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【らんま1/2】台詞お題30より |
| ■「死にはしないって」 |
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掲載日[2008/5/9] この世には貧力虚脱灸という武道家生命を完全に断つことのできる恐ろしい灸があった。 ひとたび背中のツボにその灸を据えられると、その灸は背中のツボから全身に神経を伝って熱を伝播させ、神経細胞が萎縮させる働きがあった。萎縮した神経では力を入れてもそのエネルギーを伝えきれずに力を放出することができなくなってしまうのだ。つまり、戦う力を完全に失うのだった。 それは、かつて早乙女乱馬が邪悪な師匠八宝斎より据えられた灸であった。しかし、邪灸人体図によりその灸の効果を無くすツボをコロンにより押してもらうことで、その騒動は終結した。今では早乙女乱馬は元通り力を発揮することができるようになっている。 その後、その灸は今では入手も難しくなっているようで、市販化されていないのは幸いであった。 しかし、悪質な技というものは途絶えることを知らない。しかも、悪意に満ちた技であればあるほど、それを欲しがる人間はなかなかいなくならないものである。そして近年、その技は灸を使わずとも、ちょっとしたコツがあれば発動できるツボがあることが武道家たちの間では徐々に知られるようになっていた。お互いのために禁忌とされている術にはなっているものの、手段を選ばない人間にとってはこの技は好都合以外のなにものでもない。 そして、その技は史上最悪の人間、いや妖怪が知ることとなったのである。 「乱馬!わしの甘美なひと時を邪魔するとは!」 「ぬかせ!人さまの迷惑ばっかかけやがって!」 「師の仕置きに刃向う不届き者が!黙って観念せい!」 「やーなこったー!!」 後ろを向きながらべろべろと舌を出す乱馬と、それを追う八宝斎がどたばたと天道家縁側を走り去ろうとしたとき、ちょうど居間を出てきたあかねと乱馬が衝突した。 「きゃぁ!」 「わっあかね!?」 乱馬が慌ててあかねの態勢が崩れないように支え抱え込んだのが不幸と言えば不幸だった。くるりと舞う遠心力を使ってあかねを支えようとしたのだが、後ろからは悪鬼の如く指先を掲げて走ってきていた八宝斎が追ってきていたのである。あろうことか乱馬はあかねを盾にした形になってしまっていたのだった。 「わー!わー!止まれじじい!」 不幸というのは重なるものである。縁側に入る廊下の曲がり角で足をもつれさせた八宝斎があかねの背中とは気付かず、とすんとあかねの背中に八宝斎の指が刺さっていた。右の肩甲骨から首筋の筋肉の間に滑り込むように入ってきた八宝斎の指が、びりりと電気を走らせたかと思うと一瞬ののちに神経を麻痺させる。 あかねはがく、と膝を折ると左の手で右肩を抱え込んだ。あかねが持っていた雑誌がばさばさっと音をたてて床に落ちていく。 「な、なにこれ…?」 「あ、あかねっ!」 すばやく乱馬があかねを床に座らせ肩を支えてやる。力がうまくはいらなかったあかねにはありがたかった。 「あかねちゃん!ま、まさかこんなことになるとは!」 いかにもショックを受けたという表情の八宝斎だが、油断はならない。もともとは乱馬に当てようとした技である。あかねに当たったところで、八宝斎にとってそれは損にはならないだろう。寧ろその逆の可能性が高い。 「こらじじい!あかねになにしやがったんだ!」 乱馬が焦ったように八宝斎に問いただす。家にいた早雲と玄馬、かすみ、なびきも集まり始める。あかねは自分の右腕を守るように左手が握り締めている。右腕がおかしいのか、と乱馬は心配そうにあかねを見つめた。 