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【FINAL FANTASY6】 |
| ■彼女が世界を背負う理由 |
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掲載日[2009/09/03] 再び太陽の下に躍り出た飛空艇ファルコン号は、世界崩壊後の世界を縦横無尽に走り抜けた。エンジンも天候も快調そのもの。これからはきっともっと早く仲間が見つかるかもしれない、と思うと、セリスは一人安堵の息をついた。 魔大陸からの脱出のうやむやで仲間全員が行方知れずとなった。セリス自身も無人島に1年という長い間意識不明の状態だった。彼女を見てくれたシドはその後他界し、孤独に苛まれて島を出たのだった。 フィガロ国王エドガーとその弟マッシュ、このファルコン号の持ち主セッツァーにはすでに再会し、ひと悶着があったもののなんとか世界を取り戻すことをセリスは思い出させた。 ファルコン号のおかげで旅が楽になったおかげか、睡眠と食事もよく取れて仲間たちの顔色がよくなっていった。同時に少し余裕がでてきたのだろう、セッツァーがカードゲームでもしないか、と誘ってきた。 「もちろん、何かを賭けようじゃないか」 嬉しそうにセッツァーがそう言う。さすらいのギャンブラーを名乗るだけあって、セッツァーは機会があれば賭け事に仲間を引き入れようとした。セリスがそんなセッツァーに首を振る。 「私たち、ほとんど毎日生きるのが精いっぱいみたいにやってきたのよ?賭けるものなんて何もないわ」 フィガロの弟もそれに頷く。 「だよなー」 「なんだよ!エドガーお前なら王様なんだからいろいろ宝とかあるだろ?」 セッツァーはカードを配りながら、エドガーにつっかかった。エドガーも肩をすくめて、芝居がかった身振りで前髪を払うと、残念ながら、と笑う。 「城に残ったわずかな財宝も盗賊たちが残らず持ち去っただろう。私は今文無し王だよ」 「キメてるつもりか?それでも」 カードを配り終えたセッツァーが呆れかえって、椅子にふんぞり返って座った。 「ま、いいじゃない。たまにはゆっくりとカードゲームでも。操縦は大丈夫?」 セリスは気になっていたことをやっと口にした。ここに乗組員が終結していて船は大丈夫なのかとずっと思っていたのだった。それには及ばないぜ!とセッツァーがにやりと笑って親指を立てた。 「自動操縦にしてあるから、大丈夫だ。目的地はセットしたしな。だからこそ、存分に楽しもうと思ったのにな」 「まぁ、この場に麗しいレディがいるだけよしとしようじゃないかセッツァー。セリスはそこらの女優より美人だから」 エドガーの言葉にセリスが反応して、立ち上がる。 「な!エドガー!何を言ってるのよ!」 「おや、おかしいなぁ。セリスは褒められるとすぐ怒るね?そこはにっこり笑ってありがとう、とほほ笑むところだよレディ?」 エドガーが手本を見せるようにほほえみを浮かべる。そんなエドガーを、赤くなった顔で一瞥してから、セリスはすとんと椅子に腰を下ろした。こほんと咳払いをしてセリスは自分の調子を取り戻すと、落ち着いた声でエドガーを諌めた。 「エドガー。女性を花のように愛でることには反対しないけど、あなたの物差しで女性のあり方を決めつけるものではないわよ」 「おや、これは一本取られたね。失礼、レディ」 「兄貴、一本取られたのか?俺、気付かなかったよ」 マッシュが兄の髪の毛を触っている。マッシュはセリスがエドガーの髪の毛を一瞬で一本抜いたと思ったのだろう。隣の席から手を伸ばす弟を見て、さすがのエドガーも情けない顔をした。 「マッシュ。一本取られたというのはな…異国のスポーツで…」 「あー…お前ら、そろそろゲームを始めないか?」 いつまでもカードが始まらないことに少し苛立ったセッツァーがそう言って、面々はようやく目の前に配られたカードに目を通し始めた。 「でも、またこうやって飛ぶことができるのはセリスのおかげだな」 カードゲームの最中、いいカードが巡ってきたことに気をよくしたセッツァーが、ギャンブル場の個室の窓から見える景色に目をやりながらそう言った。 「そういえば、俺たちもそうだな。セリスが声をかけてくれなかったら、また仲間を探す旅に出ることもなかったかもしれん。