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【らんま1/2】台詞お題30より |
| ■「そんな事一言も言ってないんだけど。」⇒「そんな事一言も言った覚えないね」 |
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掲載日[2008/6/12] 練馬商店街の一角に中国人が営む本格中華の店がある。 猫飯店の味は近所でも評判で常に客が入っており、店内はいつも大忙しだった。 しかも季節柄冷やし中華をはじめたことがまた客入りに拍車をかけており、今日の店内は常にほぼ満員の状態だった。 こういう状況でミスをすると、とんでもない集中砲火を浴びせられる。それと分かっているはずなのに、猫飯店バイト生のムースはやらかしてしまったようだった。 「全部作り直しではないか!ばかもんがー!」 くるりと優雅に杖が回転したかと思うと、小さな体であるはずのコロンは軽々とムースの体を外に投げ飛ばしたのだった。 目の前のごみ集積所に突っ込んだムースの足は客の注目を浴びていたが、やがて動き出してそこから這い出ると雄たけびを上げた。 「もーいやじゃ!こんな店おらの方から出てってやるだー!!」 泣き言のような捨て台詞を吐くと、ムースは持ち前の身軽さを駆使してあっという間にどこかに言ってしまった。 「いーのか、シャンプー」 たまたまクラスメートと冷やし中華を食べにきていた乱馬が、シャンプーに訊ねるが、シャンプーは肩をすくめてすぐに仕事に戻っていった。 バイト一人が失踪して見せたからといって、追うわけにも行かない。店内に残ったのが料理人と店員ひとりずつではもうどうしようもない。 「乱馬、お前シャンプー手伝ってやれよ。しばらくここでバイトしてたこともあるだろ?」 クラスメートのひろしが忙しそうなシャンプーを不憫に思ったのか、乱馬にそう言った。言われた乱馬はむっとしたようにひろしを見ると、箸を咥えたまま言い返す。 「ばっかやろー!あれは男に戻れなくなって不死鳥丸のためにしかたなくだなぁー…」 「いっつもシャンプーちゃんにいい思いさせてもらっておいて、お前本当薄情だよなー」 逆側の大介が冷やし中華を啜りながら乱馬をちくちく攻撃する。 「いい思いなんてしてねぇ!追われて叩かれて何がいい思いだ!」 乱馬は大介に言い返すが、大介は乱馬を一瞥すると、一言言った。 「乱馬、一番遅くに食べ終わったやつが奢りって件、覚えてる?」 乱馬がはっと気づくと、ひろしも大介も目の前の皿を空にしていた。 さすがに昼時のピークを過ぎたころ、あんなバイトでもいないのは困ると判断して、コロンはムース探しにシャンプーを出かけさせた。 自転車に乗り、ついでに出前のどんぶりの回収をしようとおかもちを手にペダルをこぎ始める。ムースがとどまりそうなところなど分からないので、ただ闇雲に自転車を走らせる羽目になった。 公園に学校、商店街に、外れの空き地。 しかし、ムースは見つからない。そろそろ一度店に戻らないとコロン一人ではさすがに効率が悪いだろうと、公園の高い塔にある時計を見上げてシャンプーは一度自転車を止めた。 「まったく、一体どこほっつきあるいてるかあのバカは」 きょろきょろともう一度辺りをみまわしてみるが、ムースの姿は見当たらない。 「一度、店に戻るある」 ぎゃろん、と自転車の車輪としてはあるまじき回転数を見せて、シャンプーは公園を後にした。 その後、シャンプーが立ち止まったすぐそばの茂みがもぞもぞと動く。人が藪から這い出てくる。それはまさに今シャンプーが探していたムースの姿だった。 ムースはシャンプーが探している中、その藪の中で息を潜めていたのだった。 「シャンプーがおらを探しに来てくれただな!?ふはははっ!よぉし!おらは戻るっ!シャンプーが探してくれるくらいおらを必要としていると分かったのじゃ!待ってるだシャンプー!」 ムースは近くの木に紐の付いた武器を投げかけて枝に絡ませると、意気揚々とその紐を掴んで飛ぶように猫飯店を目指していった。 猫飯店にたどり着いたものの、どう言い訳しようかムースは入り口の前でためらった。ひとつ中の様子をうかがってみようと、ムースは気配を殺して中の様子をこっそりと覗いてみることにした。 