平成11年度宮城県警刑事部,交通部,警備部の報償費に関して,県警本部長が行った部分開示決定に対し,オンブズマンは県警本部長の上級行政庁である宮城県公安委員会に対して審査請求を平成14年7月23日に行っておりました。

 この審査請求について,公安委員会からの諮問を受けた宮城県情報公開審査会は,報償費に関する対象文書について,訴訟手続きでは認められていない「インカメラ審査」(開示非開示の判断をするために審査会が当該文書を直接確認すること)を行った上で,「本件行政文書に記録されている情報が真正のものであること,すなわち情報提供者が実在し,本件行政文書どおりに犯罪捜査協力報償費が支出されていることについて心証を形成するに至らなかった。」との驚くべき指摘を行った上で,非開示処分の適否について判断を行い,犯罪捜査報償費の個別執行額や支出事由など多くの非開示部分について開示が相当であるとの判断をし,公安委員会に対し平成16年9月30日付けで「答申」を行いました。ところが,公安委員会は,報償費のうちの犯罪捜査報償費に関して,かかる情報公開審査会の答申に従わず,かつ,公安委員会の県警に対する調査権限を十分に行使することもなく,非開示を維持するとの「裁決」を平成17年4月27日に行ったものです。このような裁決に対しては,宮城県情報公開審査会も,「答申とは本質的に異なるものである」として,適切な対応を求める異例の「建議」を公安委員会に対し行いました。

 オンブズマンとしては,このような公安委員会の採決は,公安委員会の権限と職責を放棄し,県警の内部監査の結果を無批判的に受け容れたものであり,情報公開審査会の答申を無視した違法な裁決であると考え,平成17年6月9日,仙台地方裁判所に裁決取消訴訟を提起しました。

   

犯罪捜査報償費返還請求事件判決についてのコメント

報償費の不正支出を正面から認定した画期的判決であり,実質勝訴である。
所期の目的は達成したので,オンブズマンとしては控訴しない予定である。
宮城県知事は,報償費の執行を直ちに停止すべきである。
宮城県出納局長は報償費関連書類を自らの保管に移し,徹底した調査をすべきである。
監査委員も自発的に再度監査し,報償費の違法支出の実態を明らかにすべきである。

<判示の特徴>

平成17年6月21日
仙台市民オンブズマン

仙台地裁、不正支出を認定 オンブズマンコメントを発表

犯罪捜査報償費返還請求事件判決についてのコメント

オンブズマン

犯罪捜査報償費返還請求事件判決についてのコメント

              

 仙台市民オンブズマンは2005年6月30日、6月21日の仙台地裁判決をふまえて、県知事に
対し、関係文書の引渡しを求めて法的手段を行使することを求める申し入れを行いました。申し入
れには知事が直接応対しました。監査委員にも特別監査の実施についての申し入れを行いました。
申し入れ文書の全文は以下の通りです。

                    県警犯罪捜査報償費に関する申し入れ

                                           2005年6月30日

宮城県知事 浅 野 史 郎 殿
                                        仙台市民オンブズマン
                                         代表 坂 野 智 憲

