【うる星やつら】

■星めぐりの風、到来

掲載日[2008/1/16]








 正月を早くも2週間が過ぎていた。ただただだらだらとした一週間の正月休みはあっという間に時が過ぎていった。あたるは正月の生活に慣れきった鈍った体のせいかガールハントに勢いがなく、今年に入ってからの個人的落雷数は一日の平均的な回数よりも下回っている。寒い日が続くとあたるはコタツに丸くなっていることが多いので、おそらくそれが大きな要因だといえるだろう。
 また、同居人のラムは里帰りもすることなくラムは正月も諸星家で過ごし、その後もいつも通りあたるとともに登下校をする日々を送っていた。
 そんなある日の下校中、ラムはあたるの腕を抱きしめて浮かんでいると、ふと、あっと声を上げた。
「なんだよ?」
 あたるは立ち止まりもせず、がに股歩きをしながらラムを見た。
「うち、そういえばずいぶん宇宙船に戻ってないんだっちゃ」
「宇宙船?」
「だっちゃ」
 ラムの鬼族の宇宙船は非常にわかりやすいものだった。ラムが着ているビキニと同じ虎柄に塗装された楕円形の円盤だ。ラムは諸星家に居候しているので住まいとしても機能するその宇宙船は必要ないのだが、通信機器やその他大掛かりで高い技術を結集した機材(しかし大概はその技術が友引町をひっくり返すような大騒ぎの元になる)などは宇宙船に置いたままになっているので、ラムは時々宇宙船に戻るのだった。宇宙船自体は友引町のはるか上空で自動運転により停滞しているため、ラム自身が往復するのにはそれほど時間はかからない。
「ダーリンも最近大人しいみたいだし、うちちょっと宇宙船の通信機に何か連絡が入ってないか確認してくるっちゃね!」
 そういうとラムはあたるの腕からするりと手を離して、そのまま3メートルくらい上がった。ラムは空中を浮遊することができる種族なのだ。あたるはようやくそこで立ち止まってラムを見上げると、ふんぞり返って顔をしかめた。
「なんじゃい、人を子供みたいに」
「夕飯までには帰るっちゃよ〜!」
 ラムはあたるに手を振ると、まるで空を泳ぐように滑らかに上空へと昇っていった。あたるはつまらなそうにふん、と鼻息を漏らすと、気を取り直して歩き出す。ちょうどラムがいないならばガールハントに精を出したい気もしたが、あいにく小遣いが底をついて買い食いもしておらず空腹だった。あたるはますますつまらなそうに、足元の石ころを蹴りつけた。
 
