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【らんま1/2】台詞お題30より】 |
| ■「ねえ、君…なんなわけ?」→「ねえ、乱馬って、あたしのなんなんだろ?」 |
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掲載日[2008/4/20] 桜が若芽を芽吹かせて、すでに青々とした雄大な姿を見せているのに、人々の目は見目麗しく花開いていた日々を通り過ぎると何事もなかったかのようにその桜の木の下を通り過ぎる。 なんという軽薄さ、なんという薄情さか、とあかねは憤慨したりするのだが、桜の木は少しもそんな外部の目なぞ気にしないようで雄々しくそして優しく空に枝葉を広げている。きっと植物はこんな人間の気まぐれなんかに付き合ってる暇がないのだろう。 そんなに大きな、穏やかな心で毎日を過ごせたらどんなにいいだろう、あかねは桜の木に勝手に羨望のまなざしを送るとふう、と息をついた。 今日は珍しく一人で登校している。いつもは家から一緒に出てくる居候兼許嫁の姿はない。昨日派手に喧嘩をしたのでなんとなく顔を合わせづらくて、あかねは早めに登校しているのだった。 たまにはひとりで歩くのもいい、と思いながら、あかねは自分を慰める。喧嘩の理由など、本当はもうとうに忘れてしまっていた。たぶんいつもの流れで、ペットの子豚を執拗に目の敵にする乱馬を殴り飛ばしたのか蹴り飛ばしたのか、そんなようなことだ。いつものことなのだから特に翌日まで引きずること自体、あかねにとっては珍しいことだった。正確には、あかねは喧嘩をした理由も忘れていたのだから「喧嘩を引きずっている」という表現は違うな、と一人そう思う。 (でも、あたしはなにかを引きずってる。Pちゃんがどうでもいいわけではないけど、それ以外のことを。乱馬に。) 何気なく振り返る。期待してるんじゃない、そんな傲慢な気持ちにはとてもなれない。 けれど確かめる。いない、と確認して、落胆とも安堵ともつかないどっちつかずの気持ち。 いったいこれは何なのだろう。 あかねはもう一度前に向きなおり、肩で嘆息した。なんなのだ。この妙な気持ちは。 最高に自分らしくない、天道あかねらしくないではないか。 そう思うと、急になんだかばかばかしくなる。 気を取り直して、深呼吸する。腹の底に、丹田に力を込める。息を止めて、ゆっくりと息を吐く。 取り乱さないで。精神の淀みの時こそ、武道家の力を試されるというもの。 全身の余計な力を抜く。凝り固まった肩の力を意識的に抜いて、どれほど自分に力が偏っていたのかを思い知る。 「なにぼーっとしてんだよっ!」 後ろから声をかけられてあかねはゆっくり見上げると、とん、とほとんど音を立てずにフェンスの上に立つ乱馬と相対することになった。 怒っている顔でもない、不機嫌そうな顔でもない。 理由も言わずに一人登校してしまったあかねを責める様子は微塵もない。そういう日もあるだろ、くらいな気持ちしかないのだろう。その軽薄さは、あかねはありがたい、と思った。おかげでこちらが重くならずに済むから。 「遅れるぞ!」 一言だけそう言うと、今度は乱馬が先に歩きはじめた。結局いつも通りの登校風景になって、あかねはなんだか一人でくすぐったくなった。避けて出てきたはずなのに、まるで望んでいたことが叶ったかのような、そんな暖かな気持ちにじんわりと心が満たされていく。 これまで、東風先生に抱いていた気持ち。自分の気持ちなど、ずっと届かないものだと決めつけていた気持ち。 それとは少し違うものが自分の気持ちに芽吹き始めているものだとは、思わない。思いたくはない。今は。けれど。 暖かくなったその気持ちだけは、いつまでも心に忍ばせていたい、とあかねは思う。 「ねぇ、乱馬」 「あんだ?」 「乱馬って、あたしのなんなんだろ?」 がたたっ 乱馬がフェンスからずり落ちる。乱馬の顔は、あかねの位置からはよく見えない。乱馬がうまい具合に隠しているのか、偶然見えないのかも定かでないところ。 けれどあまり今見てみたいとは、思わない。見てみたい、と思うそのときまでは。 このままで。お互いがまだ見え切らないままで。煮え切らないままで。 今は、すっきりと切ったばかりの軽くなった髪を撫ぜながら、新しい毎日を楽しみにしてみようか。 ■END
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