【鋼の錬金術師】

■旅のことはじめ

作成日[2006/09/27]










 秋風が頬を撫ぜていく。残暑の名残ある風はまだ冷たいというほどではないが、そのまま野ざらしで寝てしまえば風邪をひいてしまうだろう。エドはつい身じろぎして、羽織っていた赤いコートに包まった。

 季節外れ、夕暮れのリゼンブール駅。季節柄こんな時期に移動をする者は居ないらしく構内にはエドとその弟以外、誰も見当たらなかった。そして、構内といっても、辛うじて二本のレールに備え付けられたホームと、改札の建屋が小さくあるだけの簡素な駅。
 けれども、ここで列車を待つ二人にとって、全ては今、ここから始まろうとしていた。

「兄さん、風邪ひくよ。もうそろそろ列車も来ると思うし、起きていたら?」

 弟のアル――アルフォンス・エルリックがそんな兄の様子を目聡く見つけて優しくそう言った。言われると思った、とエド――エドワード・エルリックは片目を開いておとなしく座って列車を待つ弟を見上げた。

 弟は、がっしりとした屈強な戦士のような鎧の姿をしている。まだ、どうしても見慣れない、弟の姿。

「わかったよ」

 エドはしぶしぶベンチに横たえていた体を起こすと、くわぁと欠伸をした。頭に手をやってがしがし、と頭を掻きながら、駅に備え付けてある時計に目をやった。時刻表の時間は既に過ぎている。田舎町の列車は本数が少ない上に遅れるのは日常茶飯事だ。たいしたことは無い。待っていれば列車はやってくるのだから、焦る事も無い。

 まだ寝起きでむにゃむにゃとやっている兄の隣で、不安そうに手を握り締めた弟がぎぎ、と兄の方に体を向けてこう言った。

「兄さん、本当にこれでよかったの?」

――これでよかったの?

 エドはアルのあまりにも抽象的な質問を聞いても、何が、とは聞かなかった。何、と特定することはもう既に難しいことなのだ。思い当たる節はいくらでもある。

――「僕のために右手を失ってよかったの?」
――「機械鎧(オートメイル)にしてよかったの?」
――「国家錬金術師になんて、なってよかったの?」
――「家を焼いてよかったの?」
――「ここを出て行くと決めてよかったの?」

 よかったのかどうか、なんて、まだ齢十二歳という子供の域を越えないエドにはわかるはずも無い。
 ただ、方法がある限りエドは前に進むことをやめたりはしない。それは彼の信条であるようだった。

 これだけは言える。エドは後悔はしていない。なにひとつ。

 母の笑顔が見たくて、人体練成をしたことも。
 その結果、自分の左足と失った事も。弟を失いかけた事も。
 弟を取り戻そうと右手を代価にしたことも。
 失った手足を補うために、単なる義肢装具ではなく自由の利く機械鎧を選んだ事も。
 失った弟の体を取り戻す情報を得るために、国家錬金術師になった事も。
 家を焼いた事も。
 故郷を捨てる事も。

 全てエドが決めたことだ。
 だから、後悔は無い。

 けれど、アルはどうだろう。エドがやること一つ一つ、その都度アルには一度相談した。しかし、それはもう相談と言うよりも、決意の表明のようなもので、アルがどうこう反論できるような余地は無かったような気もした。

「お前は、どうなんだ?」

 エドは本当はそんなことを聞きたくは無かった。何言ってるの、兄さんが全部決めちゃったんじゃないか、と言われるのは辛い。弟を道連れにしている事実は事実として受け止めなければならないのはわかっている。けれど、まだ十二歳のエドにはその強さを求めるのは酷だ。
 アルの答えを聞くのに、じっと座っていることができなくなってエドはよっと掛け声をかけてベンチから立ち上がった。何気ないふりをしながら、列車が見えないかと手を庇にして遠くを見やる。

 アルはそんな落ち着き無い様子の兄を見て、同じようにベンチから立ち上がるとエドの隣に立った。
 エドが気づいて、アルを見上げる。アルも同じようにエドの顔をのぞきこむように顔を向けていた。

「僕は僕の意志で兄さんの隣にいるよ。志を同じくするものとして、そして唯一の兄弟として」

 エドがほっと息をつくのを、アルは見逃さなかった。
 どれだけのプレッシャーを背負っていようと、兄はそれでも前に行く方法がありさえすれば進む。
 努力に努力を重ね、才能に溺れることなく鍛錬を怠らない。
 この努力と天賦の才を持つ兄だからこそ、国家錬金術師の称号を得られたのだと信じている。