弟を探すことは別にしてな」 「俺も兄貴だけ探したな!」 わはははっと豪快に笑うマッシュに、エドガーもつられたように笑みを浮かべた。エドガーといえば、先ほどまでカードの巡りが悪いらしく、カードを引くたびに聞くに堪えない悪口を小声で口走っていたのだった。それが、弟の一言で少し気分がよくなったようだった。 「だって、あなたたち本当に不甲斐ないんだもの」 セリスはポーカーフェイスを貫いて、淡々とカードをめくっている。セリスが調子がいいのか悪いのか、誰も見抜くことはできないようだった。セッツァーよりもセリスの方がずっとギャンブラーらしいスタイルを貫いている。 「手厳しいな、セリスは」 マッシュが改めてセリスを見直したようにそう言う。マッシュはいつも、彼女の厳しく正しい姿勢を見習いたいと思っていた。 「あら、そうかしら?」 セリスがカードから目を離して、きょとんと目を瞬かせた。首を傾げると、緩やかな金糸の髪がさらりと顔を縁取る。セリスは本当にそこらの女優よりもきれいだと、エドガーはしみじみ思う。 「じゃあ、聞いてもいいかい?セリスはどうしてまた俺たちを必要としたんだい?」 「質問を返すわ。エドガーはなぜ率先して仲間たちを集めようとしなかったの?」 ぴっと新しいカードを見たセリスが手元のカードを一枚捨てて、ぱっと手持ちカードを広げた。最強のカードの並びを見た男たちが愕然とする。 「か、賭けてなくてよかった…」 セッツァーが気力が削がれたように椅子に沈みこんだ。他の3人も手持ちカードを広げる。残りの3人もあとひと押しと言うところでカードが揃うところだったが、並びの強さはセリスが一番上だった。どう転んでも、セリスの圧勝は変わりない。 「ほらね、不甲斐ないったらないわ」 セリスがにっこりと嬉しそうに笑う。男たちはうなだれるばかりだ。いや、マッシュだけはそうでもなかった。そもそも、マッシュはカードゲームには疎いし、それほど熱を入れることもないからだ。 「話を戻しましょうか」 セリスはカードを片付けながら優しくそう言った。男たちが居住まいを正して、椅子に座り直す。 「私はみんなを求めたかった、ではダメかしら?」 男たちが3人、今度は目を瞬かせる番だった。セッツァーがおろおろと手をのばしながら、セリスに問う。 「そ、それはプロポーズとみなしていいか、セリス」 「違うでしょ」 セリスはのばされたセッツァーの手を、事もなげに打って捨てた。 「私、孤島で一人になった時、とてもさびしかったの。シドが死んでしまってからずっと考えていたけど、結局心の中には寂しいってことだけが残っていて、泣き叫びたいくらいそのことが辛かったの」 とんとん、とカードを集めてそろえながら、セリスは淡々とそう言った。 「私、みんなに会いたかったの。ずっと、みんなに会いたいって思ってた。本当は世界をどうとかは二の次。ううん、本当は一時でも帝国の手先であった私が自分のやってきた罪を償ってケフカを倒す、って言うのが一番正しい答えなのかもしれないけど。でも、本当はね。私、世界を背負うために立ち上がったんじゃないわ」 セリスはあくまでも冷静で優しい口調で、話を続けた。手もとのトランプがきれいにそろえられているのにも関わらず、幾度となくカードの束をテーブルに叩き続けながら。 「みんなに再び会うために、私たちは世界を救うのよ」 はい、と揃えたトランプカードをセッツァーに渡す。セッツァーが気おくれしたように、あわててそれを手にする。やがて、セッツァーはセリスのその手を両手で優しく包んだ。 セリスが目を丸くしてセッツァーを見ると、セッツァーはセリスをいたわるような瞳で見つめながら、言った。 「ありがとうな、セリス」 すぐにエドガーもセリスのもう片方の手の上に手をやると、続けてマッシュがセリスの手を支えるように下から添えた。 「私からも礼を言おう。ついでに謝っておくよ。不甲斐なくてすまない」 「俺も。ごめんな、セリス。俺たちは、セリスに甘え過ぎてたみたいだな」 セリスは目を見張る。謝られるなんて思ってもみなかった。感謝されるなんてもっと思ってもみなかったことだ。帝国と一兵士として存在していた頃には、一度も。 「そんな…私こそ…!一緒に来てくれて、ありがとう…!」 セリスの涙がほろりと零れて、トランプ台を濡らした。優しい面差しから流れる涙は、まるで聖母の涙のようだった。 Fin. |