| 松原秀樹先生連載47 |
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信頼される臨床家 −医師編−
実は私、不摂生から、大量の血を失い、緊急入院しました。腎臓かな膀胱かなとあれこれ予想はしていましたが、しっかり膀胱癌でした。主治医となったH先生は、私から見たら年齢的にぐんと若いのですが、その主治医がかもし出す信頼感の印象分析を試みてみたいと思います。患者である私の話を聴いている間中、きりりと結ばれた唇、その唇は、意志力を感じさせる強い力を感じさせるものがありました。また目もすごかったです。黒目がはっきりくっきりしていて、私がちょっとでも話をしようとすると、ぴたっとその目を向けるのです、そして瞬きもせずにじっと私の顔を見て、最後まで聴くぞという姿勢を示し続けるのです。そしてそうした中でも、時折えもいわれぬ温かい人懐っこい笑顔をみせてくれました。もうそれだけで安心感が与えられ、癒されました。言うことは、はっきりものをいいます。たとえばCTやMRIの画像を見て、「うーん」とか「まあ…でしょうかねぇ…」などというあいまいな表現や態度は一度もとりませんでした。
「画像から見て比較的表層の癌のようですが、その大きさからみて(最大部分の直径は48mmでした)その根が筋肉層に達している可能性も十分にあります。その一部でも筋肉層の半分以上に達していると、膀胱を全部切り取る手術になります。」と実にはっきりものを言うのです。
そして、「画像からみて、筋肉層までは行っていないように思えるのです。ここをみてください。これが癌で、これが膀胱の輪郭で、はっきり写っていますね。でもこの1枚だけが、ここの部分がぼやけて写っています。今のCTやMRIの限界で申し訳ないですが、これ以上これらの検査では見分けがつきません。出血が続いていますから、まず出血を止めるために、TUR-Btという方法で、尿道から内視鏡を入れて癌を削り取っていき止血もしていきましょう。膀胱の膜は非常に薄いので、慎重に削っていきます。削りすぎて膀胱に穴の開く可能性がありますが、今まで私にはそういった経験はありません。ですから私にまかせてください…」
まあ、実に誠実に事実を可能性と確率をあわせて話していくのです。途中に質問すると、先に書きましたように、ぴたりと私に目を向け、瞬きもせずにじっと私の顔を見て、最後まで聴くぞという姿勢を示し続けるのです。たとえ自分の思う方向ではない関係のない話や無駄と思える話になっても、イライラしたり、さえぎろうとは決してせず、ゆとり、余裕の態度が変わりませんでした。そうした上で答えてくれるのですからたまりません。もうそれだけで私の胸のうちに、安心感や信頼感が膨らんでくるのです。惚れましたね。このH医師のような態度も若い医師や心理臨床家に、ぜひ取り入れてほしい人間的臨床家の姿だと思います。
up 2005/03/03