1、県警捜査報償費予算執行停止について
  まず知事が県警捜査報償費(以下報償費という)の予算執行停止を決断したことに敬意を表します。
  仙台市民オンブズマンは、平成12年度の報償費の返還を求めて住民訴訟を提起し、本年6月21日、仙台地裁において判決がなされました。裁判所は、報償費の使い切り、不自然に平均的な執行状況、鑑識課の報償費支出について実例を示せないこと、鑑識課の報償費が短期間で配分されなくなったこと、警視庁における不正疑惑、北海道警の不正、宮城県情報公開審査会の答申内容、宮城県による定期監査と知事要求の監査に対する県警の対応、知事の提出要求を拒否する県警の対応などについて詳細に検討した上で、「総合すると、平成12年度の宮城県警本部の報償費の支払いの相当部分が実体がなかったものと推認する余地がある。」「鑑識課の平成12年度の報償費の支払いのすべて(総額123万円分)について、実体がなかった疑いが強いというべきである。報償費の支払いとしてその実体を欠く支出がされたとすれば、これによって宮城県に損害を与えたことはいうまでもない」と判示しました。
  裁判所が内部告発者の証言や報償費支出に関する内部文書などの直接証拠がないにもかかわらず、状況証拠の積み重ねによってここまで踏み込んだ判断をしたことは極めて異例のことです。
  しかしかかる判決が出されても、県警は「残念」というのみで何ら不正疑惑を払拭するための説明をしようとしません。知事が報償費支出の執行停止を決めたことは誠に当然と言うべきでしょう。
  知事は執行停止解除の条件として報償費支出文書の提出を挙げています。県議会において議員から「執行停止は県民の安心・安全の確保に問題があるのではないか」との指摘がなされているようですが、その指摘は説明責任を全く果たさず、支出文書提出を頑なに拒んでいる県警本部長にこそ向けられるべきものです。批判は覚悟の上の決断と思いますが、県警が支出文書を提出し、それに基づいて実際に捜査協力者と面談して支払の事実が確認されるまでは、断固として執行停止を続けることを望みます。
2、報償費支出文書提出要求について
  知事は県警に対し、報償費の支出文書の提出を再三申し入れたようですが尽く拒否されてきました。上記仙台地裁判決はこの点についても注目すべき判断を示しています。
  すなわち、「宮城県財務規則89条、財務規則の施行に関する細則7条1項2号によれば、債権者の請求書、債権を証する書類、領収書などは、宮城県出納局長が保管する権限と義務があるとされる。」「宮城県出納局長は、犯罪捜査報償費の債権者の受領書等関係書類の保管に関する特認について(承認)により、宮城県警本部長の申請を承認したこと、承認は監査に当たっての証拠書類の提示などを不要とすることまで決めたものではなかったことが認められる。これによれば承認は単に宮城県出納局長が宮城県警本部長に保管の代行を許しただけのものであり、宮城県出納局長は、必要があればいつでも書類を自らの保管に移すことが可能であると解する余地がある。」「そのことは宮城県警が挙げる情報提供者・協力者保護の必要性、情報提供者・協力者との信頼関係の維持、捜査上の秘密の保持を理由として宮城県知事側に書類の提示を拒むことを財務規則に予定していないことの顕れというべきである。」と判示しました。
  知事の実地調査権についても判決は、「宮城県知事には予算執行権があり、地方自治法221条1項により実地調査権が認められており、財務規則30条の3では総務部長にも予算の執行状況についての調査権が認められている。そして宮城県警本部長は、財務規則2条4号により調査対象となり部局長である。」「宮城県警本部長は宮城県知事の再三に渡る捜査員からの聴取調査の要請を拒否した。これについて宮城県警は情報提供者・協力者保護の必要性、情報提供者・協力者との信頼関係の維持、捜査上の秘密の保持を理由として挙げるが、宮城県知事の実地調査権を拒む十分な理由となるものではない。」と判示しています。
  このように法律家の目から見れば、県警本部長が知事の支出文書提出要求を拒否したり実地調査を拒んだりすることは明らかに違法なことなのです。しかし県議会では、県警本部長は捜査協力者保護を言い、質問した議員は両者の歩み寄りを求めるというまたもや昨年同様の議論が繰り返されています。この問題は政策の適否の議論ではなく、法律上の権限の問題ですから、歩み寄りで解決されるべき事柄ではありません。
  例えば県有地を借りた者が期限を過ぎても返さず、不法占有を続けているとします。もちろんまずは話し合いによる返還を求めるでしょうが、どうしても返さない場合には明け渡しを求める訴訟で解決することになるでしょう。占有している者が嫌だと言えばそのままにせざるを得ないということでは、もはや法治国家ではありません。知事が1年以上粘り強く提出を求めたにもかかわらず県警がこれを拒否し続け、しかもそれが自らの不正の隠蔽の意図によってなされている疑いが濃厚なわけです。もはやこれ以上違法状態を野放しにしておくことはできないはずです。
  本来このような場合には県警を管理する公安委員会が責任ある対応をなすべきなのです。県公安委員会は警察法38条3項により県警を管理する権限と義務を負い、同法43条の2第1項により警察の事務について必要があると認めるときは第38条第3項の規定に基づく指示を具体的又は個別的な事項にわたるものとすることができるとしています。つまり宮城県公安委員会が必要と認めれば県警本部長に対して報償費支出文書を知事に提出するよう指示することが可能なのです。言うまでもなく県公安委員会は宮城県の治安に対して最終的な責任を負うべき機関であり報償費予算執行停止という事態を傍観していてよい機関ではありません。しかし残念ながら仙台地裁判決を受けて知事が報償費予算執行を停止し、監査委員が特別監査を行うことを決めたにもかかわらず、県公安委員会は何もしません。
3、具体的な方策
  本日の報道によれば県警は監査委員の報償費支出文書全面開示の要求を拒否する方針を固めたとされています。事ここに至ってはもはや法的手段によって強制的に報償費支払文書の引渡を実現する以外方法はありません。
  知事としては直ちに宮城県出納局長に対し、県警本部長に対する上記「特認」を撤回し、宮城県財務規則89条、財務規則の施行に関する細則7条1項2号に基づき、報償費支出文書の引渡命令を出すよう指示すべきです。そして県警本部長がこれに従わない場合には、裁判所に対し文書引渡の本訴を提起するかあるいは仮処分を申請すべきです。
  上記のとおり法的手段によって現在の違法状態を是正する途があるわけですが、残念ながら県民一人一人にはこのような法的手段をとることはできません。かかる権限を有するのは県の代表者である知事ただ一人です。そしてこの権限は県民から付託されたものであり、行使するもしないも知事の自由というものではありません。知事には自らの権限を行使して違法状態を是正する義務があると考えます。
4、最後に
  本来県警を管理する公安委員会が機能していれば、警察自らの手でこの問題を解決できたのです。
  しかし公安委員会は単なる名士の集まりに形骸化し、議会も警察問題には踏み込まない、マスコミも警察発表が頼りなので遠慮がち、そのような中でいつの間にか警察は、アンタッチャブルな存在になってしまいました。自分が見せたくないと思う情報は知事であれ監査委員であれ誰にも見せない。内部監査もおざなり。公安委員会をコントロールして情報公開審査会の答申も無視する。裁判所の判決も気にしない。このような誰の批判も受け入れない傍若無人の姿勢は、自らをアンタッチャブルな存在と位置づけているとしか考えられません。
  検察庁は調査活動費について同じように裏金疑惑を指摘されました。表向きこれを否定はしましたが、実際には調査活動費を10分の1以下に減らして裏金作りをやめたようです。しかし警察はこれだけ全国的に裏金が発覚したにもかかわらずなお裏金作りをやめようとはしません。警察の裏金問題は正に警察の体質の問題なのです。
  知事が全国に先駆けて報償費予算執行停止に踏み切った勇気に敬意を表すると共に最後までやり抜いて欲しいと願っています。

