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【鋼の錬金術師】 |
| ■大空の先へ[10] |
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掲載日[2007/03/22] エドは意識を失ったままフリッツ・ラングの別荘を離れ、ミュンヘン市内のホテル四季まで運びこまれた。 トゥーレ協会はミュンヘン一揆の騒動のあとは極力鳴りを潜めており、彼らの拠点であった将軍の別邸も今では引き払われていた。尤も、今は亡き将軍の居城を引き続き拠点にするのはかなり後味の悪い話だったためということもある。現在協会は頼みの綱であったヒトラーは逮捕されたのを受けて、ひき続きヒトラーと手を組むかどうかを協会内で議論することが増えていた。そういったことも含め、一旦状況を静観し、今後の警官隊や国防軍の動きを見極める拠点としてホテル四季はちょうど良かった。 ミュンヘン中心街に近いため立地も良く、また各界に影響力のある人々がこぞって利用したがるこの高級ホテルは、まさに「木は森に隠せ」といった状況でトゥーレ協会の人間にとって居心地のいい根城であった。 そんなホテルの一室、一人部屋としては広すぎるベッドの上でエドは目を覚ました。ゆったりとしたベッドだが枕は一つしかないのでどうやらシングル仕様らしい。今はエドの戒めも解かれており、エド自身は猿轡をされていたことすら知らずに済んだようだ。部屋の明かりはなく、窓から通りのガス灯の柔らかな光が申し訳ばかりに漂うのみである。 「ここは・・・どこだ?」 エドは頭をさすりながら体を起こすとすぐにベッドから降りた。窓のカーテンを開いて光の射す方へ目をやると、見覚えのある町並みが目に入ってエドは一瞬驚く。整然とした区画の町並みとレンガ色に統一された建物、そして美しく均された石畳はミュンヘン市街以外の何物でもないことをエドは知っていた。 「ミュンヘンに・・・戻っちまったのか」 ガスで眠らされた後遺症か頭が混沌として整理がつかない。エドはふらつく足をベッドに向けると腰をおろした。こんなに弾力のあるいいベッドは初めてだ、などとエドは頭の片隅で思う。暗闇の中でぼんやりしていると、扉がノックされ間髪を置かず開かれた。今のはノックの意味があるのか、とエドが不満げに思いながら扉の方に目をやると、そこにいたのはカール・ハウスホーファー教授だった。 「あんたは・・・!」 身構えるようにエドが立ち上がろうとすると、教授は手のひらを見せてそのままでいるように促した。手には何もなく危害は加えないことを示す身振りのようでもあった。エドはそれを見て一瞬躊躇したように体を止めた。考えてみたがやはり体がまだ本調子ではないのと、教授からは今までに一度も酷い目に合わされていないことを思い出してエドはそのまままたベッドに腰をおろした。教授はそれを見て無言で頷くと部屋の明かりを点ける。 部屋に備え付けられた小さなシャンデリアが煌いたのを、エドはまぶしそうに見つめた。光を目に入れることで、自分の脳内を活性化させようとも考えていた。 「手荒な真似をしてしまったことをお詫びするよ。エドワード・エルリック君」 そう言うと、教授はソファに身を沈ませた。ちょうどベッドに座るエドと対面になるソファに腰をおろしたので、教授の表情を見ることができたが、その表情の真意を読むことはできなかった。エドは静かに訊いてみる。 「あんたの指示じゃないのか?」 「半分は私の指示だ。鍵を手に入れたい、という意味ではね。しかし・・・実行結果として私の意思は半分も在ったかどうか・・・。ヘスを始め多くのトゥーレの人間はまだシャンバラを夢見ていてね。どうしても手に入れたいのだそうだ。トゥーレとしてもまだここで終わるわけには行かない。