2 時空破壊
コアが言葉を切った直後、木々をかき分ける音が聞こえてきた。その音はだんだん近くなってくる。ここに誰かがいることを確信しているかのように、まっすぐここを目指している。
「あっ!だめだろ!ここは、時空使いに選ばれた者しか入っちゃいけないのはお前だって知ってんだろ!」
木々をかき分けかき分け、やっと夕梨を見つけるなり少年は怒鳴った。背丈は夕梨より十センチ近く高いようだが、顔にはまだあどけなさが残っている。年齢は十四、五と言うところだろうか。
そんなことよりも。
夕梨はその少年の髪の色に目を奪われた。まるで寒空の雪景色を颯爽と走る銀狼のような髪。瞳は鮮やかなブルー。これがもし、染めたものでも、コンタクトのせいでもないなら自分はとんでもないところに来たという事はほぼ間違いではないだろう。
「知らないわよ、そんなの。だいたい私好きでこんなとこにいるんじゃ・・・・何よ、その目は。」
少年があらためて夕梨をなめ回すように見るので、夕梨は身を縮込ませる。
「驚くのも無理はないわ。あなたのような異界者の進入はほとんどないの。」
コアがさもおかしそうに言う。
異界者?また訳分かんないことを。
そうは思ったが夕梨はもう口には出さなかった。訊いたところで簡単に分かりそうもないことに、夕梨はだんだん気付き始めていた。
少年の方は、また別の声がしたのに驚いて思わず夕梨に問う。
「お前以外にまだ誰かいるのか?俺は、お前だけしかいないと思ってたのに。」
「時空使いの長・ザーヴァよ。私はこのタキオン鉱山の主でタキオン・コア。」
コアは今までとはうって変わって、威厳に満ちた声でそう言った。言葉には出さなかったが、それは明らかに自分が上に立つ者だという事を知らしめるには充分だった。
「コア様!まさかあのっ・・・・。」
現に、その声だけの威厳にザーヴァと呼ばれた少年は完璧に気圧されている。
「コアでよい。さっきこの娘にも言ったが、今私には体がない。タキオンの精神のみなのだ。それを先に言っておく。」
その言葉に一瞬ザーヴァがびくついた。さっきまでの意志の強い瞳に力がなくなり、視線が空を彷徨う。
「どうした、ザーヴァ。何におびえている。私にか、ユーリにか。」
「い、いえ・・・・。もしかしたら、コアはあの原石の巨大結晶の精神では・・・・?」
タキオン?巨大結晶?もう、何いってんの、この人達。
疑問詞を限りなく頭に飛び交わせる夕梨をよそに、コアがザーヴァの言うことに応える。
「そうだが?だとしたらどうだというのだ。」
それを聞いてザーヴァは体を震わせたが、やがて今まで泳いでいた視線を戻し、顔を上げるとさっきの意志の強い瞳ではっきりとこう言った。
「あれは、俺、いや、僕が壊しました。」
「な・・・・まさか、なぜおまえが!」コアはしばらく言葉を切って、呆然と言葉をつなげた。
「本当だ・・・・粉々に・・・・。お前はいわばあの石を守る管理人だぞ。それを、何故・・・・何故お前が壊さねばならん!」
「待ってコア!何をそんなに怒ってるの!私にもちゃんと分かるように説明してよ!」
今まで口を挟むのを我慢していた夕梨だったが、とうとう我慢も限界だった。 これ以上訳が分からないまま聞いていたのでは、どうにもおちつかない。それに、この二人の会話は尋常ではない。
一体どうなっているの・・・・!
