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【らんま1/2】台詞お題30より |
| ■06「まだ言い切ってないんだけど。」 |
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「いいわよねぇあかねって」 そういわれてあたしは何のことかわからずきょとんと目を丸くした。さゆりが呆れたように目を半眼にしてる。ゆかがこら、となだめるような目で見てるのに気付いた。あたしにはわけがわからない。 「なに?突然。どうしたの??」 あたしはさゆりに問い掛ける。さゆりの方は機嫌が悪いのか、あたしから顔をそらすとはぁ、なんて溜め息ついちゃったりしてる。なんだかいつもと違うさゆりにあたしはどうしていいかわからず、助けを求めるようにゆかの方を見た。ゆかはあたしの視線に気付くと、弱ったな、と肩をすくめた。ゆかは事情を知ってるんだ、と確信する。 「どーしたの?さゆりったら一体」 あたしは声をひそめてゆかに聞いてみた。ゆかは長い髪を一度後ろに振り払うと、ゆかを一瞥してこういった。 「気にしない方がいいわよ、あかね。ただのやつあたりなんだから」 「やつあたり?」 「やつあたりなんかじゃないわよ!なにいってんのよ、ゆかったら!」 そう言うと。ゆかは足を組んでぷいっと横に目を逸らす。 あれ?なんか、気になる仕草。 あたしはぼんやりそう思うと、隣でゆかがくすくすと笑ってこう言った。 「誰かさんがひとり増えたみたい」 ・・・誰かさん? そう思ったところで、4時間目の授業のチャイムが鳴り響く。 お昼前の最後の授業は英語だったから、適当に授業を聞きながらゆかのことを考えてみようかしら。 4時間目の授業が終わって、さゆりはお昼休みに委員会で席をはずした。結局さっきの休み時間にさゆりが不機嫌そうだった理由は思い当たらなかった。 ゆかの席の前にお弁当を持って移動していると、ゆかが私に声をひそめてこう言った。 「あかね、ご飯食べたら付き合って欲しいところがあるんだけど」 さゆりのことを話してくれるのかな、と考えながら分かった、と返事をしてさっきのことには触れないことにした。 他愛ないことを話しながらお弁当を食べ終わると、ゆかはあたしを屋上へと連れ出した。 人気のない階段を上りきり、屋上へのドアが見えてくる。冷たいドアノブがその先の気温差を暗示してた。 ドアを開けてから、冷たい風が滑るように入り込んできた。あたしとゆかは慌ててドアから外に出てしまうと、階段の出口から風下へと移動して、出口の建物を風除けにした。 「ひゃぁぁっさっむーい」 ゆかが震え上がってそう言った。あたしは多少は鍛えてるから風が当たってなきゃ大丈夫。 「この辺いつも誰かしらいるのに、人気がないから珍しいなとは思ったけど・・こういうことだったのね〜」 「寒いしてっとりばやく言うけど、ゆかはひろしが好きみたいなの」 あまりにあっさりした物言いに、あたしはびっくりしてええ?と目を丸くするしかなかった。 「そうなの?」 「そう。そんで、ひろしは私が好きみたい、なんだって」 ゆかが人差し指を自分自身に当てながら、他人事のようにそう言った。そのとき風が回り込んできて、ゆかの長い髪を下から吹き上げる。 「うっ?・・え、えええっ!?」 なにそれっ!? あたし全然気づかなかった。というか、隠してたのかな、やっぱり。 そういうことは軽くいえるようなことじゃないもんね・・。 「って・・さゆりがそう言うの。まあ、はっきりとじゃないけど、そういうこと」 ゆかは腕で髪を抑えながら、あたしにそう言った。 「で、でも、なんでそれであたしが『いいわよねぇ』なんて言われないといけないの?」 言われるならこの場合、ゆかなんじゃないかしら。好きな人に好かれているゆかが言われるのなら、まだ分かる気がする・・。 あたしはそう思ったんだけど、顔に出てたみたいでゆかがにま、と笑った。 