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ミッドガルがメテオの直撃を受けて、崩壊した。
「ホーリー」と「ライフストリーム」の奔流がメテオの絶対的な力を食い止
めたが、ミッドガルはその難を逃れることができなかった。多くの神羅カンパニ
ーの社員や逃げ遅れたスラムの人々は、無惨にもその命を落とした。
一通り、そのあまりに悲惨なものを目の当たりにしたクラウドをリーダーと
する一行は、しばらくミッドガルをハイウィンドで旋回してから、それぞれの思
い思いの場所へ帰ることになった。
近くのカームの街でバレットとケット・シーが降りた。
レッドXIIIは故郷のコスモキャニオンに戻った。
最後までクラウドが管理しているマテリアを欲しがるユフィを、ウータイで
やっと降ろすと、クラウドとティファ、そしてヴィンセントがニブルヘイムで別
れを告げた。
ハイウィンドには最後までシドについてきてくれた乗組員3人とシドが残っ
た。ロケット村は、さっき3人を降ろしたニブルヘイムから目と鼻の先だ。
「終わったな・・・」
シドの口からため息のような言葉がこぼれた。乗組員が作業を続行しながら
、言った。
「お疲れさまでした!艇長!」
シドは乗組員と目を合わすと、不敵な笑みを洩らした。しかし、その笑みは
いつもの人を見下げたようなそれではなく、どこか優しげだった。
「おめえらのおかげよ・・・世話んなったな。」
「いえ!艇長にお仕えできて、光栄でした!しかし、艇長・・?本当に船を・
・?」
乗組員が心配気にシドを見た。しかし、シドはへっと笑うと、投げやりな調
子に言葉を吐いた。
「おらおら!作業を真面目にやらねえか!もうすぐ着いちまうぜ!」
以前は、村の奥の広大な土地にあったとてつもなく巨大なものが村に影をさし
ていたが、その影ももうこの村を覆うことはない。それでも、人々は以前の通り
名を捨てることはできないのだった。・・・そう、その地こそ、そのロケット村
である。
上空から見たロケット村は、やはりどこかもの寂しげであった。村の象徴と
もいえる、ロケットはなくなり、元々ロケットを支えていた鉄鋼の支柱が残骸と
なって残っているだけだ。
シドはハイウィンドをそのロケットのあった敷地に着陸させた。乗組員の3
人がシドのすぐとなりに整列して、次の命令を待つようにシドをじっと見つめて
いた。
「あん?なあーにやってんだ?てめえらはもう解散だ。おつとめご苦労さんっ
てやつだぜ?」
3人は控えめに目配せしてから頷くと、思い切ったようにこう言った。
「しかし、艇長・・我々は艇長がこの船におられる限り、艇長のお役に立ちた
いんです!」
シドは3人を眺め回すと、ケッといいながら言葉を吐く。
「いーんだよ!オレ様はオレ様でこの船でやることがあるんだぜ!てめえらは
とっとと家に帰って、飯でも食ってくるんだな!さあ、帰った帰った!」
3人は再び目配せをしたが、やれやれというふうに首を振ると、分かりまし
た、と言う。
「また、この船にご同行出来る日を楽しみにしています!艇長!」
3人が3人とも敬礼した。シドもにやりと笑うと、ふざけた調子に3人に敬
礼を返した。そして、3人の乗組員もハイウィンドを去っていった。
シドは一人、物憂げにハイウィンドの操縦室を見回った。もう乗るつもりは
ないと自分で決めていたのにも関わらず、どうしても各部の調整をせずにはいら
れなかった。長年培われてきた習癖に、おもわずシドはそんな自分を笑ってしま
った。
「へっ・・・全く恐ろしいもんだぜ・・・癖ってのはよお。」
各部の調整がすんでも、シドはまだハイウィンドを降りる気にはなれなかっ
た。操縦室の段差の手すりに腰掛け、遠くを眺めるように呆然としていた。
「船を降りる・・か。あん時は確かにそう決めてたぜ。しかしよう・・・、オ
レ様の本来の居場所って、実は空なんじゃねえか・・・?」
「私も・・・そう思います。艇長。」
シドは思いがけなく返事が返ってきたのに吃驚して、慌てて振り返った。操
