【らんま1/2】台詞お題30より】

■「聞いたことねーよ…」→「聞いてねぇよ!」

掲載日[2008/3/20]














 天高いところで雲が速度を上げて走っていくのを、あかねは見ていた。
 湿った空気が流れて露出した手足にまとわりついた。生ぬるい温度と湿度の高い風にあかねは一瞬眉をひそめる。とてもじゃないが、気持ちのいい風ではない。
 すぐ雨が降り始めるな、と思いながら、あかねは道場の階段を下りていく。先ほどまで一人でトレーニングをしていたものだから、道着や髪に汗がにじんでいた。シャワーを浴びてすっきりしたら、おそらく夕食の時間だろう。それまでに髪を乾かして、身づくろいをしなければ、と一人あかねはそう思いながら汗を拭く。
(それにしても、こんな日に雨なんて降らなくてもいいでしょうに)
 あかねは空をもう一度見てみたが、やはり先ほどとは変わりなく、それどころかずいぶん辺りは暗くなってきていたようだった。これは雨は間違いない、と思わずため息をついてから、渡り廊下から母屋に入っていった。

 今日こそは、早乙女親子が山篭りから戻ってくる日になるといい、あかねはそうぼんやりと考えていた。
 下山する予定の日取りよりもすでに3日が過ぎている。普通の家庭ならば、やれ行方不明やら救助依頼やらと騒がれてもおかしくない状況ではあるが、早乙女親子に限ってそれは無用というものだろう、と家長の早雲がからからと笑いながらそう言ったのは昨日の夕飯時のこと。
 それからもう二十四時間が過ぎようとしているのか、とあかねは少し身が縮むような気持ちに捉われそうなってあわてて頭を振った。
「おじさまと乱馬が一緒でなにか、なんてあるはずないじゃない。そもそもあの二人はこれまでそれが日常だったんだから――…」
 天道家に来るまで、早乙女親子はずっと放浪の旅を続けていたようだった。ひとところに留まることを知らず、安定した住居もなく、明日食べるものも心許ない状況で、あの二人はずっと生きてきたのだ。
 多少意地汚いところがそれゆえならば仕方ないと思いたかった。しかし過ぎるところは窘めねばならない。とりあえず名目上は自分の許婚なのだから。名目上という理由でしか、今の自分には乱馬を窘める理由がないことにあかねはそっと息をつく。
 道着を脱いで洗濯カゴに入れる。髪に手をやりながらあかねは風呂場に足を踏み入れてから、お風呂がちゃんと沸かしてある事に気づいた。もうもうと湯気の立つ湯船の前で、おそらく長姉のかすみが気を利かせて沸かしてくれたのだろうと思うと思わず顔がほころんだ。ああいうしとやかな女性代表のような姉がいて自分は幸せだと思う。同時に引け目もあるのも当然だが、姉と張り合おうという気などさらさらない。姉は姉、自分は自分。あかねは割り切ってそう思う。
「ありがとね、お姉ちゃん」
 あかねは姉への感謝を呟くと、湯船のお湯を桶に掬い体に掛けた。体中にまとわりついた嫌な風の残骸が洗い流されるようで、やはりシャワーよりは湯船に入るほうがいい、とあかねはしみじみ思ったものだった。
 ゆっくりと体を湯船の中に浸らせると、あかねは窓を少しだけ開けた。通気口の役割を果たして湯気がいっせいにそこから逃げていく。暖かな湯気に囲まれていやな外の風は入ってこない。空を見ると、やはりどんどん暗い雲が空を覆いつくそうとしている。
 あかねはすぐに窓を閉めた。肩が冷えてしまうと思ったからだ。それに、この家はうっかりするといろいろ危ない。呪泉郷の呪いの所為か、天道家の風呂は公衆浴場のごとく勝手に使う輩が多いのだ。その呪いとは関係なくともスケベな八宝斎もいる。今は乱馬がいない分、自分で気をつけねばならない、とあかねは一人気を引き締めた。
 湯船にもう一度体を沈ませる。
「雨、降る前に帰ってくればいいのに」
 あかねは湯船に口をつけたままそう言った。ぶくぶくという空気の破裂音が鳴り響いただけだった。