                     県警犯罪捜査報償費に関する申し入れ

                                             2005年6月30日

   宮城県監査委員殿

                                          仙台市民オンブズマン
                                           代表 坂 野 智 憲

1、平成17年6月21日仙台地裁判決について
  仙台市民オンブズマンは、平成12年度の報償費の返還を求めて住民訴訟を提起し、本年6月21日、仙台地裁において判決がなされました。裁判所は、報償費の使い切り、不自然に平均的な執行状況、鑑識課の報償費支出について実例を示せないこと、鑑識課の報償費が短期間で配分されなくなったこと、警視庁における不正疑惑、北海道警の不正、宮城県情報公開審査会の答申内容、宮城県による定期監査と知事要求の監査に対する県警の対応、知事の提出要求を拒否する県警の対応などについて詳細に検討した上で、「総合すると、平成12年度の宮城県警本部の報償費の支払いの相当部分が実体がなかったものと推認する余地がある。」「鑑識課の平成12年度の報償費の支払いのすべて(総額123万円分)について、実体がなかった疑いが強いというべきである。報償費の支払いとしてその実体を欠く支出がされたとすれば、これによって宮城県に損害を与えたことはいうまでもない」と判示しました。
  しかしかかる判決が出されても、県警は「残念」というのみで何ら不正疑惑を払拭するための説明をしようとしません。知事が報償費支出の執行停止を決めたことは誠に当然と言うべきでしょう。
2、県警犯罪捜査報償費の特別監査について
  報道によれば宮城県監査委員は県警犯罪捜査報償費のうち、2000年度の鑑識課分と鉄道警察隊分について特別監査を検討しているとのことです。そのことについては上記判決を受けた速やかな対応であり、監査委員として誠に適切な措置と考えます。
  しかしながら、前記仙台地裁判決は鑑識課と鉄道警察隊について強い疑惑を認定していますが、それにとどまらず「平成12年度の宮城県警本部の報償費の支払いの相当部分が実体がなかったものと推認する余地がある。」と認定しているのです。裁判所が内部告発者の証言や報償費支出に関する内部文書などの直接証拠がないにもかかわらず、状況証拠の積み重ねによってここまで踏み込んだ判断をしたことは極めて異例のことです。裁判所が「宮城県警本部の報償費の支払いの相当部分が」と認定している以上監査の対象を2000年度の鑑識課分と鉄道警察隊分に限定する合理的理由を見いだせません。従って2000年度については当然全ての捜査報償費を特別監査の対象とすべきと考えます。
  また判決が直接触れているのは当然のことながら訴えの対象となった2000年度の報償費ですが、2000年度に実体の無かった報償費の支出が翌年から突然実際に支払われるようになったとは考えられません。判決の論理に従えばその後2004年度分までの全ての報償費が監査対象とされるべきと考えます。監査の対象が少数であれば監査逃れの隠蔽工作もしやすいが2000年度から2004年度までの全てを対象とすれば監査逃れが困難になることは理の当然と思われます。
  もちろん監査に要する時間の関係上緊急性の高い2000年度の鑑識課分と鉄道警察隊分の特別監査を先行させて速やかに結果を公表し、引き続き他の報償費の監査を行うという判断はあってもよいと思いますが。
3、監査方法について
  報道によれば、県警に対し報償費支出文書の全面開示を要請したとのことです。
  前記仙台地裁判決は、監査委員の監査に当たり支出関係書類の一部が目隠しとされて提出されたことについて、「地方自治法199条8項によれば監査委員は監査のため必要があると認める時は、関係人の出頭を求め、もしくは書類その他の記録の提出を求めることができるとされており提出を求める記録に何らの限定は付されていないから、宮城県警の上記の対応は法に則ったものとは言い難い。」と判示しています。
  また宮城県警が情報提供者・協力者保護の必要性、情報提供者・協力者との信頼関係の維持、捜査上の秘密の保持などを総合的に判断して目隠しの措置をとったとの主張について、「しかしながら監査委員は職務上知り得た秘密を漏らしてはならずその職を退いた後も同様とされているから情報提供者・協力者保護の必要性を理由に上記措置を正当化することはできない。また情報提供者・協力者との信頼関係の維持、捜査上の秘密の保持もこれを理由とする目隠しの措置を容認すると、実質的に監査することのできない費目を作出することになりかねないからみだりに許容することはできない。」「会計検査院の検査と監査委員の監査とを別異に取り扱うことに首肯できる理由は見あたらない。」と判示しています。
  この判示に照らせば監査委員の全面開示の要請は至極当然のことであり、県警に対しては全面開示するよう強く求めるべきと考えます。
  一方で報道によれば阿部徹代表監査委員は「監査委員が協力者と会わないで支払の事実を確認する方法があるか県警と話し合いたい」と述べたとされています。
  しかし報償費の支出の事実を確認する最も確実かつ直截な方法は捜査協力者と直接面談して受領の事実を確認することです。これは誰にでも分かる理屈なはずです。仙台地裁判決も、被告が監査結果において違法又は不当なものが見当たらなかったから報償費は適正に執行されていると主張したのに対し、「支出関係書類の一部が目隠しとされ、中でも現金出納簿、捜査費支出伺、支払精算書、支払伝票、領収書のうち、具体性のある事件名、情報提供者・協力者の氏名、接触場所のような、情報提供者・協力者特定の資料となるものは目隠しとされたことが認められ、これによれば、情報提供者・協力者への支払が実体のあるものであるという確認まではされていないとみるべきである。」と判示してその主張を排斥しています。つまり判決は、監査委員に「情報提供者・協力者特定の資料となるものは目隠しとされた」ので、監査委員は情報提供者・協力者への支払が実体のあるものであるという確認ができなかったと言っているのです。これは、監査方法として情報提供者・協力者を特定してその者から支払が実体のあるものである確認がとれないような監査によって、違法不当なものが見当たらなかったとされたとしても、それで支払実体が確認できるものではないという趣旨と解されます。協力者と会って事実確認をしないというのは判決の論理に反するものであり、監査の名に値しないと言わざるを得ません。
4、最後に
  本来県警を管理する公安委員会が機能していれば、警察自らの手でこの問題を解決できたのです。
  しかし公安委員会は単なる名士の集まりに形骸化し、議会も警察問題には踏み込まない、マスコミも警察発表が頼りなので遠慮がち、そのような中でいつの間にか警察は、アンタッチャブルな存在になってしまいました。自分が見せたくないと思う情報は知事であれ監査委員であれ誰にも見せない。内部監査もおざなり。公安委員会をコントロールして情報公開審査会の答申も無視する。裁判所の判決も気にしない。このような誰の批判も受け入れない傍若無人の姿勢は、自らをアンタッチャブルな存在と位置づけているとしか考えられません。
  検察庁は調査活動費について同じように裏金疑惑を指摘されました。表向きこれを否定はしましたが、実際には調査活動費を10分の1以下に減らして裏金作りをやめたようです。しかし警察はこれだけ全国的に裏金が発覚したにもかかわらずなお裏金作りをやめようとはしません。警察の裏金問題は正に警察の体質の問題なのです。
  監査委員が判決後直ちに特別監査の意向を示したことに敬意を表すると共に実際の監査に当たっては県民の付託に応えて毅然としてその職責を果たされることを願っています。
  なお本日の報道によれば県警は監査委員の全面開示の要請を拒否する方針を固めたとされていますが、そのような「対応は法に則ったものとは言い難い。」との司法判断がなされたにもかかわらずなお改めようとしない姿勢はあきれるほかありません。県警が監査委員に対しそのような対応をとり続けているという事実自体から不正支出の疑いを認定することは可能なはずです。監査結果の公表に当たっては単に全面開示を受けられなかったから判断できないではなく、それが何を意味するのかについて踏み込んだ判断が示されることを希望致します。

1 監査請求の特定性を認めた

 「個々の報償費支出の日時,支出金額,支出先等が個別的,具体的に摘示されて
いなくても,本件監査請求の特定性に欠けるところはない。」

2 報償費の不正支出を認定した

 「総合すると,平成12年度の宮城県警本部の報償費の支払いの相当部分が実体
がなかったものと推認する余地がある。」「鑑識課の平成12年度の報償費の支払いのすべて(総額123万円分)について,実体がなかった疑いが強いというべきである。」

