ANECDOTA  トウガラシの歴史


 辛いものはどうも苦手だ。ちょっと辛いものを食べると、汗が滝のように噴き出し、服がびしょぬれになる。それでもコショウはまだ耐えられるし、ニンニクは大好きな食べ物に属するのだが、トウガラシは天敵であるといえる。あの強烈な刺激はデリケートな私の口にはまったくあわない。ペペロンチーノを食べてトウガラシのかけらがのどにひっかかったときは死を覚悟したものだ。

 それにしても、世の中にはトウガラシ好きが多い。表面が真っ赤になるくらいタバスコをふったり、「トムヤムクン」なるトウガラシスープを平気ですすったりする。かくいう我が家でも一時期キムチがはやったときがあった。両親と妹が「このキムチがうまい」「これはイマイチ」とか評論しつつ、「本場韓国へ行こう」などと盛り上がっているのを、「正気かよ」とあきれていたことを思い出す。

 感情抜きに冷静にみると、トウガラシがない世界の食卓というのは、もはや考えられないのも事実だ。しかし、このトウガラシが世界中にひろまったのは、実はけっこう最近のことだ。もともとは新大陸の食べ物で、ブラジルのアマゾン川流域が原産であるといわれている。これを、ヨーロッパにもちこんだのが、かのコロンブス。コショウよりもはるかに強烈な辛さをもつトウガラシは、またたくまにヨーロッパとアジア各地にひろまった。

 日本にどうやって伝わったのかはさまざまな説があるが、おそらくポルトガル人によってもたらされたのだろう。ちなみに、朝鮮半島にトウガラシが伝わったのは16世紀で、日本から持ち込まれたとされている。キムチにトウガラシがばんばん使われるようになったのは、ここ2〜300年にすぎない。

 そのキムチが今度は朝鮮から日本に伝わり、人気をはくしているが、韓国の人にいわせると日本のキムチは「キムチじゃない」とのこと。発酵という過程が入っていないとキムチとはよべないんだそうだ。まあ、私にはどうでもいいことなのだが。


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