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【聖剣伝説3】 |
| ■ある日の仲間たち |
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作成日[2003/11/20] 「よっ・・ほっ・・」 比較的順調な吐く息の声が続いている。アンジェラは部屋のすみで腹筋を続けている。 外は雨。順調な旅の進行も続き、あと残すところ精霊二人というというところまで来ていたのに、突然の雨に一行は足止めを食らわされた。 いつもは足止めを食らわされると、真っ先に文句を言うアンジェラは部屋でおとなしく腹筋を続けている。 そこに、部屋の戸を叩く音が響いた。 「アンジェラ?」 「ふぅっ・・なーに?」 アンジェラは声だけ返事をした。体は再び腹筋を始めている。 「風呂はいいのか?」 がちゃりとドアを開かれる。その向こうには、アンジェラの様子に目を点にしたデュランがいた。 「なにやってんだよ・・?」 「何って・・腹筋・・ほっ!」 デュランが来たことに対しても、頓着せず腹筋を続けるアンジェラは、ようやく納得できる回数に達したのか、おーわりっ!と声を上げた。 「なんだっけ?デュラン」 「いや、風呂まだだろ?主人が湯を抜くとか言ってたからさ」 「やだ、ウソ!ちゃんとデュラン止めてくれたんでしょーね!!」 アンジェラは驚くと、慌てて立ち上がる。デュランがいるのにお構いなしにバッグをひっくり返すと、お風呂セットを手に飛び出そうとする。 「あ!なにぼんやりしてんのよ!さっさと出た出た!!」 ドア口まで来て、デュランがぼんやり見ているのを見つけたアンジェラが、デュランに声をかけた。 「あ。わりぃ」 アンジェラの素早さをあっけにとられたように見ていたデュランは我に返る。アンジェラに言われるまま、部屋を出て行く。 「どうしたのよ?疲れた?」 「疲れるわけねーだろ?足止めくらってるんだからさ」 「そりゃそうなんだけどさ。あ、じゃあ、私お風呂行ってくるから、じゃね」 アンジェラはそれだけ言ってしまうと、デュランから離れるように走り去っていく。 デュランはそんなアンジェラの後姿をぼんやりと見送った。 女らしい細い体、宝石のように輝く髪。あくまで元気に、能天気に見える後姿。いつも見ているはずのその後姿に、デュランにとってふと、違和感を感じた。 外見的なものではない。違和感はアンジェラの、雰囲気から感じたものだった。 「腹筋をしようなんて・・だいたいなんで思いついたんだろうな?」 デュランはそんなことを一人ごち、自分の部屋に戻っていった。 「そりゃお前。アンジェラも美意識ってもんがあるだろうし。ダイエットとかじゃねぇか?」 部屋に戻って。ホークアイにデュランはさっきのことを報告してみると、事も無げにホークアイがそういった。ホークアイはすでに風呂に入っていたから、すでにシャツとラフなパンツを穿いている。同様に、デュランも同じような格好をしていた。 ホークアイの男とは思えないほど繊細な指先が、研磨された武器を各種挟んでいる。その指先を見つめながら、デュランは言った。 「なんだ。鍛えてるわけじゃないのか」 「どーしてそう、体育会的発想しかわかないかなぁ〜デュランは」 小ばかにしているというよりも、いくらか楽しんでいるような口調でホークアイがそういった。ホークアイの言葉はいつもそうだ。とげがあるような言葉でも、ホークアイがいうとからかいというよりも楽しんでいる、という含みのほうが前に出て、その言葉を責める気になれなくなるようなところがあった。 「しょーがねーじゃん。思考なんてそう簡単に変わるもんでもねぇしよ」 それだから、デュランはついついホークアイを責めるというよりも、自分に言い訳をするような口調になってしまう。ホークアイはそんなデュランを見て、ベッドの上であぐらをかきなおすと、デュランの方に向き直った。 その顔がやたらにやついた表情をしていることに、デュランは気づいていた。 