【らんま1/2】台詞お題30より

■04「ご愁傷様v」






 降りしきるものが雪みたいだと思ったけど赤いから違う。

 よくよく見ると雪のように降っているのは紅葉しきったもみじや楓のようだった。

 もうそんな季節か、などと俺は悠長にもその紅い雪を眺めていると、背後から気配がした。

「乱馬・・」

 あかねとは違う気配。柔らかい女の気。しかし、あかねよりもずっとしなやかで穏やか、そして俺自身に近い気。

 それが誰なのかを俺は振り返らずとも理解した。

「おふくろ」

 まだ、俺が男として一度も顔をあわせたことがないおふくろがそこに居た。

 夢、だなと、無意識にこの状況を理解する。

 そうでなければつじつまがあわない。

 なぜならうちのくそ親父は、おふくろに俺を「男の中の男に育てる」などと言い、その上「それが果たせなければ親子ともども切腹する」などという誓いを立ててしまったらしいのだ。

 なんでかしらんが、俺まで巻き込まれて、結局俺はおふくろと対面できずに普段は女の姿で乱子などと名乗っている。

 一方おふくろは、隣町に住んでいるというのに一人長屋に暮らしている。

 俺は心苦しいとは思うが・・やっぱり切腹は嫌なので状況を変えることはできない。というか切腹は無理だろ。

 だから、せめて夢でくらいは親孝行ができるといい。

 そんなことを思っていると、不意に辺りがふっと白いものが現れる。一点の沁みもない白い布で四方を囲われた。

 どこかで見たことある。テレビで、早雲おじさんがたまに見る時代劇のセットでこれと同じものを。

 振り続ける紅葉が、見る間に毒々しい赤に見えてくる。

 小さな台のうえに短刀が一つ、どうぞとばかりに置かれている。

 いきなり自分の衣装は白装束を着てその、小さな台の前に座っている。

「え?・・ええ??」

 俺の頭から急激に血の気が引いた。まさか、これは夢じゃない、とか??

 冗談じゃねぇ。俺にはまだ、完全な男に戻ってないしっ・・!
 ・・・あかねにまだ言ってないことが・・・!


「うああああああっ!!」

「やかましい!」

 珍しくパンダでない親父に殴られた。そういえば、親父は近ごろ寒くなってきたから水を被ってまでパンダの毛皮を手に入れるかどうか毎晩悩んでいる。能天気な悩みだぜ全く。

「ってーぇ・・って夢か」

 俺は殴られた箇所をさすりながらも、夢であることにほっとした。起き上がったときにめくれた布団を被りなおして俺は2度寝することにした。


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「昨日の、なに?」

 朝のロードワークから帰ってきたあかねは、裏庭で打ち込みの練習をしていた俺にそう話し掛けてきた。

「昨日のって・・ああ、寝言か」

「寝言?悲鳴じゃないの?」

 あかねは俺の顔を見ながら訝しげな表情をする。眉根にシワが寄っている。これはあまり可愛くないなぁ、という言葉を俺は飲み込む。

「悲鳴?そんなにでけー声だったか?」

「おっきかったわよ!半径500メートルは確実に響いているわね、あれ」

 あかねがからかうようにそう言うが、どうせ根拠はない。適当にへぇーなどとあしらっておく。12へぇくらい。かわいい許婚だからってちょっと甘い採点か?俺。

「で、一体なんの夢見たらあんな悲鳴をあげられるわけ?また幽体離脱したおじいさんからにでも求愛されたとか?」
「ち、ちがわいっ!」

 俺は一度あったことを思い出して背筋を震わせた。

「そうじゃなくて、おふくろの夢」

「おばさまの?」

 瓦割りの準備をして背を向けていたあかねが、瓦を持つ手を止めて俺を振り返った。

「どうしておばさまの夢で?ああ・・約束のことで?」

 言いながらあかねは理解したらしく、そう言った。

「そう」

 俺はぶすっとした顔で頷く。あまりにも不本意すぎる約束だ。

 あかねは、物騒な言葉を口にしたくなかったのか「約束」という言葉で濁した。

 もしかしたら俺のこと心配してくれてたりして・・な?

