ADR法が可決成立 − 新しい紛争解決制度に向けて


 あなた、この間話した裏の山田さんと高橋さんの境界争いなんだけど、山田さんの話だと裁判をやることになるらしいわよ。

 それは、大変だなあ・・・。確か幅3センチくらいの範囲の争いなんだよね?

 そうなのよ。私山田さんと仲がいいから、そのくらいのことで争うのやめたら?って言ったんだけど、もうお互いのご主人が意地になっちゃってるみたいなのよね。

 ふーん。そうか・・・。でも、裁判は時間も費用もかかるから、とても大変なのがわかっているのかな。私の会社の顧問弁護士も、「裁判は最終的な手段で、できるだけ話し合いで解決するのがいい。」って言っていたなあ。

 そうよね。テレビで見ているような法廷に出るなんて、想像しただけで怖いくらいだわ。

 そういえば、この間、テレビで「ADR」について特集していたなあ。山田さんも裁判の前に「ADR」で解決してみたらどうかな?

 え?「ADR」って何?

 ADRは、Alternative Dispute Resolutionの略で、「裁判外紛争解決手続」のことなんだよ。仲裁、調停、あっせんなどの、裁判によらない紛争解決方法を広く指すものなんだ。 簡単に言えば、話し合い優先の紛争解決ということかな。この間の、第161回国会において、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(いわゆるADR法)が可決・成立して、平成16年12月1日に公布されたんだ。そこで、今、とてもトピックなんだよね。

 へ〜そうなんだ。でも、ADRなんて横文字で言うからなんだか難しいわ。日本語で言えばいいのにね。

 あはは、そうだよね。小泉総理も「ADRでは国民には分からない。お年寄りや子供にも分かるような言葉にすべきだ」って、司法制度改革推進本部顧問会議で、怒ったらしいよ。ADRは、すでにある制度で言えば、裁判所において行われている民事調停や家事調停もこれに含まれるし、行政機関では、建設工事紛争審査会、公害等調整委員会などの仲裁、調停、あっせんの手続があるんだよ。

 山田さんの場合は、どんなADRがいいのかしら?

 弁護士会の「あっせん仲裁センター」なんかどうかな?弁護士が話し合いの仲介をしてくれる制度だよ。

 でも、山田さんたちも、いままで散々話し合いをしてきてもダメだったから裁判をやるのに、いまさら話し合いなんてどうかしら?まとまるのかしらねえ・・・

 そう思うだろ?でもね、やはり「話し合いは日本人の美徳」みたいなところがあって、第三者が間にはいって冷静に、法律的な判断を背景に話し合いをすると、意外とまとまったりするんだよ。弁護士会のあっせん仲裁センターの利用者は年々増えているし、裁判所の「調停制度」も、多くの和解が成立しているんだよね。

 でも、そういう制度がある中で、なんで、「ADR法」なんていう法律を作ったのかしら?

 これからの時代にADRが紛争解決のひとつの手段として広く利用されることが必要とのことから、その環境整備をするためなんだよね。まとめるとこの表のとおりの趣旨があるんだよね。

@  裁判外紛争解決手続の基本理念を定めること
A  裁判外紛争解決手続に関する国等の責務を定めること
B  裁判外紛争解決手続のうち、民間事業者の行う和解の仲介(調停あっせん)の業務について、その業務の適正さを確保するための一定の要件に適合していることを法務大臣が認証する制度を設けること
C  Bの認証を受けた民間事業者の和解の仲介の業務については、時効の中断、訴訟手続の中止等の特別の効果が与えられること

 これからは、たくさんのADRが増えてくるのね。紛争解決の手段が増えるのはとてもいいことだわ。でも、あまり良く法律がわかっていない人たちが安易にADRを運営されるとかえって国民が混乱するかもしれないわね。

 そうだよね。だから、この表にも書いてあるけど、ADR法は「認証」制度を設けたんだよね。民間事業者の行う裁判外紛争解決手続について、その業務の適正さを確保するための一定の要件を定め、国がこれに適合していることを確認(認証)する仕組みをつくって、このような確認(認証)を受けた者を対象としてADRがやりやすい特例をもうけることにしているんだ。

 どんな特例なの?