「ごめんなさい、ユーリ。あなたには不愉快な時間だったわね。ちゃんと説明するわ。
私は、この世界、ファンタ・ルジア時空、EP17ーT8294空間のタキオンの中核なのです。タキオンというのは膨大なエネルギーをもつ翡翠色の石のことです。ザーヴァ、見せてあげて。」
「はい。」
ザーヴァは胸の辺りに両手を重ね、目を閉じた。とたんにザーヴァの両手の隙間から緑がかった青い光があふれ、こぼれてくる。光は次第に弱まり、ザーヴァの手はサファイヤの様な石を包んでいた。
「ベガです。」ザーヴァが紹介すると、石は反応したようにきらめいた。
「はじめまして。ユーリ。」
そう言ったのは紛れもないこの石だった。夕梨は気味が悪そうに、ひっと叫ぶ。
「い、石が喋った・・・・。」
「タキオンは精神を持つ石なの。エネルギーが巨大すぎて抑えることが出来なかったタキオンは次第に精神を持つようになったのよ。この世界の生き物はほとんどこのタキオンに寄生して生きているの。
そしてそのタキオンの中核、つまり本来私が宿るべき巨大結晶は、この空間ひいてはこの時空の安定を保つ物なの。その結晶をザーヴァは壊してしまった言うのよ。」
「コアは、石が壊れても平気なの?」
「もう石に戻ることは出来ないけど、石が消滅したわけではないから大丈夫よ。」
ザーヴァはもうびくともせず落ち着いて聞いていた。その姿は、自分には自分なりの考えがあったことを誇示しているようにも見えた。
「それで、それを壊してしまったという事で、何が起こるの。」
ザーヴァの様子を見放すことが出来ずに、夕梨は視線をザーヴァに向けたまま尋ねた。
「この空間と相対する空間がやがて滅する。」
「う、うそだ!!」突然、ザーヴァがそう叫んだ。さっき戻った平常心がまた失せ始める。
「俺は、この空間が、この時空が消えるものだと」
「この巨大結晶はユーリのいたリア・リティン時空とこのファンタ・ルジア時空の均衡を保つもの。」
「つまり」夕梨は顔を青くさせ声を振り絞って続けた。
「私のいた空間が先に・・・・。でも私ここで生きてるって事は、私の世界にいた人たちはこの世界に移動したって事なの?」
「残念だけど、それはないわ。空間移動、時空移動は共に死を意味するの。ユーリがここにその痛み程度で来れたのは、まさに奇跡なのよ。」
「そんな・・・・。じゃあ、沙羅や、みんなは?」
急激に夕梨の足から力が抜けていく。
「おそらく、もう・・・・」
「やめて!信じない、信じないよ私!信じないんだからっ!!」
激しく首を振ると肩から腕にかけて痛みが走った。
「・・・・つっ・・・・」
そうだ、何でこんなに体が痛むのだろう?さっきからずっと。まるで全身を打ったようにずきずきと。
「ユーリ。あなた、帰りたいと願ったでしょう。元の家に帰りたい、と。あなたがこの時空の人でなく、どの石にも属さなかったから、寄生される体を持たない私の力があなたの願いに加勢したの。でも、この空間の、ひいては時空の出口にもつながるこの山の頂きまでは寄越すことはできたけど、おそらくそのあと時空を抜けようとして、歪みにはね飛ばされたのね。」
「時空の歪みにはね飛ばされた、痛み・・・・」
一番痛む左肩を手で押さえながら、夕梨は考える。
何故、自分だけが無事だったのか。いや、この時空を越えた人間がここにいるのなら、ほかにもいるのかもしれない。無事に時空を越えた人間が。もしかしたら、ここにもう一人くらい入って来てることだって考えられる。
「それは・・・・ないわ。私たちは気配を探ろうと思えばそんな異界者がいたとしたら、すぐにでも見つけることができるはずよ。」
素っ気なくコアが言うのを憤慨したように夕梨は怒鳴った。
「いちいち口を出さないでよ、コア!だいたい、失礼にも程があるわ。勝手に人の心の中を読んだりして。名前だって、私は教えてないって言うのに。」
その台詞にザーヴァがくっくっと笑うと、夕梨はキッとザーヴァをにらむ。
「まさか、あんたまで私の考えてることが」
「わかるよ。悪いけど仕方ないんだ。とにかく君にはまずブラインドを覚えてもらおうね。」
「ブラインド?」
ザーヴァはうなずき応える。
「ブラインド。心をのぞかれないようにするための方法だよ。こんなの、本当はない方がいいんだけどね。」
ザーヴァは残念そうにそう言った。夕梨は首を傾げながら、何故?と聞いてみる。
「もともと、ここは言葉の要らない世界だったんだ。思ってることがそのまま相手に通じるテレパシストなんだ、みんなね。君は、それを幸と思う?それとも、不幸、と?」
「不幸と思うわ。今みたいな事が平気で起こり得るのなら。」
即座に夕梨は答える。誰でも一度は憧れる、架空の力を忘れて。
「うん。そうだね。でも、それは君がテレパシストでないから起こった問題だ。みんながみんなテレパシストになると、それはとても良いことになる。この世に悪意というモノはなくなるからね。」
