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【Dragon Quest9】 |
| ■オリガと あると の願い[3] |
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掲載日[2009/09/25] いつもの朝の大騒動を経て、四人はツォの浜を離れた。ツォの浜の潮の匂いが染みついた髪がシジーは煩わしく感じる。浜の宿ではお風呂もなかったので、体を洗うのを裏手の川で済ませたせいか体がべたついている。やはり、セントシュタイン城下町のリッカの宿で泊まるのが一番最高だと、誰もが思った。 リッカの宿ならば、温かいお風呂もおいしい食事も料金込みでサービスされる。おまけに、あると が従業員扱いなので、全員込みでも安く泊まれるのもポイントが高い。高く支払ってもセントシュタインの宿に泊まればよかった、という旅人の声を聞くこともあり、世界的にみても今やリッカの宿は宿屋ランクとしては最高レベルと言っていいだろう。 何故唐突にセントシュタイン城下町の宿の話が出たのかと言えば、今朝がたレッティは不機嫌そうに起きると、半分キレかかった声でこう声を上げたのだった。 「今回の三種の神器の件には乗るけど、今夜からの宿は絶対セントシュタインのリッカんとこにして!いい加減こんなジメジメベッドや隙間風や海の匂いにはもうんざりよ!」 レッティが言いながらも、そのジメジメベッドから抜け出せずにいるのをシジーは笑った。 「そうね、 あると もリッカさんに会わなきゃいけないわね。世界はもう大丈夫だって報告してあげなきゃ」 それを聞いて あると が、はっとしたように頷いた。 「そうだった。リッカとじぃちゃんにはこのことを話さなきゃ」 天使界が恐ろしい光の矢に射抜かれ、 あると は不運にも羽根と輪をなくし地上のウォルロ村に落ちた。その時の あると を助けたのが、リッカとその祖父だったのだ。その後、リッカは村を出てセントシュタインの城下町に宿屋を築くことになったので、リッカの祖父はひとりでウォルロ村に住み続けているはずだ。 「リッカんとこの飯はうまいからな。俺もそっちがいい」 ジェイドが服を着替えながら珍しく同意を示した。 あると もそれには深く頷いてみせる。 「じゃあ今夜はリッカの宿で決まりだね。その前に、三つのアイテムの情報を探そう」 それを聞いたレッティが、もそもそと あると の方に布団をかぶったまま方向転換する。 「それなんだけど、『水のはごろも』ならナザム村で見たよ。私、欲しくてたまんなかったんだけど高かったから我慢したんだもん…」 あると とシジーがそれを聞いて、でかした!とばかりに顔を輝かせた。その二人とは別に、すっかり身支度が済んだジェイドはレッティを見下ろすと、いつもの抑揚のない声を投げかける。 「お前、我慢とかできるんだな」 「むっきいいい!できるわよ失礼ね!盗賊だからこその金銭感覚よ!」 レッティが感情をあらわにして噛みつくように言い返しても、ジェイドはまったく表情を変えない。 「そりゃおみそれした」 ジェイドは素知らぬ顔で手近にまとめた荷物を持つと、ゆったりと部屋を出て行こうとして、思いついたように あると に声をかけた。 「あると も、こいつらはまだ支度があるから先出ようぜ」 「あ、そうだね。じゃ、シジーにレッティ、宿屋の前にいるから」 二人が出て行って、シジーとレッティはようやく本格的に支度を始めたのだった。 ルーラという便利な呪文を あると が覚えてからは、旅がずいぶん楽になった。一瞬にして、行ったことのある町や、城、時には山の頂上まで行くことができる瞬間移動の魔法なのだ。おかげでツォの浜からナザム村へは、ひと呼吸のする間にたどり着いてしまった。 「でも、18000Gなんて大金私たちにあったかしら?」 懐かしい気持ちになりながら鄙びた景色を歩くシジーが唐突に不安になってレッティに耳打ちすると、レッティはうーんと唸りながらも、目の端で あると の様子を窺う。レッティが『水のはごろも』の値段を言っても、あると はたいして驚かなかったのでそれがレッティには意外だった。 「昨日の決戦前まで結構モンスターと戦ったわよね。だから意外と貯まってるのかも。戦闘の後でお金を拾うのは あると とジェイドの役目だから、私にも所持金がいくらなのかわからないけど…多分そう低くはないわ」 レッティはジェイドと あると を鋭く見定めるように見つめながらそう言った。