◇名文悪文ノート◇
このノートは私が今まで触れてきた本・漫画・映画等から好きな言葉を抜書きして、コメントしたものです。
皆さんにとっての「名文」「悪文」探しのきっかけになると嬉しいです。
2004 4/14

「なぜやめたんですか。
ぼくらならどんな意気地ないやつでも、
のどから血が出るまでは叫ぶんですよ。」

――宮澤賢治『セロひきのゴーシュ』


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友人から手紙をもらった。
宮澤賢治のこの箇所を引用して、「こんなふうになりたい」
と記す彼女にはっとする私。


2003 1/1

思へば遠く来たもんだ
此の先まだまだ何時までか
生きてゆくのであらうけど

生きてゆくのであらうけど
遠く経て来た日や夜の
あんまりこんなにこひしゆては
なんだか自信が持てないよ

――中原中也『頑是ない歌』


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新年が明けました。とうとう2003年。
年月というものは、本当に早く過ぎ去るものですね。
これから1年、どんな年になっていゆくのか、楽しみでもあり、
逆に、そら恐ろしい気もいたします。
これからの人生、「生きていく」と云う当たり前のことを、よくかみ締めながら、
1年を過ごしていきたいと思います。

1/2

百年前ぼくはここにいなかった
百年後ぼくはここにいないだろう
あたり前な所のようでいて
地上はきっと思いがけない場所なんだ

――谷川俊太郎『朝』


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あたり前なことをはっと気付かせてくれる、
それが詩の魅力でもあります。
昨日の新聞で、谷川&長谷川の対談が特集されていましたが、
谷川さんが「詩とは瞬間を紡ぐものだ」
とおっしゃっていて、なるほどと思いました。


1/3

風は或るとき流れて行った
絵のやうなうすい緑のなかを
ひとつの たつたひとつの人の言葉を
はこんで行くと 人は誰でもうけとつた

――立原道造『憩やひ』


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立原道造の詩は風景描写が独特で、
絶品の雰囲気を持っています。
ささやかないち風景が、奇跡の風景に変わる瞬間を
垣間見るような、そんな感じの詩です。


1/4

やっ!これは!
その言の葉が気に入ったり。
神明に誓ってがってん候だ。
だがちょっと黙って、シイッ!

――モリエール『孤客(ミザントロオプ)』


+++

…何だか、この台詞は一体どこの場面だったか、
すっかり記憶にございませんが…。(苦笑)
読んだ時、めちゃくちゃ「使ってみたいっ!」
と意味不明なことを考えた記憶があります。(笑)


1/5

去年あの子は小さな指を差し延べた。
あかあかと燃えているクリスマスの蝋燭へ。
あの子はそれこそ仕合せで、そして元気で利口だった。
小さな椅子から身を乗り出して
そして尋ねた、あれはお日さまなのか、って。

――イプセン『ブラン』


+++

今度は悲劇作品より。
この台詞だけで充分、
一つの詩に成り得る要素を持っていますよね。
なんとなく、中也の詩の『また来ん春』を思い出しました。
あの詩は私が中也を好きになったきっかけの詩で、
本当、切ない詩です……。

1/6

涙が胸に揺れていたあなただから
何もかも許されるべきだと思ってる
今にもこわれてしまいそうだと
あなたは自分の精神をおそれているが
ただそれだけでなく
見えないのは未来
――未来さえなければ愛してると言えるのに

――『少年の無情な流れ』銀色夏生


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恋の詩だけれど、何となくそれ以上の何かを想像させる詩。
ラスト二行のフレーズ、すごく好きです。


1/7

――いつもぼくのいうことを聞いてくれ、ベン。
いま、きみがぼくを黙らせてしまわなければ、
ぼくはきみの中でゆたかになっていく。

――カニグズバーグ『ぼくと(ジョージ)』


+++

温かくて切ない台詞rですよね、これ。
この物語を一気に大好きにさせた言葉です。

1/8

守られながら世界をじっとみつめる、
神様から見ればいくつになっても幼いある女の子、
その目で見つめたらちっぽけな、
でもすべてが新鮮に輝く世界。
そういう小さな物語だ。

――よしもとばなな『王国 アンドロメダ・ハイツ』


+++

物語のプロローグを語る言葉です。
彼女の作品のプロローグの言葉の選び方には、
いつも感服してしまいます。
時間の流れが沈殿した砂のように静かな物語です。


1/9

砂漠が美しいのはどこかに井戸を隠しているからだよ…。

――サン・テグジュペリ『星の王子さま』


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砂漠とは無の状態の中で勇を想う想像力の空間です。
ものに取り囲まれていないからこそ、
砂漠は最も純粋で残酷で、そして美しいのかもしれません。


1/10

それから私たちだけになったとき、
あなたは私に近寄って、ほんとうに小さな声で
私にお言いになったのでした――
「私があなたを愛することを許してください」って。

――ロマン・ロラン『愛と死との戯れ』


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ロマン・ロランと云えば、あの大長編『ジャン・クリストフ』で有名ですが、
そのロランの作品の中でも、
最も完成した作品の一つと言われているのが、この戯曲です。
フランス革命を下敷きにした話で、
私もこの戯曲を初めて読んだ時に深く感動して、
思わず目頭熱くなりました。
とても美しい物語です。


1/11

おなかをすかせたこどもは
おなかがすいているのでかなしかった
おなかがいっぱいのおうさまは
おなかがいっぱいなのでかなしかった

こどもはかぜのおとをきいた
おうさまはおんがくをきいた
ふたりともめになみだをうかべて
おなじひとつのほしのうえで

――谷川俊太郎『黒い王様』


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ひとめで好きになった詩です。
この詩は、パウル・クレーの「黒い王様」という絵のイメージから、
谷川さんが創作した詩です。


1/12

「つくられたものは、いつか壊れる。
つくられたその瞬間から、廃墟に向かって歩き始めている。
いつもどこかで世界は壊れている。
だから、壊されてく建築物を写すんだ。」

「世界は、はじめから壊れてるんじゃないの。
はじめから廃墟だよ。」

――寮美千子『ノスタルギガンテス』

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寮美千子さんの作品は、会話と自問がとても巧いと思います。
ニヒリズムなのに、突き放したような冷たさは感じないのですよね。


1/13

そうとも、お前は人生を
ゲームのように思ってる。

――アゴタ・クリストフ『星々を恐れよ』


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クリストフさんの戯曲で語られる言葉は、
深く真理を付いたジャックナイフのような鋭さがあります。


1/14

神に問ふ。
信頼は罪なりや。
果たして、無垢の信頼心は罪の源泉なりや。

――太宰治『人間失格』

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太宰はこれを、「信頼」ではなく「信仰」の意味で
使っていたのではなだろうか。
終始、聖書ヨブ記を読んでいるような感じがしました。


1/15

恩のやり取り、取り引きは人間社会で間に合ってゐるから、
ノラには御放免を乞ふ。

――内田百閨wノラや』


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だから猫は見ていて心地よいのである。
恩を忘れぬ犬は純粋に見ていて可愛いけれども、
「関係ないね」といつも飄々としている猫は、
見ていて可笑しみがあるというものだ。


1/16

かつて手品師がいた。
言葉も祈りも知らないような男だった。
教会へ行っても為す術のない男が、ある日、声を聞いた。
教会へ行って手品をしろ、という声を。
みんな来てくれ。みんな集まれ。
みんなに神への捧げ物を強いるつもりはない。
だってみんなの物は、いや、みんな自身は、神のものだから。
教会へ行って、手品をしよう。
私と共に歌おう、笑おう、なぜなら私は手品師だから。
私のすべてを神に捧げる。
彼はそう言って、教会に行き、手品をした。

――「THE JUGGLER」


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この歌詞は、『NARUNIA』と言うCDの曲からの抜粋ですが、
なんとあの、「ナルニア国年代記」の世界観を、イギリスロックで
表現したという、とても珍しい音楽です。
ナルニア世界観を表現したBGMは幾つかありますが、
中でもロックで表現した、というところがとても新鮮です。
曲の歌詞の中には、「アスラン」の言葉も語られ、
どの歌も終始、愛と美のナルニアの国への旅立ちを予感させるような
キリスト教的思想観漂う歌詞になっています。
その中でも私が、歌詞&曲共に気に入ったのが、
この「手品師」という曲でした。
新たなる物語を予感させるような歌詞って、
イメージが膨らんで素敵です。


