【らんま1/2】台詞お題30より

■03「この…犬畜生め!」







「乱馬ーーー!!」

「わははは!!こーこまーでおーいでー!」

 紺碧の青空の下。無重力感に身を任せてひょいひょいと屋根をわたる二人の影。

「待て待て待て待て待てゆるっさぁぁぁぁん!!」

 怒り心頭の響良牙からの怒号にも空はびくともしない。雲もゆるやかにその加速度を変えない。

 ひょい、と余裕そうに振り返る早乙女乱馬。口の端には笑みさえ浮かべている。

 完全に面白がっている。

「そんなに怒んなよー。Pちゃんっ!」

「ぬぉぉぉっ!こんの人でなしの犬畜生めぇっ!!」

「それならお前は豚畜生だなぁ〜わははははっ!」


 商店街に一瞬の影が射した。あまりに早かったので、普通の動体視力の持ち主であったなら見逃していたかもしれない。あかねはそれでも2つの影が通り過ぎたのを見つけた。

 あかねはやれやれ、と空を見上げる。もうその空に影の主は居ない。

「お姉ちゃん、乱馬ってさー」

 珍しくかすみの買い物に付き合っているあかねがかすみに話し掛ける。

「ええ、そのお大根。お願いします」

 しかし、かすみは買い物に一生懸命だった。

「ご近所で知らない人いないんでしょうねぇ・・」

 仕方なく、あかねは独り言を言った。

 抜けるような空のどこかで、乱馬と良牙が楽しそうに追いかけっこしているのだろう。

 あの二人にはご近所の目を気にするようなアタマはない。

「あかねちゃん」

 かすみの頼んだ野菜を少しずつ2つに分けて入れた袋の片方をあかねに手渡しながら、八百屋の親父が話し掛けてくる。

「八百屋のおじさん?」

「何を言うかねえ。ここの近所であかねちゃんたちを美人姉妹を知らない人だっていやしないよ〜?」

「ですって。あかね」

 かすみは大仰な遠慮もせず、その褒め言葉を頂いている。

「いやだなぁ、おじさんたら!」

 あかねが恥ずかしそうに頬を染め、その頬に手を添えた。ちょっと前までならば、あかねはそのおじさんを一発くらい背中を叩いていただろうが、今は照れて恥ずかしそうにしている。

 八百屋の親父がそんなあかねを見て優しく微笑みながら、うんうん、と頷く。

「特にあかねちゃんは近ごろ可愛くなったねぇ。やっぱり理解ある男子がいると女の子は変わるねぇ」

「べ、別に乱馬は全然関係ないわよっ!!」

 あかねはそう言ってから、あ。と口に手を当てた。

 八百屋の親父とかすみが、一瞬顔を見合わせてから笑いあう。

 あかねはそんな二人をみつめてから、もうっ!と恥ずかしそうに腕を組んでむくれた。

「きっと、天道さんとこの娘さんが嫁ぐときも、このご近所はその話で持ちきりになるんだろうねぇ」

 この前まではこんなに小さかったのに、などと親父がしみじみ言っている。


――ご近所で有名な美人姉妹。ご近所で有名な女とパンダ。
――ご近所有名だった許婚の二人が、おしどり夫婦で有名になるのはいつのことやら・・・?




■END


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