 ラムは言葉通り諸星家の夕食の時間には帰ってきた。ラムにしては珍しくがっつくあたると同じくらいの速度で食事をし終わると、あたるの腕を引っ張るようにあたるの部屋へ向かった。
 どうやら宇宙船に戻って何かあったに違いない。あたるはそんなことをぼんやり思いながら、どちらにしても食事のあとは自分の部屋に行く習慣になっているので、ラムに腕をとられるまま自室に向かった。
「あー食った食った」
 あたるは部屋に戻るとすぐさまクッションを引き寄せて横になると、その辺にあった漫画を手に取った。
「ダーリン!食べた後すぐ横になると牛になるっちゃよ!」
「ほー。お前もずいぶん地球人じみてきたのー」
 あたるは言いながらも聞く耳は持たないようで、そのまま漫画に目を走らせ始めた。
「ダーリン、今日はいい話を持って来たっちゃよ!」
「お前のいい話はろくな話にならん」
「さっき宇宙船に戻って通信機や自動演算記録をチェックしてきて、すごいことがわかったんだっちゃ」
「ほーそりゃすごい」
 あたるの口はすでに抑揚もなく、ただ言葉だけ舌に乗せたような声だったが、ラムはむっとしながらも話を続けた。
「星めぐりの風が今回はこの近くまで来るんだっちゃ。星めぐりの風っていうのは宇宙空間を走り抜ける神聖な風でその風を起こしている神様が近づいている証拠なんだっちゃ。つまり風神様だっちゃね」
 そこまでで話を切ってラムはあたるの様子を伺うと、あたるは口を開いた。
「風邪薬に載ってるやつか」
「違うっちゃ!うちが言ってるのは、宇宙風(うちゅうかぜ)の神様だっちゃ」
「宇宙風?」
 そこでようやくあたるは起き上がった。漫画を閉じて横に置く。
「一見空気がなくて風がなさそうな宇宙にも、実際は風が吹いてるんだっちゃ。宇宙風の神様は気まぐれな神様だから、なかなか姿を現すことがなくて、しかも神出鬼没だっちゃ」
「そら神様だからな」
 あたるは神様など元来信じない性格ではあるが、ラムが現れてからというもの得体の知れない生物にはごまんと会っている。いまさら神様が現れても、そうそう不思議ではないというものだ。あたるはあきれながらもラムに話をあわせたのだった。
「その風神様の神出鬼没の場所を解析して風神様にお告げをもらうとこの一年が幸せに暮らせるんだっちゃ」
「けちな神様じゃ。そんなにたいそうなありがたい神様なら一生幸せにしてくれ」
 はき捨てるようにあたるはそういうと、その辺に会った菓子皿を引き寄せ、ばりばり、と煎餅をほお張る。食事を終えた後でもあたるにはそんなことは関係ないようだった。
「当面のうちらの幸せを確保しておくに越したことはないっちゃよ!さ、いくっちゃ!」
 ラムはそこまで言うと今度は立ち上がってあたるの腕を取った。あたるは面食らったように目を見開いて、自分を引っ張るラムの顔を見上げた。
「なに?今から行くのか!?」
「うちの解析ソフトの演算結果が今日この友引町を指していたんだっちゃ。ぐずぐずしてられないっちゃ!すぐによその星からもライバルがやってくるっちゃよ!」
「ばかばかしい、俺は行かんぞ!」
 あたるはぐいと自分の腕を引き戻すと、ラムの手から自分の腕を解放させた。
「ダーリン!」
「地上でもこのくそ寒さには辟易しとるというのに、寒空で腹の緩みきった神様を待つなんぞどうかしとるわ!俺は絶対にいかん!」
 つんと頭をそらして胡坐と腕を組むあたるは、どこから見てもあたるの頑固さを表現していた。しかし、その頑固が意外と脆く崩しやすいことも、またその方法もラムは知っていた。できればこのことは言いたくなかったのだが仕方ない。
「だから、腹の緩みきった神様って誰だっちゃ?」
「違うのか?」
 気がそがれたようにあたるはもう一度ラムを見上げる。ラムはため息をこらえてあたるの手をもう一度取ると、こういった。
「だから、それは地球の風神様だっちゃ。宇宙風の神様は女神だっちゃよ」
「わかった、ラム。みなまで言うな、お前がそこまで行きたいというのなら俺も付き合ってやらんでもない」
 今まで駄々をこねていたのはどこの誰だったか。あたるは今までのそんな表情を微塵も見せずにすっくと立ち上がった。ラムは思ったとおりではあったが、あまりにすんなりと行き過ぎてこれでは逆に腹が立った。
「〜〜〜っ!んもう!」
「ふて腐れとる暇はない!さっさと行くぞ!」
 あたるの方はさっさと身支度をしている。これまでのだらだらした態度も、ふて腐れた不機嫌な顔も一変してしまい、りりしい顔でてきぱきと出かける準備をしている姿に、ラムは半ば悔しくなって叫んだ。
「ダーリンのぉ〜…馬鹿っ!」

