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【うる星やつら】 |
| ■I Believe in You〜散文的あたるの日常〜 |
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掲載日[2008/2/18] ある寒い日の昼休み、一緒に昼食をとろうとあたるを探していたラムは、学校中をくまなく探しているところだった。校舎にはいないことを確認して、ラムが3階の窓から外に顔を出したとき、ラムは聞き覚えのない女生徒に声を掛けられた。 「ラム先ぱーい!私、先輩にお話が!」 見ると一人校庭の木陰で手を振る女生徒を見つける。華奢でずいぶんと背の低い女の子で、制服を着ていなければ中学生と間違われることだろう。ラムはやはり見覚えのない子だったので、首をかしげながらもその女生徒の元に降り立った。 「なんだっちゃ?」 「私、1−4の疋田(ひきた)早苗って言います。ラム先輩」 小さくて華奢な割りにくるりとした大きな目が輝いている。髪の毛をきちんと二つに分けてゴム束ねた髪はずいぶんと細く、髪の毛もおそらく細くやわらかい髪なのだろう。それゆえ、ぱっと見弱弱しさが強調される。しかしだからこそ、その目の大きさだけが異様に強くも感じられる。そんな強さも弱さも兼ね備えたような女の子だった。 「それで、うちに何の用だっちゃ?」 ラムは、その子から知らされる言葉が直感的にいい報せではないことを瞬時に悟る。早苗の目は少なくともラムに対して好意的な目をしていなかったからだ。 虚勢を張るように、ラムは腕を組んだ。 「はい、私諸星先輩を好きになったんです。だから、ラム先輩にライバル宣言、しようと思って」 にっこり、と微笑んでそういった早苗の言葉に、ラムは少なからず動揺する。動揺しないはずがない。まさか、今更ライバル宣言をしてくる人間などあるはずがないと、ラムは信じて疑わなかった。それほどまでに、この友引高校では―――現実はどうあれ―――公認カップルとして全校生徒に理解されていたはずなのだ。 「へぇ。でも、うちらもう夫婦なんだし」 「ええ。聞いてます。おままごとみたいなこと言ってるんですね?先輩」 くすくすと早苗が笑う。 パリッ。 知らず、静電気の何十倍もある電気がラムの指にちりりと走った。その音が早苗に聞こえなかったはずがない。そして、ラムが電撃を自由に操るということも知らないはずがない。そのことはすでにはじめに侵略者として地球にやってきた日から、テレビで全世界に放映された事実なのだから。 それでも、早苗はぴくりとも反応しない。ずいぶん度胸の据わった娘のようだった。 そのまま優雅に微笑む早苗の顔が、逆にラムには空恐ろしく感じた。 「それで?」 「それだけです。これから私諸星先輩に告白します。もしだめでも絶対諦めませんから!」 早苗ははっきりとそれだけを言うと、ラムにお辞儀をして校舎へと戻っていった。ラムが外に出るのを待ち伏せるためだけに、校舎を出てきていたようだ。普通の女生徒が先輩にこんな内容を話すのならば、付き添いを一人や二人は引き連れてくるのが普通だが、早苗はそれすらもしていない。一人堂々とラムに宣言をして帰っていったのだ。 ラムはその正々堂々とした早苗の態度に目を見張りながらも、それでも早苗が消えた昇降口をにらみつけながら一人こぶしを握り締めた。 「うちだって、うちだって、お前なんかにダーリンを渡さないっちゃ!」 「あたる先輩、もういいですよ?」 早苗の声に気づいて、あたるは暗くて狭いその場所から這い出るように抜け出した。そこは体育館の裏の倉庫で、人があまり通らない静かなところだった。 「ラムはいったかい?」 「はい」 「助かったよ早苗ちゃん」 あたるはにこにこと嬉しそうに笑いながら、さし出された早苗の手をさりげなく握る。 「ごめんなさい。急だったから場所を選べなくて…」 早苗が言いながら、ふかぶかと頭を下げる。あたるはびっくりしてその頭を上げさせる。 「そんな、早苗ちゃんが謝ることないよ。それで僕に話ってなにかなぁ〜」 へらへら、といつも通りのしまりのない顔で笑いながら、あたるはそういってみる。