3 不正支出認定根拠も詳細で説得力がある

 報償費が使い切られていること,不自然に平均的な執行状況であること,鑑識課
に協力者がいるはずはないこと,報償費が短期間で配分がされなくなっていること,警視庁における不正疑惑(大内証人),北海道警の不正(原田証人),宮城県情報公開審査会の答申,宮城県による定期監査と知事要求の監査に対する県警の違法な対応(一部目隠しとした),知事の要求を拒否する県警の対応,などを逐一判断し,上記認定に至っている。

4 宮城県による定期監査と知事要求の監査に対する県警の対応を違法と判断した

「宮城県警の上記の対応(書類を一部目隠しして提出したこと)は,法に則ったものとは言い難い。」

5 出納局長が書類を自らの保管に移す権限があることを認めた

「宮城県出納局長は,必要があればいつでも書類を自らの保管に移すことが可能であると解する余地がある。」「宮城県警側が挙げる情報提供者・協力者保護の必要性,・・・・を理由として宮城県知事側に書類の提出を拒むことを財務規則に予定していない」

6 個人責任は否定

 「仮に,平成12年度の報償費の支払が実体がなく違法であるとしても,それは被告のした支出命令後の,・・・執行行為に帰因する違法というべきもの」

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                                           平成17年7月5日
宮城県議会議長渡辺 和喜 殿


                    100条委員会設置の申入書


                                         仙台市民オンブズマン
                                            代表 坂野智憲

第1 申入れの趣旨
   宮城県警の犯罪捜査協力報償費の不正支出疑惑問題の解明のために、地方自治法第100条に定める特別委員会を設置し、犯罪捜査報償費に関する関係書類や受領者の裏付け調査、捜査員に対する証人喚問などを実施することを要請する。

第2 申入れの理由

1 不十分な宮城県警の内部監査

 宮城県警における犯罪捜査報償費の不正支出疑惑に関して、宮城県警は,犯罪捜査報償費の支出に関する内部監査の結果を平成17年4月21日に「平成16年度会計監査の結果について」と題する書面をもって,公表し,宮城県議会文教警察委員会において報告した。
 しかし,宮城県警によるかかる監査結果は,たった3枚のみの書面であり,内容も監査の名に値しないものであった。
 犯罪捜査報償費が真に支出されているかどうかを監査するに当たっては,
@ 報償費を受領した協力者に「受領したかどうか」確かめる
A 協力者が実在するか(受領当時生きているか)どうかも調べる
B 悉皆調査(すべての案件にあたる)をする
C 領収書に記載された飲食店に飲食の事実を確認する
という調査を行えば,犯罪捜査報償費が不正支出かどうかはたちどころに判明するところである。また内部監査である以上,捜査上の秘密等の問題は生じないはずである。にもかかわらず,宮城県警の内部監査においてはこれらの調査は一切行わず,単に書面審査と捜査費執行職員に対する聞き取り調査,領収書に係る飲食店等の所在確認にとどめたものであった。
 犯罪捜査のプロ集団である県警がこれらを一切していないことは驚くべき消極的な態度である。県警は,そのような調査をすれば不正が明らかになることが分かっているからこそ,どうしても調査できなかったと言わざるを得ない。
 このような不十分な内部監査の結果に対しては,宮城県知事も疑惑を払拭するには至らず,監査方法が不明瞭として県警に報告を求めたが,結局は十分な説明はなかった。

2 別件の行政不服審査法に基づく審査請求に対する公安委員会の裁決とそれに対する批判

(1) 仙台市民オンブズマンが行った,平成11年度の宮城県警察本部刑事部,交通部の報償費支出に関する行政文書に関する情報公開請求についての部分開示決定に対し,平成14年7月23日付けで,行政不服審査法第5条の規定により,非開示処分を不服として,実施機関の上級行政庁である宮城県公安委員会に対し審査請求を行っていた。

(2) かかる審査請求に関して,本県条例第14条1項に基づき,宮城県情報公開審査会に諮問がなされ,平成16年9月30日付けでなされた同審査会の「答申」がなされた。
 かかる「答申」において,宮城県情報公開審査会は,その審議過程において,本県情報公開条例27条の規定に基づいて,犯罪捜査報償費に関する文書を含めて「インカメラ審査」を行った上で,「a.情報提供謝礼等に係る犯罪捜査協力報償費の1件当たりの支出金額が課ごとに見るとほぼ定額であること,b.一般に犯罪捜査協力報償費を支払ってまで情報を得る必要がないと思われる捜査活動においても情報提供者等に犯罪捜査協力報償費が支払われていると認められること,c.情報提供者等からの領収書が一部の課を除いてほとんどないことなどの点から,本件行政文書に記録されている情報が真正のものであること,すなわち情報提供者が実在し,本件行政文書どおりに犯罪捜査協力報償費が支出されていることについて心証を形成するに至らなかった。」との指摘を行った上で,非開示処分の適否について判断を行い,犯罪捜査報償費の個別執行額や支出事由など多くの非開示部分について開示が相当であるとの判断をするに至った。
 そして,上記「答申」は,その末尾において,以下のとおり指摘し,実施機関の上級行政庁である宮城県公安委員会に対し,その権限と責任に基づいて調査をした上で県民に対する説明責任を果たすべきことを促した。
                               記
 「本件の諮問実施機関である公安委員会は,実施機関の上級行政庁であり,警察本部を管理する権限と責任に基づき,捜査上の秘密に属する事項についても十分に精査し得ることは,当然であろう。
 とりわけ,全国各地の警察本部において報償費の不適正支出の問題が噴出している昨今の状況に鑑みると,公安委員会は,本件の報償費についても調査及び審理を尽くした上で適切な裁決を行うべきである。
 審査会は,公安委員会に対し,『本件行政文書に記録されている情報提供者等が実在し,本件行政文書に記録されているとおりに報償費が支出されていたこと』について,例えば,犯罪捜査協力報償費を支出した事実の有無をしかるべき方法により直接確認するなど,実施機関の上級行政庁として,その検証に最大限の努力を払い,その検討経過をつまびらかにした上で裁決を行うことによって,県民の知る権利に応えて,公金支出についての説明責任を果すことが望まれる。」
 仙台市民オンブズマンは,かかる「答申」の内容を受けて宮城県公安委員会に対し公安委員会の管理権限に基づいて,平成11年度宮城県警刑事部,交通部,警備部の報償費支出に関する行政文書を対象として,そこに記録されている情報提供者等が実在し,当該行政文書に記録されているとおりに報償費が支出されていたことについて,犯罪捜査協力者に公安委員が直接面談する等の方法により報償費を支出した事実の有無を確認するよう,申し入れを行った。