 あたるを連れて上空のポイントにたどり着くと、得体の知れない連中がたくさんいた。手が2本以上のもの、足が2本以上のもの、皮膚が硬そうなのやぬるっとしたの、他にも目が極端に離れているのだとか、それはもう全宇宙からのエイリアン見本市のような有様だった。
 あたるはある程度この状況を予想していたものの、その光景にはげっそりした。しかしすぐに気を取り直して目端を利かせて、探し始める。美女は隠れてこそ花。もちろん飛べないあたるはラムに支えてもらっているというのに、違う女を捜していた。失礼極まりない男である。
「おーい、ラム!」
「ラム、やっぱりいたのね」
 弁天の真っ赤なバイク(飛行機能搭載)の後ろにユキがちょこんと座って、ラムの前に流れ込むように現れた。
「弁天!おユキちゃん!久しぶりだっちゃ!」
「お前も暇だよなぁ。言ってるあたしもだけどさ」
 弁天がひひ、と笑い、ラムもそれに笑った。
「一年分の景品っていうのは惹かれるよな、どうしても」
「一年間の幸せ、ではなかったかしら」
「どっちでも同じだよ」
「そうかしら」
 ユキはそういうと、大人しく口を控えた。ユキはいつも余計な言葉は発しない。
 そこに調子はずれな男の声がこだました。
「弁天さま〜おユキさん!嬉しいな〜僕に愛に来てくれるなんてっ」
 あたるは早速ラムから弁天の方に飛び上がる。ここを上空五千キロ以上にもなる場所だということを完全に忘れた行動である。
 しかしこちらも上空というハンデを慮るほど甘くはない。容赦なく親友の名目上の夫に蹴りを入れた。
 弁天の膝があたるの腹にクリーンヒットする。ぐえっと蛙がつぶされたような声が吐き出された。
「しかしお前のダーリンは変わりねぇな〜」
「ダーリン!」
 しかしあたるは打撃を受けたもののしっかりと弁天の足にすりすりと擦り寄っていた。弁天が鳥肌を立てて、もう一度足を振り回しあたるを蹴り上げる。しぽーん、と抜けたように飛び上がったあたるが、今度は降下時に位置調整しておユキを狙って落下した。
「おユキさ〜ん、会えて嬉しいよ〜!」
「ま、危ないですよ」
 ふ、とおユキが息を吹きかけと、あたるはみるみるうちに凍っていく。凍ったあたるを即座に拾い上げて弁天がほらよっとラムに戻した。待ち構えていたラムが電撃で氷を溶かしつつ、お仕置きをする。
「ダーリン!うちは情けないっちゃ!情けないっちゃ!」
「相変わらずねえ、ラム」
 無表情な目で口元だけほころばせたユキが、ラムとあたるのお仕置きを眺めながら言った。
 しかし二人の騒ぎをよそに、あたりの空気が変わっていったことに弁天は気づいていた。潮騒が引くように雑談する声が消えていく。あたりに緊張感が漂い始めていた。
「そろそろ時間だな」
 弁天は腕につけた発信機レーダーのようなものを見て言った。ユキは雲の上にぎっしりと集まってきた異世界のようなエイリアンパーティを黙して見つめていた。
「きたぞ!風が現れた!」
 どこからともなく、誰かがそう叫んだ。ぴっぴっという電子音がそこここで鳴り響く。やはりみんな発信機のようなものを装着しているのだ。そして、ラムも例外ではない。胸から取り出した懐中時計のような形のレーダーを見ている。
 あたるだけは違うものを見ていた。弁天とユキ以外に美女はいないか。ただそれだけのために、自分の目というレーダーで何かを見つけようとしていた。
 レーダーで位置を確認してからでは、その場所に目を移すだけでもロスになる。あたるの目は下手なレーダーよりも高性能だった。もっとも、その対象は女性に限られるのだが、今回に限ってそれはかなり有効な手段だった。
 レーダーで次元のゆがみを見つけたのはほとんどその場にいたものは同時だった。しかしレーダーを見てからその位置座標を確認したころには、あたるはその場にたどり着いているという状態だった。しかし、あたるに空飛ぶ能力はない。そのままラムの体から飛び上がるように、今は何もないその座標に目掛けて落ちていくところだった。
「ダーリン!」「あの馬鹿!」「まぁ大変」
 ラムがあたるを助けようとそちらに方向転換し、弁天がバイクを同じく回転させ、ユキが氷を吹雪かせようとしたときには、なんと勝負がついていた。
「お姉さま〜!住所と電話番号教えて〜!」
「なんじゃ!何者じゃお前はーー!!」
 そこには天女のような姿をした美女の尻にしっかりとしがみついたあたるの姿があった。
「ダーリン!」
 当然、いきり立ったラムがすぐにあたるを女からひっぺがし電撃まみれをお見舞いする。断末魔のような叫びを上げるあたるを、誰も助けようともしない。
「お、おい、まさかお前が…」
 せっかく捕まえた当の本人が電撃に耐えるのに忙しいので、代理で弁天がその女に話しかけた。女は弁天に振り返ると、髪を払い、服を直し、ゆっくりと小首をかしげて微笑んでみせた。
「私が宇宙風の神じゃ」

