【スパイラル〜推理の絆〜】

■1. 目覚まし時計3個とケータイのアラーム

掲載日[2008/9/17]













 音という音が盛大に鳴り響いているというのに、どうやらその音たちは今日も無駄骨になるらしかった。
 鳴海歩は朝食の支度をしながら、しばらく放置してみるという忍耐ゲームを毎日試みるのだが、如何せんあまりにも騒々しい音なのでいつも歩のほうが根負けしてしまう。
 しかし、こういつもいつも歩がその音たちの役割を奪ってしまうのも忍びない。というか、いい加減、ひとりで起きるという人並みの能力を身につけて欲しい、と心から思うのだ。いい大人なのだから。
 だから今日も鳴海歩は音をなるべく気にしないように、しかし音の騒がしさにいらいらする自分を何とかなだめながら、彼女が起きるのを待ち続ける。

 今日はパンが切れていたので和食にしようと昨日から決めていた。オクラを軽く茹でて食べやすい大きさに切り、納豆と梅肉と一緒に和える。手軽な一品が器用な歩の手によって手際よく出来上がる。
 味噌汁は出汁で短冊切りにした大根をさっと茹で、味噌を溶いてからなめ茸を落とす。なめ茸は生でも食べられる食品だから煮立たせると汁がにごって食管も悪くなるので、荒熱で暖めるくらいでちょうどいい。
 あとは冷奴とほうれん草のおひたしだ。これも難しいことはない。ほうれん草の湯で時間さえ気にしていればいい。味噌汁の出汁をとるのと同時にほうれん草を茹でておいたので、うまい具合に冷めていた。布巾で絞って色合い鮮やかなほうれん草を盛りつける。
 赤色が足りない、と思い、歩はおもむろに下の戸棚からツボらしきものを引っ張り出した。どうやら自家製の梅干らしかった。小鉢に幾つかを移し、テーブルの中央においておく。
 ひと段落して、まだ耳につく音が鳴り響いていることに気づいてしまった。
 もうそろそろ起きてくれなくては、歩も学校に遅れてしまう。

「ねーさん、いい加減に起きてくれ!」
「あーー〜〜〜〜あと3ぷん〜〜〜」

 これで警視庁の警部補だというのだから、世の中何か間違っている。鳴海歩の義姉にあたる鳴海まどかは、世界一寝起きが悪いと言っても過言ではない、と鳴海歩はひそかに、しかし心の中では声を大にしてそう思う。
 なにしろデジタル時計の電子音と、いかにも目覚まし時計というけたたましい連続音と、携帯のアラームが高々と鳴り響いているのである。
「遅れてもしらねーぞ!」
 部屋に入ってまで叩き起こす気にもならず、そこからすたすたと台所に戻りながら、姉さんの次の誕生日も目覚まし時計にしよう、と固く誓う歩なのだった。






■END



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■新しいお題を開始してみる。
スパイラルで日常を探る。久しぶりだからね、スパイラル書くの。
もちろん、鳴海兄との対決前までの平穏無事(?)な日常を。