(3) ところが,宮城県公安委員会は,平成17年4月27日,開示しないとした原処分の一部について非開示処分を取り消ししたものの,その余の非開示部分については棄却する裁決をし(以下,「本件裁決」という。),同日,原告に対し,その旨を通知した。
 かかる裁決に至るまでの間,宮城県公安委員会は,上記答申の末尾に付された意見に対して,何らの調査も行わなかった。
 本件裁決は,上記宮城県情報公開審査会の付帯意見に対して,「『宮城県警察の会計監査に関する訓令』に基づき実施された会計監査結果(監査対象には本件で請求されている平成11年度の犯罪捜査協力報償費も含まれている)の報告を受けたほか,処分庁職員に対し必要な説明を求めるなどの調査を行い,本件行政文書どおりに犯罪捜査協力報償費が支出されていたことの心証を得た」と付言し,本件裁決を行い,審査会の答申において犯罪捜査協力報償費に関して部分開示を相当とした結論を覆し,これを認めない判断を行ったものである。
 諮問実施機関が情報公開審査会の答申に従わない裁決等を行うことは極めて希有である。
 本件裁決の判断は,審査会が要望していた,公安委員会の権限と責務に基づいて本件行政文書に記録されている犯罪捜査報償費の支出の有無の検証する作業を行うことなく,いわば宮城県警の内部監査結果を無批判的に受け容れたものに他ならない。
 このような本件裁決における公安委員会の態度は,これだけ全国において犯罪捜査報償費の架空支出疑惑が噴出している中において,警察本部長を通じて県警察を管理するとの公安委員会の権限と責務を放棄したと評価せざるを得ないし,かつ,県民に対する説明責任も果たしていない。
 また,宮城県情報公開審査会が犯罪捜査報償費に支出について上級官庁としての公安委員会としての権限行使を期待し,行政文書が申請に記録されている情報が申請かどうかを十分検証する作業を求めていたにもかかわらずこれを実質上行うことなく,犯罪捜査報償費に関する情報に関して部分開示を相当とした審査会の結論と異なる裁決を行ったことは,公正かつ客観的な判断を確保するため情報公開審査会を設置し,その答申を尊重して裁決を行わなければならないとする本県情報公開条例の趣旨を反した違法があるとも言える。

(4) 宮城県公安委員会の上記裁決に対して,公安委員会から諮問を受けて答申を行った宮城県情報公開審査会は,平成17年6月3日付けで,公安委員会宛で,本県情報公開条例第22条第2項の規定に基づいて建議をした。
 情報公開審査会が諮問実施機関に対しこのような建議を行うこと自体も極めて異例である。
 建議は,その前書きにおいて,本件裁決が,「平成16年9月30日付け情公審第38号で審査会が行った答申の内容とは本質的に異なっているものである」とし,審査会が公安委員会委員長に対し本件裁決に至までの手続きや判断理由等を説明するように求めたにもかかわらず,同委員長はこれを拒否したとの経緯を明らかにした上で,本件裁決は「行政文書の開示請求権を保障した条例の趣旨に即したものとは言い難く,また,条例の解釈運用を誤った判断があるのではないかとの結論に達した」,「ついては,審査会は公安委員会に対し,本件裁決の検討経過をより具体的かつ詳細に公表するなど,県民への説明責任を十分に果たすよう適切な対応を望むとともに,本件裁決が今後の条例の解釈運用に悪しき影響を及ぼすことがないよう求めるものである」とした。
 そして,本件行政文書の検証について,「本件諮問事案の一部について審査会の審議には限界があり,審査会として十分な心証を形成できなかったことから,種々の疑問点を掲げ,付帯意見として,諮問実施機関である公安員会に対し調査及び建議を尽くした上で適切な裁決を行うことを求めた」ところ,「公安委員会は,先に実施された会計監査結果の報告を受けたほか,処分庁職員に対し必要な説明を求めるなどの調査を行い,本件行政文書どおりに犯罪捜査協力報償費が支出されていたことの心証を得たと裁決に付言するのみで,その検討経過や判断理由等について,つまびらかにしたとは到底認めることができない。」,「領収書が偽造されたものであるとの請求人の主張に対しても,公安委員会は,『請求人の全主張を精査しても』,当該領収書が偽造されたものであるとは認めることは出来ず,領収書が偽造されたものであると認めるに足りる事情は見いだせないとの消極的な判断を示しているだけで,自らの調査に基づく心証については一切言及していない。このことは審査会の附帯意見の趣旨を十分に理解したものとは言えない」と指摘し,本件裁決を強く批判した。