「わ、わしのせいじゃないやい!乱馬が悪いんじゃ、乱馬が悪いんじゃ!!」 わーっと泣きながら(もちろん嘘泣きに違いないが)八宝斎がみんなのいる居間から外に場所から逃げ出してしまった。 「こらじじい!説明してから出てけー!!」 乱馬はすぐにでも追いたかったが、あかねがどうにも動けない様子なので支える手を離すことができなかった。 「あかね、大丈夫かっ」 「平気、だと思うけど…」 あかねが強気な表情でなんとか乱馬から起き上がろうとするが、右腕にうまく力が入らないようだ。 玄馬と早雲が慌ててそばによって、口々にあかねを気遣った。 「あかね、無理しないほうがいい。なにしろあのお師匠様の技を食らったのだからな」 「乱馬よ、東風先生のところにあかねくんを」 「わかった」 乱馬はあかねを前に抱えると、すぐに縁側から飛び上がった。いつもなら家族の前で乱馬に助けられることを嫌がるあかねも、右腕に力が入らないのを悔しがりながら何も言わなかったようだ。 「ああしているのを見ると、本当の夫婦みたいね」 「いつもあーならいいんだけどね」 乱馬とあかねが庭の松の木から塀を伝って行った後、二人の姉はのんきにもそんなやり取りをしていた。姉たちは、普段口ではなんと言おうと乱馬が大事な妹をなんとかしてくれることを知っているのだ。だからこそ長姉のかすみは何事もなかったようにエプロンの皺を伸ばしながら台所に戻っていく。なびきも先ほどまであかねと見ていた雑誌を拾い上げると、乱馬が飛び出していった方角を見ながら雑誌を握り締めた。 (頼んだわよ、乱馬くん) 乱馬は民家の屋根を一直線にひた走る。いつも戯れであれば、一つ一つの屋根をひょいひょいと高く飛び上がるような移動なのに比べ、今の走り方は彼の出せる最高スピードの走り方だった。 「ちょ、ちょっと乱馬、普通でいいから」 あかねの方が、そのスピードにびっくりして乱馬に声を掛ける。 「なにが」 乱馬の方は余裕がないのか、声にまったく抑揚がない。ここまでスピードを上げても乱馬は全く息の乱れがない。あかねにとっては、それが少し羨ましい。 それにしても、乱馬の慌てようは尋常ではなかった。キッと前を見据えたまま、足を滑らかに前に繰り出している。屋根を蹴る瞬間こそ意識を集中してあかねを振動させないように気を遣っているらしかったが、そこから飛び出すスピードでどれくらいの力が働いているのかあかねにもありありと分かるほどだった。 あかねは、もともと乱馬が受けるはずだった技を自分がうけてしまったことで乱馬は良心の呵責に苛まれているのだと気づく。けれど、邪悪な技を使ったのは八宝斎であるし、避け切れなかったあかねとしても正直武道家として情けない思いがある。 (乱馬が、そんなに責任感じることないのに) だから、ゆっくりとあかねは乱馬をなだめるように、そしておどけるようにこう言った。 「そんなに慌てなくっても、死にはしないって…」 「死なれてたまるか!」 そんなあかねの言葉をさらうように、いや、黙らせるように乱馬は怒鳴りつけた。同時にぎゅうと力強い腕があかねを自分の胸にかき抱く。スピードをさらに上げるために、どうやら腕にも力がこもったようだった。 「ちょちょちょちょっとっ!乱馬っ!」 それとわかっているのに、これではまるで熱い抱擁ではないか、と一瞬考えそうになって、あかねは自分の顔が火照るその前にその考えを追い出した。それよりも、完全に血が上っている乱馬を鎮める方が先だと考える。 「ねぇ、乱馬っ。ちょっとっ」 押し付けられた息苦しさに、あかねは目の前に迫った乱馬の服を左手でぐいと引っ張った。正直、右腕はまだ感覚が戻らないがそれを言えば、乱馬はまたスピードを上げるのではないかと思い、あかねは言えない。 服を引っ張られて、乱馬はようやくちらりとあかねの方を見た。