 あかねがお風呂から上がると、とたんにおいしそうな匂いがそこまで立ち込めているのに気づいた。つい長湯をしてしまったらしいと慌ててあかねは身づくろいをする。髪を乾かして持ってきていた普段の服に着替えると、ぱたぱたとスリッパの音を立てながら台所を覗いてみた。足音に気づいたのか、かすみが振り返るなりあかねに微笑んだ。
「乱馬くん、帰ってるわよ」
「本当?」
 嬉しそうな自分の声に、あかねは自分で驚く。思わずはっとして手を口に当てると、かすみが穏やかに微笑んであかねに言った。
「よかったわね、あかねちゃん」
「べ、別に待ってたわけじゃないもん」
 慌ててかすみに、というよりも自分にそう取り繕って台所から逃げるように退散する。かすみは何でもお見通し、という仏様のような一面があって、あかねはそれが時々空恐ろしく感じることがあった。
 それでも、あかねはやはり喜んでいた。心が意識しなくても弾んでくるのが自分でもよくわかる。あかねは一人こっそりと呟く。
「よかった、無事に帰ってきて」
 一度2階に上がって物干しのある部屋に移動する。ぱんっと小気味のいい音を立ててタオルの皺を伸ばすと、竿に引っ掛けて洗濯ばさみで留める。なんだかそんな他愛ない作業でも、焦れてしまう自分がこそばゆい。すぐに無事な顔を見たいと思うけれど、慌てて居間に行くのもなんだか悔しい。いかにも待っていたみたい言動が、家族に察することなくばれてしまうのもなんだか癪だ。
「いいのよ。慌てなくたって」
 また、あかねは一人ごちた。
 タオルを干してしまうと、あかねはもう一度部屋に戻って自分の顔を鏡で覗き見た。おかしくないよね、と一度自分に念を押して、今度こそ居間へ降りようとドアを開けると、ちょうどなびきが部屋を出るのと鉢合わせする形になった。なびきは意味ありげににこりと笑みを見せると、あかねの方に歩いてくる。階段とは逆になるので、あかねに何か用があるのだろう。
「なに?お姉ちゃん」
「あらあら、ずいぶん嬉しそうな顔をしちゃって。何かいいことでもあったの?あかね」
 なびきはそういうとあかねの顔にぐいと顔を近づけてきた。あかねは驚いて一歩後退(あとずさ)る。飄々とした雰囲気を持つなびきは武道の心得もないくせにこういう隙を狙う動作にぶれがない。鍛錬もしていないのにこういう動作ができるのはおそらく天性のものだろう。
 しかし、なびきは道場を継ぐことにまったく興味がなかった。もし道場が自分のものになるならば売り払って一生遊んで暮らす、とのたまい、父早雲を慌てさせた過去もある。
「な、なんにもないわよ」
 姉のからかいを込めた眼差しを睨みつけ返して、あかねはぷいと横に顔をそらした。
「ああ、乱馬くんが帰ってきたのね。おめでとう」
 わざとらしく、なびきがそう言う。体勢を元の直立姿勢に戻すと、軽く拍手する仕種までつけてやる。あかねはその仕種にむっと来てつい声を荒げた。
「おめでとうって、何が?!」
「だって、この三日間、ずーっとそわそわしてるんだもの、あんた」
 なびきはふい、と踵を返して今度は階段の方に向かう。背中を向けたまま、なびきは手をひらひらと振りながら、言う。
「許婚がいなくなっちゃ、困るものねぇ」
「そんなんじゃないったら!」
「はいはい。そんな大声で喚くと階下(した)まで筒抜けよ」
 ぐっと詰まったようにあかねが口を閉ざすと、なびきはそれを見ていたかのようなタイミングで肩をすくめた。そのまま階下までとんとん、と落ち着いた歩調で降りていくのを、あかねは悔しそうに見つめる。
 なびきを言い争った所為か、あかねは下に行きづらくなった、と一人で思う。誰も何も気にしていないかもしれない。いつものことだと流される確率のほうがはるかに高いのは分かっている。それでも、なんとなく、あかねは階段に足を踏み出せないでいる。