「まぁな。で、なんでそんな拍子抜けした顔してんだ?お前」 「は?」 デュランは目をきょとんとさせて、ホークアイを見つめなおす。ホークアイが、困ったように笑っている。 「だから、なんで、そんなほっとした顔をしてるわけ?デュランは」 デュランは思わずぺたぺたと顔を自分の手のひらで触れてから、そのきょとんとした眼差しを尚ホークアイに向けたまま、不思議そうにこう言う。 「ほっと・・してるか?」 「少なくとも俺にはそう見えるがね」 ホークアイはそう言うと、今度はふんぞり返って腕を組んだ。 「ほっとしてる、か」 デュランはもう一度その言葉を繰り返した。ホークアイがデュランを覗き込むように見上げてこう言った。 「アンジェラが鍛えると、なんか困るわけ?お前」 「別に・・困りはしないけどさ・・」 歯切れの悪い声が返ってくる。デュランは自分の都合が悪くなると、すぐにこういう声を出す。 「困ることはないよな。だってお前、アンジェラの体力のなさ加減、すぐけなすし」 ホークアイの言葉は正しい。女性というだけで体力の差が格段に生まれているというだけでもデュランにとっては不思議でたまらないのだ。その事実を飲み込めず、ついアンジェラの体力のなさに嫌味を言うこともなかったわけではない。 「まぁ、そうだけどよ・・」 デュランはそれを認めてうなだれる。ホークアイがそんなデュランを、笑う。 「でも、いざアンジェラが鍛えると困るっていうのは、どういう意味なワケ?」 デュランが、ホークアイを見つめかえす。多分・・、と前置きしてから、こぼれた言葉はこうだった。 「俺たちが必要なくなるじゃねぇか?あいつ、魔法使えるし、それに体鍛えちまったら、あいつ俺たちのこと必要ねぇじゃん」 (――――俺たち、ね) ホークアイが意味ありげに笑う。 (――――ま、これくらいが精一杯かな。まだ今は) 「せっかくの、仲間だもんな」 「ああ」 デュランは心底そう思っている様子で、頷いている。 「でもなぁ・・」 ホークアイがやはりこらえ切れなかったのか、くっくっくっと笑い始めたのに、デュランが怪訝な顔をした。 「単純すぎだぞ?たかだかアンジェラが腹筋してたってだけで、俺たちが不必要になるかもなんて、飛躍しすぎ。大体あのお姫様が一人でやっていけると思うかぁ?金遣い荒いし、料理やらにもうるさいしな。地図だって読めねぇんじゃねぇの?多分」 「まあ、そりゃそうなんだけどよ」 デュランはそれを聞いて、安心したように苦笑いしていた。どうして自分がそんなことに思い至ったのかもわからない、という表情だ。 「よっぽど、デュランはあのお仲間さんが大切なんじゃねぇの?」 軽い調子にそういったホークアイの言葉に、思わず素直に頷きかけてしまいそうになって、デュランは慌てて我に返ったようにむっとした。 「・・大切なわけ・・あるか!」 「それなら、たかだか仲間が腹筋してただけで焦りなさんな」 やれやれ、という雰囲気で、再びホークアイが武器を手に取り始めた。毎夜武器の具合を見ておかないと、気がすまない男なのだ。それと、この話は終わり、という合図でもあるらしかった。 「焦ってなんかいねぇよ!」 デュランも、そのことに気づいたのか、むかっ腹を立てて部屋を出て行く。部屋を出ると、目の前の廊下の先に、アンジェラが歩いてくるところだった。 「なぁに。また喧嘩?あまりうるさくしないでよ。寝不足は肌によくないんだからね」 いきり立ったデュランの姿にはほとほと慣れているアンジェラが、なだめるようにそういった。デュランはアンジェラに鋭い一瞥をくれてやると、思わずこう怒鳴った。 「誰のせいでこうなったと思ってんだ!」 それだけ言うと、相変わらずいらいらした態度でデュランは廊下を歩いていった。おそらく、キッチンで水でももらってくるのだろう。 後に残されたアンジェラは、目をしばたたかせながら一言、こう言った。 「・・?なに?私のせいなワケ?」 部屋の中に一人残されたホークアイが、声を殺して笑っていた。 ■Fin |