今の状況では見つめられても困る状況だ。至近距離であるとかそういうことの前に、このスピードでは前方不注意で電柱に激突でもされたら大惨事になりかねない。 「少しましになったのか?」 乱馬の声が穏やかさを取り戻す。あかねはほっとしたように胸をなでおろした。 「うん、だからいつも通りでいいから、ね?」 「……」 乱馬の腕の力が緩んで、あかねは正直それが一番ほっとした。一瞬火照りかけた顔が早く冷めるようにと、乱馬から顔を背けるように進行方向を眺めると、もうそこには小乃整骨院の看板が見えていた。 「やぁいらっしゃい、ふたりとも」 玄関で空々しく離れて立っているふたりをみて、小乃東風は穏やかに微笑んだ。あかねが気を取り直したように、声を上げる。 「こんにちはっ、東風先生」 「こんにちは、あかねちゃん。さぁあがって。乱馬くんも」 「あ、はい」 東風は二人を誘うようにそういうと、先に奥の診療室に入っていく。あかねは東風を追うように診療室に入って行き、乱馬ものたのたと靴を脱ぐと診療室に向おうとしたが、思い直して待合室で待つことにする。よく考えたらあかねが打たれたツボの場所が場所だけに、乱馬は入ってはまずいのではないか、と思ったのだった。あかねが服を脱ぐことになったら、自分はいたたまれない。 「乱馬くん、どうしたの?」 なかなか入ってこない乱馬に、部屋の戸口で東風が呼びかける。 「あ、いや」 焦ってなんと言ったらいいか考えていると、他でもないあかねが何気ない表情で乱馬に言う。 「なにやってんの、早く入りなさいよ」 いいのか?とも聞けずに、乱馬もなんでもない顔をして入ることにした。本人が入れといったのだから、後のことは後で考えよう、と乱馬は思う。 「今日は、どうしたの」 乱馬が入ったあと、東風がドアを閉めながらあかねにやさしく訊いた。あかねは先ほど八宝斎に背中のツボを押されたこと、それから右腕に感覚がなくなったことを話す。まだ、右腕に感覚が戻っていないことに驚いた乱馬は、あかねの言葉に一瞬反応して何かを言おうとしたが、東風の手前、何も言わずに椅子に座りなおしただけだった。 「それは大変だったね。ツボの位置はどのへんになるのかな。あかねちゃん、背中だから指差せないよね。乱馬くん?」 「はい」 「君から見てどのへんだったか覚えてるかな」 「多分、だいたいは」 乱馬はあかねの方をちらりとみてから、そう答えた。東風がそれなら、とにっこりと笑う。 「あかねちゃんの背中を指差してもらえる?服の上からでいいから」 「あ、はい」 乱馬が立ち上がってあかねの背中を指差そうとしたが、一瞬手が止まった。あの時はあかねの背中を正面から見ていたのはないのだ。その所為で、記憶から位置を補正する必要があった。 乱馬のそんな様子を目聡く気づいた東風が、乱馬に助言する。 「さっき押されたときの格好の方が正確に位置がわかるだろうから、さっきの状況のままやってくれていいよ。あかねちゃんも、いいよね?」 「え?ええ…」 あかねは東風が言うので仕方なく返事をしたが、内心気が気ではない。何しろあのときの状況はとっさとはいえ二人抱き合った状態だったのだ。 乱馬はツボを指差すべくあかねをあのときの状況のまま、あかねに手を伸ばしかけて、はた、と手が止まった。あかねは、乱馬も気づいた、と思い、そっと見上げてみる。案の定、乱馬の顔が赤い。 「つ、ツボの場所、先生に教えるだけなんだからねっ!変な気起こさないでよっ!」 あかねは乱馬をけしかけるようにそういうと、その声に乱馬ははっとあかねに気づいたようにあかねを見下ろした。 「だ、誰がお前なんかに変な気起こすかっ!」 ぎしぎしと乱馬の手が伸びてきて、あかねは余計羞恥に身を焦がれそうになる。