1/17

許して、ぼくはこれより大きな声ではしゃべれない。

――ミヒャエル・エンデ『迷宮―鏡のなかの鏡』


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三十篇の連作の第一作目より。
『鏡のなかの鏡』は、エンデ作品の中でも、
『はてしない物語』や『モモ』に続いて好きな作品です。
まさにその世界観は、めくるめく意識の深遠へと続く迷宮のよう。
一篇づつ語っていきたいくらいです。


1/18

ぼくはあまりにも遠くに来すぎたみたいなんだ。
だから、名前なんてとうの昔になくしてしまったよ。

――C.W.ニコル『風を見た少年』


+++

この児童書、一年前くらいにアニメ映画化されました。
が、やはり本で読むべき作品だと思いましたね。
「名前のない」という枷を背負いながら生きる、
少年の哀愁がひしひしと伝わってきます。


1/19

おれたちの胸にはトム
流れてるミシシッピ
のんびりとと陽気に力強く
おれたちも歩こうよ
そうさ男の子はまわり道をしても
夢の海へ着けばいい
重たい靴など脱いで
生きようぜ

――「誰よりも遠くへ」より


+++

世界名作劇場『トム・ソーヤーの冒険』のテーマソングより。
小さいころトム・ソーヤーなどの冒険モノが大好きで、
このアニメも最後までわくわくと見ていました。
やっぱり憧れでしたね…。
冒険モノの主人公たちは。


1/20

ドノバン、僕に君の手を握らせてくれ。
僕はこの手を、君が、僕と一緒に洞穴に帰ることを
約束するまでは離さないよ。

――ヴェルヌ『十五少年漂流記』


+++

『十五少年漂流記』は『二年間の休暇』とも表題が訳されています。
このシーンは、ブリアンとドノバンの和解の場面です。
私はやはり、ドノバンがいちばん大好きでした。
アニメでは、ジャックの罪を被ったりもして、
いつもはつっぱっているのに、友人思いの正義感熱い青年です。


1/21

全てはいつかある時、無から生まれた。

――ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』


+++

無から有へ。
そうして大地も、世界も、ちっぽけな私自身も、地上に生まれた。


1/22

僕は何を考えていたのだろうか
――恐らくは忘却というようなことを。

――福永武彦『草の花』


+++

自分だけの孤独を持ち、己の孤独の重みを量り続ける人生。
忘却は人の自己防衛の手段の一つだと思います。
何だか久しぶりに読み返したくなってきたな。


1/23

時の翼に乗って悲しみは飛び去る。

――ラ・フォンテーヌ 『寓話』


+++

つまりは忘却の力のなせるわざなのだろうが…
う〜ん、この表現。流石詩人である。


1/23

だれの目にも見えるような、ものごとの表面ばかり
なぞっているうちは、おまえはけっして真実を語れない。
真実はものごとの奥にひそんでいて、
そいつは、たとえ話でなければ語れないものなんだよ。
真実を手づかみにすることはできない。

――ハンス・ベンマン『石と笛』


+++

このような真の現実としての真実を語るためのメルヘン、
という作者の考え方には賛成です。
それは歴史の真実にも似ていますよね。
たくさんの「たとえ話」として過去の歴史家たたいが築いてきた
歴史像のその奥から、真実を見抜かねばならないのと同じように。


1/24

何度も繰り返されることで言葉はその意味を失い、
言葉のもたらす痛みも薄らぐ。

――アゴタ・クリストフ『悪童日記』


+++

言葉も暴力も同じで、人間は耐性という能力により
全てを無意味化してしまう悲しい力がある。


1/25

うしろで誰かが見ているような気がして、
私はいつでも何かの態度をつくっていたのである。
橋の上で放心から覚めたのち、
私は寂しさにわくわくした。

――太宰治『津軽』


+++

小さいころ自分の作る影におびえたことがあった。
影となったもう一人の自分に見られている気がしたから。


1/26

人は生まれ育った街を離れてゆくほど
愛しく思うの何故だろう

――「郷愁」


+++

RAZZ MA RAZZ の歌詞の一節より。
「郷愁」という言葉、好きです。
人はどうしていつも失ってから大切なものに気付くのだろう。
失ってから大切なものを気付く日々で得たこと、
しかしそれがもし、物事の本質なのだとしたら…。


1/27


青空を仰いでごらん
青が争っている
あのひしめきが
静かさというもの

――吉野弘「争う」


+++

「静」という字の中に相対する語「争う」が入っている。
この新しき発見の喜び。

1/28

「どうして生きているの?」
君は僕に尋ねたけれど
答えを急ぐことはない
やがてわかるから

――「君を忘れない」

+++

松山千春「君を忘れない」の一節より。
最近こんな言葉につい反応してしまいます…。


1/29

その昔 世界が知らないことだらけだった頃…
ぼくらはすごく残酷で自分に忠実だった
僕らは知りたいことを知るために世界を駆け回り…
ムズムズとわきあがる悪魔の心に忠実に行動した

…自分の行動全てが将来につながるなんて
思ってもみなかった頃…
世界は僕らの感情に直結していた
それがたとえ家と幼稚園の間に
おさまっていた小さなものでも…

僕らは昔 王様だった!

――やまだないと『王様とボク』


+++

子どもの頃はよかったと
大人になって思うこともあるけれど…
私たちが子どもだったころ、
子どもは早く大人になりたくて仕方がなかった。
そんなことを思い出させてくれる言葉です。


1/30

今ぼくは六つで
だれにも負けないおりこうさん
だからぼくはいつまでも
六つのままでいたい

――A.A.ミルン

+++

ミルンの詩の中では、この成長の詩が一番好きでした。
あ、クマのプーさんの作者ですね。
今手元にないので全文思い出せないのですが、
一つになって ぼくは○○できるようになった
二つになって ぼくは○○できるようになった…
のように続いていく、とっても可愛らしい詩です。



2/3

「では、魂は、幸福以上に何を望むというんだろう?」
とわたしは性急に叫んだ。
彼女は小声で言った。
「聖らかさ…」
それはいかにも低く言われたので、わたしは、それを聞いたというよりも、
むしろそれと察したのだった。
あらゆるわたしの幸福は、いま翼をひろげ、わたしをのがれて、
空のほうへ飛び去ろうとしていた。
「きみがいてくれなければ、ぼくにはそれが得られないんだ」
とわたしは彼女の膝にひたいを埋め、
まるで子どものように、だがそれは悲しいからのことではなく、
愛の気持ちから涙をながしながら、ふたたび言葉を続けた。
「きみなしではだめなんだ、きみなしではだめなんだ!」

――アンドレ・ジイド『狭き門』


+++

この場面、本当に大好きですねー…。
ここで語るアリサの様子も、受け入れられないジェロームの苦悩も、
とてもよく表現されていると思います。
この訳は、私のお気に入りの山内義雄訳(新潮文庫)なのですが、
この場面一つをとっても、訳者によって、本当にガラリと雰囲気が変わってしまいます。
例えば、川口篤訳では、最後のジェロームの台詞が、
「きみなしではだめ…きみなしではだめ…」
と!マークが付かずに小声でつぶやくんですよね。
……う〜む……惰弱な。(苦笑)
今日立ち読みした古本屋の別の訳者さんでは、この台詞は、
「きみなしじゃいけない…」
みたいな感じでした。
やっぱり、山内訳が最高ですね!
ここはジェローム、叫んでくれなくっちゃ!


2/4

そしてそれが最後だった。

――N.ペック『豚の死なない日』

+++

ペックの文章は簡潔なところがよい。
このたった一文で、実に簡素に、あっけなく、そしてこざっぱりと、父の死を表現している。
その分、父の死の重み、主人公の気持ちなどが逆に伝わってくるものがある。


2/6

「ねえ、ぼくはなんだかこうやって、
いろいろ考えながら、二人で歩くのが、
いちばん好きかもしれない」
「ぼくも…」
「ぼくらはやっぱり、お互いの心以外のものを使って
しあわせになっても それは、
本当のしあわせじゃないんだね」

――銀色夏生『サリサリくん』


+++

銀色夏生の作品でもっとも好きな絵本が、これ。
いつ読んでも優しい気持ちになれます。
圧巻はラストの、『ちびくろサンボ』にも負けないくらいのホットケーキの山!