言いながらも、あたるはその先をある程度予想していた。早苗からこの場所を指定してきて、今は二人きりという状況を以ってして、この先が予想できない人間があろうか。 「ええ、単刀直入に言って、私あたる先輩が好きです」 照れた様子も恥ずかしげな様子もない。早苗はまるで当たり前のことを言うように、にっこりと微笑みながらそう言った。逆にこれではあたるの方が戸惑い、慌ててしまう。 「え、あ、本当?嬉しいなぁ」 やはりしまりのない顔で笑いながら、あたるはそう言ってしまうとその先の言葉が繋げられない。これは困ったことになった、と表情とは裏腹にあたるは脳をフル稼働させていた。 お茶を飲む、映画を行く、だけならいざ知らず、告白されたということはすでに位置としてラムと同等、ということはあたるにとっては厄介な人間に他ならないのだ。一人に縛られることを極端に嫌がる体質であるあたるにとって、彼女、という枠は要らないのである。今は。 「先輩、お付き合いしてくれますか?」 早苗は自信ありげに微笑んでいる。まさかフラれるなどとは寸分も考えていないかのような堂々とした態度だ。 「あ、いや、でもね」 なんというべきか、あたるは迷う。ラムがいるから、という理由は成り立たない。それは自分からラムに縛られていることを認めていることになるではないか。この場合、ラムは関係ないのだ。諸星あたる自身の問題だ。 「早苗ちゃん、訊くけどね」 あたるは体育倉庫から転がっているボールをひとつ拾うと、ぽん、ぽん、と片手で投げつつ話し始める。 「はい」 「君はつまり、俺と付き合ってということはこの先俺が他の女性に走っていくことを許さない?」 「当然です。それは浮気でしょう?」 早苗がにっこりと微笑む。間違いない答えを言っている自信に満ちた声だった。あたるはそれを聞いて、ふっと息をつく。 「そうだね。それなら、答えはノー、だな」 「私の魅力が足りませんか?」 早苗の表情がようやく崩れた。悔しそうな涙目だった。やっと本物の表情が出た、とあたるは思った。 「君だけじゃなく、女の子は俺にとってみぃいんな魅力的なんだよ」 おどけるように、あたるはそういって早苗ににぃっと笑いかけた。早苗はそんなあたるを上目遣いでにらみつける。 「あたる先輩、ずっとそうやってごまかし続けるつもりですか?」 「さー。でも今ところはそれでいいかなって」 あたるは持っていたボールをぽいっと体育倉庫の中に放る。 「私はその他大勢の女の子の一人では嫌です」 スカートをぎゅっと握り締めて、早苗は涙をあふれさせる。声を震わせてあたるに抗議する。 「俺も逆の立場だったらそれは嫌だなー」 まったく緊張感のない声であたるはそう返す。 「それなら、どうしてラム先輩にそれを強(し)いるのですか?」 早苗が泣くのを無理やりとめて、努めて冷静な声であたるにそう問うた。あたるは、その質問をまるで予想していたかのように肩をすくめると、早苗の前から歩き出す。 「さぁね」 早苗一人を置いて、あたるは歩き出した。5時限目の予鈴が鳴り響き、風が木の葉を鳴らした。早苗は思わずしゃがみこんで泣き出した。早苗は、自分のために泣いているのか、ラムのために泣いているのか、自分でも分からなかった。 「不毛な…あたるに恋したとな」 にょき、と生えたように現れた錯乱坊(チェリー)に早苗の涙は一瞬にして引っ込んだ。 「ちぇ、チェリー?!」 「あれだけはやめておけ。あれはあわれな男じゃ」 それだけ言うと、錯乱坊はまた姿を消す。 後に残った早苗が、どうしようもなく途方に暮れるのだった。 「疋田早苗さんですって?」 「知ってるっちゃ終太郎?」 ラムは今しがたあったことにむしゃくしゃしていると、すかさず面堂が尋ねてきたので一部始終を面堂に話した。すると、面堂は疋田早苗の名前に反応したのだった。 「疋田グループも世界屈指の財閥ですよ。我が面堂財閥は軍事方面での機器開発で大きく躍進したのですが、疋田グループはさまざまなエンターテイメント部門の融資及び開発によって最近大きな成長を遂げているのです。