この間も後ろで東風がにこにこと待っているかと思うと、その恥ずかしさは倍燃え上がりそうだ。 ようやく乱馬ががっしりとあかねを抱きしめて、ここ、と言った瞬間、あかねはどーんと乱馬を突き飛ばしていた。 「なっ、なにすんだよっ!」 壁にめりこんだまま、乱馬が言った。しかしいつもよりも覇気がない。赤みの差した顔にも、怒りとも羞恥ともつかない表情が浮かんでいる。 「乱馬がもたもたしてるからよ!」 ふん、と鼻息荒く息巻いてあかねは東風に向いて座りなおした。 「ったく可愛くねぇ!」 「なによ馬鹿!」 「相変わらず、仲がいいねぇ」 東風が心底穏やかそうな顔でそういったので、二人は黙り込んだ。 「さて、乱馬くんの苦心のおかげでツボの位置はよく分かったけど」 東風がいかにも嫌味のない顔でそういうので、乱馬は余計恥ずかしくなった。椅子に縮こまって座りこむ。 (一体何の罰ゲームなんだこれはっ) 「その位置、今話題の【虚脱のツボ】だね」 「虚脱の、ツボ」 あかねが東風の言うそのまま言葉を繰り返す。乱馬がその聞き覚えのある名前にはっと顔を上げた。 「まさか、俺が前に受けた貧力虚脱灸と関係が」 「その通り。この【虚脱のツボ】を突かれたものはある部位が全く機能しなくなるという恐ろしい技だよ。まあ、でも安心したまえ。このツボに関しては最近結構知れ渡っていてね。あかねちゃん、もう一度後ろ向いてくれる?」 東風に言われて、あかねがはいと返事すると、くるりと椅子を回転させて東風に背中を向けた。 東風が首筋に近い肩の部分をとすんと打つ。 「実は、ツボの効力を消すためのツボも今では分かっているんだよ」 「なーんでぇ」 乱馬はすっかり安心したのか、気抜けした声でそういった。しかし、あかねの方は右腕を見つめたまま動かないので、乱馬は瞬間的に楽観しかけた自分を引っ込める。 「どうした?あかね」 「まだ、右腕が動かないから、どうしてかなって」 不安そうに見上げるあかねの顔を見つめてから、乱馬がすぐさま東風の方に目をやると、そりゃそうだよ、と東風が人差し指を天井に向かって指差したところだった。この場合、天井には何かがあるわけではない。 「ツボの効力が完全に消えるまでに一週間はみないとね」 「「一週間っ!?」」 ふたりは東風のにこやかな表情とは裏腹に、悲鳴を上げるように声をそろえてそう言った。 一週間も利き手が使えない状況、というのはかなり嫌な状況だ、と乱馬は帰り際一人そう思った。 あかねは相変わらず気丈にも、なんとかなるわよ、と乱馬にそう言ったあと、もう何も言わない。二人はいつも通りてくてくと天道家への帰り道を歩いている。 あかねがなんともなくても、あの家族がなんともなくいられるだろうか、と乱馬は一人心配になった。 結果的に、乱馬の心配は的中した。 「もともとは乱馬くんのせいなんでしょ?あかねの右手となり下僕となり一週間身をやつしてもいいんじゃないの?」 開口一番というのだろうか、なびきがあかねと乱馬の話を聞くなりまずそう言った。これを聞いた早雲も、もちろんその尻馬に乗る形で続く。 「それもそうだね。乱馬くん、あかねの身の回りのこと頼んだよ。食事に着替えに入浴に荷物持ち。よろしくたのむよっ!」 「なっ!」 乱馬は言われた内容に顔を赤らめながら、一体本当にこれでも人の親だろうか、と早雲の神経を疑いたくなった。大事な娘を友人の息子とはいえ、跡継ぎという名目のために、娘の貞操も考えずによくもまあここまで言えるものだと半ば感心しそうになる。 「お父さん、言いすぎよ」 さすがに長姉のかすみが父の言葉をなだめるようにそれを止めたが、早雲は嬉しそうに笑いながらいやいや、とかすみをなだめ返そうとする始末である。 「乱馬くんもそろそろ許婚としての自覚を持ってもらわんとね。未来の妻をやさしく見守るという役を与えさせてもよかろう」 「そうだな。