2/14

深夜というのはやはり、ただの夜とはひと味ちがった。
家も木も駐車場も車たちも。
なにもかもが眠っているように見えるぶん、
自分だけはたしかに目覚めていて、
見て、歩いて、足音を残して、生きている気がする。

――森絵都『宇宙のみなしご』

+++

深夜の神秘的な空気を見事にとらえた表現だと思います。
私も最近帰ってくることが遅いので、
よくこの感じをかみしめてます。


2/15

怪獣ってのはあれだな。
つまり、人間の都合で怪獣にならざるを得なかった生き物なんだ。
だから、怪獣は悲しいに生き物であって、形は恐ろしいけれど、
よくよく眺めると、哀しみと愛嬌が同居しているんだ。

――江宮隆之『カネゴンの日だまり』


+++

ウルトラマン怪獣を生みだした人の物語。
へドラは廃棄物のヘドロから、
ジャミラーは宇宙に取り残された飛行士の化身から、
ヒドラはひき逃げされた少年の化身から生れたもの。
全て人間の引き起こした悪や環境問題から生れた哀しい生物たち。
彼らが人間の醜さを一身に背負って醜い格好をしてくれていると
思うにつけても、人間として、身が引き締まる思いです。


2/16

どうして自分を責めたりするんですか。
他人が必要なときに責めてくれるんだから
いいじゃないですか。

――アインシュタイン


+++

いい言葉…。
高校時代好きだった言葉です。
自分に自信を持てと、自分という存在に勇気を与えてくれる
言葉のような気がしました。


2/17

1分間かしら
3分間だったのかしら
ああもう、100分くらいに思えたわ
あたしたち じっと みつめあった

――ヨーレン『月夜のみみずく』

+++

小さい頃から大好きな物語。
小さな女の子が、お父さんと二人でみみずくを森の中に
探しに行く、という、いたってシンプルな物語。
こうした静かな時の流れを描いた物語。
そういえば、最近、読んでいないな。


2/21

橋の上での放心から覚めたのち、
私は寂しさにわくわくした。
そんな気持ちのときには、私もまた、
自分の来しかた行末を考えた。
橋をかたかた渡りながら、いろんな事を思い出し、また夢想した。
そして、おしまいに溜息ついてこう考えた。
えらくなれるかしら。

――太宰治『晩年』


+++

最近、太宰の本をちらほらと読み返しています。
心に溜まったもやもやの状態に一番近い感覚が、
私にとっては太宰なので、その言葉にいちいち反応してしまう
自分を発見して、改めて感慨深くなっています。


2/24

思えば、後悔は全て返らない。
彼も孤独であり、ぼくも孤独であり、
しかもぼくらは愛し合うことが出来なかった。
それは何故だったろう。
ぼくに残るのは空しい疑問ばかりだ。

――福永武彦『草の花』

+++

日本人の作家さんの中で、文体がいちばん好みなのはだれか、
と問われれば、今のところ、多分私は福永武彦を挙げます。
この語りかけるような文体、
そして自問形式の文体、
そして何度も繰り返して反復する文体、
本当、見事だなあ…と読み返すたびに溜息ついたり。


2/27

いっそ、正義にとりつかれまいと用心することだ。
――辛い命を、てもなく愚かに生きようか。

――ランボー『地獄の季節』


+++

ランボーの散文より。
ホレました、この一文。
日常でも使ってみたいですね…コレ。(どんなふうにだ)


3/8

さよなら!さよなら!
そして明日の今頃は
長の年月見馴れてる
故郷の土をば見てゐるのです

さよなら、さよなら!
あなたはそんなにパラソルを振る
僕にはあんまり眩しいのです
あなたはそんなにパラソルを振る

さよなら、さよなら!

――中原中也『別離』


+++

なんとなくトップ絵のイメージ詩。
中也の詩って、どうしてこんなに叙情的なんでしょうねえ。


3/9

沈黙しているとき私は充実を覚える。
口を開こうとするとたちまち空虚を感じる。
過ぎ去った生命はもう死滅した。
私はこの死滅を喜ぶ。
それによって、かつてそれが生存したことが分かるから。
死滅した生命はもう腐朽した。
私はこの腐朽を喜ぶ。
それによって、今なおそれが空虚でないことが分かるから。
生命の泥は地に捨てられ、喬木を生まず、ただ野草を生む。
これ、わが罪だ。

――魯迅『野草』

+++

いきなり冒頭からノックアウト、やられてしまいました。
この文は、魯迅の『野草』という24篇からなる詩・散文の、題辞なんです。
元が漢文の文章って、日本語にするのは難しいですけれど、
この文章はまた綺麗ですね〜。さすが竹内訳。
魯迅の文学と云えばやはり『阿Q正伝』『狂人日記』『故郷』等を含めた
『吶喊』が有名ですが、それと同じくらい見逃せないのが、
この『野草』という散文詩集。
後の『吶喊』に続くような魯迅独特の人生観を描いた散文ばかりで、
一篇一篇読むたびに感嘆&感動にふるえます。
超お勧め。
…ですが、残念ながら岩波文庫ではもう絶版(…)なので、
興味ある方は、古本屋か近くの図書館で探してみて下さいませ。
(ちなみにもも天は、神保町で見つけましたv)


3/10

片隅に捨てられて 呼吸をやめない猫も
どこか似ている
抱き上げて 無理やりに頬よせるよ

――「ロビンソン」


+++

おなじみスピッツ「ロビンソン」より。
数々の名曲を生み出してくれたスピッツですが、
中でもこの曲、スピッツの中でいちばん好きです、私。
なんて良い旋律&歌詞なんだろう…。
これ聞くといつも元気になれますね。


3/19

狂人じみた沙汰などは
もう、影も止めぬ。

――ランボー


+++

なんだかまた最近バイオリズムが下がり気味。
なんだかなあ…。
三月、ほとんど本読んでません。
読む時間が無いわけではなくて、
読む気力が起きないというか。


3/20

「若しも俺に、千年に一歩ずつ進むことが
せめて許されるのだとしたら、
俺はもう 出発している筈だのに」
と自分の永久の不動に絶望して悲鳴を上げる
ダンテのあの囚人のように…

――ジイド『新しき糧』

+++

またもや惚れた一文。
あの囚人とは、云わずと知れた、彼の有名な
ダンテ『神曲』の囚人のこと。
どの囚人だろ…第八地獄の巨人のことかな…。
(自分で調べなさい)


3/21

僕は荒唐無稽のオペラと成り果てた。
僕は悟った。
どんな人間も幸福の宿命は持っていること。
つまり行為は人生ではない、
精力を濫費する一手段、
苛立ちを求める方法でしかない。
道徳なんかは脳味噌の堕落でしかない。

――ランボー『地獄の季節』


+++

「道徳なんかは脳味噌の堕落でしかない」
本当にそんな世の中だと思います。
どうして道徳的に正しいことを諦めて、
「現実」という正論を持ってきて理屈っぽい説明を
しようとするんだろう。
どうして大人は諦観の念を正当化して
理想を堕落とするんだろう。
そして何故正論や理想を「若気の至り」なんて卑劣な言葉で
締め出そうとするのだろう。
それは全くもっておかしいことだし、
醜いことだし、
ものすごく悔しいことではないだろうか。
「若気の至り」なんて言葉は、
それは同じ視線で端から論じる気はなかったという
気持の表れにすぎない。
そしてそんな大人になんかはなりたくない。

3/22

「おまえがあの男に対して感じているのは、
愛なのか、それとも憎しみなのか、どっちなんだ、フラビア?」
「さあ、わからないわ。
きっとその両方なんでしょうよ。
どっちでも同じことよ。
どっちみち、わたしはあの人のものなのだから。」

――サトクリフ『ともしびをかかげて』


+++

ものすごく大好きなやりとりです。
この場面。
そして私が描きたいと思っているような、
「祈りの文学」の理想の世界観をかもし出していると
思っています。



6/8

――やっぱり、I was born なんだね――
父は怪訝そうに僕の顔を覗き込んだ。
僕は繰り返した。
――I was born さ。受身形だよ。
   正しく言うと人間は生まれさせられるんだ。
   自分の意志ではないんだね――