縦室の入り口に一人の女が立っていた。シエラだった。
「なんでい!オレ様の船に勝手に乗り込むんじゃねえやい!」
「ご、ごめんなさい・・。でも、艇長がいつまでも降りてこないので、心配で
。」
シエラは慌てて弁解するように、そう言った。シドは黙って手すりから降り
ると、シエラの方を見つめた。
「オレ様は空にいるべきだ、そういうんだな?シエラ」
「え?・・あ、はい。」
唐突に質問をされて、シエラはとまどったように答えた。シドはため息をつ
いた。
「戻ってくる場所を間違えたってか・・。」
「え・・?」
シドは頭を掻きながら、シエラから目をそらした。シエラは不思議そうな顔
をして、シドの様子を見ている。
「待ってる奴の所に戻るって決めてたんだ・・・。オレ様はその時なんとなく
この村を思い出してたからな。ここに戻ってきてみたんだが・・・。どうやら勘
違いしてたみてえだな。」
シエラは黙ってシドを見つめていた。シドが次にどういう言葉を吐くか、シ
エラには既に理解していた。
「シエラ、てめえは降りろ。」
シエラは動じなかった。むしろ、シエラは毅然としていて、そしてシドはそ
んなシエラを見て、慌てた。
「降りろっていってんのが分かんねえのか、このコンコンチキ!オレ様は空に
いくからよ!」
「シド。」
シエラは言った。「艇長」ではなく、「シド」と。
「あなたの、待っている奴には会えた?」
シドは言葉に詰まったように黙り込んだ。
シエラもシドの返事を聞くまでは動かない、という姿勢でシドの言葉を待っ
た。
やがて、シドは口を開く。
「ああ・・。」
「そう・・。だったら、何故その人を側におかないの?また、待たせる気なの
?」
シエラがゆっくりと質問する。シドはシエラの余裕さに焦りさえ感じた。シ
エラの言葉の中には、必ず答えなければならないという強制的なものがあったか
らだ。
「そいつは・・拒否した。」
「・・・・拒否したんじゃないわ。あなたが似合う場所を言っただけよ。空、
とね」
「オレ様は勘違いしてたんでい!さっさと降りねえか、この大馬鹿野郎が!」
「待っていると思っていた奴が、本当に待ってくれていたのかを確かめるのが
そんなに怖い!?」
シドは目を見張った。シエラは怒鳴っていた。肩で息をしながら、恨むよう
な瞳でシドを見つめていた。
「なにを・・・」
シドはシエラを見つめながら、呆然とそう言った。シエラはつかつかとシド
の側に歩くと、もう一度言った。
「本当に私がシドを待っていたかどうかを確かめるのが、そんなに怖い?」
「・・」
「待っていたわ。ずっと。いつ帰るともしれない、もしかしたらここへは戻っ
ても来ないかもしれない。そんな、あなたを待っていた。本当に待っていたのよ
・・・?」
シエラは、泣いていた。涙が目に溢れ、頬を滑り落ちていく。シドはそんな
シエラを吃驚した表情で見つめていた。
「このハイウィンドがこの地に降りたとき、夢じゃないかと思った。あなたが
ここに戻るという確証は本当に何もなかったから。でも、戻ってきてくれた。」
シエラは、涙を拭くと、もう一度シドを見上げる。
「それなのに。お帰りなさいも言わせないで、あなたは私を突き放すの?待っ
ている奴の所に戻る、そう決めていたのに、あなたは自分の誓いすら守れないの
??」
「シエラ。」
シドはシエラの肩に手を置いた。次の瞬間、シエラが取り乱していた自分に気
付いて、我に返ったように息を呑んだ。シドがへっと笑う。
「今更カマトトぶったって無駄だぜ、シエラ。けっ、オレ様もザマぁねえな!
こんな女に説教されるなんてよ!」
そう言うと、シドはやっと操縦席から離れて、この部屋の出口に向かった。
歩きながらシドはシエラに声高にこう言った。
「おい!シエラ!飯の支度くらいしてあるんだろうな!なんせオレ様のめでた
いご帰還なんだからな!豪勢なの食わせろよ!」
「は、はい!」
シエラもあわててシドを追う。シドを追いながら、シエラは後ろから優しく
こう言った。
「お帰りなさい、艇長」
Fin.
Copyright 1997 BY SAE