それを聞いて、シジーはほっと安堵したように微笑む。 「それならよかった。せっかく来たのに、買えなかったらどうしようかと思ったわ」 のんびりと微笑むシジーを見て、レッティは力が抜ける。どうしてこう、人にあげてしまうものなのに、大金をかけることをそんなに気にしないでいられるのだろうと思う。 「シジーも あると もさ、あんまり人がいいといつか騙されちゃうよ。だからあんたたちってだから放っておけないのよ」 そのレッティの言葉を聞いて、シジーはきょとんと目を丸くする。レッティはむくれた顔でそう言うのだが、シジーはレッティの言葉に嬉しくなってしまう。 「ありがとうレッティ。心配してくれるのね。大丈夫よ。あると と私には、レッティとジェイドがいるもの」 にっこり、とまるで女神のように微笑むシジーに、レッティは呆れてため息をつく。 「…シジー、私だってあなたを騙すかもしれないわよ」 シジーがどんな顔をするか、レッティは少し楽しみでもあった。シジーはいつも正しく清廉で、汚れがない。時々その真っ白な存在が、レッティにとって憎らしくなることもある。 しかし、シジーは不思議そうに首をかしげただけだった。 「たとえば、どんなふうに?」 シジーはレッティがそんな事をするとは思えないのだった。レッティも、シジーを騙すことなど今までに考えたこともない。あわててレッティは頭をフル回転させなければならなかった。 「たとえば、ええと、寝てる間に所持金を持ちだして逃げちゃうかもしれないし」 「それなら、そのお金がレッティに必要だったのだと思うわ」 「シジーの悪口を言って あると 達からシジーを引き離すかも」 「どうしてそんな必要があるのか、レッティに訊ねるわ。あなたと話し合いたいわ」 「シジーを嘘で連れ出してシジーを傷つけるかも」 「レッティを私が追い詰めたのなら、私は傷を甘んじて受けます。その代り、その訳は教えてほしい」 レッティが思いつく限りの欺くことを言ってみるが、シジーは騙されたという認識はまるでない。とにかく、訳を知りたい、話し合いたいとレッティに逆に問いかける。 もともとシジーを騙したいなどと考えているわけではないので、レッティにも想像力が限界だった。他に何かないかと唸っていると、シジーがふふ、と笑う。 「何よー!」 レッティはそれに気づいてシジーに刃向うように言ってみるが、もはや思考も尽きたところだった。 「レッティは私を騙さないって証明したようなものよ。レッティは私を、騙す必要性がないんだもの」 シジーの言う通りだった。お金はあって損はないものだが、仲間を裏切ってまでして手に入れようとは思わない。シジーを村八分にすることはきっと一瞬の優越感の後、自分が一番居心地が悪いだろう。シジーを傷つけるなんてことは、最もできない。彼女を傷つけても、同じように自分が痛むような気がする。 本当に一つもシジーを騙す必要性がないのだ。 「ほんとだ…」 「だから大丈夫って言ったのよ」 嬉しそうに笑ったシジーは、レッティの手を取ると、ありがとう、と感謝を示してその手を両手で包みこんだ。 「よしてよ。そんなことをされると、なんだかくすぐったい」 「でも、本当に感謝してるもの」 二人が照れ隠しのようにくすくすを笑っていると、おおーい、と呼ぶ声が聞こえてきた。防具屋の入口で あると が手を振っている。隣のジェイドは相変わらず無表情だ。 「まさか、売り切れとか?」 青くなってシジーがそう言うが、レッティは あると の表情を見て首を振る。 あると は早く二人に来てほしそうな顔をしているのだ。 「オリガのサイズがわからないとか、そういうことじゃない?」 「そうね。オリガは私と身長が変わらないし、私にあわせて買えば大丈夫だと思うわ」 二人は言いながら、防具屋に走りだしたのだった。 果たして、『水のはごろも』を手に入れることができた。どうやらその不思議なはごろもは、着ている者の体格に合わせて衣の長さが変わる伸縮自在の代物らしかった。 「1つ目ゲット!二つ目は『うみなりの杖』ね。これも実は覚えてるの!グビアナ城下町の防具屋に売ってた!」 レッティが初めのころとは打って変わって協力的になったので、アイテム収集は順調に進んだ。 「初めから素直に言えばいいのに」 ジェイドがいつもの如く直撃でレッティを非難したが、レッティはふんっと息巻くと腕を組んでジェイドを睨みつけた。 「こんな大金を払うことに私は全く納得ができなかったから、僅かばかりの反抗心よ」 あると はそれを聞いて、レッティに振り返りながら訊ねる。 