YOU SAY ...
ここは、フォルセナ城・城下町。この国は、剣術の都として名高く、世に高名
な騎士達を輩出している。
俗に、「黄金の騎士」と呼ばれる騎士達が、それである。
13年ほど前に、竜帝によって世界が脅かされていた頃、英雄王リチャード
とともに戦った勇姿は黄金の騎士ロキであった。
そして、時は巡り、ロキの息子デュランは、聖剣の勇者であるアンジェラと
ともに再び蘇った竜帝にとどめを刺して、見事黄金の騎士となる。
黄金の騎士と王に任命されはしたが、デュランはいつもの傭兵暮らしとさほ
ど変わらないことをしていた。唯一、前と違うのは、デュランの傍を離れない、
娘が出てきたことだった。
「やっほう!デューラン♪」
声を聞いて、デュランは何となくため息をついた。顔を見ずとも分かる。前
の旅で一緒だった、アンジェラという、アルテナの王女だ。
「お前!?なんでそんなにちょくちょく来れんだ!?アルテナの女王だろ!?
」
デュランが振り向き様にそう言ったが、アンジェラはデュランの方にジャン
プしてデュランの首に飛びついてくる。
「・・わあっ!?」
「これがホントの首ったけ〜♪なんてね!」
アンジェラがふざけながらそういうと、デュランは焦った声で怒鳴る。
「なにやってんだ、バカ!離れろよ!」
「わかったわよ!」
つまんなそうな顔をしながら、アンジェラがデュランの首から手を離す。デ
ュランは赤くなりそうになる顔をなんとかこらえながら、アンジェラを睨む。
「お前なあ、もうちょっと王女らしくしなくていいのかよ?」
「私らしくいられればいいのよ!王女なんてなりたくてなったんじゃないもの
!」
むっとしながら言葉を返すアンジェラを見て、デュランがさすがに悪いこと
を言ったというように頭を掻いた。
「・・悪かったな、余計なこと言って」
すまなそうにそう言うデュランをみて、アンジェラがにんまりと笑った。
「許してあげる。許してあげるから、ちょっとつきあってよ。」
強引にアンジェラがデュランの腕をつかんで、デュランを城から引っぱり出
す。
「おいおいおい、オレはまだ仕事が・・」
「気にすんな!後はオレが引き受けたぜ」
後ろから楽しそうににやにやと見つめていたのは、プルーザー。前の剣術大
会で、決勝で戦ってからの、親友だった。
「お前っ・・!オレを裏切るのかっ!?」
「裏切る?何でそうなるんだ?デュラン。女の言うことは素直に聞いておかな
いと、後でろくな目にあわんぞ!」
わはは、と笑いながら、プルーザーは城の中に消えていった。
「いい人ねぇ!」
アンジェラは満足そうにそう言ったが、デュランは顔を歪ませて叫んだ。
「よくねえ!」
アンジェラがデュランを連れていったのは、城下町の外れにある広い花畑だ
った。フォルセナは温暖で花を栽培するにはもってこいの場所であったし、何よ
り、凍てついた国であるアルテナに住んでいるアンジェラには最高にお気に入り
の場所だった。
花畑には黄色や桃色や紫色、様々な色の花達が競うように咲き乱れていた。
「お前、ここ好きだなあ。」
「お前、じゃなくてアンジェラ。アンジェラでしょ?」
「はいはい、アンジェラ」
めんどくさそうにデュランはそう言うと、一つの樹木に寄りかかった。アン
ジェラはむっとしながらも、花畑に向き直って風にそよぐ花達を嬉しそうに眺め
始める。
「ここは住みやすくて、いいね。」
ふと、アンジェラがうらやむように目を細めながら言った。デュランがそん
なアンジェラに気付きながらも、しらんふりをして聞き返す。
「アルテナ、大変か。」
「ううん、・・魔法陣がもてば、問題ないはずなの。だた、いつまでもつかは
・・」
アンジェラは座り込んで、膝を抱えた。
「お母様と私の残りの魔力を総動員して、結界の魔法陣をやってるんだけど、
マナがもつかなあ・・」
「・・・」
デュランはアンジェラが小さな背中を丸くさせて膝を抱えてる姿を見て、痛