残って暗躍するナチ党もまだトゥーレを支持しているものでね・・・最終的に政治的な力を手に入れるためにもどうにも軍事力が欲しいのだよ」 教授は自分の手を擦り合わせその手を見ながらそう言った。その姿はまるで自分とは関係ない事柄を話すようにも見えた。 「鍵を手に入れて、どうするつもりだ」 低く唸るようにエドがそう言う。教授はエドに視線を戻すと、エドの怒気を逸らすように微笑んだ。 「君が望むことと同じことだと思うがね」 しかしその誤魔化すような笑みが余計にエドの癇に障ったようだ。エドはベッドから立ち上がり声を張り上げた。 「あそこはあんたらの武器格納庫じゃない!あんたらが望むようなものは何もないんだ!いいかげんに諦めろ!」 エドが息を荒げながら睨みつけるその表情にも教授はぴくりともしない。それどころか、エドの言葉が耳に入っているのかもあやしいくらい、教授の表情は無表情に近かった。教授は息をつくと、まるでエドがそこにいるのを忘れたかのように一人ごち始めた。 「私は、シャンバラを夢見て研究してきた。新しい世界に新しい軍事力、見たこともない力を夢見てきた。人の死を見るまではね」 教授の言うシャンバラとは『扉を越えエドの生まれた世界を目指す』ことを意味している。しかしその研究はこれまでにおいて多くの犠牲を出していた。 鎧を身に着けて扉を越えさせるという実験ではトゥーレの一部隊が扉を越えて戻ったものの、扉を越える途中の何らかの影響で全員が鎧の中で圧死していた。そのため扉を越える為には初速の速い乗り物に乗らなければならないのだろうということが判ったものの、多くの犠牲者が出たことで教授は将軍には何度も取りやめるように進言していた。しかし、将軍デートリンデ・エッカルトは彼の話には取り合わず、扉を越えてエドの世界に足を踏み入れることに成功したが、扉を超えるときに阻む黒いものに呑まれて怪物と化した。そしてその姿を見つけた警官隊の一人がエッカルトを射殺したのだった。 「私はただ新しい世界の形を見たかっただけなのだよ。人を死に導く行為に身を窶すのはもうまっぴらだ。しかし、この鍵は私個人でどうすることもできないくらい大きなものになってしまった。この鍵はトゥーレの救いなのだ。トゥーレはこの鍵というご神体で形を保っているようなものなのだ」 エドははっと息をつく。くだらない、と言葉にならない言葉が言っているようだった。 「結局は神頼みになってるってわけか?でも、あの世界は天上の歌声が聞けるような夢物語の場所でもなければ、世界を統治できるほどの軍事兵器が集う場所でもない。ただ、ここと同じに『在る』。それだけなんだ。なんでわかんないんだ?あんた達と同じ人間があそこに居るってだけなんだ」 「それでも、トゥーレは滅びるわけにはいかないから・・・」 教授が喘ぐように言うその言葉を、エドは咄嗟に遮った。 「だからって、向こうの奴らに被害を与えていいって言う理由にはならない!」 エドの叫び声が部屋に吸収されるのを待つかのように、二人は押し黙っていた。エドは教授を睨んでいたが、教授はエドを直視できずに座り込んだソファの上で頭をうなだれていた。 「無理を承知でお願いする。錬成陣をもう一度描いてくれないか」 エドは呆れたように頭を掻きながら立ち上がると、教授の前のソファに座りなおした。足を組んでふんぞり返ると腕を組んでみせる。 「無理だってわかってるなら言うなよな。オレは絶対にあんたらのいいなりにはならない。絶対にだ」 言いながら、頭に血が上ったエドはちょうどいい具合に体の調子が戻っていくのを感じていた。霞みがかっていた頭の中も今では霧が晴れたようにクリアになっている。エド自身ここに来る予定ではなかったから、早々にここから脱出する方法を視線で調べ始めていた。 「そうは言ってもエドワード君。今君の手に爆弾はないし、私達と手を組まずに自分の願いを達成することなどできまい?」 掠れた声をやっとのように絞り出しながら教授は言う。トゥーレの頭を担う人物がこれでは、トゥーレと言う組織も長くはもつまい、とエドは考えた。