「私も言われたのよ、さゆりに。いいわねぇって」 「あ、そうなの?」 考えているのがばれてしまって、あたしはひたすら恥ずかしかったんだけど、ゆかは全然そういうのを気にしていないみたい。ゆかはおおらかで気配り上手なのだ。歳は変わらないけど、ちょっとかすみお姉ちゃんと空気が似ているかもしれない。 「でーもさ、私はひろしのことなんとも思ってないもん。だいたい、ひろしが私のこと好きかどうかだってあやしいもんだわ。ゆかの妄想かもしれないし。それなのに好かれていいわねぇ、なんて言われてもねーって言ったの。そしたら、矛先が今度はあかねに向いたってワケ」 「あ、あたし??」 ゆかがさっきやってたみたいに、今度はあたしが自分自身に人差し指を向ける羽目になった。 「そう、だってあかねは好きな人とクラスメイトで同じ屋根の下で暮らしてて果ては!許婚なんだから」 一瞬気が遠くなりそうになった。そうか、ゆかが『いいわねぇ』とやっかむ理由がわかった。そういうことだったのか。って・・ちょっと待ってよ。 「乱馬なんかっ・・違うわよっ!!」 「反応おそーい。最近あかね、乱馬くんと居ると表情違うんだよ?」 ゆかにそういわれて、あたしはちょっと気になって何が?と聞いてみる。 「知りたいなら、ちょうどいいターゲットがいるじゃない?」 ゆかが肩に手を当ててこすり合わせながらそう言う。風に当たらなくともそろそろ寒さを堪えるのも限界みたい。 「ターゲットって・・」 「さゆりよ」 ゆかはもう堪えられないと思ったか、一人すたすたと出入り口のドアまで歩いていく。あたしもゆかを追う。 「え・・?」 あたしがきょとんとすると、気づいてなかったの?とゆかの方も一瞬目を丸くした。 「さゆりの仕草に、身に覚えなかった?」 ・・あ!!誰かって・・あたしだ!! あたしが手のひらを唇に持ってきて驚くと、呆れたようにゆかが笑っていた。 「そーいうことだから、ちゃんと見ておいてね」 ゆかは先にドアを開けて入っていってしまった。でもあたしは・・ゆかに何もかもを見透かされたような気がして、しばらく屋上に佇んでいた。 熱く火照る頬に風が一陣通り過ぎていくのを感じながら・・。 教室に戻って、席につく。5時間目の授業はまだ始まってはいなかった。 ほっと息をつきながら次の授業のノートやテキスト、ペンケースを机の中から引っ張り出す。 あたしの席からは左前方にゆか、その2つ後ろにさゆりがいる。ゆかがあたしの顔を振り返ってにっこりと微笑みながら手を振った。あたしはひやひやしながらも手を振り返した。 それから・・、ゆかがさっき言ってたことが気になるあたしはひろしくんの席を探した。ひろしくんの席は、さゆりの斜め前。ひろしくんの前には大介くん。ついでに、乱馬はというと。 「うわーちょ、ちょちょっ、ちょっとそれタンマ!!」 「観念しろ乱馬、うりゃーっ!」 「うぎゃー!!」 隣で騒いでるのが乱馬のその席。その傍にはひろしと大介が屯して騒いでいる。 って・・何やってるかと思えば、消しゴム落とし?今更? 懐かしいけど高校生がやるもんじゃないわよ、絶対。 あー・・でも、好きな人の名前を消しゴムに書いて、それを使い切ったら両思いになれるって占いなら確かやってたわね。懐かしい。 「おーあかね、ちょっとじっとしてろな」 物思いにふけっていると、乱馬があたしの座ってる椅子の下の方に落ちたらしい消しゴムを探してる。あたしが見つけるのが早かったから手を出そうとすると、乱馬が慌てて手を伸ばして横取りした。 なに?せっかく取ってあげようと思ったのに 「わ、悪ぃな。おい、ちょっと今のナシだぞ!もっかいやろーぜ、もっかい!」 勝負事になると負けるのが許せないらしく、乱馬は大介くんとひろしくんにそう言って勝負(?)を挑んでいる。 が、ひろしくんたちにとってはもう今更のゲームで飽き飽きしている様子。 「おい乱馬必死になるなよ。