 夕食の支度が整っているのだろう。階段から流れてくる香りに、あかねは観念して足を踏み出す。せっかく姉が作ってくれた料理をこんなつまらない理由で口に入れないわけにはいかない。姉のまごころもそうだが、天道家の逼迫(ひっぱく)している経済状況からなんとか搾り出される食費によって作り出された食事を、絶対に無駄にするわけには行かないのだ。
 階段を下りて廊下を折り返すように戻ると、かすみがお膳を運んでいるところだった。
「お姉ちゃん、あたしやるわ」
「そう?お願いね」
 かすみから椀の載った盆を受け取ると、あかねは無意識に椀の数を数えた。椀の数は6つ。今日は八宝斎が見当たらないので数に入っていないようだった。いつもの調子ならば、食事半ばに帰ってくるのだろう。いつものように、体に似合わぬほど大きな唐草模様の風呂敷を抱えて。
 そして隣には、きっといつも通り乱馬がいるだろう。
 あかねの顔に笑みが浮かぶ。
 あかねは少し機嫌を持ち直したことを喜びながら、居間に入っていった。ちゃぶ台にはなびきと、早雲が座って待っている。素早く目を走らせたが、乱馬も玄馬もそこにはいない。あかねは平静を装ってちゃぶ台に盆を置くと、椀をそれぞれの場所に置いていく。
「かわいくない顔」
 すかさずなびきに言われて、むっとする。あかねがなびきを見たときにはなびきはもうこちらを見てもいない。テレビのリモコンを手にチャンネルを次々に変えていく。
「そんなこと知ってます」
 あかねは移動しながら椀を置いていく。
「素直じゃないわね。乱馬くんなら今お風呂よ。山で雨に当たったんだってさ」
「そんなこと、聞いてないもん」
 あかねはすっくと立ち上がると、なびきからぷいと顔をそらす。なびきは気にした風もなく、テレビのチャンネルと順繰りに回していた。
 あかねはお盆を脇に抱えると、もう一度台所に向かう。案の定、狭い廊下でかすみと入れ替わりになって、あかねはかすみの体を避けるように体をそらした。
「あかねちゃん、もう一つ台所のテーブルにお盆があるの。それもお願いできる?」
「わかった、お姉ちゃん」
 あかねはお盆を持ち直しながら台所に入る。付け合わせのお煮しめがちゃんと人数分お盆に載せてあった。あかねは持ってきたお盆を脇に置くと、付け合わせの方のお盆を持ち直して居間に向かう。
 廊下に出ると、風呂場からの水音が聞こえてきた。確かに、早乙女親子はそこにいるようだ。天道家の家の湯船は意外に広く、男二人が入っても問題ない仕様だった。どちらも夕飯を待ち切れず、譲らない根性丸出しで二人で入ったのだろう。まったく、どちらも子供みたいな親子だ。
 あかねはお盆を持って居間に入ると、再び一つ一つ小鉢を置きはじめる。なびきはかすみから渡された茶碗をそれぞれの場所に置くのを手伝っていた。
「いやぁ。久しぶりだねぇ、全員揃うのは」
 あかねが自分の位置に座り込んだのが合図だったのか、早雲は今まで読んでいた新聞を横に置いてそう言った。
「本当ね。久しぶりににぎやかになりそうね」
 かすみもそう言ってにっこり微笑む。
「早々に喧嘩とかやめときなさいね、あかね」
 なびきがそう言うのを、あかねはやはりむっとして言い返す。
「なにそれ!あたしがいっつも喧嘩ふっかけてるみたいじゃない!」
「いちいち鼻息荒く言い返さない。流すことも覚えなさいな。武道家でしょあんた」
 なびきは呆れた口調でそう言った。まったく暖簾に腕押し状態。何を言ってもこの姉には通じない。昔からそうだった。なびきとは喧嘩にならないのだ。
 長姉のかすみとなんてもっとそうだ。かすみとなら、喧嘩する原因も生まれない。例えあったとしても、かすみは常に聖母のように正しく、結局喧嘩になるまえにあかねが反省してしまう羽目に陥るのが常だった。
(そういえば私、口喧嘩って乱馬としかしたことないんだ)
 ふっと、あかねは今思いついたように気づいた。

