二宮忠八翁の玉虫型飛行機製作記(Part8)
 さあ、いよいよ野外でのテストです。ここからは慎重に事を運ばないと1年数ヶ月の苦労が一瞬で水泡に帰します。まずはショックコードでの滑走テストから。

 製作記 (Part8)
■滑走テスト
 最初はエンジンをかけずにショックコードで引っ張り、機体の浮きをみると同時に、舵の効き具合を確認します。今回、このテスト用に四国ソアリングクラブより、バンジーランチ用の強力なショックコードをお借りしました。
 テスト場も、現在、四国ソアリングクラブが管理している土器川河川敷の飛行場を使用させて頂きました。

 朝9時に集合。準備をしているところです。ペラはイミテーションの2枚ペラ。
 ショックコードの準備中。風向は南、微風で絶好の条件です。

 テストパイロット、Y.ヤスゾー氏が各舵の動作を確認しています。いつもは、あーじゃこーじゃと冗談をとばしながら操縦しますが、今日は真剣です。

<余談>
 ちなみに彼は、よくほかの会員の新作機の初フライトを請け負うことがあるのですが、製作やセッティングの不良、メカトラブルなどで機体が言うことを効かなくなった時、彼は話しかけても返事をしなくなります。このときは機体は帰ってこなくなるかもしれないと覚悟しなければなりません。






 さあ、準備OKです。まずは短い距離で走らせてみて、徐々に距離を伸ばしていきます。

  








浮いた!

 やりました! 徐々に発射する位置を後にずらし、3度目の滑走で玉虫U号機は浮き上がることに成功しました。高さは1.5m、距離にして約15m、ふわりと浮いてふわりと着地。思わずみんなから拍手が。

 ヤスゾー氏談:「軽くアップを引いただけで浮いた。」

 このあと、数度テストを行いました。若干、後荷重の感はありますが、直進性もよく、エルロンの効きも大丈夫そうです。

 しかし、このあと着地の際、バランスを崩して前輪を破損してしまいました。ノーズギヤと前輪は普通の糸で巻きあげ、エポキシで固めていました。しかし、これでは強度不足のようですのでケプラー糸を使用することにします。



ともあれ、テストは予想以上の上出来。
小さくピースサインで記念写真。

 これならいけそうです。確実に空気にのり、滑空していました。翼面加重が計算よりも少し重たくなっていたので心配していたのですが、思ったより離陸速度は低く、飛行姿勢も実に安定したものでした。ヤスゾー氏も「これなら、飛ぶ!」と太鼓判。

 動力飛行は来週に決定です。
 




■2004年6月27日(日) 本番、動力飛行テスト 

 あっという間に1週間が過ぎ、本番の日が来てしまいました。前輪の修理も行いました。昨晩は入念な準備も行いました。先週のあの感じならきっと大丈夫でしょう。T号機が失敗だっただけに、今度はみんなの期待も大きい。私も自信があります。でも万にひとつ・・・・あー、昨日はなかなか寝付けず睡眠不足。

 天気予報は曇り、なんとか大丈夫みたいです。集合時間は8時。早起きをして出発前にもう一度、備品の点検を行い、8時少し前に飛行場に到着。すると、見慣れたソアラが止まっている。ヤスゾー氏がすでに来ています。「早くからご苦労さん。」と声をかけると、なんと、「寝過ごしたらいかんから、きのうの晩から来て車の中で寝とった。」んだそうです。ほんとうにご苦労さんです。

 薄日は差すものの、全体に曇っていて雰囲気が暗い。

 風はほとんどありませんが、昨晩の雨で芝生が重くなっています。でも、この程度なら離陸に支障はないでしょう。

 さあ、急いで準備にかかります。

 西条からはじゃじゃまるさんがビデオ撮影のため、朝早く出発して駆けつけてくれました。
 そうこうしているあいだに、クラブ員数名が集まってきます。めいめい、準備を手伝うもの、グラウンドの状態を確認にいくもの、腹ごしらえをするもの、雑誌を読みながらあくびをしているものなど、みんなやる気満々です・・・(?)
 ん?雨か?
 パラパラッと来たと思ったら、たちまち窓の外が見えなくなるほどの豪雨!!!間一髪で玉虫を会長のデリカの荷室に放り込んで、みんなそれぞれ車に待避。

 うーん、すんごい雨です。雨粒が大きくて車の屋根を叩く音がやかましい。
 おお、会長の車の荷室はサードシートを取っ払って床を張ってあるスペシャル仕様。なんと組み上げた状態の玉虫がぴったりと納まっています。よし、この車を「玉虫専用運搬車」にすることにします。