こんなゲーム今時の小学生だってやらんぞ」 呆れたというよりも、ただもう飽きたような顔で言うひろしくんに、乱馬は平然と 「だって俺小学校いってねーから、今から満喫しよーかと」 なんて言ってる。 「義務教育だっつの」 大介くんが真顔で返してるし。 「っていうか、よくウチを編入できたよな。まがりなりにも高校なんだから編入試験くらいあったはずだが」 ひろしくんも突っ込んではいけないツッコミをしてる。 タイミングよくチャイムが鳴った。チャイムと同時に入ってくることで有名な歴史の先生が入ってくる。時間に厳しいが、生徒の行いにはかなりおおらかで優しい先生。 「あ、じゃーな乱馬。今度なんかおごれよ!」 「ちくしょー」 大介くんとひろしくんが席に戻っていく。乱馬はつまんなそうに机に突っ伏しそうになったけど、あたしの視線に気づいてにまっと笑う。 うーん・・。乱馬の笑顔には、ちょっと弱いのよね。私・・。 「あかねー。帰ったら消しゴム落としで勝負な!」 「いらない」 小学生じゃあるまいし。なんとかしてこの許婚(バカ)。 授業が始まると、隣からは小さな寝息が聞こえてくる。乱馬は歴史の授業をいつもお昼寝の時間に当てている。 小学生というより、こうなると保育児じゃないの・・。 呆れて物も言えない。 そういえば、さゆりを観察しないといけないんだっけ。 板書するタイミングに入る前にちらっと眼を走らせると、さゆりがひろしの方に視線を向けているのに気づいてどきりとする。 ・・・うわ、なんか見ちゃいけないもの見ちゃった感じ。 咄嗟にあたしはノートに視線を移したんだけれど、さゆりの切なそうな顔が頭に残って離れない。話し掛けたい、見つめていたい、そんな可愛い表情が脳裏に焼きついてしまった。 ・・あたしも、あんな顔、してたのかな・・? ・・乱馬に対して・・・? ―最近あかね、乱馬くんと居ると表情違うんだよ? うわっ・・なんか・・恥ずかしいかも。 これから気をつけなくっちゃ・・。 「んど・・てんどう・・」 不意に先生に呼ばれているのに気づいてあたしはびっくりして立ち上がってしまった。 「あ、は、はいっ」 「うん?いや、立たなくてよろしい。隣のお前の許婚とやらを起こしてやってくれ。最近は寒くて風邪もひきやすいから」 老齢の男教師はそれだけいうと、テキストを見ながら何事もなかったかのように講義を再開する。 クラス中が好奇の目で振り返るのに気づいて、あたしは所在無く腰をおろしてから、乱馬に声をかけた。 「乱馬、乱馬ったら」 「ん〜〜」 「起きてよ。乱馬ったら」 だめだ。生半可なことしてもこの保育児は目を覚まさないのよっ。 少なくとも健康優良児だから、風邪はひかないと思うんだけどなぁ・・。 すやすやと健やかに眠り続ける幸せそうな乱馬をぼんやりとみながら、あたしはなんとなくため息をついた。 6時間目の授業も終わって、掃除当番以外は下校する時刻になった。 乱馬はいつも通り途中まで隣を歩いていたかと思えば、いつのまにかフェンスの上を歩いている。 「なー・・あかね」 いつも偉そうにあたしを呼ぶ割には珍しく覇気のない声。何か後ろめたいことがあるときや、言いにくいことがあるときの声は決まってこの声。 あたしは心の中で少し身構えた。 「何?」 「お前、はっきり言えよ」 何?突然。 驚きというよりも、あたしは唖然としてしまう。ずいぶん腰の低い口調で始まったかと思えば、いきなり命令口調? 「なんのことよ?」 「さっきお前見てただろ?俺の・・」 やだまさかっ・・視線が無意識に乱馬に向いてたとか・・? かぁぁっと顔を火照らせて、あたしは思わず上の方に佇む乱馬に向かって怒鳴った。 「見てないわよ何言ってんの馬鹿じゃないのっ!?なんであたしがあんたの・・え?あんたの?」 いきなり怒鳴りつけられて肩をひいている乱馬が、あたしの態度があからさまに変わったのを見てにやり、と笑った。 ・・う、やだなその顔。いっつも鈍感で気づかない癖してこーゆーとこばっかり・・。 「なーにを誤解したのかなーあかねは。俺はまだ言い切ってないんだけど?」 「なっ・・なんでもないわよ。