「あーさっぱりした」
「やや、やはりかすみさんの料理は嬉しいですなぁ!」
 早乙女親子がようやく居間に現れる。あかねはなんだか乱馬を見上げるのも気恥ずかしく、テレビを見ているふりをした。タイミングが悪くて、おかえり、というのもなんだかおかしな気がしたのだ。
「待ちかねたよ早乙女君。さ、早く座って。みんなでいただこうじゃないか」
 早雲が嬉しそうに声を上げる。やはり玄馬がいる生活に慣れているのか、遊び相手が帰ってきたことを素直に喜んでいるようだった。
「おー!やりぃ!俺これ大好物!いっただっきまーす!」
 人が待っていたという話を聞いていたのかどうか。乱馬は目の前にある食事を見るなり、さっそく手をつけ始めた。玄馬も遅れじと箸をとる。それを見て天道家の面々も、いただきます、と声を上げた。
「これもーらった!」
 玄馬が乱馬の皿にあった肉を横取りする。乱馬がすかさず玄馬のものを取り返す。
「へへ、じゃこれは俺のもんっ!」
「ばかもん、そりゃわしのじゃっ!」
「食っちまったもんねー!」
「うぬぬ、乱馬!父の食事に手をつけるとは何事か!」
「人のものを先に横取りした分際でなに言ってんだ!」
 またはじまった。呆れてものも言えない。あかねは自分に被害がかからない分、まあいいか、と思うことにした。
 早乙女親子の下らないこういう口喧嘩も、よく考えたら天道家ではありえない。早雲は穏やかで娘に声を荒げることなどほとんどないし、娘を窘める時も諭すように言うのが口癖だ。
 おかげで早乙女親子の喧嘩は、日常が戻ったみたいで心地よいとさえ思えた。
「なににやけてんだ?おめー」
「んなっ?!」
 急にひょいと顔を乱馬が覗き込んでいたので、あかねはびっくりした。ちょうどご飯を飲み込んだところだったので、口の中のものが出てこなかったからよかったようなものの、タイミングが悪かったら乱馬にご飯粒を飛ばしていたかもしれない。
「なによいきなり!にやけてなんかないわよ!」
「そぉかぁ?なんか笑ってるみたいだったぜ。思い出し笑いか?」
「うるさいわね、関係ないでしょ!」
 ぐい、と乱馬の顔を手でどける。顔が近い。無駄に。なんか嫌だ、とあかねは思う。でもこれぐらいならいつもの距離のはずだった。もう乱馬のこんな馴れ馴れしい態度には慣れっこのはずなのに。
(なんでだろう?)
 あかねが乱馬を避けていると、横からなびきが話に割り込んできた。
「関係ないわけないじゃない。乱馬くんが帰ってきて嬉しいのよね。あかねは」
「な、なんでそうなるのよっ」
 ばんっとちゃぶ台に両手を打って姉を威嚇するも、やはりなびきは少しもそんなことに動じない。そこにかすみがのほほんと素で追い打ちをかけた。
「そうね、三日間ずっと心配してたものね、あかねちゃん」
「お姉ちゃん!」
(なにこれ!?なんか…これって…)
 あかねは気が動転しながらも、この家の、慣れた悪質な空気を嗅ぎとった。
 あかねはもう乱馬の顔を見られない。どんな顔をされていても見るのは嫌だ、と思う。
 そこに今度は玄馬が口をはさんだ。
「いやーははははっ、あかねくんもですかな。乱馬も日取りを三日ずらしただけでふくれっ面で」
(え?)
「親父!誰がふくれっ面した!」
 すぐ後ろで乱馬が声を上げた。声が慌てている。乱馬の顔を見なくても、あかねにはどんな顔をしているのかその声の調子で手に取るようにわかる。
「そーらその顔じゃ。昔から駄々をこねる顔は変わらんな、乱馬」
「いっぱしの親みたいなこといいやがって!」
「わし親だもーん!」
「このスチャラカ親父!」
 殴りかかろうと乱馬が飛び上がるが、玄馬はそれを見越したように避けると、足を素早く回して乱馬の足をすくった。
 畳の上で乱馬が派手に転倒する。どうやら今回は真面目に修行したようだ。玄馬にも技に切れがある。
「やることやってさっさと帰ろうぜ、山の天気は変わりやすいからいい天気のうちに帰ろう、とかなんとか、まったくなんのかんのと言い訳を三十種類も繰り返しおって。わしゃ耳にタコができるかと思ったわい」