しかし疋田グループの会長は子宝に恵まれず、直系の子供はいないため養子を取ったとのこと…それがわざわざ女性だったということで大騒ぎになったのを覚えています。その令嬢の名が早苗嬢だったかと…しかし、まさか友引高校に入学していたとは」 「お前だって同じじゃないのけ?」 ラムはすかさず面堂にそういうと、面堂はさっと髪を掻きあげてラムに流し目をくれる。 「僕はいろんな経験を積んでおきたかったんです。下流社会を知っておくのも勉強だと思ったからですよ」 「そうけ」 全く気のない返事でラムはそういうと、そういえば、とあたりを見回す。 「ダーリン、見なかったけ?」 「そう言えば昼から諸星はみませんね。しのぶさん、見ましたか?」 竜之介と話していたしのぶがこちらを向き、ああ、と思いだして、面堂に近づきながら言った。 「あたるくんなら授業が終わってこそこそと出ていくのはみたけど、まだ帰ってないの?予鈴もう鳴っちゃったじゃない」 しのぶが言ったそばでガラリと教室のドアが開く。あたるだった。 「あ〜腹減った。結局食いっぱぐれちまった。おいメガネ、じぱんぐ行かんか?」 じぱんぐとは友引商店街にある行きつけのお好み焼屋だった。 「いいねぇ〜どうせ次の授業は温泉だしな」 メガネは上機嫌にぽんぽんとあたるの肩を叩くと、快諾してあたるとまた教室を出る。あわてて親衛隊の3名も追うように続いた。ラムがそれを見つけて、あわててあたるに飛んでいく。 「うちも行くっちゃダーリン!」 ラムがあたるの腕をとると、あたるはくっつくな!と喚き腕を離させた。そこまで見えて、教室のドアが閉まる。 その様子を見てしのぶが呆れたようにため息をつく。 「ラムがあまり構うからあたるくん逃げるんじゃないかしら」 「僕もそう思います」 面堂も珍しく神妙にうなずいた。 ―――『強いる』という言葉は正しくない。俺はラムに強要してはいないのだ。 ―――強要できる立場でもない。 「ダーリン、早苗って子、会ったっちゃ?」 エスケープ後、そのまま帰宅するあたるとラムである。戻ってもどうせ温泉マークがうるさいだけだということで、エスケープしたあたる達はじぱんぐで腹ごなしの後そのまま解散、と相成った。時刻としてもちょうど下校時刻。家にたどり着けば、間もなく夕食という時間だろう。じぱんぐではつまらない話題に花を咲かせていつの間にか夕方になっていたのだった。 「あったぞ。可愛い子だったなぁ〜くくくっ」 嬉しそうに肩を震わせるあたるに、ラムはむっと顔をゆがませた。しかし聞きたいのはそれだけではない。ラムは辛抱して質問を続けた。 「告白、されたのけ?」 「されたよ」 あまりにあっさりというあたるの言葉とは裏腹に、ラムの胸が不安に早鐘を打つ。 「でも断った」 んべ、と舌を出して振り返りながら言うあたるを見て、ラムはほっと胸をなでおろす。しかし、ラムだって伊達にあたると長く付き合っていない。女の子に迫られてどうしてあたるは断ったのかが不思議でならない。 「どうして?」 「ラムが二人になるのはかなわんからな」 ふい、と前に向きなおってしまうあたるがいた。 なぜだか、ラムの目に涙が溜まっていた。断ってくれたことの安堵感は確かにあったにしろ、それだけでは涙が出る理由としては不足している気がする。 どうしてだろう、と考えても答えは出てこない。 「ダーリン…」 呼ばれて振り返ったあたるが、ラムを見て一瞬驚く。 「なに、泣いてんだお前…」 呆れた顔をしながらも、あたるはぐいと自分の袖でラムの涙を拭いてやる。ハンカチなど気の利いたものををもっているわけがないあたるができるのはこれが精いっぱい。けれど、ラムにとってはそれで充分だ。 あたるの袖のぬくもりを受けて、ラムは不意に答えがわかった。 『ラムが二人になるのはかなわんからな』 あたるは、ラムを『捨てる』ということが念頭にない。そもそもそういう考えが全くの皆無なのだ。 「ダーリン!」 「おいおい!泣いてたやつがなんだ!」 いきなりがばりと抱きしめられて、あたるは調子が狂う。 「ダーリン、うち嬉しい!」 「なに言っとんじゃお前は!!」 ―――そもそも出会いがよくなかった。 「あたる先輩っ!」 「おー早苗ちゃんじゃない!わざわざ来てくれたの〜?」 