そもそも、コイツはただの身代わりにすぎないのかもしれない、ともエドは考えた。 「今オレたちの手にはなくとも、いずれ手に入るさ。あれはここにあるべきものじゃないからな」 「しかし鍵はこちらの手にある」 教授はうつむいたまま背中を丸めて腕を組む。その姿はみすぼらしい乞食をイメージさせた。信念と違うことをさせられる彼をエドは少し哀れんだ。 「それも手に入れる。オレたちはそうするって決めたんだ」 エドがそう言った言葉が発破の合図だったかのように、どぉんと下のほうから響く音がした。建物が揺れて天井から埃が舞う。シャンデリアが忙しなく音を立てて、ホテルが備え付けていた酒瓶やタンブラーが絨毯の上に落ちていく。高級な絨毯のようでタンブラーも酒瓶も割れることはなかった。 「な、なんだ?」 慌てて立ち上がる教授だったが、エドがすばやくその胸倉を掴むと背広の内ポケットを探る。案の定奪われたものをそこに見つけてエドはほくそえんだ。身代わりだろうとその信念が違おうと、トゥーレの頭ならばそれが彼の手にあるとエドは踏んでいた。ヘラ、もとい鍵である。 「鍵は取り返したぜ、教授。この分じゃ爆弾も最終的にオレの手に渡るんだろうな」 「か、返せ!」 教授がエドに襲い掛かるが、エドはそれを避けてすぐさま部屋の出入り口に向かう。鍵はかけられていないところを見ると、その先で部隊の人間が待っているかと思いきや、誰も居なかった。尤も、さっきの鈍い爆発音がする前までならばいたかもしれないが、どうやら今は下で起こった爆発のほうに完全に気を取られている様子だ。 「これなら簡単に脱出できそうだな。その前に爆弾は・・・」 階段を下りながら煙がその量を増してくのをエドは感じていた。どうやら爆発が起こったのは1階のようだ。一般の作りと同じならば、ホテルは1階にロビーがあって宿泊客や外部から人間が混じっているだけにこういう事件も起こしやすい。しかし、煙によって退路を断たれる可能性もないわけではない。もたもたしていればまたトゥーレ協会にさらわれるだろう。今度はホテルの一室なんて上等な部屋は期待できない。地下牢かはたまた寂れた小屋か。しかし、2度も捕まってやる義理はない。エドはとにかく出口を探すことに決めた。気を失っていた分、方向感覚と地理が定かでない場所で探し物をするには骨だと思ったのだった。 「また来るか・・・?でもこの調子じゃトゥーレの奴らがずっとここを拠点にするかどうか・・・」 エドは一人ごちながら階段を降りていく。しかし混乱した人々が我先にと階段を下りようとするのでどこでドミノ倒しが発生しても可笑しくない状況だった。やがて階段の中がいっぱいになって完全に渋滞してしまった。 「あーもう面倒だなっ!」 エドはがっと手すりに手をかけると体をその手すりに乗せて、たちまち波乗りをするように滑り降りていく。一階まで降りるのにものの5分もかからずに済んでしまった。 「よし!出口は、と」 「こっちダ!」 すばやい動きで腕をとられてエドは為すがままに引っ張られた。あたりは煙でいっぱいでエド自身どこが出口なのかわからなかったし、出口を自分で探すのも面倒だったので引っ張られるまま出ることにした。おそらく救助隊か誰かなのだろう。ホテルを出るまでは大人しく従った方がよさそうだ、と思った。しかし、別の方向からおよそ救助隊らしくない女の声が聞こえてきた。 「若!ブツは手に入れましタ!すぐ外へ!」 「よシ!」 (若?ブツ?一体こいつらは・・・?) 一瞬怪訝な表情で奴らの正体を見定めようとしたが、煙が酷くてその影すら思うように見ることはできない。どうもこの煙がそれほど喉を痛めないところを見ると、本当に出火したり爆発したりした煙ではないようだ。単なる煙を出す為のものだとしたら、もしかするとこの二人が事の原因である可能性が高い、とエドは踏んだ。踏んだがしかし、この二人はまだエドの敵なのか味方なのかまだ判然としない。