 転倒した乱馬の背中に素早く馬乗りになると、玄馬は両足をとりぐいと引きよせて技をかける。
「…っ!」
「あかねくんがそんなに心配か?乱馬」
「だっ、誰が心配するかっ!」
 どもっているのが、それが技をかけられている所為なのか、それとも図星をさされ焦ってのことなのかがわからないのが残念なところである。
「しかし早乙女くん、帰りを三日ずらすって何やってたんだい」
(…ずらすって?)
 あかねは未だ赤い顔のまま早雲を睨みつけるが、早雲は事の次第がうまく行ったことに上機嫌でそのことに気づいていない。なびきが何か言いたげに早雲に声をかけようとしたが、手おくれと思ったかすかさず食事を再開する。
「いやなに、パンダの姿を気に入ってくれるお嬢さんに出会ってな。ごちそうしてくれるというのでついつい世話になってな」
 技をかけられたまま乱馬の方もぴくりと耳を動かした。どうやら、仕組まれていたことに乱馬も気づいたらしい。
 しかし早雲と玄馬は自分たちの企みが期待以上に成功したことを喜び、酒を飲んだかのように高らかに笑いながら今までの経緯を話し始めた。
「しかし早乙女くん、それを乱馬くんに黙ってるなんて全く君も人が悪い」
「いやいや、そういう天道くんだってあかねくんに言わなかったようじゃないかい」
「「つまり…」」
 焦点の定まらぬ表情でゆらりとあかねは立ち上がる。乱馬もそれに合わせたかのように、ぐぐぐと腕に力を入れて玄馬を背中にしたまま逆立ちあがった。筋肉に力を入れている所為か、それとも父親たちの下らない企みに頭に来たのか、ぴくぴくとこめかみには青筋が張っている。
「三日遅れっていうのは予定通りだったわけ!?」
「てめーこの三日間夜中必ずいなくなったのはそのせいか!」
 あかねはちゃぶ台をばんっと叩き潰す。みしっと音をたててちゃぶ台が真っ二つに割れた。もちろん、かすみとなびきが料理はすでに避難させている。
 乱馬の方は腕で逆立ちした後、玄馬を背負ったまま背中から玄馬を床に落とした。落としただけでは飽き足らず、玄馬の腹に肘鉄をくらわせている。
「「そんなこと…」」
 乱馬とあかねが呼吸を合わせたかのように声をそろえて叫んだ。
「聞いてないわよ!」
「聞いてねぇよ!」
「あらまーさすが許嫁ね。息ぴったり」
 なびきが最後の締めに二人を茶化すと、乱馬とあかねがきっとなびきを睨む。それから、ふと二人の視線がかちあうと慌てて二人は視線をそらし、あかねは自分の部屋へ、乱馬は道場へと体をくるりと反転させた。二人ともどすどすと音をたてて縁側を逃げるように去っていく。
 かすみが真っ二つに割れたちゃぶ台を片方だけあげて、割れた方に台を置く。そうすればなんとか半分はちゃぶ台がつかえるようになる。これくらいのことはこの家では日常茶飯事なので大して動じることもなく対処できてしまうのである。
「なびき、あんまり二人をからかうもんじゃないわ」
「だって、本当のことだもん」
 かすみは困ったようになびきを見てから早雲に向きなおると、泣きじゃくり始めた早雲をなだめる。
「うっうっ、あかねは怒ると怖いんだよぅ〜」
「それなら、あまり怒らせるようなことしないでくださいね」
「はい…」
 最後までかすみは菩薩のように正しかった。

 一方、玄馬は、乱馬に肘鉄をくらわされて一晩のびていた。









■END


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Copyright 2008 BY SAE


前半あかねがじれったいw早く乱馬に会いに行けばいいのに絶対行かないんですよ。
でも久しぶりに会ったりするのってたぶん照れたりするんじゃないかと思って。
そういうのちゃんと書きたかったなぁ。力量不足。
最初はあかねだけがはめられる予定だったんだけど、それじゃあかねが可哀そうなので乱馬もはめられ役になったらしっくりきてよかった。
決めセリフまで行けるか本当に心配だった!よかった(汗)
脱力系のセリフは乱馬に似合わないので変更しました。