【聖剣伝説LOM】

■pleasure with the goodness.

掲載日[2009/07/27]












 今日もお留守番。
 私はいつものことをいつも通りこなすだけだけど。

 朝ごはんを作って、食べたらバドに皿の後片づけをさせて、私は川にお洗濯。
 この辺は川がないからちょっと遠出しなくちゃならないのが残念だけど、どうせバドと二人の洗濯ものだから大した量じゃないし、問題ない。ヴェルーニャが――ああ、えっと家主さんっていうのかしら?バドにとっては師匠なんだけど、私は弟子入りをお願いしてないのよね――居る時は、運ぶのを手伝ってくれるし、私は結構その道すがらヴェルーニャを独り占めできるから結構気に入ってる。別に便利づくめじゃなくても結構楽しいことってあるんだなって思う。
 川の水に手を浸すと心地よい冷たさに汗が引いていく。ここのところずっと暑い日が続いてる。太陽の光がまぶしくて、これなら洗濯しがいがあるというもの。私はおひさまの匂いをほのかに感じるカラッと乾いた洗濯ものが嬉しくて、ついつい頑張って大きなものを洗おうとしちゃう。

「コロナって身体が小さいのにどうしてそう大きなものを洗おうとするのよ?シーツとかは干すとき危ないから、私がいないときは洗うの禁止だからね」

 困ったように笑うヴェルーニャの顔が、ふわりと頭に浮かんだ。
 ヴェルーニャが言った言葉を思い出して、くすりと自然に顔がほころぶ。
 大事にされるのは心地よい。大好きなひとが、自分を大事にしてくれる言葉はまるで宝物みたいだ。
 顔に笑みを浮かべたままだけど、洗濯に私は精を出す。だって、嬉しいことは無理やり消すことはないと思うの。せっかく浮かんだ大事な私のイメージが、私の心の中で暖かく続くのはもっと嬉しいことだから。
「早く帰ってこないかなぁ…ヴェルーニャ」

 川から洗濯をして戻ってくると、バドったら屋根裏の窓に腰かけてた。外にいる私がそうしてるってわかるってことはもちろん足は外に向けられてるってこと。足をぷらぷらさせてみてるだけでも危なっかしい。留守番のときはヴェルーニャがいるとできないことを、バドはいつもやる。ちょっとした反抗心のつもりなのかしら。

「ちょっとバド!何やってんのよ!危ないじゃない!」
「大丈夫だって!大魔法使いのバド様が危ない目にあうわけあるかー!」
「全然関係ないじゃない!危ないものは危ないに決まってるでしょ!」
「平気平気〜!」

 …ま、本当は平気だと思うけどね、私も。つい、ヴェルーニャみたいに言いたくなっちゃう時があるのよ。多分、バドもそれを期待してるんじゃないかと思って、私はちゃんと注意してあげるのよ。
 双子ってときどきこういう「してもらいたいこと」がわかることがあるから便利よね。あ、でも、双子じゃなくても、そういえばヴェルーニャにもそれはよくあることだったわ。
 ご飯を食べてて、お塩が欲しそうだなって思ったら言う前に取ってあげることとか、あれが食べたいなーってそろそろ言いだしそうだなって思って献立を決める時とか、ふと通じることがあるのよね。ええと、魔法学校のローズマリーが言ってたあのメッセージみたいなもの?緑のぷるぷるちゃん?ううん、こういう変なのじゃないわね。じゃあミンダス遺跡の花人さんみたいな念力?これも違う気がするわね。そういう力がこもったものじゃなくて、もっと自然なものなのだけど。
 ああでも、大好きだから、って言うのが一番かも。うんうん。きっとそうね。大好きだから理解したいし、理解できると嬉しいし、そういうことが積み重なって、分かることが増えていくのね、きっと。

