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【聖剣伝説3】 |
| ■復興の王女[7] |
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作成日[2003/7/19] むかしむかし。魔法の国のお姫様がおりました。 大きな魔力を持っていたお姫様は毎日をしたい放題に暮しておりました。 王様がある日、そのお姫様を国から追い出してしまいました。お姫様をこらしめるためでした。 お姫様はその国の遠い離れた塔に閉じ込められました。寒い寒い塔に一人だけ。 王様に愛されてていると信じていたお姫様は、大変なげき哀しみ、やがて王様を恨むようになりました。 ―お父さまも国も・・滅びてしまえ! お姫様は強力な魔力をもっていましたから、その魔力を使って国の四方に魔法陣を張りました。そしてその中央には魔法の石を使って完全に魔法が国全体に広がるように仕掛けをしました。 いざ、その魔法をかけようとしたとき、お姫様は大事なことを忘れていました。 その国にはお姫様の大事な宝があったのです。 滅ぼしてしまうことはできない。 お姫様は思い直し、王様と国全体が困るように、ずっとずっと冬が続く魔法をかけました。 そして、お姫様の国は寒い寒い冬だけの国になってしまいました。 何年か経ったある日のこと。 お姫様の元に一人の少年がやってきました。 お姫様が大好きな少年です。 王様がようやくお姫様を許してくれたので、一緒に帰ろうと言ってくれました。 お姫様は少し考え込んでしまいます。 ―お父さまや、国にひどい魔法をかけてしまったのに、私は本当に許されるだろうか。 少年はそんなお姫様の心を知っていました。 少年は優しくお姫様を元気付けました。 ―あなたの苦しみ、悲しみは誰にわからないでしょう。あなたがそのために魔法をかけてしまった理由など、もちろんわかるはずもありません。それがわかるのは、あなただけだからです。 ―でももし、あなたがここであなたの国を助けてくれたなら、あなたはあなたの国が許すきっかけをあたえることになりませんか?希望をつくることになりませんか? ―あなたができることですよ。お姫様。あなたが、王家であるあなたが民を助けるのは当然のことですけれど。 お姫様は頷き、冬の魔法を解きました。 そして、お姫様はその大好きな少年とお城に帰っていきました。 「・・以上が、”魔女を愛した少年”のあらましです」 リースが本をぱたんと閉じながらそう言った。 リースとシャルロットとケヴィンが花畑のディオールにたどり着いたのは、アンジェラ達が光の尾を引いて飛んでいってしまった次の日だった。 アンジェラ達は夜にディオールの北の平原に倒れているのを妖精に助けられ、宿屋に運ばれた。ホークアイが介抱をしていると、やがてデュランは目を覚ました。しかし、アンジェラはひどく疲れたのか、その日の夜はこんこんとそのまま眠っていた。 そして、翌朝、リースたちがディオールにたどり着く。ホークアイにアンジェラ達の状況を聞いて、リース達は気の毒そうにまだ眠り続けるアンジェラを見ていた。 とりあえず、とリースが話し出したのが、その「おとぎ話」だったのだ。 「実は特別に持ち出し厳禁の書庫に入ることも許されたのですが・・めぼしい資料はなくて。アルテナ王家はこの件を慎重にひた隠し続けていたようですわ」 「で?この本は」 不思議そうにその本の装丁を見つめながらホークアイがそう言うと、シャルロットがはいはいっ!と手を上げながら返事をした。 「それ、あたちがいつも読んでたんでちよ。かわいいお姫様のお話だから大好きで、シャルロット、いつもヒースと読んでたんでち。今日もリースしゃんが一人調べものをしてたから、あたちは一人でこの本を読んでたんでち。なかなか見つからなくて、リースしゃんがあたちの傍に寄ってきたとき、リースしゃんがあら?っていうんでち」 リースがシャルロットから話を引き継いだ。 「おかしいでしょう?