会:「こらこら、勝手に決めないでね!」
 豪雨はなかなか治まりません。車の中では、携帯で連絡が飛び交い、中にはあきらめて帰る会員も。結局、お昼まで待って、どうするか判断しようと言うことになり、めいめい喫茶店に行くもの、うどん屋に行くもの(・・なんたって讃岐ですから)などなど、一旦解散となりました。

 約2時間後、雨雲は去り、雲間には青空がみえてきました。散っていた会員もぼちぼちと集まり、さあ、再開です。でも、滑走路は沼のようになっています。大丈夫でしょうか。
 燃料を入れ、エンジンを始動してニードルを調整します。
 滑走路に運んで、スタンバイOK。でも、芝生は写真のようにかなり深い水たまりになっています。
 とにかくやってみましょう。
 まずは、直線で少し浮かせるだけにします。

 玉虫U号機、スタート!


 ところが、水たまりの芝が重く機速がのりません。最初は真っ直ぐ走りますが、スピードが上がると少しのラダー(前輪)操作で前輪が芝に取られて、離陸速度に達する前に機首が振られてしまいます。

 数度、繰り返しましたがやはり同じです。機体は真っ直ぐに走ろうとしているし、あと少しで浮こうともしています。
 しかし、この滑走路の状態では無理のようです。

 さて、どうしましょう。みんなで協議です。「来週に延期しよう。」という慎重論と「水たまりのない土手の上から離陸させよう。」という強硬論。土手の上から発進し、制御が効かなければ間違いなく木っ端です。私としては、大丈夫という確信があります。ヤスゾー氏も「たぶん、いけそうな気がするよ。」と。
 考えてみれば、たとえ滑走路であれ、浮いてから制御が効かなければどちらにしても墜落です。計画した手順から言えば少しはずれますが、制作者とパイロットがゴーサインを出しているのだから、やってみようと言うことになりました。

(あとにして思えば、このとき私もヤスゾー氏も気がはやり、冷静さを欠いていた?・・・・うーん、否定はできませんね。)

 そうと決まれば、さっそく会場を土手の上に移して準備を行います。ヤスゾー氏も、自分で「いける!」と言ったものの、いざとなると相当なプレッシャーのようです。

皆:「ほんまに飛んだらええなあ!」
ヤ:「飛んだらええけど、飛んだら飛んだで私としては今度は無事におろすという大問題が発生するわけでして・・・・・・」

 ところが、今度はなかなかエンジンがかかりません。みんなが見守る中、何回目かにやっとエンジン始動。

ヤ:「あらー!とうとうかかってしもうた!」
 思い切って何かに挑もうと決めた時、なにかの理由でそれが中止になってくれればよいのにと願う気持ちは誰しもあるもの。ヤスゾー氏もちょっとは気後れしていたんですね。

 さあもう、やるしかありません。スロットルを何度かあおったあと、ヤスゾー氏に目で合図を送り、玉虫をはなします。


放たれた玉虫は鋭く一気に加速。
土手を蹴って空中に!


飛んだ!
(拍手が湧き起こる)


あっという間に高度をかせぎ


実に安定しています


旋回も問題ないようです



私:「どう?」
ヤ:「いける!ちゃんと操縦できてるよ。大丈夫!」





飛行時間は約7分間
きれいなランディングです


うしろからの拍手に答えるヤスゾー氏

年甲斐もなく私も思わずガッツポーズ


 飛んでいた7分間はとても長く感じました。相当興奮していたのでしょう、私の目には土手から飛び出た玉虫はゆっくりと上昇していったように見えたのです。しかし後日、じゃじゃまるさんの撮ってくれたビデオを見ると、かなりのスピードであっという間に上空に舞い上がっていました。

 土手の上に置いた「玉虫」をみんなが囲み、「おめでとう」「とうとうやったね」と祝福とねぎらいの言葉をくれます。本当にみんなに感謝です!ヤスゾー氏、ご苦労様でした。

 これでやっと終わりです。と書きたいところですが、この製作記を読んでいただいているみなさんの中にはもうお気づきの方もおられると思います。実は、今回の初飛行には万全を期して垂直尾翼が付けてあったのです。これまでのこだわりから言えば、これではまだ忠八のオリジナル機が再現できたとは言えないのです。・・・でもそれはまた後日。少しだけ休ませてください。

 夜、家に帰るとドッと疲れが出たのか身体が鉛のよう。でも玉虫型を前に、今日の飛行を思い出しながらちびりとやるバーボンはとてもうまかった。

 最後の仕上げはまたご報告します。