1年生の早苗が2年の教室の前を通ることなどほとんどありえない。それはわざわざあたるに会いにきたというアプローチ以外の何物でもない。 「はい。私宣言したからにはまっとうするタイプなんです」 「偉いねえ」 あたるは小さな早苗のあたまをいい子いい子してなでてやる。あたるからみて早苗は見た目からして妹のような存在だった。だからあたるは早苗を拒否しないし、女の子至上主義であるから邪険にも扱わない。しかしラムにとってそれは、やはり早苗を受け入れたかともとれる行動でイライラとストレスをためるのだった。 早苗がしのぶくらい気丈で力もあったりすれば思いっきりぶつかることもできる。しかし、早苗は見た目華奢で細く小さい。気丈さは負けていないかもしれないが、この見た目からして、仮にも年下に本気で怒るというのも気が引ける。何より、あたるの反応が怖かったともいえる。 「あたる先輩?まだ私と付き合う気になりません?」 毎日毎日、早苗が悪意なく言うセリフに、ラムの堪忍袋の緒はいつ切れてもおかしくないところまで来ていた。 ―――その時俺にはしのぶがいて。 「いいかげんにするっちゃー!!!」 一週間後、だったろうか。ラムがあたると早苗の姿に嫉妬を爆発させた。 青い稲光が天井を走り、クラスを包み込むほどのラムのストレスが教室中で瞬いた。 2−4のクラスメイトはこの数日、来るか来るかと警戒態勢で見守っていたので、はっきりいってラムの爆発は比較的遅かったといってもよかっただろう。 それくらい早苗の行動は積極的で強引で、その割に邪魔にならない程度の距離も保つ絶妙なセンスを持ってあたるに接近していたからだ。 爆発した電流が電灯に走り、ぱんぱんっと電灯が割れていく。走った稲光は廊下まで出ていくと、ばちばちという音を立てながら電灯の電線を伝って天井を走っていく。 友引高校の電流系統が完全に止まってしまったことは言うまでもない。 しかしラムにとってはそんなことはどうでもいいことだった。 「早苗!お前、お前〜〜〜っ!!」 完全に正気を失ってラムは早苗に飛びかかったが、早苗は逆に落ち着き払ってどこから取り出したか扇子をラムの脳天にぴしりと打ってやった。バランスを失って、ラムはその場でよろめく。 「わたくし、日舞を嗜んでおります。ラム先輩、勝負なら超能力なしで。それでないと先輩の評判が地に落ちますよ」 年下に飄々とここまで言われたのではたまらない。普通の女生徒ならそう思ったに違いない。しかし、ラムは普通の女生徒なんかではないのだ。きっとラムは早苗を睨みつけると喚くように叫んだ。 「うちは評判なんかいらないっちゃ!ダーリンさえ居れば、ダーリンさえうちのそばにいてくれたらそんなの全然いらないっちゃーー!」 一度逆鱗に触れられたラムにとって、電撃のフラストレーションは止まるはずもなく、やがて、あたるがラムを宥め、事は終わった。 ―――俺たちは三角関係にもつれこんだ。 「全く、いい加減にしろおまえは」 「だって、ダーリン…」 思いっきり電撃を放出したあと、ラムは上目づかいであたるをにらみながら膨れる。 ―――俺は、お前を意識するのが遅くなって。 「ダーリンがちゃんと断らないからっ!」 「俺が女の子が来るのを拒むと思うかっ?いい加減わからんかい!」 ―――今さら態度を変えることなぞできるわけなかろう。 「何言ってるっちゃ!断ったってダーリンはっきり言ったっちゃよ!?」 「真剣なお付き合いは結構じゃという話じゃい!俺が寄ってくる可愛い子ちゃんをつっぱねるはずなかろう!アホが!」 ―――だから、お前だけが頼り。 「ダーリンの、ぶぁあああかぁあああ!」 「ぎゃああああっ!!」 ―――いまわの際まで、俺を追いかけてきてくれ。 END 散文的、の意味があってるか自分でわかりませんが(笑) あたるフォローをしたかったのです。 なんで逃げるの?って思うじゃないですか。好きなのになんでなんでって。 私的な答えをどうにか埋め込みたくて、こういうわけのわからないものに。 でも面白かったのでよしとします〜! お疲れ様でしたm(_ _;)m
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