3 県警の不十分な内部監査に対する宮城県知事の対応

上記1の県警の不十分な内部監査が公表された後,浅野史郎宮城県知事は以下のような対応をとった。
(1) 北海道警における裏金づくりを内部告発した原田宏二氏との面談
 まず,知事は,平成17年4月30日,北海道警の元釧路方面本部長であり,北海道警の裏金づくりを内部告発した原田宏二氏を仙台に招き,会談した。
 会談は非公開で約2時間行われた。
 原田氏は,浅野知事に対し,
@ごく一部を除いて,警察組織内には情報を得るために金を支払う文化はない。
A一部存在しない捜査協力者への協力金も公的な文書に記載されることはない。
B自身の経験では協力者の存在はゼロに近い。
C宮城県警の内部監査について,守秘義務のある関係者が聞いて協力者に不利になることはない。そもそも協力者の存在が架空の可能性がある。
などと自らの体験に基づき述べたという。
 浅野知事は,この会談を通じて具体的な実感が得られた,非常に重い証言だと語った。
(2) 県警に対する監査要領提出を要求
 また,宮城県会計課は県警会計課に対し,平成17年5月13日までとの期限をきって文書で内部監査に関する釈明を求めた。ここでは,具体的な方法を記した実施要領を提出すること,調査対象となった捜査員の氏名,所属,捜査員に対する質問と回答の内容,対象となった捜査員の選び方などの報告を要求するとともに,捜査協力者に対する聞き取り調査をしなかった理由や聴き取りをせずに「適正に執行された」と判断した理由についての説明を求めている。
 これに対し,県警は監査要項を宮城県に提出した。これによれば,内部監査は領収書などに記載された報償費の支払額や年月日,支払った人などについて捜査員に質問し,その回答の内容と記載内容が一致しているかどうか調査した結果,内容が一致したため適正に執行されたと判断したという。捜査協力者に聴き取りをしなかったことについては捜査活動に支障が生じる恐れがあるためと説明し,対象となった捜査員の氏名については回答を拒否した。捜査協力者に対する確認が当初から想定されていなかったものである。
 このような県警の内部監査の方法に関する説明は,全く合理的ではなく,不審極まりない。不正支出をひた隠しにしようとしている県警の捜査員に質問して不正支出の事実を自白するはずもなく(嘘の上塗りをするだけである),不正支出の調査方法として客観性がなく不相当である。また県警の内部監査である以上,捜査協力者に聴き取り調査をしたからと言って協力者に不利になることはなく,捜査の秘密維持の問題も生じないにもかかわらず,不正支出を確認するために最も容易で客観性がある捜査協力者に対し聴き取りをしなかったということは,全く理解し難い。
 このような県警の回答について,当然ながら,浅野知事は,「監査の名に値しない」と強く批判し,さらに何らかの対応策をとる決断を迫られることとなった。
(3) 県警に対し改めて支出文書の提出の要求
 浅野知事は,平成17年5月16日,報償費の予算執行停止も視野に入れて,監査対象となった99年度の報償費に関する会計支出文書の開示と捜査員の聴取を求める文書を県警に送付した。
 これに対し,県警は捜査活動に支障が及ぶとの理由で,知事が求めた報償費の会計支出文書の提出を拒否した。

4 宮城県警の現職警察官からの内部告発の手紙
浅野知事は,5月30日の記者会見において,宮城県警の現職警察官から知事宛に届いた内部告発の手紙を公表した。知事に対しては,この他にも県警OBを名乗る人物から不正支出を告発する内容の手紙2通が届いているという。
 かかる内部告発の手紙は,報償費の不正支出に関して,以下のとおり告発している。
@(県監査で)捜査員から直接話を聞いたようだが茶番だ。捜査員の氏名は警察署でやり,言いなりになる職員を指名し,監査前に周到に練習している。
A警察官から協力者に金を渡すことはない。私も長く捜査員をしていたが,金を支払い情報をもらったことは一度もないし,同僚からも聞いたこともない。
B内部監査は,書類上の不備だけの指導だ。外部向けのポーズだ。
C長らく続いた悪の伝統である報償費は,直ちにゼロにしても治安の悪化につながることはない。逆の中堅以下の職員のもやもやが吹き飛び,組織の活性化に結びつく。県警の力を信頼していただきたい。大半の職員はまじめに治安の維持に努力している。
 
5 高知県警捜査費に関する非開示処分取消訴訟判決
 高知県警が捜査協力者に支払ったとする捜査費(本県の犯罪捜査報償費に相当)に関する文書を非開示とした処分の取消を求めた訴訟の高知地裁判決が平成17年5月27日にあった。
 かかる高知地裁判決は,捜査費に関して違法,不当な目的のために流用されているとの組織的不正経理疑惑があることを認定し,月分の捜査費総括表のうちの月額受入支払額や支払精算書等の中の個別支払額や捜査員の官職について,組織的不正経理疑惑を解明するという公益性は非開示により保護されるべき利益に優越するとしてこれらの情報を非開示としていた処分を取消した。
 高知県警における不正経理疑惑が存在することを裁判所が認定し,警部補以下の職員の役職名や一定の文書に関する捜査費の個別執行額の開示を認めた点においてすぐれた判決である。

6 犯罪捜査報償費返還住民訴訟の仙台地裁判決
 宮城県警が平成12年度の犯罪捜査報償費を裏金に回していたとして仙台市民オンブズマンが宮城県警の当時の会計課長に約1950万円の返還を求めていた住民訴訟において,仙台地裁第1民事部の判決が平成17年6月21日に言い渡された。
 仙台地裁判決は,会計課長に財務会計上の違法性を認める証拠はないとして返還請求自体は棄却した。しかし,その判決理由中において,@宮城県警の各課及び各署のいずれも毎月の受入額及び年の受入額がほとんど使い切られていること,A近時,全国の各警察において報償費等に関する不正支出疑惑が噴出していること,B県情報公開審査会がインカメラ審査をした上で支出状況に疑問をしめる答申をしたこと,C宮城県警が監査等に当たり支出関係書類の一部を目隠ししたり,宮城県知事からの支出関係文書の要求に対し不当に拒否したことなどの点から,
 「平成12年度の宮城県警本部の報償費の支払の相当部分が実体がなかったものと推認する余地がある」
と指摘した。犯罪捜査報償費の不正支出を裁判所が認定した極めて画期的な判決である。
 また,上記仙台地裁判決は,宮城県警が宮城県知事から求められた会計文書の提示を拒否するなどの対応に出ている点について,「情報提供者・協力者保護の必要性,情報提供者・協力者との信頼関係の維持,捜査上の秘密の保持を理由として挙げるが,…宮城県知事の実地調査権を拒む十分な理由となるものではない」,「宮城県出納局長は,必要があればいつでも書類を自らの保管に移すことが可能であると解する余地がある」とも判示している。

7 報償費の予算執行停止
 ここに至って,浅野宮城県知事は,犯罪捜査報償費の適正執行が確認できず,予算執行権者として執行を続けるのは困難であるとして,犯罪捜査報償費の予算執行を停止した。
 知事から再三にわたって求めてきた報償費支出関係文書の提示拒否や不十分な県警の内部監査等の宮城県警の極めて不審かつ不当な対応を踏まえれば,予算執行権者である知事としては当然の措置であると言わざるを得ない。
 浅野知事の予算執行停止の決断に対して,宮城県警はカンパを募って報償費の代わりとなる基金を設けるとの対応策をとるというが,県警の対応の迷走はどこまで続くのだろうか。 警察の犯罪捜査において捜査協力者に金を支払う文化はなく,協力者の存在自体ゼロに近い上,そもそも捜査協力者が仮に存在するとしても対価を期待して協力しているものではないであろう。捜査協力に報酬など不必要であるし,報酬を支払って得た捜査情報などは証拠価値としても乏しいというべきであり,捜査には協力者に対する報償費の支払いが不可欠であるかのような県警の主張は欺瞞である。予算執行停止に対し「捜査に支障が生じる」などとの県警の主張も何をか言わんやである。何ら実体がない報償費の支出が停止されたとして,何ら捜査の支障など生じるはずもない。
 宮城県警は,ここまで追い詰められているにもかかわらず,さらに嘘の上塗りを行い,必要もないカンパを募るなどの愚策をとるなどの対応を即刻改めるべきである。宮城県警のこれまでの対応を見て良心を痛めている県警職員は多数存在するであろう。宮城県知事の予算執行措置を受入れ,不正支出の実体を内部監査で明らかにして膿を出し切って旧来からの悪しき慣習を排除することこそが,警察に対する信頼を回復する方策であることを理解すべきである。