 アルにとってそんなエドは誇りだった。

 汽笛の音が鳴り響いた。どうやら列車が到着するらしい。

「来たよ、兄さん」
「やれやれ20分遅れか。まあまあってところだな」

 ベンチに置いていたトランクを手にすると、エドは幾分すっきりした顔で伸びをした。
 アルは列車と逆側を見つめた。駅のホームの向こうには、草原が広がっていて所々に家の屋根が見える。

「リゼンブールともお別れだね」
「家もなくなったしな」
「ウィンリィにちゃんとお別れしなくてよかったの?」
「機械鎧の手入れの話をくどくどされるの判ってるからとっとと追い返したんだよ」

 強情に鼻を膨らませながらそういうエドを見て、アルはふうん、と思う。
 列車は黒い煙を吐き出しながらゆっくりホームへ滑り込んできた。

「素直じゃないんだから」
「あ?何か言ったか?」
「ううん、なんにも!」

 アルの一言は列車が滑り込む轟音のおかげか届かなかったようだ。列車は蒸気の音を吐き出しながら停車しきった今も騒々しい音を立てている。

「さて、中佐は東方司令部だったな。イーストシティまで1時間半ってところか」
「うん。行こう、兄さん!」
「ああ!」

 旅の始まりの日、二人はお互いの志を確認しあったことで絆を深めあった。
 これ以上ない兄弟の絆を胸に秘め、途方も無い夢を求める相棒をその日、二人は手に入れたのだった。




■Fin.


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SS版 ウ ラ ハ ガ ネ !

リィ:さあさあ始まりましたね、SS版 ウ ラ ハ ガ ネ !
エド:なんだぁ、これ?
アル:あ、ねぇねぇ、これってDVDについてる付録のパクリだよね!
リィ:パクリっていうな!(ぱしーん!)
エド:いてぇ!なんでオレを殴るんだよ!しかもスパナ!毎度毎度いてぇんだぞ、それ!
リィ:だってアル叩いても意味ないし。痛くないんでしょ?それ。コンコン。(鎧叩く)
アル:痛くないよ〜。(´m`)
リィ:ほら。
エド:ほら、じゃねぇよ。だからってなんでオレになるんだ。鬼。
リィ:あぁん?何か言ったかしらエドぉ?
エド:ななななんにもいってないでございますよほほほほほ!(大汗)
アル:で、解説するの?しないの?
リィ:あ、そういう趣旨の場だったっけ?ここ。
エド:知らんのかい!(ビシ!)
リィ:だぁーって、なんか唐突にしゃべらされてるだけから知らないわよ、私。
エド:趣旨くらい聞いておけよ・・・。
アル:えーと、これは兄さんと僕の旅立ちの話だね。
エド:アル、進行しようとするお前の努力は認めるがまんまだな。
リィ:まんまね。
アル:えー。だってそれ以上掘り下げられるような内容でもないしさぁ。
エド:そうだな、まんまにしかなりえないSSが悪いんだ。アルは悪くないな。
アル:兄さん…(嬉)
リィ:あんたたちって本当仲がいいわね〜。ヒロインの私さしおいてさ。
エド:誰がヒロインだって?
リィ:あたし以外に誰がいるってのよ?
アル:ウィンリィはヒロインじゃなくてヒド●ン(主人公への対応が酷い人ってこと?)ってアニメで…(DVDの付録)
リィ:アル〜?形が変わるまで殴られるのと、跡形もなく分解されるのどっちがいいかしら?(しゃきーん、と工具キット全種を指に挟んで見せつける)
アル:えええっ勘弁したいなぁ。後で兄さんが練成するのが大変だし。
リィ:あらそっ?じゃ、手っ取り早くエド殴っとく?
エド:まぁてぇい!だからなんでそうなるんだよ!
リィ:あら、たんこぶつけたらちょぉっとくらい身長伸びた気になれるかもしれないわよ。お豆ちゃん。
エド:だぁれがミジンコゾウリムシ級の豆チビかぁぁぁああ!
アル:(ちょっと離れつつ)結局ココってなにするところなんだろう〜?
エド:たぶん、管理人の趣味!だな。(ビシィっ)
―――管理人:当たり。(ビシィっ)

[2006/10/19]作成。