その時、どんな驚きで、父は息子の言葉を聞いたか。
僕の表情が単に無邪気として父の眼にうつり得たか。
それを察するには、僕はまだ余りに幼かった。
僕にとってこの事は文法上の単純な発見に過ぎなかったのだから。

――吉野弘『I was born』


+++

中2の時にはじめてこの詩を知って、以来大好きな詩です。
当時、この詩にえらく感動した覚えがあります。
詩は散文のようなので、全体はもっと長いものです。
「生」について、父と幼い息子の何気ない会話が胸を打ちます。
詩の最後で、実は「僕」の母親は彼を生んで亡くなったことが分かります。

余談ですが、塾の英語の授業で、
生徒さんに初めて出てきた「受身形」の感覚を掴んでもらうために、
私はまずこの詩を紹介して、「受身」の話をスタートします。
分かってくれるかどうかは疑問ですが。(苦笑)
(でも一応、「ふんふん」と頷いてくれるので反応はあります。)

一見工夫しているように見えるが、あくまで「国語」担当専門として、
「英語」の授業すらも「国語」風味に持っていきたい教師の我儘とも云えよう。(…)

6/7

「なさけよ、人道よ、恩義よ、さようなら……
人の心を喜ばすすべての感情よ、さようなら!
……わたしは善人に報ゆるため、神に代っておこなった……
さて、いまこそは復讐の神よ、悪しき者を懲らすため、
御身に代っておこなわしめたまえ!」

――アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』


+++

『モンテ・クリスト伯』と云えば、日本では『巌窟王』の名で有名な物語。
無実の罪で牢獄に13年間もぶち込まれていたエドモン・ダンテスが、
脱獄し、自分を陥れた者たちをひとりひとり復讐していく話です。
この台詞は、ダンテスが、自分を陥れた者どもへの復讐を誓わんとする場面。
この台詞を「かっこいい〜〜vv」と思ってしまうのは私だけ?(笑)
テーマが「復讐」だけに、
「仇討」が好きな日本人には結構受ける話ではないかと。(苦笑)

最近映画化されましたね。一寸前に観ました。
途中までは美しいパリの貴族社会の雰囲気ばっちり出ていて、
凄くいい感じ♪…と思っていたのですが・・・が、ラストがショック。
喜劇物語に変更されちゃっているじゃないかあ〜〜…!!(不満らしい)
大好きなラスト一文「待て、而して希望せよ!」の名台詞も割愛されてたし、
ダンテスが自らの復讐心により犯してしまった罪に対して、
まるでラスコーリニコフのように苦悶する場面もないし…!
…まあ、映画化に当たっては喜劇で終わらせた方が後味はよいのかもしれませんが。

原作は全7巻と長いですが、面白いですよ〜!
流石、『三銃士』作者だけあります。
全部読破したら、そのうち本棚にアップしますねv

6/6

天地は極みなきものを
月日は巡るみずぐるま
人がこの世にある事は
風に吹かれる塵に似る

――曹植『薤露行』

+++

松下緑訳『「サヨナラ」ダケガ人生カ』(集英社)より。
元の詩は曹操の三番目の息子の曹植の作品の一部。
書き下しは、
「天地窮極無く
陰陽転じて相因る
人一世の間に居ること
忽ち風に吹かるる塵の若し」
漢詩を戯訳して、七・五調にするという試みはとっても
面白いですね。この本、結構オススメですよ〜v
ちなみに書物の題名は、有名な井伏鱒二訳
「花に嵐の例えもあるぞ/さよならだけが人生だ」
をもじったもの、というのはお気づきかと思います。

6/5

僕は黙ったまま、
光の当たらない美しさとは何だろう
という思いにふけった。
光がなくても、
それでも蝶は美しいのだろうか?

――ブルック・ニューマン『リトルターン』


+++

「見えないもの」の美しさ。
それび気付くことはある意味、
「見えないものを確信し、見えるものを確認する」
『信仰』と近いものがあるのかもしれない。
6/4

さだめなき 
ものの虞(オソレ)の来る如く
胸ゆらぎして
街をいそげり

――斎藤茂吉


+++

おお、と思った斎藤茂吉の短歌。
何だか物語が生まれそうな雰囲気です。

6/3

夢、ただたそがれの夢、
1日の喪失が涙で
心の喪失を記しとどめた失われた日々の
なつかしい思い出の映像だけ。
涙と喪失と破れた夢は
たそがれにあなたの心を見つけるだろう。

――サンドバーグ『たそがれの夢』

+++

アメリカの詩人、サンドバーグ『シカゴ詩集』より。
好きな言葉があって、彼の「詩の暫定的定義」の中で語られる、
彼なりの詩の定義です。
「詩とは、説明できぬほどすばやく地平線に消えて行く生命の、
一連の説明である。」ということば。
もしくは、「詩とは、雁の渡りで暗くなった空である。」とか。
日常の微妙な感覚を歌った詩が多くて、結構好みです。

6/2

手を出せば逃げて行く
姿を変え消える 人が捨てた夢よ
失って気がついて
たずねる夢いずこ やがて人の胸に

――「夢光年」


+++

アニメソングのクラシックになりつつある名曲。
「宇宙船サジタリウス」のエンディング主題歌です。
歌っているのは、なんとあの影山ヒロノブさん。
ギターアレンジしたヴァージョンが、もうめちゃくちゃ素敵で…!
CDの音だけを頼りに、今懸命に無駄に練習中です。(苦笑)
まだコードも覚えていない奴がなんと無謀な。
ああそれにしてもなんて良い曲&歌詞…v

6/1

「何者の名において、僕は行動しているのか?」

――サン=テグジュペリ『夜間飛行』


+++

まさに今、命を落とさんとしている操縦士を思って、
苦悶する支配人リヴィエールの心の叫び。
支配する者の哀しみは、自分自身の責任以上に重い。

5/31

ぼんやりと見つめるぼくの目の前で、
その光景は古びた活動写真のように美しく夜の闇に映し出された。
そしてそれはまた、決して巻き戻すことの出来ないことから来る、
残酷で儚い、滅び行くものの美しさをぼくに感じさせた。
遠すぎて二人の声は聞こえないし、
暗すぎて二人のはっきりとした表情は分かるはずもないのに、
ぼくは全てを了解して、
ひとコマの活動写真を食い入るように見つめていた。

街頭の薄明かりは二人を映し出す照明に変わり、
広場は巨大なスクリーンとなり、全ての音は世界から消え、
ぼくはこの世でただ一人の観客となった。

――???


+++

…月末は自分の文章から、という妙なルールを実行すべく、
書き途中の小説から一節…。
もはや完成しないかも・・・と無力感に打ちひしがれてます。
友人のあいびき場面、発覚!のシーン。(一寸違うけど。)

5/30

晩に向かいて 意適わず
車を駆りて 古原に登る
夕陽 無限に好し
只だ是れ 黄昏に近づく

――李義山「楽遊原」


+++

夕闇が近づくにつれて、私の心はかきたてられる。
だから車を走らせて、楽遊原に登ってみた。
すると夕陽はどこまでも、どこまでも美しく、
一面ひたすらに、たそがれ時に近づいていく、今。

自分訳ですが、こんな感じの詩。
美しいですよね。
この詩で思い出すのは、トルコで見た、大草原に沈む夕陽。
地平線の見える一本道を、バスでひたすら走っていくその先に、
夕陽がくるくると沈んでいきました。
まるで私たちが夕陽を追いかけて遠くにやってきた旅人みたいでした。

4/14

行為の善悪を《判断》せずに行為しなければならぬ。
善か悪か懸念せずに愛すること。
ナタナエル、君に情熱を教えよう。

――アンドレ・ジイド『地の糧』


+++

誰もが青春というものを振り返って鑑みるに、
「青春とは如何にバカになれるかだ」という意見をよく聞く。
そして若さとは如何に情熱を燃やすことが出来るかということだ。
何かを行うことに理由や理屈をつけなければ出来ないものならば、
それは本当に「好き」ということではない、とも聞いたことがある。
私自身はどうだろうか?
モノを書くことに、理由をつけてはいないだろうか?
今書きかけの小説の登場人物で、自分の分身まがいの主人公に、
気付いたらこんな言葉を云わせている自分がいる。

――ぼくはそう信じている。というより、そう思わずには居られない。
そうでなければ何故、この未だ不安定で未知なる前途への希望と、
沸き起こってくる溢れ出さんばかりの、この夢への渇望を説明できよう?