「今は、納得してくれたの?」 「前よりはね。これはオリガに必要で代わりにやってることだから、いいことにしたの」 レッティがそう言うと、シジーと笑い合う。 あると もジェイドもレッティの言うことが理解できなかったが、レッティが機嫌を直してくれたことだけはよかった、と あると は思った。 グビアナ城下町にルーラで移動したあと、『うみなりの杖』はそれほど高くもなく(かといって安いものでもなかったが)手に入れることができた。残りのひとつ『みかがみの盾』となったところで、さすがのレッティも頭を悩ませながらおずおずと言った。 「これまでの店で見たことがないのは確かよ。盾はシジーが付けるものだから、だいたい隣で見てたもの。だけど、そんな名前聞いた覚えがない」 仲間の期待にこたえられず残念そうにそう言うレッティだったが、それにまったく構わず、ジェイドがおもむろに一言口を割った。 「腹減ったなぁ」 シジーとレッティがぎろりとジェイドを睨むが、ジェイドはやはり少しも気にせず、あると にもう一度アピールしているようだった。あると は、仕方なさそうにジェイドに頷くと、セントシュタイン城に行こう、と言った。 「あそこなら錬金釜もあるし、リッカの宿は今や人気店になりつつあるから早めに行って部屋を取っておくのも悪くないと思う」 結局、あると のもっともな提案にシジーもレッティも反論できず、結局予定よりも早い時刻にセントシュタインへの凱旋と相成ったのだった。 セントシュタインへルーラで移動し、リッカの宿にたどり着くと、リッカが朗らかな笑顔で4人を出迎えた。 「あ! あると !おかえりなさい!シジーさん、ジェイドさん、レッティさんも!!」 まだ幼さの残るリッカの顔を見ると、あると を始めみんなの顔が和んだ。いつも無表情のジェイドさえ、リッカの顔を見ると嬉しそうな顔をした。リッカには人を安心させるような優しいオーラがあふれているのだ。 「疲れたでしょう。いつも通り、従業員価格で泊まっていいからね!お部屋はいつものところが空いてるからどうぞ使って!」 「ありがとう、リッカ。少し早いけど食事はできる?ジェイドがお腹減ったんだって」 あると が済まなそうにリッカにそう言うと、リッカは目をぱちくりとしばたたかせた後、すぐにこころよく頷いた。 「ええ!じゃあ超特急で食事を作るからね。ジェイドさん、もう少しだけ我慢してね」 リッカの朗らかな笑顔に、さしものジェイドもつられたように笑みが零れる。 「ああ。ここの料理はウマいから、我慢でもなんでもする」 「あははっ!ジェイドさんたら!用意ができるまでは部屋で待っててね!」 リッカはそこまで気さくにそう言って、最後に、どうぞ皆さんごゆっくり、とにこやかにお辞儀をした。 四人はいつも従業員価格で泊まらせてもらっている部屋に移動する。従業員価格の部屋だからと言って、特に別の部屋と劣るところはない。おそらく、リッカは あると がいつ帰っても泊まれるようにこの部屋をできるだけ空けていてくれているのだ。 「お風呂だああー!やったあぁああ!私が一番だからね!」 部屋に入るなり、レッティがバタバタとタオルと着替えを持ってバスルームに駆け込む。シジーも一旦ソファに腰を落ち着かせてから、目の前のテーブルに置かれているティーセットを見つけて紅茶の支度を始めた。ジェイドは力尽きてベッドに横になるなり、寝息をたてはじめる。余計な体力はもう使いたくない、ということなのだろう。 あると はシジーが用意するお茶の準備を見ながら、さし向かいの椅子に座った。 「シジー。レッティに何か言ったの?」 お茶の用意の手を止めずに、レッティはいいえ?と返事をする。 「特別なことはなにも。どうして?」 「レッティ、ナザム村に行ってからすごくいい顔してるからさ。シジーが何か言ったのかと思って」 あると は元天使のせいか、人の気持ちの変化にとても敏感に察知する癖があるようだった。シジーはそれに気づきながらも、余計なことは口にしないでおこうと心に決めて、お茶の準備に集中した。 「レッティ自身で何かに気づいたんじゃないかしら。私はレッティとお話はしたけど、特別なことは何も言ってないわ」 「そう。でもよかった。レッティが協力してくれて」 シジーがカップを四人分用意し、紅茶を注いだひとつを あると の前に置いた。シジーは自分の分にも紅茶を注ぐと、そのポットを中央に置いた。ポットカバーを被せて、保温性を保つ。こう言う快適に過ごすアイテムが揃っているのも、リッカの宿屋ならではだ。 「でも、あと一つは本当に見当がつかないわ。