法を展開しても、岡本監督らしいアクションはなりを潜めており、むしろバイプレーヤー総出演のキワモノ的色彩が濃い。邪馬台国の“総理大臣”小澤榮太郎はじめ、今福将雄、殿山泰司、堺三千夫、岸田森、田中邦衛、千石規子という“閣僚”に加え、胡散臭い市会議員平田昭彦(!)、殺し屋(寺田農)がスクリーン狭しと大騒ぎ。助平な殿山泰司にオカマっぽい岸田森が嬉しい。保険の外交員だったから外務大臣、文房具屋だったから文部大臣という理由がオカシイ。千石規子は競輪好きで金を持っているから大蔵大臣!  岡本喜八、小澤榮太郎、殿山泰司、岸田森、平田昭彦、、、みんな逝ってしまった。

【太陽のない街】(1954新星映画社) 社会主義に希望が託された時代の映画。独立プロの作品(監督は山本薩夫!)だからか、スター級の役者は皆無で全員がバイプレーヤー。そこらへんがバイプレーヤー好きの私にはたまらない。日高澄子、二本柳寛、原保美、多々良純、小田切みき、原泉、北林谷栄、信欣三、神田隆、玉川伊佐夫、東野英治郎、殿山泰司、西村晃、花沢徳衛、浜村純、、、筋金入りのプロレタリア映画。

【トニー滝谷】(2004) 洋服マニアの亡き妻(宮沢りえ)が残した膨大な洋服と靴を、きれいさっぱり処分してがらんとした部屋に寝転がる夫(イッセー尾形)。このショットが映画の核だな。それにしても宮沢りえはほんとうに良い女優になった。本人も、今や泥沼と化した相撲部屋に嫁がなくてほんとうによかった、と思っているのではないか。 宮沢りえの美しいことったら、ない。イッセー尾形好演。

【亀は意外と速く泳ぐ】(2005) ロケ地の風景になぜか見覚えがある。この路地裏、この階段、この港、、、此処は昨年の5月に訪れた三崎だ! そして松重豊のラーメン屋「サルタナ」、ここは私がデジカメで撮影した中華食堂「ポパイ」だ! スパイは日常に潜む。あなたの周りにもきっといるぞ、スパイ。主演の上野樹里が可愛い。

【大当り百発百中】(1961日活) 歌って踊る小沢昭一的ココロだあ。それにしてもバカバカしい映画。そしてこのバカバカしさがタマラナイ。いちおうミュージカル調なのだが歌って踊る小沢昭一があまりかっこよくない。歌手の田代みどり(キュート!)、レコード会社部長の由利徹、スケベなカメラマンの南利明、義母の武智豊子、情けない子分の高原駿雄、野呂圭介と多才な脇役陣も日活的。この頃日活映画によく謎の外国人役で出ていた外国人役者(当たり前だ)ジョージ・ルイカーが、武智豊子の夫、、、つまり小沢昭一の義父という設定も妙にオカシイ。しかもルイカーときたら和服にキセルで通している。小沢昭一と松原千恵子が住む団地は当時分譲されはじめたばかりの百合が丘。お馴染み森繁久彌の【喜劇駅前団地】や谷啓主演の怪作【奇々怪々俺は誰だ?】でも当時の百合が丘団地群を観ることができる。

【青春をわれらに】(1956日活) わが愛しの伊藤雄之助は頑固オヤジではあるが好々爺なのであまり面白くない。やっぱりこの人は【プーサン】や【生きる】【いろはにほへと】などでの奇妙で怪しく明るさのカケラもない、世間の澱をいっぱいに呑み込んでいるような怪人役が似合う。春原監督はサラリーマン喜劇の名手だけに、南部産業社員のフランキー堺、柳谷寛、高崎産業社長の殿山泰司の小人物ぶりを描いて笑わせる。この頃の宍戸錠は豊頬手術前なのですっきりとした好青年。ちょっと嬉しかったのは市村俊幸がピアノを弾く場面があること。ジャズピアニストあがりの市村俊幸が映画で演奏する場面といえば、黒澤明監督の名作【生きる】が知られている。余命いくばくもない志村喬が酒場で知り合った怪しい作家(伊藤雄之助!)に連れられてキャバレーに繰り出す。そこでピアノを弾いているのが市村俊幸で、両手をフルに使ったド派手な『バンブル・ブギー』を披露する。【青春をわれらに】ではスタンダード風のアドリブをほんの少し披露するだけだが、それでも市村俊幸のピアノ演奏が収められているだけでも貴重であろう。ついでに、フランキー堺が詰めている宿直室にドラムセットが無造作に置かれているのも妙にオカシイ。

【猫が変じて虎になる】(1962日活) 徹頭徹尾ドタバタハチャメチャの喜劇映画。ごちゃごちゃし過ぎて冗長なところもあるが、小沢昭一と長門裕之の怪演にいちいち笑ってしまう。穴空き銅貨の眼帯(なんとアナクロ!)をした長門裕之がいちいち眼帯をはずして睨む。つまりダテ眼鏡ならぬダテ眼帯であります。長門裕之がかつぐギターが渡り鳥シリーズの小林旭のギターと同じなのもオカシイ。春原監督、随所で遊んでおります。また春原監督は落語好きらしく、馬五郎の死体にカンカンノウを踊らせるくだりは落語の『らくだ』そのまんま。半次に背負われていた馬五郎の死体が、途中で“自分で走り出す”という珍場面も。これは日本映画最初のゾンビではないか? コメディアンとしての長門裕之に瞠目。

【ジャズ娘誕生】(1957日活) 美空ひばり、雪村いづみとともに三人娘として一世を風靡した江利チエミ。心ならずも演歌の女王に祭り上げられてしまった美空ひばり、アメリカナイズされたポップス感覚の雪村いづみに比べて、もっともブルースフィーリングに溢れていたのが江利チエミだ。日本のダイナ・ワシントンと言ってしまってもいいだろう。コブシが効いたブルース。スタンダードやポップスを歌っても江戸前の小唄の香りに彩られている。劇中で『ブルー・ムーン』『カモナ・マイ・ハウス』を歌うがどれも実に味わい深い。この映画は筋などどうでもよくて、ただただ江利チエミの歌を堪能すればそれでよい。映画が終わった後、客席で懐かしそうに微笑んでいた老夫婦が印象的だった。 江利チエミの実力を再認識。

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