結局自分を鼓舞しているだけかもしれないけれど。
進路が決まらない私にとっては。

7/14

人間があれほど破壊と混沌を愛するのは、
目的を達し、自分たちが創っている建物を
完成するのを、自身、本能的に
恐れているからではないだろうか?

――ドストエフスキー『地下室の手記』


+++

この言葉を読んで思い出したのは、
以前「箱根の森美術館」に行ったときに、
ピカソ展で読んだピカソの言葉。
記憶が薄れて曖昧なのですが、たしか
「絵を完成させる?そんなことをするなら死んだ方がましだ」
というような言葉だったと思います。
人はモノを完成させることが目的なのではなくて、
完成させるまでの過程こそが全てなのかもしれません。
人の人生と同じように。

7/13

いや、諸君、問題が一覧表だの、算術だのというところまで
行ってしまって、二二が四だけが幅を利かすようになったら、
もう自分の意志も糞もないじゃないか?
二掛ける二は、ぼくの意志なんかなくたって、やはり四だ。
自分の意志がそんなものであってたまるものか!

――ドストエフスキー『地下室の手記』

+++

思わずそうだそうだ、と頷いてしまった一文。
二二が四なのはあくまで結果であって、
そこまでの過程こそが本当に大切なことなのでせう。
二二が四の世界を脱却できるような人間になりたいです。

7/12

あいつは何者だ?と問われて
なまけ者だ、と答える。
自分についてこんな評言を聞けたら、
さぞかし楽しいことに違いない。

――ドストエフスキー『地下室の手記』


+++

強烈な印象を残す、最大のアンチ・ヒーローが主人公。
面白かったーー!!彼の行動パターン・思考回路にいちいち抱腹絶倒です。
しかしラストに近づくにつれ、今度は何だか憐れに思えて、
素直に笑えなくなってしまいました…。
この作品以後、彼の文学観・人生観がガラリと変わったと
云われています。

それにしてもドストエフスキーの文学作品は、やはり一味も二味も違います。
なんというか、地に足がついた不動の大巨人というか、
どの作品もテーマや問題意識がものすごくはっきりしているというか。
一文一文がどっしり重みを帯びていて、飛ばし読みを決して許さない雰囲気。

7/5

ぼくはナポレオンになりたかった、そのために人を殺したんだ……、
これでわかるかい?

――ドストエフスキー『罪と罰』


+++

この台詞は……恐らく私の脳裏に焼きついて、一生離れることはないと思います。
それほど、これをソーニャに語ったラスコーリニコフの思想は私にとって、強烈でした。
ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだあとは、必ず、是非誰かと感想を語り合いたい、
ラスコーリニコフの殺人にいたる心情と苦悶を誰かと語り合いたい――、
そんな衝動を、読者に必ず感じさせます。

一昔前、日本でロシア文学が流行していた頃、盛んに日本の文学青年たちが
サロンを開いて議論したくなった気持ちに、物凄く共感できます。
好きな小説は、と聞かれたら、私の中で、間違いなく上位五位の中に入る作品です。


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2002 10/1

ひとは なんのために生まれたか
ひとは ひとを喜ばせるために生まれた

 大芸術家にはなれない
政治家も無理
学者になるには勉強が不足
考えあぐねて
ぼくは 絵本や童話や漫画をかいた

日暮れて はるかに道は遠いが 
好きな仕事をしているから
ぼくは毎日 うれしかった。

――やなせたかし『ぼくの生き方』

+++

人を感動させる言葉というものがあります。
やなせさんのこの言葉を読んだときは純粋に感動したものです。
そして同時に、この言葉は、こんなふうに生きてみたいという
私にとっての座右の銘にもなったのでした。

10/2

どこへゆこうという
あてもありませんでしたし
どこでなにをしようという
つもりもなく
ただ
どこかへゆけば
なにかがあるだろう とおもって
ぼくはいつも
たびをつづけてきたのです

――舟崎克彦『ほしのたびびと』


+++

今年の夏は二度、大きな旅にでました。
一度目は中国。南京、無錫、蘇州、上海の都市を列車でまわりました。
二度目はマレー半島。シンガポールとマレーシアを、
マレー鉄道に乗って旅しました。
すっかりアジアンな夏を過ごしたのですが、
今年こそ本気で中国語を学びたいと感じました。
なんのことはない、旅行のためにです。
そうすれば、あてのない旅を存分にすることができるだろうから。
夢は本気で世界旅行です。

10/3

意味だって…?
今 雪が降っている
そのことに
何の意味が
あるというんだい?

――チェーホフ『三人姉妹』


+++

私をチェーホフ好きにさせた一言が、これ。
私はものごとの定義付けとか、理屈をつけたりとかが結構好きですが、
時々、全てを曖昧の海に沈めたくなります。
「無計画の計画」という言葉があるように、
無意味の意味もまた、意味あることなのでしょう。


10/4

はきつぶしてきた靴の数と
同じだけの夢たち
時には見失って探して
やがて追いつき
この道わが旅果てしなく続く
出会いと別れを繰り返しながら…

今 星空の下でたたずみ
遥かな想いを抱きしめる
温もり続けてる夢たちと
影法師が 道連れ
雨も風も日照りも嵐も
友達だった

――ドラクエテーマ「この道わが旅」


+++

ドラクエ。本当に素晴らしい世界観です。
一人の勇者に仲間が集い、ともに旅をし成長していく…
いろいろな人生が描かれていますよね。
そして、華やかさだけではなくて、勇者としての青年たちの孤独と悲哀も。
華やかさに見え隠れする、その緊張感と孤独の影が、
何よりも私がドラクエをこよなく愛する所以なのです。


10/5

暑さの中で――真っ昼間の事だけれど――
世界がすきとおって見えてくる事が
あるんだよ

――ミヒャエル・エンデ『モモ』

+++

「世界が透き通る」という美しい表現にとても惹かれました。
普段の世界が違って見える瞬間。
それは、美しくも儚くて、瞬間の中の永遠の時間と
同じようなものなのかな、と思います。


10/7

太陽は、明日の太陽は、
なんというだろうか。
僕にはわからない。

――チェンジェライ・ホーヴェ『影たち』


+++

一目見て気に入った表現。
畳み掛けるような文体が好きです。
他に、自問するような文体と、対句法を巧みに使った文章。
どれも読む者に文章のリズムを感じさせ、
文体の旋律のような雰囲気をかもし出すことが出来るからです。

10/8

「しかしわたしにはその場所が分からない」
急に、ことの過ぎていく早さを悲しく思いながら、
アクイラは言った。
物も人も、なんとすばやく通りすぎてしまうのだろうか。

――サトクリフ『ともしびをかかげて』


+++

再び好みの自問する文体から。
サトクリフはこのような格調高い文体が多くて、
そのかもし出す雰囲気は絶品です。
年齢によって過ぎ去るものの認識は、
徐々に変わっていくのではないかと思います。
私の場合はまだ子どもで、時間が過ぎていくのは
早すぎると嘆いているのですが、本当のところ、
過ぎていくものは時間ではなく私たち自身なのでしょうね。


10/9

緑の草に抱かれて
手のひら枕に少し眠ろう
何を急いで生きてきたのか
こんなに静かな空の下で
流れる雲が昔話を
つぶやきながら過ぎてゆく

――「時の旅人」


+++

ドラえもん映画「日本誕生」のテーマソングより。
ドラえもん映画のテーマソングでは、武田鉄也は泣かせてくれました。
かみ締めるたびに味のある、本当に素敵な歌詞ですよね。


10/10

夜を引きさくネオンの閃光が
ぼくの目を射るとき
ぼくは沈黙の音に触れた

――「サウンド・オブ・サイレンス」


+++

サイモン&ガーファンクル作詞作曲 sound of science より邦訳です。
言葉の選び方が本当に美しいですよね。
これを彼らの素晴らしい歌声に乗せて歌われるのですから、
もう、雰囲気は最高です。
外国の歌詞の翻訳は、時として少したどたどしいながらも
素敵な日本語を紡ぎだすことがあるので、
結構歌詞カードなどにも注目してしまいます。