「あんたもねー。いいかげん名乗ってあげればいいのに。おばさま可哀相よ」

「俺だって名乗れるもんなら名乗りたいわっ!」

「いいじゃない、腹のひとつやふたつ」

「あいにく腹は一つっきりなんだよ!」

 どうやら心配している風ではない。相変わらずかわいげのない許婚だ。

 あかねは俺の不機嫌そうな顔を見て、笑い始めている。なんか、失礼な奴だな。

「しかしなー。いつまでもここままってわけにはいかないよなぁ・・いつかは名乗らないと」

「『男らしく』って言うのがポイント難しいわよねぇ・・この前のスケベ大作戦はダメだったけど」

 スケベ大作戦つーか・・、俺の健全な男らしさをアピールするために「あかねのお風呂を覗いている」俺をおふくろに見てもらうことにしたんだが、結局ダメだったし。

 ある意味ある程度までは成功だったんだけど、あかねが水着を着てたんだよな。詐欺だ。

「変な名前つけんなよ。なにがスケベ大作戦だ。たかだかおめぇの裸ぐらい・・」

 あかねは瓦をある程度重ねた上にタオルを一枚かけている。そのタオルの上に右手をかざし、意識を集中している。闘気が迸る。あかねの場合は無駄な闘気の放出が余計な浪費だということにまだ気づいていない。

「はぁっ!!」

「げぇっ!それ30枚だったんじゃねぇのかよ!?」

 まさか、割り切れるとは思ってなかった。途中で5枚くらい残っちまうんだと思っていたが、あなどれねぇな、こいつの怪力さ加減は。

「で?乱馬くん?あたしの裸がなんですって?」

 ゆらりと振り返ったあかねの顔は、にっこりと微笑んではいたが、いつ変化するとも知れない鬼神みてぇだと思った。

 おれはぎくりとして2,3歩下がる。あかねはじりじりと2,3歩詰めた。

「乱馬ーーーっ!!」

「待て待てあかね!落ち着けーっ!」

「この無神経鈍感最低男ーっ!!」

 あかねの怪力の威力を目の当たりにした俺のできる最善の行動は、「にげる」しかなかった・・。

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「ってててて・・・ちくしょう思いっきり殴りやがってあかねのやつ・・」

 とりあえず今日が休日でよかった。こんなに赤く腫れた顔で学校に行けば行ったで、大介やひろしにからかわれる。
 なんで殴られてひやかされにゃならんのだ?まったく世の中は理不尽だらけだぜ。