 私は上機嫌になって、バドと私の小さな洗濯ものを物干し場に持って行く。住み始めてすぐのころに、果樹園の裏に物干し場を作ってもらったの。家の前からそこまででも私の足じゃちょっと距離があるけど、これは仕方ないの。だって逆側はペット牧場でそれなりに匂いがあるから、そこでは干せないでしょ。だから、牧場から離れた果樹園の裏なら丁度いいの。果樹園なら生るものによってはフルーティないい香りがすることもあるし。洗濯ものがおひさまじゃない香りになることもあるのよ。それってとってもいいでしょう?
 そういえば、そのとき家の前を物干し場にしようとしたヴェルーニャには呆れちゃったなぁ。意外とそういうところが鈍いっていうか、迂闊っていうか。

「えー?だって川から家に持って帰るのだって遠いのに、ここからまた果樹園を抜けて向こうまで運ぶの面倒じゃない?」
「待ってください!お願いですからまだロープを張らないで!」
「でも、ほら、コロナ物干し場が決まる前に洗濯しちゃったら、それ、早く干さないと」
「だからっ!ここに干したらここに来るお客さんから洗濯ものが丸見えなんですよ?わかってますか!?」
「……。あ。そうか」
「あ、そうかじゃないですよ!」

 くすくす、とまた笑みが零れてしまう。ヴェルーニャのことを思うと、どうしてこう顔が勝手に笑っちゃうのかなぁ。きっと今の私は嬉しいような困ったような変な顔に違いない。
「ヴェルーニャのせいなんだからね。まったくもう」

「あら、何が私のせいなの?コロナ」

 空耳にしてはしっかり聞こえてきた。私はびっくりして振り返る。そこには私の大好きな家主さん、ヴェルーニャがにっこりと笑みを浮かべて立っていた。傍らにはいつも連れまわしているペットのラビがぴょんぴょんと跳ねてる。

「シーツは洗濯してないわね?よしよし。それ干したら一緒にシーツの洗濯しようか?コロナのことだから、こういい天気じゃ大物洗濯したくてしょうがないんでしょ!」

 太陽みたいに笑うヴェルーニャ。ああ、本当にこの人の笑顔ってなんて素敵なんだろう。やっぱり嬉しくなっちゃう。

「もー帰るなら帰るって言ってくださいよね!」
「え!どうやってよ??あ!こら!バド!またそんなところ腰かけて!危ないから降りなさい!」
「げ!ヴェルーニャ!あははは!お早いお帰りで〜!」
「笑ってごまかしてもだめよ!すぐに降りなさい!」
「わ、わかったよーもう…」

 ぶつくさ言いながらも、バドは嬉しいのだろう。すぐに窓から出ていた足を引っ込めて、ばたばたと階段の降りる音が聞こえてくる。きっとヴェルーニャに「おかえり」を言いたくてしょうがないのだ。
 しかたない、バドを立てて私も待っててあげましょう。
 どたどたとせわしない音がしたあと、暖炉の家の入口のドアが勢い良く開くと、転ぶように出てきたバドが声をあげてしまった。

「おかえりヴェルーニャ!」
「あ!ちょっと!せっかく待っててあげたのに、先に言っちゃうの!?」
「なんだよ、コロナ。まだ言ってなかったお前が悪いんだろ」
「なんですって!」

 洗濯かごを持ってるせいでバドに手を出すことができずに苛々してると、ヴェルーニャが笑う。ふわりと私たち二人を抱きしめて嬉しそうに頬ずりをしてくる。私たちの大事な大事な、大好きなひと。

「あははっ!やだなぁ〜バドにコロナったら。後でも先でも関係ないよ?ただいまっ!」

 ヴェルーニャのその一声で、私たち双子は声をそろえて言うことができた。

「「おかえりっ!ヴェルーニャ!」」




Being possible to meet you is my pleasure with the goodness.
―あなたと出会えたことが私の最良の喜びです。




Fin.

■聖剣伝説LOM10周年お祝い企画に慌てて書き上げたSS。

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