「性善説でも説き出すつもり?」
人をバカにした目をして夕梨は茶々を入れた。ザーヴァはそんな夕梨を全く問題にしないように目を伏せた。ザーヴァ自身、コアに話しておきたかったからだ。
「ブラインドさえなかったら、こんな道を歩まなくてもすんだはずなんだ!俺らが心を隠すことを覚えさえしなかったら、心を汚す術さえ知らずに生きていけたはずなのに・・・・。コア!貴方も思ったはずです!俺らに力を与えなければと!」
「ザーヴァ。私はそんなこと思ってはいない。」
「ベガ!」
ザーヴァが呼ぶと、さっきの翡翠の石がザーヴァから出てきて喋った。
「いいえ、私もそんなこと思ってはいません。なぜなら、人はあまりに幼すぎる。ザーヴァ。あなたは何も知らない小さな子供を叱ることができますか?それと同じです。人はある意味では私たちの子供にもなり得るのだから。」
「ねえ・・・・。」
ザーヴァのただならぬ様子に夕梨は問いかけてみる。
「ここは、一体何を・・・・何をしているっていうの?」
その問いにザーヴァがふっとなげやりに笑うのを夕梨は見逃さなかった。
「ここはね、お前さん達の世界の運命を管理しているのさ。この石達の力を借りて、空間を操作してるんだよ。」
もうすぐ陽が暮れることを報せるかのように、涼しい風が二人の間を通り過ぎていった。しかし、二人ともそれに気付いたかどうか。
夕梨は耳を疑う。
今、なんて・・・・?
「オレ達は時間差でできた空間ってやつを見つけてからずっと、リア・リティン時空を時間別に監視するようになったんだ。そしていつからか、考えるようになったんだ。リア・リティン時空をオレ達の都合のいい方に動かすことをな!」
「・・・・!!」
「この時空の人間は罪を背負って生きている。わからないの?ここの奴らは君たちをずっと見張ってきたんだ。あらかじめ作っておいた歴史から、はずれていく者が出てこないように。あるいははずれていった者を消すように・・・・!」
夕梨は息を呑んだ。一瞬ザーヴァの言っていることがわからなかった。
決められた、歴史・・・・?私たちは自分達の意志で生きているのではないって事・・・・?
「冗談でしょ?そんなこと一体どうやって」
ザーヴァのさっき言った言葉が頭をよぎる。
・・・・石ノ力ヲ借リテ空間ヲ操作シテ・・・・
空間操作・・・・ああ、何で気付かなかったんだろ。これは歴史を故意的に変えることだったんだ!!
ザーヴァは手をだらりと下げたまま呆然と立ちつくすと、再び口を動かした。
「君たちの世界で言っている偶然や奇跡は、あらかじめこの時空で決めていた歴史が曲がりそうになったときに無理矢理矯正させる最後の手段なんだ。つまり、偶然や奇跡という君たちが気付くことのできる空間介入は予定外の作為で、もちろん空間介入は君たちが気付かないところでも至る所に入っているんだ。」
夕梨は、飛び交うこの強烈な話に頭がふらふらしてきた。
「じゃあ、私たちって、ただの操り人形じゃないの・・・・。私たちは今までまるで意志は反映していない世界に居続けていたというの?」
「あながちそこまで言うこともないでしょう。」
しばらく口を挟まなかったコアが、優しい風を送るようにそう言った。
夕梨は疲れ果てた目をザーヴァの逆側、この先の断崖に目を向ける。気のせいか、コアはそこにいるような気が、夕梨にはしていた。
「コアはどう思っているの?この空間を。この時空を。」
「そんなに泣きそうな顔をしないで、ユーリ。大丈夫よ、本当は。この時空も、あなたの時空も。」
日暮れで肌寒くなってきていた山頂だったが、ふんわりと暖かい物が夕梨を包んだような気がした。
「コア、余計なことはしなくっていいの。私は本当のことが知りたいだけ。」
「そうね。あなた達は今まで、操られているという感覚になったことはあった?」
夕梨は少し考えるように目を断崖からそらすと、首を横にゆっくり振りながら応えた。
「そんなことは一度だってなかったわ。でも、それはここの時空の人たちがごく自然に創った心で過ごしていたのなら、それは操られているという事になるわ。」
「いいえ、そうは考えないで。あなた達の心は環境に生み出された物だという事を忘れてはいけないわ。全ては、自分たちの周りにあった環境からね。」
「その環境すら、ここで創り上げられたものなんじゃないの?」
「そこまで言うのならきりがないわ、ユーリ。所詮環境という物は変わっていく物なの。私たちの力が及ばずとも、遅かれ早かれ環境は変わっていく。」
「・・・・。」
疲れ果てて、夕梨はがっくりと肩を落とすとため息をついた。
「オーケイ。分かった、それは知らなかったら無いことと一緒だもんね。で、何で決められた歴史ってもんがあるわけ?何故私たちはその通りにならなきゃならないの。」
「この世界は君たちの今の世界があるから存在できてるんだ。」