 俺は道場で一人手当てしながら、そう思う。

 殴ったのがあかねの場合であかね自身に非がない場合、あかねの手当ては適用されない。

 なんかの条件文みたいだぜ。パソコンの授業んとき、そんなん習ったようなー・・でも、アレ結局ひろしが詳しかったからほとんど任せちまったし。

 まあいいや、武道家にパソコンは不要。

「よし、終わりっと」

 救急箱を片付けて、広い道場にごろんと横になる。

「それにしても・・おふくろの不安を取り除いて男の姿で対面する方法ってねぇのかなぁ・・」

「あるわよ?」

 なびきが道場の敷居の辺りに立っていた。俺はつい不機嫌になった。

 気配、ねえんだよな、なびきのやつ・・。

 結局こいつも武道家の血を引いているってことなんろーけど。

「なびき・・どこにいても商売の匂いをかぎ分けちまうんだな」

 呆れたような、見直したような俺の声に、なびきが褒め言葉と受け取っておくわ、と余裕な微笑を返す。

 ほらな、なんとなく食えねぇ女なんだ。こいつに比べれば、あかねが素直でかわいくて扱いやすくみえるくらいだ。

・・可愛いは関係ないか。

「で、一体そりゃどんな方法なんだよ?」

 俺は起き上がって気のなさそうな声で問い掛けてみた。なびきは、あら、と腕を組んで俺を見下したように笑う。

「その手には乗らないわよ乱馬くん。つねに情報はお金、時間もお金よ。お分かり?」

 俺はちっと心の中で舌打ちをしたが、まあ、なびきを騙くらかそうとしたところで逆にしっぺ返しを食らうのはこっちなのだ。

 ここはおとなしく値段交渉に入ったほうが身のためだということも経験上分かってるし。

「いくらだ?」

 俺はなびきに背を向けていたので、くるりと体を半回転させた。

「3千」

「1200」

「2500」

「1800」

「2200」

「わかった2千!これ以上はだせねぇぞ!」

「ちっしっかりしてるわね〜。いいわ」

「やった!」

 俺はほらよっ、と懐から2千円札を出すとなびきに手渡した。

 ふっ、こういうこともあろうかと、少しは俺も親父から小遣いをせびっておいたのさ。親父はたまに東風先生のところでバイトしてるからな。たまに、だけど。あれ?でもあそこのバイトってお茶汲みだけか?

 なびきの方は毎度、と札を受け取ると、立ち上がった俺の前で諭すようにこう言った。

「要は男らしいところを見せればいいわけでしょ?それで納得してもらえればいいわけ。一番男を見せ付けるのは一般的にはどんなことかしらね?」

「おいっ!金払ったのにまさかそれ以上が別料金とか言うんじゃないだろうな?!」

 俺は一瞬不安が湧いた。が、なびきの方がきょとんとしている。

「あら、乱馬君。たまにはいい事言うのね?」

 ・・しまったっ!

 俺は青ざめてよろめきそうになったが、なびきが安心しなさい、と笑う。

 よかった、今日はなぜか機嫌いーみてぇだ。しかし姉妹そろって機嫌を伺わなくちゃならねー性格なんて疲れるな。
 ・・誰だ今俺が小心者だからだって言ったやつ。

 だが、俺はここでなびきが機嫌がいい理由ってやつをよく考えなきゃならなかったんだよな。

 ちょっと考えれば分かったようなもんだが・・。

「それでっ!俺は何をすればいいんだ!?」

 意気込んでいった俺の顔を見て、なびきが悪意のない笑顔でにっこり笑った。

 その笑顔がなぜか先ほど見たあかねの笑顔と被った気がしたのは・・気のせいなんかじゃなかったのかもしれない・・・。

「あかねと身を固めるってどーぉ?乱馬くん」

 言われた瞬間、俺の頭が蒸発した。

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 あの後は散々だった。

 なびきの言葉の後、どこに潜んでいたのか道場の屋根裏からといい、窓の外からといい、早雲おじさん、親父、かすみさんが現れて。

「協力しよう!乱馬くん」

「うぬぬ、確かにそれは盲点だったな。さすがは天道家次女なびきちゃん」

「本当。おめでたいことが二つも重なるのねぇ。素敵な思いつきよ、なびき」

「へへ〜」

 それぞれがそれぞれの思惑で好き勝手なこと言いやがって・・全く。

 ちったあ「若い者に任せて・・」って心境にはならんのかね。任されても困るけど。

「乱馬。聞いたわよ」

「あかねっお前・・」

 機嫌は直ったらしい。怒ってもいないあかねの顔を見れて俺は心底ほっとした。

 とりあえず、この道場で俺があかねにプロポーズをする振りをする、ということになったんだ。

 つんけんされたらさすがの俺でもやりにくいからな。

「いいか!振りだからな!本気にするんじゃねーぞ!!」

「わかってるってば、うるさいなぁー」

 あかねは事前に知らされている所為か全く緊張はない。

 聞いてればいいだけだからな、とりあえず。いい気なもんだ。

 だいたいからして、これからプロポーズを受けるっつーときに道着ってのはどーなんだ。

 傍では雰囲気を盛り上げるための飾りつけやらくす玉やらがが準備されている。つーかそれはプロポーズするときに必要なのか?俺は首を傾げたくなるが、まあ突っ込むのもめんどくさいので放っておく。

 だいたい俺は俺でそれどころじゃない。なんていうべきかを頭でぐるぐると考えている。

 ・・なんだか本気にプロポーズするみたいだ。

 一瞬でも考えた俺が馬鹿だった。顔中がまた火照って脳が蒸発しそうになる。ぼん、なんて口で言わなくても既に口から煙が出そうだ。

 あかねが、不安そうに見上げる。目が「大丈夫?乱馬・・」と言っている。そろそろおふくろが外から覗く手はずにもなっているはずだから、下手にはあかねもしゃべれないのだ。