どうしたらいいのかしら」 一口紅茶を飲んでから、シジーが困ったようにそう言った。あると も、そのことについては頭を悩ませている。 「とりあえず、食事の後に錬金レシピを読みなおしてみようかな」 「そうね、とにかくできることをやっていくしかないわね」 シジーも あると の案に賛成して、とりあえずレッティがお風呂から戻ってくるまでは、目の前の紅茶を楽しむことにした。レッティが戻ったら、絶対二番手に入らせてもらおう、と一人シジーはそのことを楽しみに紅茶を口に含んだ。 ひと通り、食事とお風呂を済ませて、錬金レシピを見直そう、と あると が声を上げたときには、ジェイドもレッティもふかふかのベッドの誘惑から逃れられずに寝入ってしまった。リッカの宿のベッドは特に高級というわけではないが、清潔でよく干された寝心地のいい布団だった。あまりによく眠れるので、ここに来るといつもより自然に就寝時間が早くなる。おかげで、この二人は錬金レシピなど手伝う様子もない。 「盾の部分だから、まあ大した量じゃないか…シジーも眠る?」 「ううん、私も気になるから調べるわ」 シジーはお風呂に入ったおかげか、少し目が冴えていた。眠りたくなるまではまだ時間がかかりそうだ。あると と連れ立って一階の錬金釜のところまで下りて行く。 カウンターには深夜にもかかわらず、普段通りにリッカが立っていた。 「あら、あると にシジーさん。お出かけ?」 疲れも見せずリッカはにこやかに あると とシジーに声をかける。 「そこにある錬金釜に用があって。ちょっと借りるね」 あると が錬金釜を手にすると、使ったらちゃんとここに戻してね!とリッカが言った。あると は頷きながら、錬金釜をロビーのテーブルに移動させる。その方がゆっくり調べられそうだったからだ。 錬金釜はなんと、あると に向かって話しかけるのだ。釜が蓋をかちゃかちゃさせながら物を言ったときには、相当シジーは驚いた。けれど、今となっては慣れたもの、平然とそれを見守ることができる。 釜は盾レシピを あると に提示した。テーブルに十数枚のレシピが並べられる。盾の錬金は難しいらしく、それほど数はないようだ。それらを一枚一枚 あると とシジーは手にとって見定めていった。 「あ、これだ!『みかがみの盾』!」 「よかった!錬金できるね!」 シジーは安心した。しかしまだ油断はできない。なぜなら錬金はそもそも材料が揃えられていなければ、目的のものは当然出来上がらないのだ。 「何が必要なの?」 シジーはおそるおそる、あると に確認する。あると はレシピを見ながら材料を読み上げた。 「『せいきしの盾』ひとつ、『かがみ石』みっつ、『ミスリル鉱石』ふたつ、だね」 「『せいきしの盾』なら私が持ってるわ。『ミスリル鉱石』も以前採っておいて残ってるはず…でも、確か『かがみ石』は別の錬金で使ってしまったわね…」 シジーは記憶をたどるように目線を天井に向けながらそう言った。あると も隣で頷くと、同じく目線を天井に向けた。 「かがみ石は水辺にあった覚えがあるな…。とにかく覚えてる限りを明日探してみよう」 「そうね。本当に、手がかりが見つかってよかった」 レシピの紙をまとめて束ねながら、シジーはほっとしたように笑った。 あると も同じく微笑むと、錬金釜にシジーから受け取ったレシピの紙をまとめて仕舞う。 「また世界一周の旅か。かがみ石がすんなり見つかることを祈ろう」 「でも、船と あると のルーラがあるから、ずいぶん楽だわ。さ、明日があるから私たちも寝ましょう」 シジーが錬金釜を手にし、リッカのいるカウンターに運んだ。リッカと二言三言話すと、 あると に振り返る。シジーはリッカに、部屋のことを褒めたか、バスルームのありがたさを感謝したのか、夕食が美味しかったと喜んだかを伝えたに違いない。 「行きましょう、あると 」 「うん」 あると も立ち上がると、シジーを追うように歩きだす。そういえば、リッカに今後世界はもう心配ないのだと伝えなければ、と思いだしたが、うまい言葉がみつからなかった。きっと話さなくても、リッカも次第にそのことを実感するだろう。なにせ、この宿屋は今に世界中の旅人達が集まるようになるのだ。世界中の旅人の話で、徐々に平和を知っていくに違いない。それが、あると のなし得たことによってかどうかを伝える必要はないと、 あると は思った。 to be continued. ■ドラクエは楽しいなぁ〜vvでも私が書くとドラクエのお気楽な世界観がどろどろするなぁ…ううう、ごめんなさい。 |