10/12

「私は花火のことを考えていたのです。
我々の生のような花火のことを。」

――芥川龍之介『舞踏会』


+++

芥川は、「生」を仏語のヴィと読ませています。
短編『舞踏会』の有名な一節です。


10/13

誰もが泣きたいほど一人で
それでも誰かをまた求めて
抱かれ続けたいのは僕の方だった

自分さえ愛せずに
彷徨っている僕が悔しいよ…

――「orion」


+++

RAZZ MA TAZZ の「orion」の一節より。
彼らの歌詞は、心に痛みと安定を与えてくれる
歌詞が多いと思います。


10/14

生きるために胸に思い描くものと、
目覚めれば消えてしまうものが、
何故同じ「夢」という言葉なのだろう…。

――重松清『定年ゴジラ』

+++

「夢」という言葉の持つはかなさを感じずにはいられません。
「夢」という字に、人の意味を表す「人偏」をつけて
「儚い」と読むことからも象徴しているように。


10/17

泣笑いしてわがピエロ
秋ぢゃ!秋ぢゃ!と歌ふなり。

Oの形の口をして
秋ぢゃ!秋ぢゃ!と歌ふなり。

月のやうなる白粉の
顔が涙を流すなり。

身すぎ世すぎの是非もなく
おどけたれどもわがピエロ、

秋はしみじみ身にしみて
真実なみだを流すなり。

――堀口大學「秋のピエロ」


+++

秋です。
詩の朗読の似合う季節がやってきました。
秋とピエロ。
はかない季節に、はかない笑顔。
まさに秋の情緒を言い得ていると思います。


10/18

日が暮れかけていた。
これは私の語りたくない時刻だった。
この名の無い時刻に、沈黙を連ねた刑務所の
各階という階から、夕べの物音が立ち昇ってゆく。

――カミュ『異邦人』


+++

何とも印象的な表現でした。
私は夕暮れと云うものが大好きです。
一面に橙色に染まっていく様も、
人や建物がシルエットに染まる様も。
太陽が妖しい光を放てば放つほど、
自然への畏怖を感じます。


10/19

ものうさと甘さがつきまとって離れない
この見知らぬ感情に
悲しみという重々しい、
りっぱな名をつけようか、
私は迷う。

――サガン『悲しみよこんにちは』


+++

思わず感嘆のため息を漏らしてしまったほど
感動した、若き天才美女サガンの美しき冒頭です。
何度も読み返したので完全に暗記しちゃいましたよ…。
これが彼女の若干十八歳の時の処女作とは…!
ランボーといいラディゲといいサガンといい、
フランス人の青年たちの頭の中は一体どうなっているんでせう。
ジイドに嵌ってからというもの、フランス青春文学系の
自問形式の一人称が、私にとって理想の文体だなあと
漠然と気付いたのですが、
む〜う、逆立ちしたって、私にはこんなの書けませんよ…。


10/20

今日こそわが青春はめぐって来た!
酒を飲もうよ、それがこの身の幸だ。
たとえ苦しくても、君、とがめるな。
苦いのが道理、それが自分の命だ。

――オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』

+++

簡単に解説すると、この四行詩集の言いたいことは、
「人生は空しいから、酒飲んで忘れて楽しんじまえ〜」
てな感じです。
『ルバイヤート』は、私にとってかなりお気に入り詩集の一つです。
少し中国の唐詩(特に李白のような)然としていませんか?
ちなみに、O・ヘンリーと並ぶ短編の名手として名高い
イギリス作家サキのペンネームは、
この『ルバイヤート』に出てくる「酒姫(サーキィ)」から取ったらしい。

10/21

どんな不幸も起こらば起これ。
この身の素性が、いかに賤しくあろうとも、
それを知ろうと心に決めた、
わたしの気持ちは変わりはせぬ。

――ソフォクレス『オイディプス王』

+++

私は戯曲文学が結構好きなので、まあまあ読む方なのですが、
いまだにこの『オイディプス王』を読んだ時の衝撃を
越えるような戯曲にお目見えしていません。
内容は有名なので読んだことなくてもご存知でしょうが、
まあこれに勝る悲劇はない!というくらい悲劇的で衝撃的なのですが、
何よりその心理描写と物語の展開の仕方の呼吸が大変見事で…!
古代ギリシア文学の戯曲と云い、叙事詩と云い、
なんなんだ、この見事さは…!!と舌を巻くばかり。
ギリシアものに限らず、戯曲文学は表現の参考にもなるし、お勧めです。
私的お勧めはイプセンやチェーホフ。モリエールなんかもまた良し。

10/22

どうやら僕は、
いつもいつも死に憑かれて、
都会から都会へと
放浪していたのかもしれない。

――福永武彦『未来都市』


+++

福永氏の大好きな短編より。
なぜか「彷徨えるユダヤ人」の一節を思い出しました。
常に死と生の狭間を見つめる福永武彦の文体は、
いつも鬼気迫るものを感じさせます。


10/23

「ねえ、あけすけに言ってあげましょうか?
あなたっていうかた、文士かたぎをぴんからきりまで
持ってらっしゃるのね。
見栄坊で、嘘つきで、野心家で、移り気で、利己主義で…」
「痛み入ります」
「ほんとになかなか凄いもんだわ。
でも、立派な作家にはなれないわね」
「と言うわけは?」
「人の言うことをお聴きにならないから」
「あなたのことなら、謹んで拝聴しているつもりだが」

――アンドレ・ジイド『贋金つかい』


+++

作家志望の男の子ロベールと、彼を慕うリリアンとの会話より。
こんな会話大好きだ〜vvv
『贋金つかい』は、登場人物や雰囲気が最高です!!
今は絶版なので入手は難しいですが、イチオシのお勧め作です。
ジイド唯一の小説である、この『贋金つかい』は、
私が一つの到達点として目標にしている小説でもあります。
登場人物が多いのですが、それぞれ個性的な青年たちが
登場して、彼らのイメージもまた初々しくて!
こんな素敵な訳に生まれ変わらせた山内義雄氏にも乾杯です。


10/25

「しかしね、本当の所は、
過ぎてゆくのは<時間>ではないのだよ」
「違うの?」
「過ぎてゆくのは、わしらの方なのだ。
わしら人間がいなければ、
<時間>には長針も短針もいらんのだよ」

――ヨースタイン・ゴルデル『カエルの城』


+++

時間と私たちの存在の、
まさにコペルニクス的転回とも云える名文。
見事だと思いました。


10/26

あたしの魂?
それが何かということさえ、
もう あたしには分からない。

――アゴタ・クリストフ『灰色の時刻、あるいは最後の客』

+++

アゴタ・クリストフの会話の巧さにはいつも脱帽します。
物語全体を包む雰囲気は空虚な虚無観の
ようなものが感じられるのですが、
実際はニヒリズムでもペシミズムでもない、
冷めた文体の中に独特の温かさが感じられる、
そんな不思議な魅力を抱えた作家です。


10/27

泣かないで。
まだ物語は終わったわけじゃないよ。

――ポール・スチュアート『崖の国物語』


+++

この短い言葉だけで、色々と物語を創造して膨らませる
ことが可能な一文だと思います。
このような無限の可能性を秘めた簡単なひとことって、
意外と書こうとしても思いつかないものですよね。


10/29

止めることのできない時間は
惜しむためだけでなく、
美しい瞬間を次々に
手に入れるために 流れていく。

――吉本ばなな『身体は全部知っている』

+++

心に飛び込んできた名文でした。
素敵な日本語だなあ…て。


10/31

地に伏して祈り
僕らの旅はそれなり終わった

何がこんなに悲しいのか――僕らは感じていた
悲哀と楽天性と過去と現在を

そして地平線は病んでいた

――ボヘミアンの詩

+++

…月末は、自作の文章よりご提供いたします。(傲慢な)
この散文は、改装前に載せていた創作部屋にありました、
「ボヘミアンの詩」より一部抜粋です。
ボヘミアンとして放浪した男の半生を、
流れてきた詩によって回想していく話。


11/1

人は全て死ぬだろうし、僕もまたそのうち死ぬだろう。
そんなことは初めから分かっている。
ただ、人はそれがいつであるのか予め知ることが出来ないから、
案じて日々の生活の中に、それが生きていることだと悟ることもなしに、
空しく日々を送って行くのだ。

――福永武彦『草の花』


+++

手記の冒頭より。
圧倒的存在感を放つ文章で、はじめて読んだときは目が釘付けになりました。
「書く」という行為が、このように死を案じながら、
空しく日々を過ぎていく私たちにとっての、
唯一の抵抗手段なのではないかと、
そんな気がします。

11/5

僕の怠惰?
僕は『怠惰』か?
僕は僕を何とも思わぬ!