 くそ。嘘だと分かっていてこれか。こんなんでビビってたら本番はどーすんだ。本番は。

 帯を締めなおして深呼吸する。ヘタに嘘だと思うと失敗するかもしれない。これは一種の勝負だ。

 そう思い直すだけでずいぶん時が楽になる。武道家にとって勝負といわれれば負けるわけには行かない。

 俺の表情が変わったのだろう。前に座るあかねの表情も変わった。安心したように微笑んでいる。

「よかった、いつもの乱馬ね」

 あかねの一言に、俺は救われた。そうだ、いつも通りの強気で押せば問題ない。全てがうまく行く。

 さっきまで飾り付けに騒がしかった親父たちもいつのまにか道場を出て行っていた。おふくろや、親父達の視線が痛いほど感じられるようになる。

 ぎ、し・・。

 やべぇ、視線を感じて体が反応しちまった!体が硬直しちゃなにもできねぇ!いや、言えねぇ!

 体が固まった俺に気づいたのか、あかねがまた不安そうに見上げた。優しい瞳が俺を励ます。

(乱馬、乱馬、頑張って・・!)

 くそぉ・・なんでこんな時にっ!こんなときだからかもしれねぇけどよ!!

 と、あかねがふと立ち上がる。

「ね、稽古しよ?」

「・・あか・・?」

 俺は一体何が始まるのかと当惑している。頭の配線が復旧しない。あかねはそれでも構わない、というように手を差し伸べた。

「大丈夫。軽くよ、軽く」

 どっかで聞いた台詞。そうか。初めて手合わせしたときの、あかねの言葉だ。

「・・よし」

 俺は稽古と聞いて体の緊張が一気にほぐれていくのを感じた。体が、格闘に目覚めると瞬時に反応するのだ。

「いくわよ!」

「ああ、いつでもこい!」

「せやぁ!!」

「なんの!」

 俺達は何かの作戦だったことも忘れて、組み手を繰り返した。あかねが打ち込んでくる拳をよけていく。

 そういえば俺はあかねに打ってでたことはない。女相手に打っていくことはできない。

「乱馬、打ってきて!」

 打ちながらあかねがそう言った。俺は一瞬狼狽する。

「できねぇよ!そんなこと」

「組み手にならないじゃない!そんなにあたしが信用できないの?」

「そういうことじゃ・・」

「そういうことじゃない!組み手中の怪我であたしがあんたに愛想尽かすなんて思ってんの!?」

 頭の中の配線が復旧したように白く閃いた。

 そうか、あかねは遠慮されるのも守られるのも嫌なんだった。一緒に戦いたい、そう思う奴だった。

 ・・だから、俺は。

 ビュッ!

 俺の拳が空を切った。あかねはさすがにびっくりしていたが、乱馬の勇気に感謝すら覚えたように笑った。

 ビュッ!ビュッ!!

 連続で真空を作り出すほどの拳はさすがにあかねにはよけきれなかった。

 観念してあかねが目を閉じる。当たりそうになったところで俺はその手を、攻撃の形から労わりの形に変えた。

 ぐい、と手のひらがあかねの頭を包み、ゆっくり自分の胸に寄せる。とん、と軽い感触がした。

 お互いに息があがっていて、乱馬の胸は多少上下に揺れていた。

「ごめん、気を遣わせちゃって・・」

 あかねが謝る。同時にそれは悔しさが混じっていた。あかねが俺の服を握り締めている。

「こっちこそ、怖い思いさせてごめん」

「そんなことない!あたし嬉しかった!嬉しかったよ、乱馬」

 あかねが素直に俺にそう言った。そう言って見上げたあかねの顔は、本当に可愛かった。

 俺もあかねも体を動かした後で気持ちが和らいでいる。結局似たもの同士なんだ。笑っちまう。

 夫婦ってこういうのが一番いいのかもしれない。

 俺はぼんやりとそんなことを思った。

「あのさ。あかね」

「なに・・?」

 頑張れ!頑張れ俺!!