いい経験だな乱馬。そもそもお前はあかねくんをちっとも大切にせんからな。いい機会じゃ。一週間のお役目として甘んじて受けるがよい乱馬」 「勝手なこといわないでよ!お父さん!おじさま!」 さすがにこれにはあかねが顔を真っ赤にして声を張り上げた。 「みんな、あたしの話聞きゃしないんだからっ!あたしが大丈夫って言ってるんだから大丈夫なのっ!」 「でも利き手使えないと不便なのは事実でしょうが」 すでにテレビを見ていたなびきは、どうでもよさそうな顔をしながらあかねに言う。 「いいのっ!」 ぷいっとなびきから顔をそらして、あかねがそういうとその話は終わったように見えて、乱馬は内心ほっとしていた。 やがてかすみが時計を見上げて、ふと思い出したように立ち上がる。 「あら、そろそろお風呂が沸いたころね。あかね、今日は疲れたでしょうから先に入りなさい」 「ありがと、お姉ちゃん」 あかねは姉の思いやりのある言葉に嬉しそうに微笑むと立ち上がった。それを一瞥したなびきが、すばやく乱馬に命令を投げつける。 「乱馬くん、出番よ」 「え゛」 「お姉ちゃん!」 あかねがなびきの台詞に反応した。 「いいじゃない。どうせお互い初めて見るカラダじゃないんだし♪」 「へ、変な言い方しないで!」 あかねは胸の前で手を掻き合わせながら乱馬を見やると、乱馬の視線とかち会う。慌てて、乱馬が憎まれ口を叩く。 「ず、寸胴女の体なんて見たってしょーもねぇけどな!」 「乱馬くん〜」 「あ?」 「今、思い出してるでしょ?」 なびきの言葉に乱馬の頭に血が上る。 (ここここの女っ…!) 「おおお思い出したところで、俺の体のほうが数倍プロポーションからなんとも思わなねぇけどなっ!」 やっとこさ、なんでもないそぶりで乱馬が言ったが最後、あかねはその言葉にかちんと来たようだった。さすがに男にプロポーション云々に言われるのは我慢がならなかったあかねは、ぎゅっと右腕に握りこぶしを固めてから、声と同時にその拳を繰り出した。 「なによっ!乱馬のっ…馬鹿ぁあ!!」 あかねのスクリューパンチをまともに食らい、乱馬は庭の池に吹っ飛んだ。盛大な水音が鳴り響き、その後、女に変わった乱馬が文句を言いながら水の中で起き上がる。 「なにすんだよっ!」 しかし乱馬のことをそっちのけで、家族はあかねの右腕に注視していた。 しぃんとした空気が通り過ぎたあと、思い出したようにあかねが右腕を見つめて言った。 「あれ…?なんで…」 「もしかして、東風先生」 かすみがおっとりとそういうと、その続きを早雲がからからと笑いながら言った。 「どうやらまんまと担がれたようだねぇ、あかね、乱馬くん」 「やるじゃん、東風先生!」 「いやまったくしてやられた!」 なびきと玄馬が楽しそうに笑う。 しかし、水を被った乱馬だけは、一人水の中で悔しそうに体を震わせていた。 (あんの野郎〜〜〜謀りやがってぇ〜〜〜!!!) 水の中から上がる気力もなく、乱馬はぶくぶくと水の中で東風を罵っていたが、ふと見上げると、あかねは自分の右腕を見つめ心底安心したように、ゆっくりと微笑を浮かべていた。 (まあ、いいか) あかねの嬉しそうな顔を見て、乱馬は一人気持ちが鎮まったような気がした。 その後日。 「虚脱解除のツボは、人の健康状態によりけりで快復が違うんだよ。一週間というのはそういう統計がでていただけで絶対ではないよ。ええ?二人を担いだなんてとんでもない。あかねちゃんはきっと日々鍛錬していたから戻りやすい体質だったんだね。…だってさ、乱馬くん」 なびきが東風の言葉まんまを伝えたが、乱馬は不機嫌そうに「もぉいいっ!」と喚いただけだった。 ■END
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