ましくてしょうがなかった。が、自分にはどうすることもできない。魔力に関し
ては、自分は無力も同然だ。
「でも、先のこと考えてもしょうがないしね。それに、そんなこと言いに来た
んじゃないのよ、私」
くすっと笑いながら、アンジェラはデュランを見上げる。
「ね、座ってよ。」
デュランは内心、こいつ何をしでかすつもりなんだ?と思っていたが、顔に
は出さずに黙って座る。
「あのね、私デュランの好きな人のことを聞きに来たんだ。」
「はあ?」
デュランはアンジェラを呆れた顔で見つめた。しかし、アンジェラは首を横
に振ると、だめだよ、と言う。
「そんな私をバカにした顔をして、誤魔化そうったってそうはいかないんだか
らね。」
アンジェラの台詞にデュランはひやりとした。
(こいつ、本気だ・・・・)
アンジェラはデュランの顔を見上げると、口を開く。
「ねえ、初恋の人なら時効だから聞いていいでしょ?デュランの初恋の人って
、どんな人だった?」
「おぼえてない。」
ふてくされたように、デュランはそっぽを向いてそう言った。アンジェラは
また、むっとした顔をしたが、それでも言葉を続ける。
「じゃあ、だいぶ前なのね?いつ頃?」
「忘れた」
アンジェラはデュランの返事を聞いて、むかむかとしてきていたが、一度深
呼吸をすると、再びその尋問を続ける。
「ねえ・・それ、女の人だった?」
「女だよ!当たり前だろ!って・・あ!」
デュランが思いっきりアンジェラの方を向き直ってしまったので、デュラン
はしまった!と手を口にやる。すかさず、アンジェラがにこっと微笑むと、デュ
ランの顔を両手でしっかと押さえつけた。焦ったデュランがもがく。
「うわ!なんだよ!これ!」
「デュランが逃げないようによ!・・・いつ頃?その人と会ったの」
「・・・」
デュランはアンジェラを睨みながら、口を閉ざしたままだった。アンジェラ
も上目遣いに睨み付ける。
「いつ頃?」
「もう、忘れたっていっただろ。」
「じゃあ、どんな人?」
ひるまずにアンジェラは質問を続ける。デュランも、むっとしながら黙り続
けていた。
限りなくロマンスの起こりそうにない格好で、二人はしばらくにらみ合ってい
た。
やがて、いきり立ったようにアンジェラがデュランに言う。
「いいじゃないの!どうせ、時効なんだから!」
「時効、じゃない・・」
デュランはそういうと、腕をアンジェラの腰に伸ばしてアンジェラの体を引
き寄せた。驚いた拍子にアンジェラはデュランに抱きすくめられてしまう。そし
て、アンジェラの耳元でデュランが一言だけ囁いた。
「お前だ」
「・・・うそっ・・」
唖然とした表情でアンジェラが言う。抱きしめたアンジェラの体が震えてい
る。
「うそなんて言うな。また言わなきゃならないのか?こんな恥ずかしいこと」
アンジェラが笑う。すぐにいつもの強気を取り戻して、デュランに言う。
「もう一回、言って?顔を見ないって約束するから」
そう言って、アンジェラは自分からデュランの体に顔を埋める。デュランは
困ったようにアンジェラの方を見ていたが、やがて諦めたようにため息をつくと
、アンジェラを抱きしめてから、意を決した声で言った。
「お前が好きだ」
「私もよ。」
ひょいっとアンジェラがデュランの顔の真下で顔を上げる。
「・・っ!?」
デュランが慌てて顔を見られる前に逃げようとしたが、アンジェラが逃がさ
なかった。デュランの顔は赤く染まっていた。
「おまっ・・!約束違うだろ!?」
デュランが顔を隠そうと片手を顔に当てながら、アンジェラに抗議する。が
、アンジェラはデュランの顔を見て笑いながら言う。
「へへへ♪デュランかーわいい♪」
そう言って、アンジェラはデュランの顔を引き寄せると、頬にキスした。
「〜〜〜っ!?」
更に混乱したデュランが魚のように口をぱくぱくさせるのを、アンジェラは
お腹を抱えて笑っていた。
FIN.
Copyright 1997 BY SAE