――中原中也『蝉』


+++

中也の詩は、静かに燃える熱い炎のような詩が多いと思います。
自分自身の深い信念と強い意志があるからこそ、
その真剣さと真摯さに、人は心からの感動を覚えるのでしょう。
私自身はといえば、ともすると自信の失いかける毎日に、
『怠惰』という言葉は深く心に突き刺さります。


11/6

誰もが通ってきた道だと言うのなら
主人公なんて始めからいらない

――ゆず「終わらない映画」


+++

私は今まで、やりたいことをやってきたつもりでも、
本当はむしろ、できないことをしてこなかっただけなのかもしれない。


11/11

地球が二つに割れればいい
そして片方は洋行すればいい
すれば私はもう片方に腰かけて
青空をばかり――…

――中原中也『この子児』


+++

初めて読んだときにとても良い詩だなあと心に染みました。
私にとって、遺書に残したい言葉ですね。


11/29

僕のひとみが遠い街の
夕焼け見たいと言うのです
僕の唇が知らない人と
話がしたいと言うのです
僕の足が流れる雲を
追いかけたいと言うのです

だから旅に出た 旅に出た
明日という名の街をめざして

――「君がいるから」


+++

ドラえもん映画「パラレル西遊記」テーマ曲より。
トルコでは、本当に毎日のように車窓から草原や山々に
沈む夕焼けを眺めていました。
以下は私の旅行日誌より。
「……そして日が沈むとあっという間に車内も暗くなりはじめ、
西の空では日没の余韻の陽がほのかに光っている。
だんだんと東に見える月の色がはっきりと映えだして、
これから夜に突入する。
車内にライトが灯る。
5時5分。
もうすっかり、宵闇である。

――宵闇や 忍びて肩を たたくは誰そ 」


11/30

遠くに行きたいと思っていた。何処でもいいから遠くへ。
それは逃亡と云うひどくつまらない望みとは異なる、
絶望的な祈りから来る一種の願いだった。

――orion


+++

…月末は、自作の文章よりご提供いたします。(傲慢な)
この一文は10月くらいから何となく構想を練り途中の小説の一部。
男の手記を辿る形式で、その冒頭部分です。
テーマ的にはすごく書き上げたい内容なのに、
どうして中々思っているような雰囲気が出せない。
自分自身の能力の限界を感じますね…。
今年中に書き上げるのは…無理か…。

12/1

ああ汝 寂寥の人
悲しき落日の坂を登りて
意志なき断崖を漂泊(サマヨ)ひ行けど
いづこに家郷はあらざるべし。
汝の家郷は有らざるべし!

――萩原朔太郎『漂泊者の歌』


+++

この朔太郎の詩は「自然の背後に隠れてゐる」
に次いで大好きな詩です。
なんだか合唱曲「流浪の民」の雰囲気を彷彿させます。

12/2

憧れや名誉はいらない
華やかな夢も欲しくない
生き続ける事の意味
それだけを待ち望んでいたい

――山下達郎「蒼氓」


+++

「蒼氓」とは無名の民のこと。
この「蒼氓」の歌詞は、私が描いてみたい
時と夕暮れのファンタジー観の全てを語っているように思えます。


12/4

船に乗って遠くへ行きたいな
昔ここで見かけた白鳥みたいに
人は大地にしばりつけられて
世にも悲しげな声を上げている
この世で一番悲しい声を

――「コンドルは飛んで行く」より

+++

サイモン&ガーファンクル作詞「コンドルは飛んで行く」より。
元はペルーの民俗音楽である「EL CONDOR PASA」から。
彼らの歌は聴くたびに心地よい感動を覚えます。


12/6

「君のピアノって気合が入ってるんだろうね?」
気合? ぼくは思わず笑う。
モリーも笑い返す。
「気合さ。どうかした?
もうそんな言い方しないのか?」

――ミッチ・アルボム『モリー先生との火曜日』

+++


不治の病に冒されたモリー先生と生徒「ぼく」との、
何気ない会話の一場面です。
「生きる」根本的な哲学を、等身大で教えてくれる素晴らしい本です。


12/7

野原でひとりぼっちだったことがあるかい
蛍が描いてく文字がみえるんだよ
ねころぶと
満天の星だ

それともこれは……

――銀色夏生『憂いに満ちた満天の野原』

+++

言葉と言葉の見えない間隔の間がとても美しいです。
一言一言呼吸を止めて、思わず想像してしまいます。
その景色を、その気持ちを。


12/8

音楽にこれほど魅了されても彼はまだ動物なのであろうか。

――カフカ『変身』


+++

私たちは何故「動物」とは云わず、「人間」と云うのか。
人間を人間たらしめているものは、一体何なのだろうか。
ある日突然巨大な毒虫に変身してしまったグレゴール・ザムザの
あまりに有名過ぎる物語の一節で、最も好きな言葉です。
カフカの作品に「何故?」はありません。
不条理で冷徹なその事実の中で、
不可解なまま主人公が翻弄され続ける様が、
「ダークな笑劇」的な印象を読者に与えるのでしょう。


12/9

奇跡とは目に見えるものではなく
心の内側に降る雪のようなものなのかもしれない
それはやがて積もり
春の訪れとともに溶けていく

――辻仁成『ミラクル』


+++

奇跡とは目に見えない所で時間をかけて重なった事象の瞬間。
目に見えにくいので人はそれを奇跡と呼ぶけれども、
本当は軌跡なのかもしれません。
無心でしんしんと降り注ぐ雪のように。

この一文は、初雪の日に捧げるバラードにしようかと
思っていたのですが……
まさかこんなに早く初雪が降るとは…!
完全に季節が前倒しになってますよね…。

12/10

人が表情を作ることが出来るのは、
真正面から見せる顔だけだ。

――宮部みゆき


+++

真の感情は理性では隠しきれない。
物事の本質は、斜めから見て初めて分かるのだろう。
成る程、と思った一文。


12/11

それは本当に不思議な現象だ。
ある時は遠くまで見えていたのに、
次の瞬間には何も見えなくなる。
見ていたものが消えたのか、
それともまだそこにあるが見えないだけなのか、
どちらなのだろうと僕は不思議に思った。

――ブルック・ニューマン『リトルターン』


+++

光の当らない美しさが存在する不思議。
自分の足元に影が在ることに気付いているだろうか。
当たり前のことに私たちはどれだけ気付かずに
素通りして生きていることだろう。


12/12

僕は話す。君は真面目な微笑をもらす。
時間は存在しない。
君は僕の語るにまかせる。夕暮れが来る。
黄昏を秋のやうに見せる黄色い光の中を僕等は散歩する。
僕等は谷川に沿って行く。
しわがれ声の鳩が濃緑のポプラの木で啜泣く。
僕はしきりに喋る。君はまた微笑する。
幸福は沈黙する。
夏の終りの暗い小径から僕は貧しい敷石道に入る、
青い煙を吐く暗い戸口を飾る夕顔の花の側に蔭が蹲っている。

――フランシス・ジャム『哀歌』

+++

フランシス・ジャムは私の大好きなフランス詩人の一人です。
何故かフランス詩人に惹かれることが多いです。
ランボオとかコクトーとかボオドレエルとかアポリネールとか。
自然派詩人ジャムの詩は、素朴で切ないファンタジー的雰囲気を
持っている詩が多いです。
この詩は堀口大學訳の『月下の一群』からの抜粋。
この詩集はフランス系詩人ばかり集めた美しい詩ばかり。
まだ未読の方は是非!上田敏『海潮音』に並ぶ名訳ですから!
そしてジャムの詩集ならば、今は絶版ですが、
岩波文庫の散文詩『夜の歌』が個人的には超お勧め。
「誕生の夜」から「妖精の夜」まで、夜が歌って聞かせる31の夜想曲集です。
旧字体ですが薄くて読みやすいので、気になる方は古本屋へGO!