8 100条委員会設置の必要性

 以上に述べてきた,@県警の不十分で形式だけの内部監査の結果,A知事からの県警に対する内部監査に関する求釈明や文書提出要求に対する不合理な県警の対応,B宮城県警の現職警察官から知事に対する報償費不正支出を内部告発する手紙の公表,C犯罪捜査報償費返還住民訴訟における仙台地裁判決の判決内容,D宮城県知事による報償費予算執行停止の断行によって,宮城県警における犯罪捜査報償費の不正支出は疑惑から確信へとさらに高まったと言えよう。
 それにもかかわらず、宮城県警は、未だなお、宮城県に対して、犯罪捜査報償費支出関係書類の提出や捜査員への事情聴取を頑なに拒否し続けており、浅野知事と宮城県警の対立は混迷を深める一方である。
 宮城県警は、犯罪捜査報償費の支出が裏金に費消されているということがあらぬ嫌疑であるとするならば、監査委員に対し堂々と会計書類を提出し裏付けの存否を確認してもらえばよいのであり、内部監査においても犯罪捜査報償費の受領者が実際に受領しているかどうかさえ確認すればたちどころにその疑惑は晴れるのである。
 宮城県警がとっている会計書類の提出拒否等の対応は不審極まりなく、宮城県警がそのような対応をとらざるを得ないのは、犯罪捜査報償費が不正に支出されていることを強く推認させるのである。
 警察内部における悪しき慣習をこの機会に断絶しなれば、後世にも残り続けるおそれが高い。
 宮城県警における犯罪捜査報償費の不正支出疑惑は、宮城県民としては決して看過できない問題であり、仙台市民オンブズマンとしても、このままこの疑惑を闇に葬らせるようなことは決して許さない、宮城県民も到底納得していない。
 そこで、宮城県議会の場で、宮城県警における犯罪捜査報償費疑惑の全容解明を図るため、地方自治法第100条に基づく調査権を行使するための特別委員会を設置し、100条委員会の場での疑惑の徹底解明を求める次第である。
                                              以 上

警察庁長官 漆 間  巌 殿                      
 
                                     2005年7月4日

県警犯罪捜査報償費に関する抗議文兼公開質問状

                                   仙台市民オンブズマン
                                    代表 坂 野 智 憲

1,浅野史郎宮城県知事に対する批判について,厳重に抗議する

 新聞報道によれば,貴職は,本年6月30日の記者会見において,浅野史郎宮城県知事が宮城県警の捜査報償費予算の執行を停止したことについて,「警察活動に対する介入で,言語道断だ」と批判されました。
 しかし,そのような貴職の発言こそ,地方自治及び県知事の予算執行権に対する「介入」であり,ここに厳重に抗議いたします。

2,警察も説明義務を果たすべきである

 警察といえども,県予算を使う以上,その適正な執行を県知事及び監査委員に(ひいては県民に)説明し,これをきちんと証明すべきです。血税を費消する組織である以上,当然の責任です。ところが,これまで宮城県警はそのような責任を全く果たしてきませんでした。それどころか,宮城県警は予算執行書類を目隠ししたり,捜査員や協力者からの聞き取りを拒否して監査妨害をしており,特に前者の目隠しは,本年6月21日言い渡しの仙台地裁判決によって「法に則ったものとは言い難い。」と指摘されています。

3,仙台地裁判決の指摘と全国での不正経理

 この仙台地裁は,報償費の使い切り,不自然に平均的な執行状況,鑑識課の報償費支出について実例を示せないこと,鑑識課の報償費が短期間で配分されなくなったこと,警視庁における不正疑惑,北海道警の不正,宮城県情報公開審査会の答申内容,宮城県による定期監査と知事要求の監査に対する県警の対応,知事の提出要求を拒否する県警の対応などについて詳細に検討した上で,「総合すると,平成12年度の宮城県警本部の報償費の支払いの相当部分が実体がなかったものと推認する余地がある。」「鑑識課の平成12年度の報償費の支払いのすべて(総額123万円分)について,実体がなかった疑いが強いというべきである。」「報償費の支払いとしてその実体を欠く支出がされたとすれば,これによって宮城県に損害を与えたことはいうまでもない」と判示しました。宮城県警でも不正経理が行われていたことが裁判によって明らかになったのです。もはや,報償費の不正経理は,北海道,福岡,高知,京都,愛媛などでも明らかとなっており,全国共通の問題となっています。

4,貴職の発言はいかなる事実を確認してなされたものか

 貴職は,これらの経過と上記判決の事実認定をどこまで把握して「言語道断」との批判をされたのでしょうか。貴職は,全国の警察において,特に宮城県警において,報償費の不正経理が一切ないことを確認された上で発言されているのでしょうか。もし,確認されているのであれば,ぜひ警察庁長官として,確認した事実を逐一摘示して,市民県民に説明していただきたいと思います。もし,宮城県警において,報償費の不正経理が一切ないことを確認もせず,かつ,説明もできないのであれば,貴職の前記発言は無責任の批判を免れません。

5,地方自治,予算執行権限への介入はやめていただきたい

 地方には地方予算があり,そこから宮城県警へ多額の捜査報償費(今年度は2300万円)が振り分けられています。これは宮城県知事が責任を持って適正に執行すべきものです。宮城県知事及び監査委員は適正さを確認すべく適切確実な方法(予算執行書類の確認,捜査員や協力者からの聞き取り等)を選択したのですが,前記のとおり,宮城県警は監査妨害を繰りかえしています。そのため,宮城県知事は「適正執行が確認できない」として報償費予算の執行を停止したのです。適正執行が確認できないのは宮城県警が監査に協力しないからであり,宮城県知事及び監査委員には何らの責任はありません。予算執行の適正さが確認できないとの判断に疑義があるなら,貴職におかれて後記の指揮監督権限を行使するなどして適正執行を証明すべきであり,それをせずに県知事の執行停止の対応を批判するなど,地方自治,予算執行権限への介入と言わざるを得ません。