今度は、ザーヴァが優しく答えた。
「君たちの世界ではタキオンが見えない粒子で大量に存在してる。そっちでは利用しようにも発見さえ不可能な物質なんだ。でも、それが時空を越えると、目に見える固形分に変わる。ほら、このベガみたいに。」
ザーヴァの手がさっきから浮いていた翡翠色に輝く石を包む。日も沈み、少しずつ闇が迫ってくるこの場所で、石は光を発し続けた。
「このタキオンって石には莫大なエネルギーが含まれていて、オレらはこれなしには生きてはいけない。こいつの力がオレらの体を支えてるんだ。」
「何ですって?」
夕梨は眉をしかめた。いくら力を持つ石とはいえ、石が人を支えるなんて事があるのだろうか。
「この石は全ての生物の種なんだ、この時空では。この石が思い思いの生物、タキオニアを造って、それは石に寄生する。生物を造った石は膨大なエネルギーと共に二つの精神を生み、一つはその身体に、一つは石にそれぞれは宿る。ごく例外的に、石か身体にしか宿す精神しかないモノもある。そしてそれらの例外なモノが、このタキオン鉱山に眠っている。精神を生むに満たないエネルギーをもった石達が。」
「その、じゃあ貴方の体は、ベガが造ったというの?あなたの親が産んだのではなく?」
嘔吐感をこらえて、夕梨が訊き返す。
「だから、ベガがそのオヤだよ。」
「違うわよ!そんなの親とは違う!」
「どうして?オヤって君を産んで、育ててくれる人のことなんだろう?」
「子は、親に寄生してるんじゃない。」
きっと夕梨はザーヴァを睨み、そう言う。
「親は思い思いに子供を作るんじゃない。自分と、その愛した人の血をひく愛しい者をこよなく愛するために子供を産むの。そんなチャランポランに容れ物に魂をいれただけの、まるで缶詰みたいなモノと一緒にしないで。」
「ふーん。でも過程は違ってるけどナリはそう君と変わらないし、だいたいオレらの方が便利に出来てるのさ。」
ザーヴァが先刻から夕梨を馬鹿にした目で見ていることに、夕梨は気付いていた。その、便利さが夕梨を見下げる目の訳だろう。
「なによ、それ。」
心とは裏腹に、聞く気はないけど、と言う態度で訊き返す。
「オレたちは、君たちみたいに何もできない未熟に生まれて来るんじゃないし、無様に老いさばらえる事もない。食べ物に困ったりもしないし、欲しい物は石が形にしてくれる。僕らは気ままに生きればいいだけ。」
「よ・・・・よくそれで争いが起こらないものね。」
「全てのバランスは石が保っている。って言ったって、所詮ここじゃみんな元は同じ物なんだし、争いなんか起こりっこない。それに僕たちは独占欲ってものがほとんどないしね。」
「で、その独占欲のない皆さんがどうして私たちの世界に手を出しているわけ。」
皮肉をたっぷり舌に乗せて、夕梨は言い放った。これにはザーヴァも多少びくついている。
そこにコアが、涼しげな声を滑り込ませた。
「ユーリ。そこがザーヴァがこの巨大結晶を壊した理由なのよ。ザーヴァは、巨大結晶に組み込まれている物を知っていたの。あなたの時空空間を縛る、定められた歴史が入っていることに。」
夕梨はザーヴァに目を向ける。
「その昔、初めてタキオンが造り寄生させたヒト型生物、タキオニアがこの巨大結晶を造り、タキオンが無限にこの時空空間に送られるようにリア・リティン時空の未来歴史を作ってその結晶の中に組み込んだの。巨大結晶は全てのタキオンの中核だから、それからうまれてきたタキオニアはその未来歴史の通りにリア・リティンを操作する力を持とうとしたの。やがて、タキオニアは時間差で出来た空間を見つけ、さらに、自分たちと異なる時空を見つけたの。それから、空間介入は始まった。」
「オレは自分のために別の世界を操作してまで生きていたくない。あいつらにはあいつらなりの生き方があるはずなんだ。同時にオレ達にもオレ達なりの生き方がある。なのに何で、こいつらは平気な顔して空間操作なんてし続けるんだ・・・・!」
「だからって、この世界壊そうなんてことしなくっても」
「そうじゃない!」
夕梨の不満げな抗議を、ザーヴァは怒鳴りつけて止めさせた。
「オレは空間介入の大本、定められた歴史を壊そうと思ったんだ!まさか、時空そのものが狂うなんて・・・・」
ザーヴァの後悔の念が夕梨には直接伝わってきたように感じた。
誰も傷つけたくなかった。それだけなのに。
この人は大変な荷物を背負い込んでしまったんだわ。とてつもなく大きな物を、一人で。
「それにしても、それでユーリがここに来れた理由になりそうもないわ。何かこの結晶破壊が別のことを引き起こしているようにも・・・・んっ?」
コアの声に反応したかの様に夕梨の体が震える。寒いわけでもないのに。
「ひゃっ!な、なによっコアっ!」
「え。なんでユーリが反応したの?・・・・もしかして私たち同化し始めてるんじゃ・・・・」
「どっ同化っ!?」
なによおっ、それっ!
