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【ONE PEACE】ベリースノウ<2> |
| ■ベリースノウ<2> |
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作成日[2004/1/25] 銃声の音が木霊した海岸は、いまや波音以外何の音も発さない空間となっていた。先ほどまで漂っていた火薬の匂いは、海風がようやく洗い流してくれていた。 誰一人として身動きしなかった。 小屋の住人と思われる三人も、そして気のいい海賊たちも。 たっぷり空白の時間を作ってから、最初に波音以外の音を発したのは船長だった。しかも、船長の腹の虫の音だったのだ。 ぐ〜きゅるるる。 ゾロとサンジが呆れ顔でルフィをにらみつけた。チョッパーとウソップが一瞬の間の後ぎゃははと声を上げて笑い出す。ナミに至っては怒りの形相で走りこんできたかと思うと、天候棒(クリマタクト)を三弾つなげた状態にしてルフィの後ろについた。 「アンタは一体・・」 がつんっ! 「何考えてんのよ!!」 「効かんっ!」 殴られたルフィはナミの打撃攻撃など全く意に介さずふんぞり返っている。 「このバカっ!状況読むことくらいできないのアンタはっ!」 「だってよ〜腹減ったんだからしょーがねぇだろ?」 どかっとあぐらをかくと、ルフィは小屋の前の三人に声をかける。 「今日はここでご馳走してくれるんだろ?」 三人は目を合わせると、何度も頷いた。 「も、もちろんだとも」 「さあお入りなさい」 老夫婦は早速戸をあけると、ルフィたち一行を中に入るよう促した。 「やったー!ご馳走だ!サンジ、ゾロ!早く行こうぜ!」 嬉しそうにルフィが飛び上がって小屋に入るのを、仲間たちは呆れ顔で目配せした。しかし、まあもてなしてくれるという点には遠慮する必要は無いだろうと仲間たちも判断し、船長の後を追って小屋に足を踏み入れた。 が。小屋があまりに狭すぎた。六人もの人数をもてなせるほど広くは無かったのだ。 それに早くも機転を利かせたのは、もちろんいち早くご馳走にありつきたいと願ってやまないルフィ船長だった。 「サンジ!船にバーベキューセットあったろ?」 「ああ。この前買ったやつな」 小屋があまりにもろく、今にも引火しそうだと思ったのか、サンジは煙草の火を消しながら返事をした。 「ここに持ってきて使おうぜ!ナミ、天気は悪くならないんだろう?」 「雨を含んだ雲はしばらく島に寄り付かないと思うわ」 ナミが気温と湿度が分かる懐中式温度計と、交互に空の具合を見つめながら答える。 「決まった!俺持ってくる!」 素早く小屋を出て、ルフィが船の方に駆けて戻っていく。食事のこととなるとルフィは誰よりも行動が早い。 残った連中はしばらく所在無さげに視線を合わせないようにしていたが、サンジがまず三人に声をかけた。 「悪いけど、ウチの船長・・ああ、さっき走って船に戻ってった奴なんだけど・・すっげぇ食うぜ?食材大丈夫か?」 「そうね・・小屋の具合から見て、失礼だけどルフィのお腹を満たせるほどは無理だと思うんだけど・・」 ナミも心配そうに三人の様子を見る。そこに後ろからウソップが声をひそめてナミに声をかけた。 「おい、ナミ」 「なによ?」 「お前失礼だぞ。よりによって貧乏なんて」 「いってないわよ失礼ね!!」 ナミの鉄拳が飛んだ。ゾロが倒れるウソップを避けるように座りなおしたので、ウソップがどーんと遠慮なく土煙を煙らせて倒れる。ゾロは座りなおしたが、立ち上がると戸を出ようとした。 「村は・・!」 青年が言いかけて、ゾロが煩そうに振り返った。 「いかねぇよ。なんにせよ食材はいるだろ?山ならイノシシか野豚とかいそうだから行ってくるぜ」 「おっ、それなら俺も行くぜ。この前の勝負まだケリがついてねぇからな!」 サンジがゾロに喧嘩を売るようにそう言うと、ゾロがいい度胸だ、と返事をした。 ゾロとサンジが食材狩りに行ってしまうと、残りはナミとチョッパーとのびたウソップになった。 チョッパーがおずおずと声を出す。 「なぁ、ナミ。きっと酒もいるよな?船から持ってくるか?」 「そうね。多分まだ樽が残っていたはずよ。もってきてくれる?」 「わかった」 のびたウソップの頬を蹄でぺちぺちと叩く。ウソップがそれに気づいて目を覚ました。 「ウソップ。