松原秀樹先生連載48

 

 

 

 信頼される臨床家  −看護師編−

 

 どういう訳か、どんな話をしているときも、説得・納得させられてしまう、“愛”看護師と書くべきかもしれませんが、I 看護師長さんについて書きたいと思います。今回入院した経験で興味深かったのは、病棟師長さんと話すときの経験なのです。主治医もそうでしたが、妙に説得力、信頼感を感じさせる力があるのです。海千山千だと勝手に自認する私が、素直になって従ってしまうのです。これはその時々の話の内容だけでは説明がつかない部分に何かがあるはずだと、毎回観察をしていました。もちろん話の中身もあるのですが、会った瞬間に感じさせた信頼できるというあの印象は何から来ているのかが解明したかったからです。その声、抑揚、声の大きさ、息遣い、使われることば(殊に包容力に満ちたことば!)そういった重要な要因がきちんとあることももちろんのことなのですが、しかしそれ以外に外見的にきわめて大きな特徴があることがわかりました。これは看護師、心理の臨床家の初心者でもすぐ真似のできる行動、所作ですので、参考にしてもらいたくてこの原稿を書いています。

I師長さんはまっすぐにこちらに身体を向けて話を聴くし必要な情報を伝えてくれるのですが、その時、両腕両肘はまっすぐに伸びて前で手指がつつましやかに組まれ、驚いたことに足元までもがぴたっとまっすぐなのです。いわゆる気をつけ姿勢なのです。きちんと揃えられた足元はこれまたまっすぐに私に向いています。この姿勢、自分でしてみましたが、結構大変です。そうした姿勢で30分以上でも全身で向かい合って話をしたり聴いたりしてくれているわけです。患者さんが混乱していたり、理不尽なことを言っていたとしても、この姿勢できちんと聴く態度は変わりませんでした。

最初にお会いしたときには、まじかで話していたので、こうした手元足元は、私の視野の枠外になっていたので見えませんでしたが、そういう姿勢で立っておられることは伝わってくるのですね。だから全身が見えないときでも、大切にされている、誠実だ、信頼できると感じることができたのだなと思ったのだと思います。また患者さん側に伝える内容が、安心すべきよい情報を伝えるとき、忙しいのでほんの少しの時間しかとれないときでも冗談が言えるようなとき、笑顔で話す内容のときなどには、そろえた足がほんの少し、10cmから15cmくらい開いて、前にした手は同じですが、その肘は緩やかに曲がっていました。

人は全身で人に反応しているものです。見えなくてもこうした相手の雰囲気は伝わってくるものなのです。卒業したての若い看護師さんにもすぐに役立つプロの看護像の鏡になるI 師長さんでした。

 

 

連載49

up 2005/03/10

 

便利リンク トップへ戻る

心療内科研修医参照頁 トップへ戻る