松原秀樹先生連載46

 

 

 

クライエントが求めているもの

 

クライエントが治療に求めてきているものは、症状が改善することや抱えている障害が軽減したり解消することが目的であるということは、もちろんのことです。この治療目的をターゲットにして作業していくのが臨床活動です。しかし一人の人間としてのクライエントは、症状や障害の改善だけですまないことが多いものです。『いつものこの人が、いつもの環境で、いつものように生活し活動していた結果この病に罹った』のですから、結果としての病気の改善だけが問題になるわけではないことは明らかでしょう。一般的に人がつねに求めているものの中で重要なひとつは、人生の充実感、人生や自己存在の意味などです。したがって、臨床現場で出会うクライエントや患者の求めているものは、実は病気の改善だけということではないのです。
 症状や障害改善だけでいいのかどうか、それとも…という両者の間に明確な線引きをすることは、はなはだしく困難です。俗に言う3時間待ちの3分診療という悪口の裏には、こうした欲求が隠れているからだとも言えるでしょう。だからこそ、運よく今までとは違って、少しでも親身に話を聴きましょうという態度を示した医師やセラピストに出会ったときのクライエントの喜びはことのほか大きく、それだけで深い信頼感を抱くようになります。つまり、やっと自分の不幸や不満を理解してくれる人、話を聴いてくれる人に出会えたという喜びを持つからです。極端に思われるかもしれませんが、たとえ治らなかったとしても、生活上の問題や不満が解消されなかったとしても、こうした分かってもらえる、聞いてもらえるという治療関係そのものにクライエントは満足するもののようです。たとえ面接や治療によって症状や障害が、またその生活状況がほとんど変わらなかったとしても、そう思うようなのです。
 このような現象は、分かってもらえる、聴いてもらえる効果といえましょう。つまり自分が大事にされる人間関係というものが人には必要なのだという証のように思います。


連載47

up 2005/02/06

 

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