「一体、どこいったかムースっ!」 がろんがろん、と大きなタライが床に放り投げられて、ムースはびくついた。しかし、シャンプーはまだムースには気づいていないようだった。 ムースがタライだと思ったそれは、よく見ると店で使っている大鍋だった。 見渡せば店内には客は誰一人としていない。いつも繁盛している店なのに、とムースは不思議がって入り口の札を見てみると「臨時休業」の札が下がっていた。さすがに人が足らずに今日は音を上げたというところだろうか。 「落ち着かんか、シャンプー」 「ひい婆ちゃん!ムースが帰って来ねば、私、私…」 シャンプーはがくっと床に膝を着くと、四つん這いになり体を震わせる。 ムースは感動した。シャンプーがあれほど自分を必要に思っていてくれるとは、と天にも昇るような心地だった。 「もし…ムースが帰てくれるなら、私すぐにでも故郷(くに)に帰るね…」 「シャンプー…」 困ったようなコロンの言葉を聞くのがやっとで、あまりの衝撃にムースは打ち震えた。 (こんな、こんな幸せなことがあってよいのか…!) よろめきながら店の前を立ち去る。 これまで苦節13年、好いても好いても振り向きもしなかった娘が、ようやく自分に心を開こうとしていることに最上の喜びと、同時に不安すらが込み上げた。 うつろな目をして歩くその姿があまりに不審だったのだろう、後ろから誰かが何度も呼んでいるのにムースはようやく気づいた。 「シャンプーかっ!」 「なにすんだ、この野郎!」 シャンプーだと思って抱きついたのは、憎き恋敵の早乙女乱馬だった。乱馬はすかさず足を振り上げてムースの顔面を踏み潰した。 「なにすんじゃ乱馬!」 「それはこっちの台詞だっ!いや、それより、おめー、店戻った方がいいぞ?」 バランスを崩して腰を落としてしまったムースを、乱馬はしゃがみこんでみている。後ろでは乱馬の一人目の許婚、天道あかねがこちらを不思議そうに見つめていた。 (シャンプーは村の掟では乱馬を選ぶのが決まりはずじゃ。しかし、その掟を蹴ってまでおらを選ぼうとしてしてくれた。このままでは、男がすたる!) 「早乙女乱馬!勝負じゃ!おらはシャンプーを村の恥には絶対にさせん!」 「なんのこっちゃ?」 服の袖からいくつもの暗器が飛び出してくるのを、乱馬は見越したようにジャンプしてそれを避けた。あかねも当たりそうになった暗器を素早く避けると、素早く後ろに身を引いた。 「ちょっと!ここでいきなり勝負は近所迷惑でしょ!」 「ムース!空き地に移動する!来い!」 乱馬はあかねの注意を素直に聞き入れて、先に移動し始めた。ムースも乱馬のあとを追う。あかねは一瞬猫飯店にシャンプーを呼びに行くべきか迷ったが、ムースの様子がおかしかったので一旦空き地で様子を見ることにして、二人を追った。 「ようするに、だ」 乱馬は爆弾によってほとばしる土を避けながら言った。 あかねが空き地にたどり着いたころには、二人の戦いはまさに真っ只中といったところだった。 「お前を失って気を狂わんほどさびしがったシャンプーは村の掟をそむいてでもお前と一緒に実家に帰ると決めた、と」 続けざまに出てくる武器に乱馬がひるむ。しかし辛うじてそれをかわし、そこらへんの土片を足で蹴り上げるとムースの顔をめがけて蹴りつけた。メガネに命中してメガネが落ちてしまったが、暗器の達人はメガネのスペアも充実していた。 「そうじゃ!」 びしっと新しいめがねに付け替えると、ムースはすぐさま新しい長剣を手に振りかざし、乱馬めがけて突進する。乱馬はそれを飛び上がって避けると、すぐさまその足でその剣に飛び乗りそのまま剣の上を歩いてムースの顎を蹴り飛ばした。 「うわっ!」 「で、そのまま帰らせたらシャンプーの恥になると思ったお前は、俺に勝つことで、自分たちを正当化させたいと、そういうことだな?」 乱馬は剣から飛び上がって空中で回転すると、空き地に置かれた土管の上に飛び降りた。 「その通りじゃっ!」 ムースは懐から卵のようなものを取り出すと、まとめて1ダースほど乱馬に投げつけた。卵は乱馬に届く直前で破裂した。 「ぶわっ!?」 破裂して飛び出したのは水だった。乱馬が女になってしまうのに十分な水が浴びせられたのだった。 