酒樽持ってくるの手伝ってくれ」 「おお、わかった。行こうチョッパー」 ウソップはのびていたことも忘れていたかのような反応の速さで返事をすると、チョッパーと連れ立って船に戻っていった。そう遠くないところで、ルフィの声が「あれ?!お前らどこにいくんだ?」などと聞こえてきたから、ルフィは戻ってきたようだった。 ナミはとりあえず食事の支度をする老夫婦と、小さなちゃぶ台に座る青年を交互に見つめてから、一言、こう言った。 「どういうことなのか、説明してくれない?」 三人の答えは無言だった。 夜が更けてくると、風が少し出てきた。しかし、バーベキューをするのに影響するほどの風ではなさそうだった。 ルフィは砂浜でバーベキューセットを組み立てようとして、途中で分からなくなって砂浜で寝転んでいた。お腹が減っているのも相まって、彼はこれ以上動きたくない様子だった。 「なんだこりゃ!」 サンジが大きな鳥を九羽も棒にくくりつけて帰ってくると、そのバーベキューセットの散々なありさまに声を上げた。酒樽の蓋を開けるのにチョッパーと悪戦苦闘をしていたウソップが急遽借り出され、そのバーベキューセットを直してもらった。 ゾロがイノシシを1匹捕まえてきた。苦労して大きなものを獲って来たらしい。 「こりゃぁ、俺の勝ちだな」 ゾロが得意そうにそう言うと、サンジが負けずに言い返す。 「ちっ、俺はナミさんのためにうまい料理を調理する義務があるんだ。そこらへんふらつける刀バカとは違うんだよ」 「んだとコラ?」 「いーじゃねぇか!どっちもうまそうだし!」 ルフィがもうよだれを今にも流さん勢いで食材たちを見つめている。ともすれば、生のままでも食いつきにいかんばかりの目の光りようだ。 「ルフィ。野菜もらってこい。くしに刺すからよ」 「わかった」 ルフィが小屋の中に、走りこむ。まだ、食べるためならば動ける体力を残しておいたのだろうか。 「開いたっ!」 一方で、酒樽と奮闘していたチョッパーがようやく開封に成功した。吹き出すビールに、仲間たちがジョッキを差し出す。野菜をもってきた三人にも振舞われ、まずカンパーイ!と大きな声で音頭がとられた。 それからは肉も野菜もじゅうじゅうと香ばしい匂いを砂浜いっぱいに充満させて、美味しそうに焼きあがっていく。焼きあがったものから取り合うようにくしに手を出す連中に、サンジはまだ焼き足りないものを触った手にぴしりと応酬をくれてやる。 美味しい料理と十分な酒がみんなに行き渡った頃、ルフィが青年に名前を聞いた。 「宗哉(ソウヤ)だ。年は17」 「おお、俺とルフィと同じじゃねぇかぁ!」 ぶっぱー!とビールを飲み干したウソップがソウヤにそう言うと、ソウヤは嬉しそうに笑った。 「あんたらはいい海賊みたいだな」 「イイ海賊っていうのも変だけどな」 ししし、と笑いながらルフィはソウヤに笑いかける。ソウヤが悪い人間だとは少しも思っていない笑顔だった。 「俺も、海賊やってたことがあるんだ。ちょっとだけな。すっごく憧れてた。子供の頃の夢だったから、絶対なるんだって思ってた。旅先で航海してたときに船が海賊に襲われて人質になったんだけど、俺は海賊を志願したから助かったんだ」 「へぇ、いろんなことあったんだな」 ウソップがまじめに聞いていると、ソウヤは寂しく笑った。 「そう、いろんなことがあった。その海賊が、俺の故郷を襲うって言うのもな」 ドクン、と連中の心に何かが走った。なるほど、そういうことか、と連中の胸に納得とえもいわれぬ居心地の悪さが生まれる。 「俺はそのとき海賊をやっていたから、村もその海賊が俺の入っていた海賊だと知っていたから―――俺は、いや俺と家族は村を追い出されたんだ。そしてここで門番みたいなことをしてる。それが村への償いだから」 隣で老夫婦が炎に当たりながらこくりこくり、と舟を漕いでいる。この分ではおそらく久しぶりのご馳走、久しぶりの酒だったに違いない。村に疎隔され、力も無いものがどうやって食料を得られようか――――。 「村に行くのはやめましょう。ソウヤをこれ以上困らせたくは無いわ」 ナミがそう言った。他の仲間たちも頷きかけたそのとき、ルフィは一言で返事した。 「いやだ」 「は?」 仲間たちがルフィを見やる。するとルフィは炎の光に照らされながら、怒りの形相で空を見上げていた。 「俺は村に行く」 ■To Be Continued... |