とりあえず表に出してもらうところまでは厄介になろう、とエドは思った。 程なくエドは腕を引かれたまま表に出ることに成功した。 やっと視界が開けてエドを連れ出した奴らの顔を拝めると思ったら、二人は奇妙な面をしていた。それはあまりにもいかめつらしい不気味な面で、エドは今までにそんな面を一度も見たことが無かったので、今まで引いてくれた思わず腕を振り払って後ずさりした。 「な、なんなんだよ。お前らは!」 「なんなんダとはご挨拶だナ。せっかくお前を助けにきてやっタのに」 イントネーションも少しおかしい。この国の人間じゃない。いや、おそらくその面の文化からするとこの地域の人間じゃないことが判る。 「自慢じゃないが今オレを味方してくれるような人間はいないはずだ!お前ら一体・・・」 「ほんトに自慢にならないナ・・・」 「うるせぇ!」 突っ込まれたくないところを突っ込まれてエドがいきり立つ。しかし、そんなエドを気にした風もなく、もう一人の女の声が言った。 「若、お早ク」 「わかっタ。おい、移動すル。ついて来イよ」 そういわれたが、ホテルから出てしまった今となってはこの二人に従う必要はないとエドは思った。 「なんでお前らの言いなりに・・・」 「協会の奴らはすぐにお前を追ウぞ。鍵を持ってルんだろ?」 エドはびくりと体を震わせてしまってからしまった、と思う。見るからに無関係そうな人間が『鍵』のことを口にしたので咄嗟に取り繕うことが出来なかったのだ。 「正直者だナ。まあいい。これで俺たちが無関係じゃなイってことがわかっただロ?そんな俺たちをお前は放っておけルのカ?」 「ぐっ・・・」 エドは相手に乗せられるのは嫌だったが、確かにその通りだった。息をついて頭を掻くと相手を見やる。 「わかった。とにかく移動しよう」 「煙の騒ぎが残ってる間に馬車に乗ル。人に見つからないように裏通りに走レ」 3人が出てきたのは表通りから外れた出入り口で、どうやら厨房の勝手口のようだった。ここから細い道を表とは逆方向に足を進ませる。出火した可能性が高い厨房を通ったと言うことはやはりこの騒ぎはこの二人が起こしたものに違いない、という確信に似たものをエドは感じていた。 「黒い馬車だ。乗レ!」 エドは言われて転がり込むように馬車にその身を転がり込ませた。すぐに後の二人も乗り込むと、馬車は出発する。がたつく路地を馬の蹄が前に進み始めるのを感じて、エドは椅子に座りなおした。ゆっくりとした蹄の音がのどかさを醸し出している。 「ずいぶんゆったりと進む馬車だな」 「大惨事の高級ホテルの近くで馬車を疾走させたら『自分が犯人ダ』と言ってるようなものだろウ?しばらく速度を落として町を抜けル。その後馬には無理してもらうけどナ」 男の声の方が仮面をしたままくぐもった声でそう言った。馬車の中でも二人とも仮面を取る気はないらしい。エドは不審そうに二人をじろじろと観察していると、男の声の方がエドの顔を見て、ああ、と気づいたようにこう言った。 「自己紹介がまだだったナ。オレはリン・ヤオ。遠い中華民国って国から来たんだ。こっちはランファン」 男のほうは女のほうを親指で指しながらそう言った。女はそ知らぬ振りをしている。さきほど若、と言ったところを見ると、どうやら男の方の付き人らしい。 「中華、民国・・・?東の?」 エドはこっちの世界にきて2年のうちに、基本的な教養を身に付けていた。ほとんどの言葉や理化学、数学的なものはエドが向こうで学んだものと差はなかったが、地理や経済情勢は言うまでもなく全く違う。その不足分をエドはこちらに来てすぐ自己学習で学んだというわけだ。 「そうダ」 エドは驚いて二人を交互に見つめる。中華民国とドイツは距離にして1万キロはあるはずで、こんな二人がどうやってその国境越えをこなしてきたのかが不思議でたまらなかった。体力的にもそうだが、ひとつならまだしも複数回に渡る国境越えは容易ではない。