 認証事業者は、認証業務であることを独占して表示することができるし、認証紛争解決事業者は,弁護士又は弁護士法人でなくとも,報酬を得て和解の仲介の業務を行うことができることになるんだ。
 また、認証紛争解決事業者の行う和解の仲介の手続と訴訟が並行している場合に、裁判所の判断により訴訟手続を中止することもできるんだよ。
 それから、離婚の訴え等,裁判所の調停を得なければ訴えの提起ができないとの原則のある事件については、認証紛争解決事業者の行う和解の仲介の手続を経ている場合は,当該原則を適用しないって言われているしね。

 これから、ADRはどんどん増えるのかしらね?

 そうだね。たとえば、鳥取県の倉吉市では、家庭の悩みや近所同士のもめごとなど日常生活のトラブルの相談に無料で応じ、解決を目指す民間の困りごと相談・調停センター「赤ひげネット」を司法書士や医師、臨床心理士、土地家屋調査士など八人のスタッフがボランティアで相談に応じるらしいよ。
 それから、北海道の社会保険労務士会は、解雇、賃金・退職金、休暇・労働時間、セクハラ、労働災害など、労働に関する問題全般について、無料で相談に応じる「総合労働相談所」を開設しているんだ。当事者同士の話し合いを中心にして、問題を解決に導こうとする常設の「ADR(裁判外紛争処理手続き)機関」を目指した取り組みと言われているよ。

 でも、結局は、ADRで解決するにしても、弁護士を頼まなければいけないんじゃないのかしら?

 そうでもないよ、今、司法制度改革推進本部では、各種の資格業についてADRの代理権を付与するように検討しているんだ。

 じゃあ、山田さんのような境界争いの事件も、そのうち「境界争い解決センター」みたいなのができる可能性があるのね。そうだ!私も、あなたのお母様にいじめられたときのために、ADRに勤める友達つくっておかなきゃ。

 おいおい(笑)

法務省 ADR法の解説のページ
ADR JAPAN(ADRのポータルサイト)のページ

ADR代理権の付与についての検討状況(2004年11月)
司法制度改革推進本部 資料

  主な要望事項 検討状況(方向性)



140万円以下の民事紛争につき、ADR機関における仲裁の代理

【認定司法書士のみ】
(注)140万円超の民事紛争についてのADR代理も今後の課題として視野
要望を踏まえて所要の措置


(1) ADR代理の対象に著作権に関する紛争の追加
(2) 対象となるADR機関の拡大
(3) ADRでの調停代理権の明確化
(4) ADR代理の対象を不正競争全般に拡大
(1) 要望を踏まえて所要の措置
(2) 要望を踏まえて所要の措置
(3) 要望を踏まえて所要の措置






(1) 個別労働関係紛争
(2) 男女雇用機会均等法に基づき都道府県労働局が行う調停の代理
(3) 民間ADR機関が行う個別労働関係紛争のADR代理
(1) 能力担保措置を条件として所要の措置
(2) 能力担保措置を条件として所要の措置
(3) 能力担保措置を条件として所要の措置
弁護士との共同受任事件に限定
・厚労大臣指定のADR機関
・60万円以下の事件については単独受任可




調

土地の境界が明らかでないことを原因とする紛争のADR代理 能力担保措置を条件として所要の措置

弁護士との共同受任事件に限定
・法務大臣指定のADR機関


(1) 税務の専門家としてADR主宰者(手続実施者)等の相談者として関与
(2) 租税法令の適用に関する民・民間の紛争等のADR代理
(1) 要望を踏まえて所要の措置
(2) 将来課題(主宰者等としての実績等を見極めて、再度検討)





地代家賃、借地借家等に関する紛争のADR代理
将来課題(主宰者等としての実績等を見極めて、再度検討)



140万円以下の幅広い紛争(対象分野不特定)のADR代理
将来課題(主宰者等としての実績等を見極めて、再度検討)