こいつにとって、俺は一体何なんだ?俺はそれをずっと考えていた。

今日こそ、その『答えそのもの』を貰えなくとも、俺自身を真面目に受け止める気が

あるのかどうか、それだけでも答えてもらうぜ。

 

 

 

程なくお開きになった会場から景明は俺を伴って、そのまますぐ上の階にある

スイートルームへとやって来た。

ドアをあけて中へ入ると目の前に市内の広々とした夜景が視界に入る。

それは、マジに宝石箱をひっくり返したような見事な夜景だった。

「すっげ・・・!」

窓に思わず歩み寄った俺の後ろから、景明が部屋に入って来て

部屋の照明を全て消してしまうと、夜景は一層その輝きを増したように見えた。

離着陸する空港の旅客機の(よく)(たん)(とう)までがハッキリと見える。

暫く夜景に魅入っていた俺は、あまりの静けさに景明の存在を探して振り返った。

暗い室内を、冬の冷たい月がほのかに照らし出していて

すぐ傍にあるソファに座って俺の方を見ている景明を辛うじて認識できる。

俺が振り返ると、景明は言った。

「大人の証明とやらを・・・見せてもらおうかな。」

この時、俺は初めて景明を怖いと感じた。

今まで、干支ひとまわり程も離れている年の差なんて感じさせたことは無かったのに

今日の景明は、その大人の余裕ってものを身に纏っていた。

はっきりとは見えないのに、俺を()(ころ)してしまいそうな景明の視線を感じる。

「今まで俺とやって来た事は、子供とする事じゃないんじゃねーの?

充分それだけで、大人の証明になると思うけどな。」

つい、恐怖心から言うつもりのなかった嫌味が口を突いて出る。

景明はそれには答えなかった。

ゆっくりと立ち上がって俺の傍まで来ると、景明が腕を捕らえて窓の方へと

向きを変え後ろから抱き締めてくる。

「なら、なぜきみはここに来たんだい?」

こめかみにキスをしながら景明が訊いて来る。

いつも俺をいい様に扱う時のような、楽しげな抑揚の全く無い声音に

景明の真摯な態度が伝わってくる。

真剣な大人とホンキで向き合う緊張に、震える自分を叱咤して口を開く。

「景明に・・・言いたい事があったんだよ。」

景明の手を取って、それへキスを返しながら言ってやる。

「それは・・・楽しみだね。聞かせてもらおうかな。」

「・・・ここでか?」

「嫌なのかい?」

既に景明の指がシャツの上から胸の突起を弄っている。

俺は、動揺を気取られないように気を付けながら用意していた言葉をハッキリと告げた。

 

「風さそう 花よりもなお 我はまた 春の名残りを いかにとかせん」

 