国境付近は警備されているか、完全に遮断されているか、もしくは国同士が交戦状態のところもあったはずだ。 「いったいなんでそこまでして・・・?」 エドが状況が飲み込めない顔でリンにそう尋ねると、リンは仮面をおもむろに取って初めてエドと目を合わせた。瞳の色が見つけられないほど細い目をしていて、眉間には何かを吐き出せずにいるような苦悶の皺が刻み込まれている。どうやらリン一人の問題でここに来たのではないらしい。エドはそんな気がした。 「オレはその国の前の時代、『清』という国の皇帝の忘れ形見なんダ。オレは虐げられた皇帝一族のために政権を取り戻そうとトゥーレ協会の『新しい力』って奴に目をつけてドイツ入りしたんだが、どうも主義に反する話なんでナ。トゥーレに付くのは辞めたんダ。その時ちょうどトゥーレを辞めタ奴いて、そいつがお前の親父さんダ」 「親父の知り合いか・・・」 エドは苦々しく渋い顔をしてリンから顔をそむけた。リンはそんなエドをちらりと一瞥してから、再び話を続けた。 「トゥーレを抜けてからは先立つ路銀も尽きてナ。しばらくは親父さんが俺たちを養ってくれたようなもんダ。そんな恩があるから親父さんの研究を手伝ったりしタ。お陰でややこしいことを頼まれタよ。お前を導いてクれってな」 「オレを?いや・・・親父はオレが戻らないと判っていたのか・・・?」 父はトゥーレ協会の協力者となり、自らを犠牲にして扉を開く錬成陣を完成させた。それは全てこちら側の世界に飛ばされたエドのためだったはずだ。しかし、実際にはエドは自分と共に雪崩れ込んだこちら側の艦体を戻すことを優先し、自分が元の世界に留まることをよしとしなかった。そこまで、父には見破られていたのだと言うことになる。 「だかラ、俺たちはお前の水先案内人なんだ。大人しくしてろよナ」 「親父は他にまだ何かを遺していたってことか・・・。ったく、だからオレは奴は嫌いなんだ。オレの知らないところで全部知ったような顔して動きやがって・・・」 エドは腹を立てたように背もたれにふんぞり返ると、そういえば、とリンに問い掛けた。 「さっきブツがどうのって言ってたのは、もしかして・・・」 「ご明察。オレは元トゥーレの人間だからナ。宝の在り処は大体わかってる。お前が探していたのはこれだろウ?」 面をつけたままのランファンが言葉もなく手のひらサイズのものをリンに手渡した。彼女はおそらく面をしていなくとも無表情に違いない、などとエドは勝手に想像する。それはともかくエドの目の前に現れた物は、懐かしい程前に見たものと同じ物だった。 「ウラニウム爆弾・・・!」 リンの手からエドの手にその爆弾が渡る。鍵がまだついていないので起爆することは無いだろうが、二人は慎重に爆弾の受け渡しを行った。 「こりゃぁ手間が省けたぜ。サンキューな、リン」 「いや、これも親父さんに頼まれタことだからナ。お前の親父さんは実は千里眼を持ってルって言われても俺は疑わないナ」 リンはやれやれと息をついてエドにそう言った。エドも内心それには頷きながらも、父を忌み嫌っている上に父を認めたくないエドはちっと舌打ちするに済ませた。 「ま、これで爆弾騒ぎは収束できたからいいとして、アルの奴どうしたかな」 エドは荷物も何もかもを奪われたことを思い出して爆弾をしまう場所がないことに気づくと、仕方なさそうに自分のコートを脱いでそれで爆弾を包んだ。 「アル?もしかして弟のアルのことか?」 「ああ、弟のアルだよ。って、弟のことも聞いてるのか?」 エドはまたも驚いてリンに確認すると、リンは少し困ったな、と言うように腕を組んでいる。 「親父さんから聞いてル。けど、うっかりしてタ。すまん、少し時間をクれ」 そう言うと、リンはランファンに目で合図を送った。ランファンはすばやく頷くと、天井の窓を外しすばやく屋根に上がってしまう。一瞬の出来事にエドは目を丸くして固まった。 「な、なんだよありゃ」 「気にするナ。すぐお前の弟を連れて戻ってくル」 |