「女になって力半減、まずは一勝じゃ!」 「ばっかやろー!女にしたぐらいでいい気になるんじゃねぇ!」 乱馬が飛び出してムースに飛びかかろうとするが、ムースがすかさず長めの武器を手にかざしたので、乱馬はすぐさま動きを止めて距離をとった。女になった体では手足が短く、長い武器が相手では攻撃が相手に届かない。頭を冷やしてよく考えないことには、乱馬は負けてしまうのだ。 「ふっふっふ。お前を倒せるならば、シャンプーのためにおらは喜んでゴミにでも卑怯者にでもなってやるわ!」 「ムースっ…!」 乱馬もあかねも、ムースの言葉には敵ながら天晴れだと思った。 ムースは棍棒のようにくるくると武器を振り回すと、乱馬に照準を合わせるように棒の先端を乱馬に向けた。 「シャンプーはおらと一緒に故郷に帰ると言ったからにはっ…!」 「私、そんな事一言も言った覚えないね」 「え?」 乱馬もあかねも、そしてムースも、あらぬところから聞こえてきた声に驚いて体が完全に一時停止する。 あかねが振り返ってみると、空き地沿いの道に自転車を止めたシャンプーがいるのを見つけて、目を見開いた。 「シャンプー…」 「どこほっつき歩いてるかと思ったら、こんなところにいたのか、ムース」 シャンプーはすたすたとあかねの横を通り過ぎると、ムースの武器を取り上げその武器でムースを一発殴ってやる。 「乱馬怪我させる許さない!」 殴られた衝撃よりもシャンプーが言った言葉の方が堪えたムースは、のっそりとシャンプーに向き直ると叫んだ。 「おらが帰るなら一緒に故郷に帰ってもいいと言わなかっただか!?」 「言うわけないね。何故お前と一緒に故郷に帰る必要あるか」 身長はムースに完全に負けているはずのシャンプーだが、ムースに向かってとる尊大な態度にその現実は完全に無視されていた。シャンプーの言葉一つで、一気に小さく体を丸めそうになるムースの背中を、あかねがばしっと叩いてやった。 「しっかりしなさいよ!」 「そうだぞムース!大体お前がしっかりしてたらだなぁー…、待てよ」 乱馬はふと何かが思い当たったようにくるりとシャンプーに向き直ると、シャンプーに確認する。 「シャンプー。お前、もともと実家に帰るつもりだったんじゃないか?」 「あいや!さすが愛人(アイレン)ね!」 シャンプーは飛び上がって乱馬の首っ玉に飛びつく。瞬間、乱馬の背中に肘鉄が食らわされる。乱馬は痛みを堪え、シャンプーに巻きつかれたまま、背後にいるあかねを見た。 「痛ぇなあかね!」 「でれでれしちゃって!シャンプーの里帰りと何が関係あるのよ!」 「乱馬も一緒に来るか?盛大に婿披露目するね!」 シャンプーがうっとりと笑みを浮かべながら、乱馬の胸にすりすりと頬ずりする。それをあかねが見て、むっとシャンプーを睨み付けてからすぐに顔を逸らした。 「だからっっ!おめーら本題思い出せよ!?シャンプーが里帰りするのに、ムースが『猫飯店に』帰ることが必要条件だったんだよ!」 言われて、シャンプーが乱馬から離れるとぽんっと手のひらを打った。 「それね!猫飯店の店番にムースが帰るなら、私は実家に帰ると言ったね!」 「でも、ずいぶんさびしそうだったって…」 あかねがムースの言葉を思い出して、シャンプーに聞いてみるがシャンプーは事も無げにあかねにこう言う。 「女傑族の大会があるので私どうしても帰りたかたね。ムースが見つからねば大会に出られないかと思うと落胆しかけた」 「それで、さびしそうに見えたってことか」 乱馬は納得がいったように腕を組むとムースを眺めた。 「とにかく、私急いでるね!ムース!」 ばっしゃ!とバケツの水をムースにぶっ掛けると、あひるになったムースを自転車の前カゴに入れた。再見!と乱馬に言うと、颯爽と立ち去っていく。 「元の鞘に納まったかな?」 乱馬はぬれた頭を絞りながら、あかねに近づくとそう言った。 「そうみたいね」 あかねも安心したように息をつく。気を取り直して乱馬を振り返った。 「帰ろう、乱馬」 「ああ」 帰ったらお姉ちゃんにお風呂沸かしてもらおうね、などとあかねが言いながら、ようやく二人は家路についたのだった。 ■END
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