景明は、それを聞いた途端にハッとして動きを止めた。

やがて、静かな重い口調で景明が言う。

()(せい)・・・・・・かい?」

そうだ。

これは浅野内匠頭(なが)(のり)が切腹の際に詠んだ辞世の句だ。

暫く考えるように動きを止めていた景明が

ため息混じりに甘い低音で耳元に囁いて来る。

「判ったよ。じゃあ・・・ベッドへ行こうか。」

景明は、従五位下内匠頭という官位を持つ上に五万石の大名でもあった

俺の遠い先祖がどう言うわけか庭先なぞで切腹する羽目になったのを知っているんだろう。

だから窓際(庭先)から横抱きにしてベッド(座敷)まで連れて行かれそっと横たえられた。

ゆっくりと俺を見下ろしながら、景明は覆い被さるようにして俺の辞世に応える。

「慎んで・・・(かい)(しゃく)つかまつる。」

その答えに俺は嬉しくなって、景明に抱きついていた。

景明は俺の気持を、覚悟を、ちゃんと解かってくれている。

「私が、ちゃんとあの世へ連れて行ってあげるよ拓巳。 この、私の(さし)(りょう)でね。」

景明はそう言って、俺の手を自分の股間に導いた。

俺はもう、それだけでどうしようもないくらい感じてしまっていた。

介錯を任せられるのはたった一人。

俺を生かすも殺すも景明しだい。

景明は、シャツから腕を抜きながら俺をうつ伏せにすると

背中の傷があった場所を舐めあげて来た。

「っ・・・ん・・・・・・」

そこはもう、既に傷跡さえ無くなっていると言うのに、景明に治療と称して

舐めまくられるうちに、俺の感じる所になってしまっていた。

俺の弱いところを景明は確実に責める。

胸の突起を摘まれると、そこから既に勃ちあがっている欲望まで

痺れるような快感が走り抜ける。

「あっ・・・んんっ・・・」

「介錯の用意は出来ているよ。さあ・・・腹を召していただこうか・・・拓巳」

後ろから首筋にキュゥッと吸い付かれ、欲望の括れを爪の先で辿られる。

吸い付かれた首筋がゾクリとして、そこから理性が熔け落ちて行くような錯覚に囚われる。

「んぅっ・・・っあ!・・・・・・か・・・げあ・・・きぃ・・・・・・」

まるで、他愛も無い事のように息一つ乱さずに景明は俺を追い上げて行く。

「切腹の・・・作法を教えてあげようか。」

景明はそう言って俺の欲望を手のひらを使って緩く締め上げた。

(ほう)(しょ)に包んだ(わき)(ざし)の切っ先を2寸ほど出して、ここから・・・こっちへ・・・一気に」

言いながら景明が俺の欲望を握ったまま、先走りを滴らせる先っぽを、左の腹に当てて

そこから右の腹までツゥッと撫でる。

『くそっ!俺のは脇差かよ!』

腹の中で毒づいても、景明の指使いにすぐにその余裕は奪われる。

「ああっ・・・も・・・・・・イクッ!」

指の先までが痺れるような感覚に、喘ぎながら俺はあっけなく

白濁を放ってしまっていた。

手に受け止めたそれを、景明が今から己を埋める場所へとぬりつける。

そうしながら体の位置を入れ替えて、俺の目の前へ

悔しい事に、俺のよりも逞しい景明自身が突き付けられた。

「差料を(きよ)める水やお()()は無いからね・・・。拓巳にお願いしようか。」

ためらうような余裕は俺にはもう無い。

突き付けられた景明自身を、口中に迎え入れゆっくりと舐め上げる。

緩やかに入り口を撫でていた景明の指が俺の中へ入って来ると、俺はたまらなくなって

口の中の景明を離してしまった。

「んうっ・・・は、あっ・・・・・・」

背筋をゾクゾクとした快感が這い上がる。

景明が次に何をするのか、体のほうが先にそれを思い出して暴走し始める。

「や・・・あっ・・・・・・」

中の敏感な所を、指先で何度も撫でられて腰が跳ね

さっき確かに一度、昇り詰めたはずの俺の欲望がまた淫らに下腹で息づく。

もう、限界だ。

体の奥に、火の玉でも転げ回っているようなそんな感じで

景明を求める疼きが膨れ上がって来る。

「か・・・げあきっ!」

欲しくて欲しくてたまらなくなって喚くように呼ぶと、甘く響く景明の低音が

耳元を掠める。

「うん?もう、介錯してほしいかい?」

最後のほうは、エロく吐息に掠れた声に全身が戦慄く。

口を開けば、とんでもない事を口走ってしまいそうで思わず激しく頷いた。

「では・・・介錯を・・・・・・」

熱い塊が、こじ開けるようにして俺の中へ押し入ってくる。

「んっ・・・あ・・・・・・ああっ!」

景明の差料が、俺の首の代わりに理性のタガを斬り落とす。

全てを俺の中に埋め込んだ景明が、ゆっくりとした動きで俺の弱い場所を抉るように

何度も何度も突き上げてくると、無意識に俺自身も腰を揺らしていたらしい。

「拓巳は・・・ここが好きだね。そんなに・・・これは美味しいかい?」

「これは・・・」の所でグッと腰を奥まで突き入れられて、俺は声にならない声をあげる。

あられもない格好を気にする余裕も、意地を取り繕おうとする羞恥心も剥ぎ取られて

いやらしく腰を振る自分を止められない。

「・・・いっ・・・・・・景明、ぁ・・・んんっ!」

目前の絶頂に、体中を流れる血が泡立つような浮遊感を味合う。

「拓巳・・・」

「ふ・・・っ・・・・・・っあああ!」

最後を促す景明の甘く掠れた声に全身を強張らせて、中にいる

景明自身を締め上げながら、俺は再び欲望を弾けさせる。

奥深い場所で、景明も終わりを迎えるのを感じながら俺はまた

いつものように、ふわりと心地良い余韻の中で意識を飛ばしてしまっていた。

 

 

 

さらりとこめかみの辺りの髪を撫でられる感覚に俺は目を覚ました。

どこかから、クリスマス・ソングが聞えてくる。

『ああ・・・これは、「諸人こぞりて」だ・・・』

ぼんやりとした頭で、そんな事を思っていたら景明の手が視界にあった。

向かい合う形で、俺は景明の腕の中にいた。

「俺・・・」

一瞬、状況を掴み損ねてすぐ目の前にある景明の端正な顔を見つめる。

そっと景明が近づいて、額に小さなキスを落として行く。

「私も随分、大人気無いね。」

何を思ったのか、景明が自嘲を滲ませて言う。

「功介とチカラ君を見ていると、拓巳をこのまま私に縛りつけては

いけないと思うのに、どうやら完全に掴まっちゃってるな。」

意識していなかったお互いの家の関係が、急に大きくのしかかって来た。

そうか・・・景明と俺の家も仇敵なんだ。

なぜって、上杉家はあの有名な上杉謙信公から4代後を

忠臣蔵で有名な吉良上野介(よし)(ひさ)の連れ子が跡目相続をしている。

つまりは、上杉の名前ではあるが、景明は歴とした吉良の血筋なんだ。

俺は、今まで景明がそんな事を気にしているとは思いも寄らなかった。

『だけど、責任はきっちり取ってもらうからな。』

「俺の介錯を引き受けたんだろ?今更・・・やめるなんて言わせねーからな。」

それを聞いて、クスッと笑って景明がやんわりと腕の拘束を強める。

「はいはい。こうして拓巳を抱き締めている時が、私の一番の幸せだよ。

来年も、一緒にこうして過ごせるといいね・・・。」

体を寄せ合っている暖かさに、ぼんやりとした睡魔が俺に襲いかかってくる。

俺はそのまま、久しぶりに何も考えずにゆっくりと眠ることが出来た。

 

 

 

『こんなのも悪くない』

今なら、素直にそう思える。

メリークリスマス。

 

大好きな景&拓です。
でも、ちょっと消化不良なSSになっちゃったような気が
しないでもないです。
私にとってこの2人は、力関係5分のカップル。
つまり、尻に引かれてもいないし、関白でもない関係。
勝手に外科医学会したり、場所をF県にしたり・・・
オマケに夏樹くんに、イヂワル高校生を
やらせてしまいました。(爆)
ごめんね!夏樹くん!本当はもっと可愛い良い子です。
ちょっとでも、楽しんで頂ければ幸いです。
皆さんにもメリークリスマス!』

真鈴サマ


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