6,本来,貴職がなすべき事

 貴職(警察庁長官)は,警察庁の所掌事務について都道府県警察を指揮監督することができる立場にあります(警察法16条第2項)。今般の事態は警察行政についての重大な不祥事ですから,必要な監察を行う(警察法5条第2項第21号)などして,宮城県警を指揮監督すべきです。警察庁長官は,不正経理が明らかになった北海道警に対して,また,不正が発覚したその他の警察に対して,どのような指揮監督をされたのでしょうか。行使すべき指揮監督権限を発動すらせず,宮城県知事の対応を批判するなど,貴職の見識を疑わざるを得ません。

7,公開質問事項

 そこで,貴職に対して,以下の質問をいたします。本書面到達より,本年7月15日までにご回答くださいますよう,お願いいたします。

(1)「警察活動に対する介入で,言語道断だ」との貴職の発言は,いかなる事実

関係を把握された上での発言ですか。上記仙台地裁判決の指摘を把握された上での発言ですか。

(2)上記仙台地裁判決は,@報償費の使い切り,A不自然に平均的な執行状況,

B鑑識課の報償費支出について実例を示せないこと,C鑑識課の報償費が短期間で配分されなくなったこと,C警視庁における不正疑惑,E北海道警の不正,F宮城県情報公開審査会の答申内容,G宮城県による定期監査と知事要求の監査に対する県警の対応,H知事の提出要求を拒否する県警の対応について指摘しておりますが,それらについて,貴職はどのように考えていますか。判決の認定に疑義があるとお考えであるなら,その理由をご説明ください。

(3)貴職は,全国の警察において,特に宮城県警において,報償費の不正経理が

一切ないことを確認されたのでしょうか。もし,確認されているのであれば,ぜひ警察庁長官として,確認した事実を逐一摘示して,説明してください。

(4)不正経理が明らかになった北海道警に対して,また,不正が発覚したその他

の警察に対して,貴職もしくは前任の警察庁長官は,どのような指揮監督をされたのでしょうか。具体的にお示しください。

(5)上記記者会見において,貴職は「協力者と接触している捜査員を知事に会わ

せることは構わないと思う」と発言されたようですが,捜査員を知事に会わせるよう,宮城県警に対して指揮していただけますでしょうか。もし,「指揮できない」とのご回答の場合は,その理由をお示しください。

以上

 

<参考資料> 本年6月21日言い渡しの仙台地裁判決書(写し)    1通

警察庁長官宛抗議文兼公開質問状に対する「回答」

警察庁長官官房総務課広報室長より、7月15日付けで下記のような「回答の体をなしていない
回答」が届きましたので、ご紹介いたします。

                                     平成17年7月14日

仙台市民オンブズマン

代表 坂野 智憲  殿


                                警察庁長官官房総務課広報室長




        「県警犯罪報償費に関する抗議分兼質問状」について(回答)



  お申し越しのご趣旨については,ご意見として承りました。
 なお,本年6月30日の記者会見時における警察庁長官の 発言の趣旨について申し上げ れば,宮城県において犯罪捜査報償費の予算執行が停止されている事案の早期解決へ の 期待を述べたものです。
 警察庁といたしましては,引き続き,会計経理の一層の 適正化を進めるなど,国民の信頼 の回復に努めてまいる所存です。

宮城県議会100条委員会設置の申し入れ

宮城県警総務課旅費返還訴訟で 原告(市民オンブズマン)勝訴の判決

 上記訴訟について、仙台地方裁判所は総務課関係用務(8件)をカラ出張と認定し、
当時の総務課職員2名と総務課長2名に対し、60万3000円を連帯して宮城県
に返還するよう命ずる判決を言い渡した。
 これについて仙台市民オンブズマンは以下のコメントを発表した。

      宮城県警出張旅費返還請求代位訴訟判決に対するコメント


                            2005年7月21日 仙台市民オンブズマン

<判決の骨子>

 捜査関係用務8件(総額60万3000円)については,すべてをカラ出張と認めて,これに関わった職員に返還を命じた。
 通常用務による出張については,原告は第1次監査請求当時既に内容を知ることができたとして,却下した。
 被告佐々木についての請求は,消滅時効を理由に棄却した。

<評価>

 警察のカラ出張を裁判所が正面から認定した全国初の判決であり,高く評価する。地裁1民が6月21日捜査報償費の裏金疑惑を認めたのに続き,今度は3民がカラ出張の不正を明快に認定した。前回に引き続く画期的判決である。直接証拠がない中で,間接事実を丹念にとりあげて分析し,常識的な認定をしている。
 なお,却下された部分について控訴するかどうかは,検討する。
 仙台市民オンブズマンは,引き続き,警察の不正経理問題を追及していく。

公安委員会裁決の訴訟を求めて提訴
仙台市議会政務調査費(平成15年4月分)住民訴訟  仙台高裁で「特定性」を認める逆転勝訴の判決

仙台高裁は、標記の訴訟について、10月12日一審判決を取り消し、仙台地裁に差し戻す判決を言い渡しました。この判決について仙台市民オンブズマンは以下のコメントを発表しました。

        仙台市議会政務調査費控訴審判決に対するコメント


                       平成17年10月12日 仙台市民オンブズマン


1.監査請求の特定性を認めた判決であり(控訴審での逆転勝訴)、仙台市民オンブズマンの主張を認めたものとして、評価できる。


2.判決は、本請求が「怠る事実」に対するものであることを的確に据え、「怠る事実」が他の「怠る事実」と区別して特定認識できるかどうかを検討し、オンブズマンのした監査請求は特定できていると判断している。


3.政務調査費が四半期に分けて交付され、四半期内の支出に限定されていない点も正しく据えて、オンブズマンの特定した方法以上の特定は論理的に不可能であると判断した。また、政務調査費の支出科目や金額は、住民のあずかり知らぬところで定められた主観的な指標に過ぎないから、「特定性」の指標として機能することは期待できないと判断した。これらは監査請求をする住民側の事情をきちんと理解したものであり、高く評価できる。

警察庁長官への県警報償費に関する    抗議文および公開質問状