 俺は自分を励ましながら、俺の服を握り締めるあかねの手に重ねた。あかねはびくりと震えたが、そのままにして手の力を抜くのが分かった。

 ほっとする。ここで拒絶されたら俺どーしよーもねぇ。

「俺、こんなんだからこれからもおめーを怖い目にあわせちまうかもしれないし、シャンプーやらウッちゃんやらのやっかみも受けさしちまうのかもしれねぇんだけど・・」

「・・うん」

「でも、手放したくねぇんだ。だから・・」

 深呼吸。とちったりどもったりはナシだぜ!俺!!頼むから!

「・・・ずっと守らせてくれないか?」

「・・・っうん・・」

 あかねの顔が見えない。ただ、ぎゅっと俺の服を握り締めて、震えている。泣いているのかも。

「怖い思いさせるのが俺だとしても、俺が守ってやるから・・」

 いい雰囲気になって、あかねが見上げると案の定あかねは泣いていた。

 泣き虫だなぁ、本当にお前は。

 でも、そう言うところも全部・・

 ふっと、俺達が二人が目を閉じ顔を寄せ合った瞬間だった。

「まてーい!!」

「でっ!?」

「お、お、おじいちゃん!?」

 俺とあかねは顔を真っ赤にして、こんなときに現れた妖怪、もとい八宝斎を見つめた。

「乱馬ぁ〜〜〜あかねちゃんを独り占めにしようなんぞこのわしが断じて許さん!!これでもくらえーー!!」

 まさかっ・・・それは!!

「でええぇぇ、よりによって水っ・・がぼっ!」

 ばっしゃ!と八宝斎はその小さな体のどこからバケツを取り出したのか、事もあろうか今おふくろが見ているそのときに水をかけやがった!!

「らん・・っ!!」

 あかねもすっかり混乱して、乱馬と呼ぶべきなのか、誤魔化す事態を想定して乱子ちゃんと呼ぶべきかを留まったようだった。

「うわあああっ!」

 水では湯気も出ないしごまかしも効かない。なんとか・・なんとかしねぇと!!そうだ!!

 女の体になってしまうその直前に俺は天井に取り付けたくす玉を割るために飛んだ。すぐ割れる仕掛けにしてあるため、なんなくくす玉は割れてなかから風船やら紙テープやらがどさっと落ちてくる。それを被ったまま俺は道場の天井に穴を開けて逃げた。

 逃げた後、俺は残されたあかねが家族の面々にからかわれやしないかと心配になった。

 −*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−

「はーあ・・」

 あれから数日後、どうやらおふくろに正体はばれなかったらしいということはその後親父から聞かされたが、それ以外のことでたっぷりはやし立てられた。

 まったく、どうかしてる。嘘だと分かってて、テンションがあがりまくる俺もどうなんだか・・。

「はーあ・・」

 しかも、おふくろは八宝斎の間の手から最後まであかねを守るべきだった、という評価を下したらしく、結局俺は「男らしさ」の点数を稼げなかったのだった。

「はーぁぁぁ・・っ」

 結局恥掻いて終わったわけだ・・。

 まるっきり損したわけでもないけど・・あかねはここんところ結構ご機嫌だったしな。

「らーんまくーん」

 歌うようになびきが縁側に現れた。俺は縁側で寝っ転がっていたから、起き上がるのも面倒でなびきに声だけ返事した。

「なんだよ」

「ねえねえ・・これっ欲しくない!?」

 なびきが嬉しそうに何かを差し出した。そこにあるのはMDの録音再生機能付きウォークマンだ。

「あんだよ・・・って・・これ、まさかっ・・!!」

「お察しの通りよっ、ねぇねぇいくらで買う〜?なんならあかねに譲ってもいいけど。今回のお得意様は乱馬くんだし優先して営業に来たんだけど」

 俺は途中から気が遠くなって、ぱたり、と倒れた。

「毎度ありvご愁傷様乱馬くんっv」

 遠い世界でなびきの満足そうな声が聞こえていた・・。



■END


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