All in Childhood
「ぱぱ・・まま・・」
霞んだ花畑の中、シャルロットは探す。自分の両親が、まだ傍にいた頃の夢の中で。
そう、シャルロットは夢である事を自覚していた。もう父と母は他界している事を知っていた。
それでも、夢の中でならば会う事は許されてもいいはずだ。シャルロットはそう思って必死に探していた。
「どこ?どこでちか・・」
寂しげに沈んだ声。いつもの元気な声とはうらはらに、シャルロットの声はかなりトーンダウンしていた。
「シャルロット、ちゃんと良い子にしてまちよ。悪い事なんてしてないでち。ちょっといたずらはあるでちけど・・」
シャルロットはうつろな独り言のようにそう口走りながら、花畑を見回しながら走っていた。
「けど、ちょっとしかしないでちよ。本当でち。・・だから出てきてくだしゃいでち。」
ざわざわ・・ざわざわ・・・
風が凪いで、花達を、そしてシャルロットの髪を揺らした。花達は音もなく揺れた。
「・・。」
辺りを見回してみる。花だけが視界の限り広がっている。しかしそう遠くまで続いているわけではない。視界はすぐ近くのところで霞みがかっているからだ。
「ぱ・・ぱ。」
シャルロットは懸命に辺りを見回した。けれど、そこに有るのは花達だけで、人影など自分以外に見当たらないのだ。
「ま・・まぁ・・」
とうとう、シャルロットの声がかすれて、涙声になった。会いたい人に夢でだけでも会いたいのに。それすら叶わないほど、死はその人を遠くに追いやってしまうものなのか。
声にならない喉が、しゃくり始めた。ひどく苛まれたような瞳に大きな涙が次々に生まれてくる。
「うっ、うえっ・・ひっく、うぇぇん・・。ぱぱぁ・・」
「どうしたの?」
唐突に聞いた事のある声がして、シャルロットははっと顔を上げた。女性の声だったが、知っている声よりもずいぶんと幼い声だった。
「リース・・しゃん?」
そう、ずいぶんと小さな、幼いリースがシャルロットの前に立っていた。リースはシャルロットを見ると、寂しそうな目をしてにこりと笑った。
「どうしたの?あなたもままが見つからないの?」
シャルロットは混乱状態の頭の中で、うなずくのがやっとだった。それを見たリースは、そう、と目を伏せる。
「私も、みつからないの。お母様。」
そういえば。リースの母親はまだリースが幼い頃に他界したと聞いている。シャルロットは混乱する頭を少しずつ整理しながら、そう思った。
「ほら、あの子も可愛そうなのよ。」
リースが指を差したその先には・・まるでそこは今し方霧が晴れたようになっていて、そこには紫色の髪の小さな少女が膝を抱えていた。肩を時折、震わせているのがシャルロットにも分かった。
「泣いてる・・でちか・・」
もう、言わずとも分かっていた。あれはアンジェラだ。彼女は幼少の頃から母がいたとはいえ、母は女王としての責務を果たすのに精一杯で、少しも母にはかまってもらえなかったと聞いた。
「あの子、お母様がいるのに、ちっとも遊んでもらえないんですって。可哀相ね・・」
リースが力尽きたように指差していた腕を下ろした。その背後に同じ紫の髪をした、少年がいつのまにか傍によっていた。
「俺も父さんと母さんの顔、わからないよ。育ての親がいるから寂しくはないけど。」
にっと強がって笑うその顔は今も昔も変わらない。ホークアイの幼い頃の笑う顔は、なんだか胸が痛んだ。
「俺もさ。叔母さんがいるからやっていけるんだ。」
ふっと現れたようにそう言ったのは硬い髪をした少年。ああ、それはデュランに違いあるまい。デュランの幼い顔は少し意地悪そうに見えて、シャルロットはちょっと恐くなった。
「オイラもカールいる。寂しくない。」
ゆっくりと向うからやってくるのは、ケヴィン。幼い頃のケヴィンはなんだか小さくて頼りなさそうだった。
そういえば、仲間達で両親が五体満足にいる家庭はなかったでちね・・。
今更のように気づくその事実に、シャルロットは呆然となっていた。
「でも、なんとかなるさ」
「そうそう、なんとかなるって」
デュランとホークアイが笑い合ってそういった。
リースがアンジェラの手を引いてこちらにやってくる。二人は笑い合いながら、こちらに走ってきている。アンジェラはもう泣いてはいない。
ぽんと、シャルロットの肩を叩いて肯くのはケヴィン。人懐こそうな、いつも心から安心させる微笑みを見せてくれる。
そうだ。それでも、仲間達は心優しく、強く生きている。両親はいなかったが、変わりにそこから勝ち抜く術を見つけていたからこそ、この大きな冒険に立ち向かえているのかもしれない。
「負けないでちよ。あたちだって、ぱぱとままの誇りになる娘になるでちよ!!」
意気込んで声を上げたと同時に、はっと目が覚めた。瞼が開く瞬間に、シャルロットの両親が微笑んだような気がして、あっとシャルロットは声を上げた。
ようやく気がついてみると、まだ外は真っ暗で、雨音が優しく窓を叩いていた。ひどい雨ではなさそうだった。地面を濡らす程度ならばこの暑苦しい夜を少しはましにしてくれるに違いない。
それから、シャルロットは周りを見回してみる。今回は宿賃を少しでも浮かす為に六人が六人とも雑魚寝していた。狭い部屋なので、何とかお互いがぶつからない様におとなしく眠っている。
シャルロットは一人一人の寝顔を見ていたが、みんな気持ちよさそうに眠っていた。床の状態がどうあれ、疲れが先に立って眠り込んでいるというのが正解なのかもしれない。
「ふ。ふぁぁぁ・・」
まだ外は雨が降っていたが、その雨音が優しくて眠りを誘う。蹴ってしまったタオルケットを拾うと、シャルロットはタオルケットに自分をくるんで横になった。
2,3秒と経たずに、シャルロットは寝息を立て始めていた。
雨音はしばらくの間、優しい音を弾き続けていた。
fin.
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Copyright 2000 BY SAE
時間があったら漫画にしたいけど・・無理そう〜。
聖戦前夜(デュランアンジェラ)もしたいんだけどねぇ・・。