 一瞬にして勝負がついたので、人々、もといエーリアンたちはしらけたように自分の故郷に帰っていった。弁天、ユキも今回は長居する予定はなかったらしく、早々に退散した。
 そして、そこには当事者のみが残っていた。
 ラムと、あたると、そして宇宙風の神。
「私を捕まえられたのはそなたが始めてじゃ。捕らえた場所はともかく」
 女神は警戒するようにあたるから身を引いて話し始めた。しかしあたるの方は全く気にしておらず、頭の後ろを掻きながらへらへらと笑う有様である。
「いやぁ、そんなに褒められると照れるなぁ」
「褒めておらぬ!…まぁよい。そなたの住処を聞こう」
「住処?」
 あたるはおうむ返しに聞き返した。ラムがあたるに耳打ちする。
「住所を聞いてるっちゃ」
「なに!?…くっ。俺にはすでに運が向いてきたようだな。女性の住所を聞こうとしたことは数多ほどあれど、これほどの美女、しかも神様に住所を聞かれるなんて…行きましょう!」
 あたるはそっと女神の手をとるとそういった。
「なんじゃ!?」
 女神はあわててその手を引こうとするが、すでにあたるは女神の手をしっかと握り締めていた。あたる女に対する行動の速さについては、ほぼ目視できる世界を超えている。
「住所などまどろっこしいことをせずとも僕がご案内します!」
「アホか!」
 ばしーん、と激しい音があたるの脳天に響いた。女神とラムがあたるを後頭部から張り倒したのだった。
「誰がそなたの家になぞ用があると言うた!大まかな場所がわかればよい!」
「なーんだ、それならここですよ。ここが俺の住む友引町」
 一気にやる気を失って、だらけた調子であたるはそう言った。
「ふむ。そうじゃったか。それではこの町に今日の夜は格別よい風が吹くようにしてやろう」
 慎ましやかに笑って女神がそういうと、あたるとラムは勢い余って二人で女神の腕をつかんだ。
「風?風だけだっちゃ?幸せをくれるはずだっちゃよ!!」
「おねーさまー」
「風を司る神ができるのは風をそよがせることだけじゃ。何を言っておる」
「そんな!こんなの詐欺だっちゃ!」
「そんなことどうでもいいから僕とお茶しよーよー」
「一年の幸せを約束されるんじゃなかったのけ!?」
「一年の幸せ?私は知らんが…」
「おねーさまったらー」
「えーい。うっとうしいっ!」「ダーリン!」
 女神に大槌でどつかれ、その後ラムの電撃攻撃を浴びて焦げたあたるは、ぱったりと女神の雲の上に倒れた。女神は特殊加工の雲の上に立っていたのだった。その雲はあたるにも乗れるようだった。
「しかしどうしてそのような尾ひれのついた噂が…」
 女神は少し思いつめたように考え始めたが、思いついたのかラムの顔を見て頷いて見せた。
「ははぁ、なるほど。そなた、今日は夜空を眺めておるとよいぞ」
 女神はやっとまた笑顔を取り戻して、ラムにそう薦めた。
「夜空を?」
「うむ。きっとよいことがある」
「本当け?」
「本当じゃ」
「よかったっちゃ〜〜!それじゃダーリン!もう今日は帰るっちゃよ!」
 ぐいとラムはあたるの両腕をつかむと女神の雲から足を浮かせた。
「おねーさまぁ〜〜〜!!」
「往生際が悪いっちゃ〜〜〜!!」
 再び電撃攻撃がびびびと響いて、あたるはがっくりとうなだれる。しかしあたるはこれくらいのことで死んだりしないことは、ラムも先刻承知のことである。常に電撃を体に浴びて鳴らされてしまったのか、もともと体が怪物並みに強かったのか、今となってはわからないことだが、そうこう考えているうちにあたるは復活してしまった。
「離せ!離せラム!」
「もー帰るときぐらい大人しくしてるっちゃ!」