なんだか妙に惹きつけられてしまって。結局この本だけ、お借りして来てしまったんです」 本は薄く、幼児用の絵本といった装丁だった。しかし、本の著書の名前はどこにも記載されていない。 ホークアイは絵本の装丁を眺めながら、リースを安心させるようにこう言った。 「いや、これはきっとビンゴだよ。リース」 「魔法陣と魔法の石。この二つは・・アンジェラのもって帰ってきた地図と符合するはずだ」 デュランも隣で頷いている。 「でも・・」 未だ眠り続けるアンジェラを不安そうに見つめ、ケヴィンが声を上げた。 「アンジェラの話ではその魔女、お姫様かなぁ?その人、まだお城に戻ってなかったんだよね・・?」 「そうだ。この本はおそらく・・」 ホークアイが哀しげに本を見つめながら言葉を切った。デュランが腕を組みながら、ゆっくりと口を開く。 「著者の、希望だったんだな。王女を連れて帰りたかった、という・・」 「どうして帰らなかったのかしら・・」 リースが不思議そうにそう言うと、アンジェラがベッドからかすれる声を上げた。 「帰りたくても、帰れなかった・・」 「アンジェラ!」 アンジェラの部屋の外れて作戦会議に屯していた仲間たちはアンジェラの声に気付いて、アンジェラが寝ているはずのベッドを見た。アンジェラはベッドからもぞもぞと起き上がり、ほわわ、と欠伸をしていた。 「どのくらい寝てたの私・・?頭いたい・・」 「半日は寝てたぞ。大丈夫か」 ホークアイが気遣うようにそう言った。アンジェラはただの寝すぎよ、と返事をすると、ベッドから抜け出した。 「水浴びてくる・・」 アンジェラはまだ目が覚めきらない足取りで部屋を出て行った。リースが付き添おうかと立ち上がりかけたが、アンジェラは手で示しながら断った。 「いいの、平気」 アンジェラはそう言うと、部屋を出て行った。 「帰りたくても帰れなかった?どうしてかな・・」 仲間たちがアンジェラの行った後のドアを見つめていると、ケヴィンが素朴な疑問を投げかける。 「魔女は既に魔族の手に落ちていた。だから、きっと城には戻れなかったんじゃないかな」 デュランがそう言うと、リースが訝しげにデュランの顔を見つめた。 「それは・・どういうことです?」 「マラヴォアは、もはや自分の呪いは放っていなかったんだ。恨み妬む気持ちをもう持ってはいなかった。けれど発動したままの呪い。冬の寒さを放ち続ける呪い。その呪いをただ維持管理するために、マラヴォアは呪いを解くことも、死ぬことすら許されなかった。魔族の手によってな」 デュランは昨日アンジェラとマラヴォアのいる城に招かれたことを話した。マラヴォアの持ち出した駆け引きの話はデュラン自身の建前上、伏せてしまったが。 「まぁ。すでにマラヴォアとは会えたのですね。そして、生きて戻ってこられた・・」 ほうっと息を吐いて、リースはそう言った。 「願いを叶えるための、取引はなかったのか?」 鋭いホークアイがすかさず聞いてきて、デュランはうっと言葉を詰まらせた。 「ないことは、なかったけど・・たいしたことじゃなかったけど」 だんだんと声が小さくなるデュランを見て、ホークアイがにっと笑う。 「ほぉ。アンジェラのために命を投げ出すことはたいしたことではない、と」 「・・!?なんで、お前がそんなこと知って・・っ!!」 デュランが驚いて立ち上がりかけると、ホークアイがあれ?と惚けた顔をして見せた。 「マジな話だったの?俺、鎌かけただけだったんだけどな」 「この・・うすらペテン師っ!!」 「朴念仁に言われたくねーなぁ」 まぁまぁ、とリースに諭されて、デュランは腰を降ろした。 そこに、水浴びをしたアンジェラが戻ってくる。髪を拭きながら、手近な椅子に座った。 「いま、デュランに話を聞いたところですよ。魔法陣と石を破壊し、呪いからアルテナを救うのでしょう?手伝います」 リースがきっぱりとそう言ってくれて、アンジェラは安心したように微笑んだ。 「ありがとう、リース」 「それじゃ、準備して出かけるか」 早々に立ち上がり、部屋を出ようとしたデュランに、アンジェラは声をかけた。 