それで、あんたの何を見てたっていうの?」 誤魔化すためについ鼻息荒くして話してるあたし。あー。こういうところが乱馬の言葉でいう「可愛くねぇ」なのかなぁ・・。 「コレ」 ポケットから出して、乱馬があたしに向かってぺいっと投げる。ぽて、と手のひらに落ちたのは消しゴム。さっき乱馬が消しゴム落としに使っていた消しゴムだ。 「それ、お前の」 「えっ!?」 驚いて落ちてきた消しゴムのカバーを外してみると、本当だ。あたしの名前が書いてあった。 「当然。俺筆記用具とかもってねぇもん」 「それ、威張ることなの?」 呆れながらも、手のひらで消しゴムを転がしてあたしは考える。 「で、さー。あかねは今何を誤解したんだ?」 フェンスの上でしゃがみこみ、平衡感覚を保ちながら面白い玩具を見つけたような目であたしを見てる。さながらそれは幼児のような目で。 もうこうなるとどんどん許婚から格下げ。 あたしのせいじゃないもん。乱馬が悪いんだもん。 ・・あえて言えば、乱馬の行動が。 「別に。なんにも。誤解なんてしてないもん」 しゃがみこんだ乱馬を放っておくことにしてすたすたと歩き出す。乱馬から離れていきながら、ふとさゆりを思い出した。いいわねぇ、と言ったさゆりと、授業中切なそうに相手を見るさゆりの表情が脳裏に浮んでは離れない。 別れ際にこんな状態になっても、あたしたち二人は所詮帰る場所が同じ。帰ってからタイミングを計って謝ることだってできる。 さゆりはそういうところが、羨ましいと思ったのかな・・。 あたしはそんなことを考えていると、乱馬が後ろから嬉しそうな声でこう言った。 「俺のこと見てたんなら、素直にそう言やーいいのにっ!」 「ばっ・・違う!」 顔が火照りそうになる。でもどうしても顔に集まる血液は留まってくれない。今はまだ夕日のお陰でなんとかなるかもしれないけれど・・、陽が沈んでしまったら誤魔化せないのに。 「じゃー怒んなよ。それじゃ認めてるようなもんだぜ?」 「ち、違う違う違う!あんたなんか見てないっ!先生が起こしてくれっていうから!それだけ!」 「あー・・夢であかねの声したのはそのせいか」 乱馬が何気なくそう言った言葉に、あたしはぴくりとして振り返った。 乱馬がしまった、というように口に手を当てている。 「あたし、乱馬の夢に出てくるんだ?」 「で、てくるわけねーよ、おめーみたいな凶暴女が!」 「なんですって!?あたしだってあんたの夢になんてでたくないわよ!肖像権取るわよ!」 「なびきみたいなことゆーな!俺だってお前の出る夢なんぞお断りでぃっ!」 「何よ乱馬の馬鹿!」 「不器用ずん胴可愛くねぇ!」 も〜〜〜なんでこんななっちゃうわけ? 言いたい放題言ってしまって、乱馬もあたしも肩で息するくらいぜぇぜぇ言ってて。 でも、でも。さゆりならひろしくん相手にこんな言い合いなんてできないだろうな。あたしなら次の朝会って学校で機嫌を伺って謝るなんてこと、絶対できないもの。 あたしはそこまで考えて、一度ため息をつくと、 「・・やめた」 といった。乱馬が急にあたしが怒気を無くしたことに逆にびっくりしている。 「な、なんだよ」 「これ、あげる」 ぺい、とあたしはさっきまで握り締めていた消しゴムを乱馬に投げた。乱馬はぱしっと片手で受け取る。 「なんで?もういらねーの?」 「あたしなくしたと思って新しいの購買部から買ってきちゃったもの」 「そ・・そーか。わりぃことしたな」 急に萎縮した乱馬の声に、あたしの怒気はすっかり浄化されてしまった。現金なものね、あたしも。 「いいよ、その代わりその消しゴムなくさないで使いきってね」 「は?」 「なくさないで、使い切ってね」 語気を強めて、もう一度言うと、乱馬はわけがわからない顔をしていたけどとにかく頷いた。 「わかった・・」 「よろしい。じゃ、帰ろ?乱馬」 機嫌よくなったあたしを、多分乱馬は不思議そうに見ているはず。 いいの。これは私だけの秘密。 ちゃんと、使い切ってね乱馬♪ ■END |