12/13

僕はいつか話した
「永遠とはきっと瞬間の中あるんだ」と
それはただ美しい景色を見て
美しいと思うだけのことだろう

――「PURE」


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RAZZ MA TAZZ作詞作曲「PURE」より。
時は一瞬に過ぎ去るけれども、その一瞬は尽きることはない。
時とは永遠の別名なのかもしれません。


12/14

目を醒ますたびごとに、夜が明け始めていた。

――宮本輝『ドナウの旅人』


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作品冒頭より。
一ページ目からぐぐっと読者の心をわしづかみにする冒頭は、
本当に魅力的で研究する価値ありです。
前々からやりたかったのですが、
近いうちに冒頭だけ集めた特集号作ってみるかな……。


12/15

かつてここは美しい優雅な家だったにちがいない。
それはいまだに優雅ではあったものの、
朽ちていくもののもつ悲しげな優雅さだった。

――サトクリフ『ともしびをかかげて』


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ローズマリ・サトクリフの文体と物語の雰囲気は、
文学の普遍性をよく表していると思います。
子どもの時に読んで勿論面白い物語ですけれど、
ある程度成長してから改めて読んで、
そして新たに発見する素晴らしさを秘めた宝庫のような物語ばかり。
私はすっかり彼女の作風に心奪われてしまったのです。


12/16

ぼくは誰かの幸せのためなら、
ぼくの身体なんか百ぺん焼いたってかまわない。

――宮澤賢治『銀河鉄道の夜』


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小学生の時に読んで衝撃を受けました、
ジョバンニのこの台詞。
これが本当の意味での自己犠牲精神なのですね…。


12/17

「いいかい、リトル・トリー、理解というのは愛と同じものなの。
でもね、かんちがいする人がよくいるんだ。
理解してもいないくせに愛してるふりをする。
それじゃなんにもならない」
ぼくはすぐに心に決めた。
すべての人を深く理解するように努力しようと。
ヒッコリーの実の大きさの霊しか持てないなんていやだから。

――フォレスト・カーター『リトル・トリー』

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物事に対して謙虚になること。
一歩さがって見ることが、understand(下がって、立つ=理解する)
という言葉を生み出したのです。
この『リトル・トリー』は「文学の棚」でも紹介しておりますが、
インディアン少年リトル・トリーのまっすぐな心が誘う、
微笑みと涙の物語。
最近疲れ気味で自然の声も聞こえない…
そんな方にはとくにお勧めの物語です。


12/18

誰だって自分が思っているよりはすごい人間だよ。

――向山貴彦『童話物語』


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自分に自信をもつことは、
自分自身に勇気を持つことに繋がります。


12/19

――で、これから一体、
世界をどうするつもりなんだい?

――アゴタ・クリストフ『怪物』

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世界を滅ぼすという怪物を倒そうとした結果、
傲慢さと恐れから、村ひとつ潰してしまった主人公に対して、
唯一生き残った下僕がつぶやく何気ない一言。
実は、世界を滅ぼす怪物は自分自身だった、と気付いた瞬間でした。
この一言、惚れました。


12/20

我らしき
心もとめて名も知らぬ
街なぞ今日も
さまよいて来ぬ

――石川啄木

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大変心惹かれた石川啄木の一句です。
今年の正月は、啄木カルタを家族で行うのが楽しみですv


12/21

嘘つきがたまに本当のことを言うと、
「その嘘、本当?」
ってことになっちまうんですよ。

――コルネイユ『嘘つき男』


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コルネイユ・ラシーヌと云えば、フランス古典劇作家の
代表的お二人です。
今回の話は、世にも稀な嘘つき男を巡って展開する恋愛喜劇。
言葉だけの駆け引きでこれだけ笑えるとは、流石です。
この主人公の大嘘付きドラント氏、
何だか憎めなくて笑えるんですよね。
しかしこのあとすぐに、
担がれていたことが判明し、再び召使の叫ぶ台詞も笑えます。
――なんですって?本当のことを言うときまで、
嘘をついてるんですか!


12/22

音楽には人を沈黙させる力があるのです。

――小林秀雄

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素晴らしい生演奏を聴くたびに思い出す言葉です。
音楽を表すのにこれほどピタリとした表現はないでしょう。


12/23

自分をだましちゃいけないわ。
偽りの種を蒔けば、刈り取るのは涙なのよ。

――イプセン『愛の喜劇』


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再び戯曲作品より。
戯曲ならではの言い回しですよね。
つい暗誦して使いたくなるってなものです。
「偽りのt種を蒔いて、刈り取るのは涙」なんて、素敵過ぎます…!
イプセン訳はいくつかありますが、私的には原千代海さんがお勧め。
イプセン全集を訳している人です。


12/24

「しかしクモよ、そなたの所へ行くと言っても、いったい何処へ?
そなたがいるのは、いったいどこだね?」
「両界の間よ」
「しかし、それだったら生でも死でもないじゃないか。
クモよ、生とは何だね?」
「力だ」
「では、愛は?」
「力だ」
「光は?」
「闇だ!」
「そなたの名前jは?」
「名前などない」
「何故だ。この世にあるものは、
何だってみんな真の名を持っている。
もう一度きこう。
そういうそなたとは、いったい何者よ?」

――ル・グウイン『さいはての島へ』


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ゲド戦記4部作中の第三部『さいはての島』より。
ここでは、ゲドの壮年期の最後の冒険を描いた物語です。
ここの場面は、物語の最終決戦の地での、敵とゲドとの対話なのですが、
もう、ここのやり取りが大好きで…。
ゲド戦記は、面白いファンタジーというよりかは、
壮大な叙事詩、という形の表現のほうがぴったりくる気がします。
常に重々しい独特の雰囲気が漂う、一人の男の人生の物語。
この本から学んだことは数多いです。
私の最も大好きなファンタジー長編の一つです。

12/25

もし世界の終りが明日だとしても
私は今日 林檎の種子を蒔くだろう。

――ゲオルグ・ゲオルギー


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いい言葉ですよね。
なんとなく、クリスマスっぽいイメージがあったので、
キリスト生誕日トップに載せることにしました。


12/26

昨日という日があったらしい。
明日という日があるらしい。
だが、わたしには今がある。

――北村薫『スキップ』


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何とも力強い言葉です。
過去・未来にとらわれずに今を生きよ、と。


12/27

「旅をするっていうのは、世界のはてをめざすってことだね。
夢をみるってことは、世界の底をめざすってことだね。
でも、旅をすることと夢を見ること、
同時にはできないんだ」

――ヨースタイン・ゴルデル『ハロー?』


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夢を見ることが、世界の「底」をめざすことだ、
という表現にとても惹かれました。
私たちが起きて活動しているあいだは、
直線でしか進むことが出来ないけれど、
私たちが眠っているあいだは、
深く深く、夢を見て、眠っているうちに世界の深淵へ潜っていく…
という感覚でしょうか。


12/28

「もう一度バラの花を見にいってごらんよ。
あんたの花が 世の中に
一つしかないことがわかるんだから。
それから、あんたがおれに
さよならをいいに、もう一度
ここにもどってきたら
おれはおみやげに、ひとつ、
秘密をおくりものにするよ」

――サン・テグジュペリ『星の王子さま』


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『星の王子さま』の中で、私がいちばん大好きな場面です。
きつねくんと王子さまが出会って、お話するところですね。
このきつねくんの台詞は、
暗記してしまうくらい何度も読み返してしまいました。

12/29

あるは木陰に立ち
休らひては
汗吹く風に袂をなぐさめ――…

――『独ごと』


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以前受けたどこかの受験校の古文問題で、
とてもきれいな文章だったので、
思わず書き抜いておいた文章です。


12/30

思うに、自分が愛するのにふさわしいものを
まず愛するのが最善じゃなかろうか。

――トールキン『王の帰還』


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たしかピピンの言葉だったと思いますが、
素直に出た良い言葉ですよね。


12/31

夢と可能性は捨てるな。
アスロンが教えてくれたろ?

――ロビンソン


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…月末は、自作の文章よりご提供いたします。(傲慢な)
この台詞は、私が中学の時にはまって描いていた漫画の
主人公より抜粋したひとことです。
思えば、この頃は本当に「夢見る少女」だった感じがします…(笑)。
書いていた作品全てが、希望に満ち満ち溢れていて、
主人公が一生懸命努力して頑張るような、明るい作風だったなあ。

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