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【聖剣伝説LOM】 |
| ■My Favorite Home |
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作成日[2003/10/13] 空には綿菓子のような浮雲がひとつふたつ浮かんでいる。とびっきりの快晴。 「いーい天気!」 ヴェルーニャは浮かれたように声を上げた。巨木の下に佇む小さな家に、娘と、二人の孤児(みなしご)が住んでいた。コロナが既にキッチンで朝ご飯を作ってくれているのか、煙突からはもくもくと煙が吐かれている。煙は揺らめくように天に導かれていく。 空へ。 思わず空を凝視して、ヴェルーニャは窓枠に頬杖をついた。空の彼方に浮かぶのは愛しいもう一人の自分。同じ色、同じ形の魂をもつ、あちらの世界の、自分。 「リューシス・・」 「まぁ〜たノロケかっ!」 げしっとヴェルーニャの背中にとび蹴りが炸裂した。せっかくオトメチックに自分を飾ろうとしても、マナの女神はヴェルーニャをそんな環境にはおいてくれるつもりはないらしい。 「いったぁい!なにすんのよバドッ!」 振り返ると、予想に違(たが)わず、ヴェルーニャを師匠と崇めるはずのバドが、ふんっと鼻息荒く腕を組み仁王立ちをしている。とても崇めているようには見えない。 「バド・・・・私を師匠呼ばわりするんだったらそれなりの態度をみせてくれる?」 蹴られた背中をなんとかさすりながら、ヴェルーニャはバドに抗議する。しかし、バドの方は反省の色を微塵も見せることもなく、踵を返した。 「そろそろメシだから早く下りて来いよッ!」 不機嫌になってしまったバドがどすどすと音を立てながら階段を下りていく。バドの言葉に、ヴェルーニャはうん、と頷くと、ベッドから抜け出して服を着替え始めた。 着替えて階下に下りると、香ばしい朝の香りがヴェルーニャの鼻をくすぐった。 「おはようございます、ヴェルーニャ」 家事全般を完璧にこなすコロナは、テーブルにランチョンマットを敷きながらヴェルーニャに挨拶をした。 「おはよう、コロナ。いい香りね」 「昨日裏山でおいしそうな山菜ときのこが採れたんです。味付けしてソテーにしてあるからその香りでしょう」 「わー、楽しみ!」 うきうきと声を弾ませて、ヴェルーニャはいつもの席に座った。ななめ向かいに既に座っていたバドは一瞬ヴェルーニャと目が合うと、ふんっと勢いよく顔をそらした。 「もーう。バドったら。リューシスのことそんなに嫌わなくてもいいのに」 「リューシスは嫌いじゃない。リューシスのことを考えてるときのヴェルーニャの顔が嫌いなんだよっ。へにゃへにゃのふにゃふにゃになってるからな」 べっと舌を出してバドがそう言うと、ヴェルーニャが驚いて身を引いた。 「うそっ!」 「うそなもんか。ヴェルーニャは一度鏡でちゃぁんと見てみるといいんだ。へにゃへにゃの顔になってるからなっ」 意地悪くきひひ、と笑うバド。そんなバドの後頭部を食器を運び終えたコロナがばしんっとはたいてやった。 「いってぇ、なんだよコロナっ!」 「好きな人のこと考えてるときくらい、ヴェルーニャを自由にしてあげなさいよっ!心の狭い男はモテないわよっ!!」 むうっと顔を膨れさせると、バドは負けじと声を張り上げた。 「未来の大魔法使いに向かって何すんだっ!大魔法使いがモテないはずあるかぁぁぁっ!!」 「意味わかんないわよ!この馬鹿バドっ!」 「なんだとっ!」 あわや双子の姉弟の大戦争になるところを、ヴェルーニャがひょいと二人を摘み上げる。 「ハイそこまで。今日はドミナの町に買出しに行く日でしょ。とっとと食べないと品物がなくなっちゃうわよ。バドは魔法に使う石と、コロナは本を買うんでしょ?」 「買ってくれるのか?!」 「買ってくれるの!?」 喧嘩の最中だったこともすっかり忘れて、二人は双子であることを証明するように同時に声をあげた。そんな二人に、ヴェルーニャは笑う。 「いい子にしてなきゃだめよ。この前みたいにバドはほかのお友達に喧嘩を吹っかけないこと。あとコロナは帰るまで本を開かないこと。はぐれて大変だったんだから」 「ごめんなさい・・」 素直に謝るコロナとは対照的に、バドはうれしそうに顔を上気させてにまにまと笑っている。 「よぉし、この前の石はうまくいかなかったけど、今度はもっとうまくいきそうなかっこいいやつにするんだ!」 その言葉に、コロナとヴェルーニャがぴく、と反応する。 「・・バド?この前買った石、ちゃんと魔法力引き出せなかったの?」 ヴェルーニャがそう言うと、バドはしまった、という顔をする。 「い、いや、あれさ。俺と相性悪いっていうか、なんていうかさ」 ふうっと息をついて、コロナがじと目で見つめる。 「で、結論。うまく抽出できなかったんでしょ」 うっと詰まったバドが恨めしそうにコロナを見つめる。コロナはつーんと鼻を逸らすとバドに追い討ちをかけるようにこう言ってやる。 「私はこの前買ってもらった『光の古代遺跡の謎』ってやつ、読み終わったもーん」 「ちっくしょー・・」 バドが悔しそうに服を握り締めている。もう新しい魔法の石を買ってもらえないのではないかと思い、ヴェルーニャの顔を見上げている。さっきまでの威勢のいい顔はどこへやら、涙と鼻水が流れそうな顔をして。 そんなバドを見てはぁっ、とヴェルーニャは息をついた。 「仕方ないなぁ。バド、その前買ってあげた石、一応持ってきなさい。確かに人との相性もあるでしょうから、話せば石売りのおじさんが引き取ってくれるかもしれないわ」 「えっ、じゃあやっぱり新しい石は買ってもいいの??」 ぱっとうれしそうな顔を見せると、バドははしゃいだ声をあげた。 「今度はちゃんと、自分のレベルにあった奴探すのよ」 いい?とヴェルーニャが念を押すと、バドはうんっと嬉しそうに笑う。バドのそんな可愛い笑顔が、ヴェルーニャは大好きだった。憎たらしい言動も何もかも許せてしまう、天使のような微笑み。 「甘やかしすぎですよ。ヴェルーニャ」 あきれたように声をあげるコロナに、ヴェルーニャは振り返るとにっこりと笑う。 「うん、私甘いのよね。バドにもコロナにも。だって二人とも、私の大事な家族だから。幸せに笑っていてほしいから。だからどうしたって甘くなっちゃうのよ」 そんなことを照れずに言うヴェルーニャに、コロナのほうが赤くなってしまう。甘やかされることも大事に思われることも、ここは心地がよい。照れて赤くなりつつも、コロナはヴェルーニャに抱きついた。 「それなら、私はあなたのために幸せに笑いますよ。だって私はここではいつも幸せですから」 「俺も」 おずおずと、バドもヴェルーニャに抱きつく。 ヴェルーニャは二人を包み込むように抱きしめた。 「だったら私もいつも幸せなんだわ」 暖かいぬくもり。血のつながりも何もなかったけど、今では毎日の生活に欠かせないお互いの存在。 幸せに毎日を生きるって、意外と簡単。 ほら、あなたにもすぐそばにぬくもりがあるよ。
Fin.
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