「それでくそ真面目に屋根で番を張ろうって言う話か?この寒いのに…」
「しっかりコタツに入っておきながらぶつくさ言うんじゃないっちゃ!」
 こたつ猫は何も言わずにコタツでぬくぬくとしている。さきほど空より戻ったあたるとラムは、なぜか屋根でお茶を飲んでいたこたつ猫のコタツにありがたくお邪魔していた。女神が言う「夜空を見ていればいいことがある」ということをラムはどうしても確かめたかったのだ。
「だいたい何が幸せか分かったもんじゃない。個人的な幸せはたいがい別の人間を不幸にするもんだ。俺がハーレムを望めばお前は腹を立てるだろう」
「当たり前だっちゃ」
「そういうことだ。幸せとはそれほど人と分かち合えるものではないのだよ、ラム」
 悟りを開いたかのように真面目腐って頷きながらあたるは、夢も希望もないことを言う。ラムはそんなあたるにつんと顔をそらして膨れた。
「うちはそんなの信じないっちゃ。うちはいつだってダーリンと一緒に幸せになれるって信じてるっちゃ」
 ふて腐れた右側に座るラムの顔は当然あたるから逸らされていた。あたるの左側にはこたつ猫が幸せそうにこたつのテーブルに頭を載せている。
「お前はこたつがあればいいんだよな」
 あたるはこたつ猫に声をかけるとこたつ猫は珍しく目を細めてそれに答えた。
「うちも、ダーリンがいてくれればいいっちゃよ」
 虚を突かれての逆からの攻撃に、あたるはまったく無防備だった。一瞬びっくりしてラムの方を向くと、いつの間にか嬉しそうに笑うラムの顔にぶち当たる。うかつにも鼓動が早くなりそうになるのを、ラムを胡散臭そうに見てやることであたるは自分のペースを取り戻した。
「嘘つけ。ちょっと別の子みとるだけでぎゃーぎゃー言うくせに」
「ダーリンはちょっと見てると思ったらすぐ言わないと、いつのまにかいなくなるんだっちゃ!せっかくうちとデートしてもいっつもいっつも!」
「お前がギャーギャーと騒ぐから俺もほかの女の子がみたくなるんじゃい!」
「ぜんぜん意味が通らないっちゃ!ダーリンがよそ見しなかったらうちこんなに言わないのに!」
「だからお前がギャーギャー言うのをやめてみろと言っておろーが!」
「ずるいっちゃダーリン!そうなったら一気にもうダーリン他の女に飛んでいくに決まってるっちゃ!」
「蝶よ花よとな」
「っっんも〜〜〜〜!!」
 二人の喧嘩が過熱するのにまったくの無関心を通していたこたつ猫が、ふと二人の前で手をすっと延ばした。二人はこたつ猫のしぐさに気づいて口を閉ざすと、こたつ猫が手を伸べた方を見た。空があった。
 しかしそれはいつもの夜空ではなかった。
 恐ろしいほどの空気の透明度が上がった空は、いつもよりも倍の、いやそれ以上の星が空いっぱいに広がっていた。宇宙風の神は本当に格別の風をこの友引町に送ってくれたのだ。
「…!」
「きれいだっちゃ…」
 吸い込む空気も冷たくておいしいことに気づく。諍いをしていた二人は急に黙り込んで、一心に洗い立ての空に見入った。
 まるで今まで見えていた空の先までが見えるようになったかのようだった。いくつもの流星が流れていく。この数は普段ならばありえない。これだったらどれかの流れ星が願いをかなえてくれそうな気さえしてくる。
「ダーリンと、いつも一緒にいられますように…」
 流れ星が3つも連続して流れた瞬間、ラムはそう口にしていた。たぶん、口にしていたことにも本人は気づいていなかったのだろう。それほどまでに美しい星空だったので、そうなるのも無理はなかった。
 一方、無意識のラムの声に気づいたあたるは、星空から視線を移しラムの顔を眺めた。まるで気が抜けたように呆然と夜空を見つめるラムの顔を見て、知らずあたるは口もとをほころばせた。こたつの中で暖めていた手を、そっと延ばす。
 ぴくりと反応したラムがあたるの方を振り返った。
 あたるはといえば、まるでそしらぬ表情だ。
 ラムは可笑しそうに微笑んでから、自分の手に触れられたあたるの手を求めるように握り締めた。お互いの熱がお互いの手を温めあう。暖かく鼓動する命の奔流が幸せを体じゅうにめぐらせる。それだけで二人は自分の幸せを信じられた。
 まぶしいほどの星の海の下、二人は屋根の上のこたつに丸まって体を温めた。ラムが握り締めた手をそのままに、あたるに問いかける。
「ダーリン、今、しあわせだっちゃ?」
 微笑みと一緒に問われたあたるは、ちらりとラムを見てから、また空を見上げた。
「まぁな」
 
 

END

書いてる側はあたるに萌えてました!
そうかーあたるって理解してみるとラブラブなのねんwとか思ってた。(歪曲してるかもだけど)
ラムちゃんにギャーギャー言ってもらって愛情確かめてたのかなぁ〜って。
この年でうる星SS書くとは思わなかった(笑)超!楽しかった!



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