夕梨は思わず身震いする。
「まさか、コアが私の体を乗っ取ろうとしてるんじゃないでしょうね!」
「ち、違うわ。私がユーリに一度力を貸したことで、私たちの“結び”が強くなって来ちゃったのよ。つまり、ほら、さっき言ったでしょ?石が造った生物は石に寄生するって事。その関係に私とユーリがなろうとしてるのよ。」
なにそれ。じゃ、私缶詰と同等って訳?!失礼だなー。
「缶詰缶詰言うな!そっちこそ、何の能力も持たない無粋な生き物のくせに!」
ザーヴァがむっとした顔をして夕梨を睨みながら言う。夕梨はそれに腕を組んで射抜くような流し目で応戦する。
「ったく、あんた性懲りもなくまた人の心読んでんのね。デリカシーってもんを知らないの!?あんた達。」
「“思い”で生きてるオレ達には“思い”は声そのものなんだっ。仕方ねーだろっ!」
またこいつは訳の分かんないことを・・・・。
「ユーリ、ザーヴァ。ちょっと静かにして。私に似た気配を感じるのよ。」
「気配?」
二人同時に同じ言葉を発し、二人は一瞬目を合わせたが、すぐまたふんっと二人とも顔をそらす。
だが、そんなことにはまるで気付いていないように、コアが弾んだ声を上げた。
「あ・・・・!私のタキオニアだわ!サリャーネが、帰ってきたんだわ!!」
「サリャーネ?そう言えば、コアはタキオニアを持ってないわね。」
夕梨が悠長な声を上げる。
「サ、サリャーネ様?まさか・・・・まさか、あの女神サリャーネ様ですか!?」
ザーヴァが驚きを隠せない様子でコアに問う。コアは平然とそうだ、と言うだけなのだが。
「ザーヴァ?あんた何でそう落ち着きがないのよ。コアのタキオニアがどうかしたの?」
ザーヴァはゆっくり言葉を選ぶように話し出した。
「コア、いや、あの巨大結晶が造ったタキオニア・女神サリャーネ様は、かつてこの地を作り出した創造神だったんだ。しかし、同時に破壊神でもあった。」
創造神に破壊神?それって・・・・
「思いっきり両極端じゃないの。」
「そう。サリャーネは気まぐれな女神。創造した後すぐに破壊を思いつくほどにね。でも、そうさせる訳にはいかなかった。だから・・・・私は・・・・」
「コアは最後の手段を使ったんだ。」
急に、ザーヴァが庇うように口を挟んだ。
「ザーヴァ・・・・」
「コアはタキオニアに入り込み、サリャーネ様を止めようとした。しかし、タキオニアはコアを受け付けず、しかも無理強いをした反動でタキオニアはこの世界から消えた・・・・。オレはディンにこう教えられましたが?」
「その、通りだ。」
コアはため息混じりに返事をした。
「でも、コア。さっきサリャーネがいるって分かったとき嬉しそうだったわ。そんな迷惑千万な女神なのに。」
「私は、やっぱりタキオニアがいないと不完全なの。もともと私は修復能力を持っているのだけど、今の私にその力はないし。」
シュウフクノウリョク・・・・破損部分を直し得る力・・・・
「ちょっと待って!じゃあなに?そのタキオニアがいれば、あの巨大結晶はもとに戻るって事!?」
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Copyright 2000 BY SAE
written time 1996(多分)