「あのっ・・デュラン!」 デュランが立ち止まった。しかし、アンジェラの顔を見ようとはしなかった。実は目覚めたときからアンジェラも、デュランの顔を見られなかった。でも、これだけは言わなければと、アンジェラは小さな勇気を振り絞った。 「ありがとう。あの城でのこと・・」 「気にするな」 短くそう言うと、デュランは部屋を出て行った。落ち着いた足取りのように見えたが、内心駆け出して逃げていきたかったに違いない。この場では、これ以上の話をしたくなかったに違いない。恥ずかしくて。 「よかったな、アンジェラ。思い、通じたんだろ?」 まるでデュランの気持ちを汲み取るように理解していたホークアイがそう言った。アンジェラは、目を瞬き、え?とホークアイに視線を戻す。 「何?なんの、こと・・?」 「守ってもらったんだろ?命賭けて」 思わず、アンジェラは後ずさる。実際は椅子に座ったままでは後ずさることもできず、椅子がきしんだ音を立てた。4人の視線が痛くて、体に血が上るようだ。 「なんで・・デュラン、そんなことまで・・?」 デュランが自分の口から言ってしまうとは思えなかった。だから、みんなが知らないと思って、とりあえずお礼だけ言っておこうと思ったのだ。それなのに。 「ホークアイが、言わせたんですよ」 幾分、デュランを哀れに思うようにリースがそう言った。ホークアイがリースを見て、驚いたようにわざとらしくこう言った。 「えっ、そうなの?」 「そうです」 リースがちらりときつい目を見せる。余計なことをするもんじゃありません、リースの目はそう言っている。ホークアイはリースの目の意味を理解して、肩をすくめた。 「やだ、デュランに悪い事したわ・・」 慌ててアンジェラは立ち上がって、駆け出した。ばたん!と勢いよくドアが閉まる音が鳴り響いて、アンジェラの足音が遠ざかっていくのを、仲間達は少し微笑みながら聞いていた。 北の外れにある空き地。デュランとアンジェラがマラヴォアの招待を受けた場所。そこにデュランはいた。 アンジェラは息を切らしてデュランに近づくと、デュランがアンジェラに気付いて、驚いたように目を見張った。 「なにやってんだ、馬鹿。あんなに長く寝たあとすぐ走れるわけ無いだろう。怪我をするぞ」 息を切らして膝に手を当てるアンジェラを、デュランは支えるように手をかけた。 息が苦しい。 「ごめん。ごめん、なさい。私、あのときのことみんなが知ってるとは思わなくて。ごめんなさい。言うべきじゃ、なかった」 デュランの気持ちが分からない以上、思いが通じたわけではない。ただ、そんなことが問題なのではない。みんなに誤解されているのもいやだが、デュランに思い上がっていると思われる方が、怖い。 「気にするな。お前はあのときの礼をしてくれただけだろ」 デュランは、少し微笑みながらアンジェラにそう言った。その優しさにつられて、体がくず折れるようだった。アンジェラは顔を赤くしながら、自分の思いがばれてしまったことを思い出していた。 「あたしっ・・あの・・城でのこと、ごめんなさい。デュランの迷惑、考えないで・・押し付けてしまったわ・・」 弾かれたように、デュランが顔を赤らめた。けれど、アンジェラから目をそらしたりはしなかった。 「俺、多分・・何もしてやれないけど」 アンジェラから手を離し、ゆっくり歩き出す。国の領地を示す木の柵に手をかけながら、デュランは言う。 「何もしてやれないかもしれないけど、守りたいって思うから。お前を」 アンジェラは、ふと微笑んだ。何もいらないけど、それだけで十分。 「ありがとう。十分よ。勿体無いくらい」 夕日が二人を照らしている。優しい光が二人の気持ちを、ただ優しく包んでいる。 今ここにある思い。それだけは信じていて。 未来なんてどうなるかわからないけど、未来まで掴もうなんて傲慢なことはしない。 今あなたが言ってくれた事だけを素直に信じるだけで、私は幸せになれるから。 ■To Be Continued. |